第五十一話 初期メンバー(三)
「久しいな。あの頃は小娘だったのに今ではこの学園の学園長とはな」
どうやら、あの男性は学園長を知っているらしい。
「貴方は紫龍破吹さん……」
学園長もあの男性を知っているらしい。
「学園長、あの人はどのような方でしょうか?」
そこに太助が学園長に問う。
「あの方は暗殺庁所属の暗殺者初期メンバーの一人、紫龍破吹さん。私は一度初等部の時に会いました」
学園長が初期メンバーに会った事があるというのはモイヒェルメルダー学園にいる人のほとんどが知っている。
だから、学園長しか分からなかったのだろう。
「こ、これは破吹さんがやったのでしょうか?」
本館を半壊させたのが破吹なのかと問う学園長。
「そうですね。まさかこんな簡単に壊れるとは思いませんでしたがね」
「目的は何でしょうか?」
「目的は暗殺庁とモイヒェルメルダー学園を国営から切り離す事ですぞ」
学園長が目的はなんだと問うと、簡単に返ってきた。
「昔から暗殺庁は政府さえも融通が利かなかったでしょうが、それでも国営。国が持っている事は違いありませんよね。また、このモイヒェルメルダー学園に通う生徒の親御さんは政府の者もいらっしゃるでしょう。お金を出さないと言うだけで此方は何も言えません。結局、政府に融通が利くようになってしまう。そこで我々、暗殺者古参メンバーが暗殺庁とモイヒェルメルダー学園を受け持ち、お金を出す。そうすれば、政府からの介入は無いという事じゃ」
破吹が言うのは暗殺庁とモイヒェルメルダー学園を国から切り離し、その二つを暗殺者の古参メンバーが代わりに運営する事で、政府からの介入を完全に無くしたいようだ。
「それを望むのは破吹さんだけですか?」
もし、破吹だけの行動ならどうにかなるかもしれない。一番対等になるとしたら、今も破吹と同じ初期メンバーが居る事だ。
それが無理なら、暗殺者総出で立ち向かうしか無い。
しかし、破吹から返ってきたのは予想も出来ない答えだった。
「他には数十人と此処にも何人か、いや何十人かは居るじゃろうな。集まって貰おうかな。来てくれるか」
その呼びかけにより、生徒と先生が数人向かっている。
そして、次々と空を飛んでいく。多分、破吹の能力だろう。一人一人に飛行能力は無い。もし、生徒や先生には飛行能力があったとしても、他の人に付与する事は難しい。
その点、初期メンバーは底が知れない。一番可能性があるのが、破吹という事だ。
集まった人達を見ると……
「あの面々はほとんどが中等部からの生徒」
学園長は集まった人達が中等部からの生徒、つまりは現在高等部だけど中等部からの生徒が多い。
次に多いのが、高等部二、三年生の高等部からの生徒だ。
そして、その中には……。
「匠、来栖、華花実もなのか?」
そこには匠、来栖、華花実も含まれていた。
「あぁ、この様な所が政府に関わっているのがおかしいんだ」
「そうですね。暗殺庁の掲げているのが政府と関わらないと言っても運営資金は政府からの資金です。個人資金と言っても金持ち、暗殺庁に関係無い者がお金関係で関わるのはおかしい。結局、権力に頼るしか無い。その代わり、初期メンバーの人達なら関わる人。何も問題無いのですよ」
「わ、私は来栖に同意」
匠はあまりよく分かっていないと思うが、来栖の言っている様に暗殺庁に関係無い者が関わるのはおかしいという主張は間違っていない。
だから、暗殺庁に関わる暗殺庁所属の暗殺者初期メンバーなら暗殺者からの支持もあり、資金も持っている。
という事は政府と関わる必要も無いという事になる。
他の生徒もクラスメイトに何故なのかと聞いていた。
「ちょっと待って下さい」
そこに学園長と同じ年齢くらいの女性が現れた。
その特徴は髪の色が紫色である。
「ほぉ、君が来ましたか。来ると思いましたよ」
「やぁ、久しぶり。破吹がこの様な事をすると思いましたよ」
初期メンバーである破吹に親しく話し合うこの女性は誰だろうかと生徒と先生が学園長を見る。
「あ、貴方様は不空須美様」
「あれ、沙由里ちゃん。大きくなったね。確か、学園長なんだって」
「はい」
まさかの様付け。
学園長が様付けをしたのに生徒と先生が驚いている。
「何ででしょう?儂との違いは……」
それを見ていた破吹はちょっと落ち込んでいた。
「そ、それでどなたなのでしょうか。学園長」
そこに、誰かがこの女性の素性を学園長に尋ねた。
「この方は破吹さんと同じ初期メンバーの一人、不空須美様ぁ」
須美が破吹と同じ初期メンバーというのは驚くが、学園長が須美の事をキラキラした目で見ている。
「別に私は破吹を止めたいと思っている訳では無いよ。それも、意外と簡単に出来ると思う。内閣に喧嘩を売りに行けばすぐに了承してくれると思うし」
須美はどうやら破吹を止めに来た訳では無いらしい。
では、何故来たのか?
「ただ、ちょっと乱暴だったかな。特にそこの男子!その子を何処に連れて行くの?その子はそっち側では無いでしょう!」
須美が指差した先には匠だった。
そして、いつの間にか匠に抱えられる女性。
その女性は摩利だった。摩利は気絶させているのが、反応が無い。
「これは好きにさせた結果であるよ。儂とは関係無い」
匠の方が独断の様だ。
「匠さん!摩利さんをどうするつもりですか!」
小雨が匠に抱えられている摩利を見て、叫んでいる。
「王道派じゃ、難しいと思ったからな。邪道でいかせて貰うよ」
「邪道で、その後どうするだ?」
「あぁ、無理やりやるよ。裏には沢山あるからな」
匠が言う裏にある物は薬とかの事だろう。
本当に邪道である。
「それは許容出来ない。王道派に恋愛をするなら良いけど、そのやり方は許せないなぁ」
「そうです。仮にも同じクラスメイトの摩利さんをその様な事にしませんよ」
太助と小雨は摩利を助けるために行動を移そうする。
しかし、そこで笑い声が聞こえる。
次々と出てくる初期メンバー。
そして、笑い声。それは誰だろうか。
今章は暗殺庁とモイヒェルメルダー学園を国営のままにするか、暗殺者達自身で管理するかの話になります。




