第四十四話 三ツ葉先生サイド
ーー三ツ葉先生サイド
三ツ葉先生班の三ツ葉先生、摩利、華花実の三人は伊島先生班と離れてから始めた。
「私達は私が教えるというかアドバイスが多いと思って下さい。それから体術を向上していきましょう」
三ツ葉先生の指導は先生の『演算能力』の分析で、何が不足なのか何か向上出来る事が無いかを考えて、それをアドバイスとして教える。
「それで、偶に私と手合わせをしましょう」
基本的に体術を受けるのは三ツ葉先生だろうが、実戦を模した事をする必要があるからだ。
「今日は特に特別な事はしません。今から昨日私が貴女達を見て、気づいた事を聞きます。そして、アドバイスもするかもしれません」
実は昨日迅澄達が伊島先生と手合わせをしている時に三ツ葉先生は『演算能力』を用いて、一人一人観察をしていた。
「まずは二人に関係する事です。後衛にとって重要なのは気配察知となります。その点でいえば、摩利さんは出来ているようですが、華花実さんは出来ていないようですね」
気配察知は後衛だけが重要という訳では無い。
前衛だって重要だ。
でも、前衛は常に周りを警戒するのに対して、後衛は敵との距離が離れている場合が多い為、気を緩みやすい。
「後衛の仕事は周りを見る事が重要です。基本的に後衛は前衛のサポートになりますが、自分の死角も気にする必要があります」
後衛は後ろに取られやすい。
それは基本的に後衛が前衛を見るからである。
でも、気配察知さえあれば、後ろに取られても対処出来る。
「因みに摩利さんはどの様に気配察知を?」
「そうですわね。音でしょうか、一番簡単で習得しやすいと思いますからね」
「そうなんですね。実は私も音で判断しています。何をするにも微量ながら音が出ますからそれを聴く事になります」
「前衛組だともっと高度な気配察知をしていると思いますわ」
「はい、前衛と後衛の気配察知の違いは前衛はかなり高度な気配察知が必要で、後衛は気配察知が出来れば良い事です。それは何でかわかりますか、摩利さん」
「前衛というのは敵との距離が近い事、そして密集した中で行われる場合に何処に何があるかを常に把握する必要ありますわ。対して、後衛は基本的に前衛をサポートをするのが仕事になり、背後に回られるのはそうそう無いので、ある程度気配察知があれば良い事だと思いますわ」
「はい、そうです。だから、華花実さんは気配察知を習得しましょう」
「は、はい」
華花実は来栖と離れている為、いつも以上におどおどしている。
「それと、もう一つ前衛組には気配察知が出来ていない人が居ます。誰か分かりますか?」
摩利が手を挙げる。
「摩利さん」
「迅澄と美結と来栖だと思いますわ」
「正解です。その理由もお答え出来ますか?」
「はい、迅澄と美結はこれまでその様な事をやっていなかったのが一番の理由で、来栖は基本的に華花実と一緒にいる為、早々に身につける事は無かったと思います」
「まぁ、そうですね。来栖君は実戦の時はどの様にやっていましたか?」
「来栖が『確率』で戦況を見て、華花実の『テレパシー』を通じて私に報告します。華花実の近くに居るのは守る為だと思います」
「という事は来栖君は前衛に出れないのですか」
三ツ葉先生は昨日の観察で誰が気配察知出来るかは確認取れたが、迅澄や美結の場合は以前に何か特別な事をしていない限りは出来ないと思っていて、来栖の場合は全く分からなかった。
前衛も可能な来栖が何故この学園に居て、気配察知が出来ないのか……と。
「では、益々華花実さんに気配察知を取得して貰わないといけませんね」
「は、はい。頑張ります」
華花実さえ、自分を守る事が出来れば、来栖が前衛に参加出来るだろうという考えだ。
華花実自身も分かってはいたが、自分を守る体術……護身術を覚えたのに実際に実戦で使った事は一度も無い。
それは自信が無いからである。
来栖が代わりに華花実を守っている。
それか来栖が守ってくれるという甘い気持ちがあるからかもしれない。
「それで中等部ではどの様に教えて貰いましたか?」
「基本的に戦闘技術だと思います。体術からそれぞれの武器までを教えて貰いました。そこに気配察知などの身体能力までは教えていませんでしたわ」
「確か、技術特任教師はフェアベルゲン持ちの人とそうでは無い人が居ましたね」
「はい。と言ってもフェアベルゲンを持たない人は暗殺庁やこの学園を知っている人じゃないとそもそも選ばれません。選ばれている人の中には小雨の家族の人もいるそうですわ」
技術特任教師にフェアベルゲン持ちでは無い人が居るのは最初の学園長が武術に長けた人と北条学園長が言った様に技術特任教師も初期にフェアベルゲン持ちではなく、武術に長けた人が務めた。
それからフェアベルゲン持ちの技術特任教師が増えていき、今ではフェアベルゲン持ちの方が多くなっている。
「だから、気配察知が出来ない人も居ましたか」
「先生は当時どうだったでしょうか?」
「私の技術特任教師は当時気配察知や空間把握までも教えて貰ったので、やはり技術特任教師の中でも違いがあるみたいですね」
生徒の指導はほとんど教師が行うだが、技術の授業においては技術特任教師が指揮する為、その人その人が違いが生まれた。
「では、次に今から前衛組を観察しましょう。後衛にとって前衛を観察する事は大事です。それは分かっていますね」
「はい、分かっていますわ」
「は、はい」
「特に今年入学した迅澄君や美結さんを中心に観察して下さい。何か気になった所がありましたら、明日の技術の授業の時に言って貰います。まぁ、宿題です。それでは見ていきましょう」
それから三人は前衛組を観察した。
少し経つと、前衛組が終わった様で伊島先生によって技術の授業は終了した。




