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第三十二話 迅澄vs匠(模擬戦)

今回は少し長いです。

 

 今、迅澄と匠は剣の打ち合いをしていた。


 迅澄がまず最初に剣を選んだのは力比べが主に理由に挙げられる。

 多分、この中で一、二を争う力を持っているのが匠なのではと思う迅澄。

 実際には一番が小雨で、二番目が匠と太助で五分五分で匠の能力を使うと、匠の方が上ではないかというレベルだ。


 でもやはり、半月で力を付けてきたとしても、迅澄は押し合いに匠に負けていた。


「やっぱり、半月ではこの程度か!」

「確かに、匠は三年以上の経験がある。でも、僕には技量があります」


 匠の言葉に迅澄は力比べは終わりとばかりに服の中から短剣を出して、逆手に持つ。


「今度は二刀流か」

「はい、次は攻撃の数です」


 迅澄は剣と短剣で攻撃の数を増やし、匠を迫る。


 しかし、それも匠はいなしていく。


「くっ!流石に剣一本では防ぐのが精一杯か」


 それでも、匠は攻撃に転じる事が出来ないでいる。


「しかし、この程度!…はっ!」


 そこで、匠は迅澄の持っている短剣を弾き飛ばす。

 その短剣は迅澄の後方へと飛んでいき、落ちた。


「さあ、次はどうする」


 次はどう攻撃するとばかり迅澄に対して言う匠。


「次はこれです」


 その時、パーンと音が鳴った。


「あっぶねなぁ。瞬間的に使っちまったじゃねーか」


 音の正体は迅澄の左手にある拳銃だ。


 かろうじて、匠は能力を使い、手の筋力を上げて防いだ。


「一瞬だから待機時間は数秒で済むけどな」


 匠のフェアベルゲンは一瞬または一部強化であれば、待機時間も少なく済む。


「次は銃です。弾は非殺傷なので大丈夫ですよ」

「それでも、痛いだろ」

「そうですね」


 敵相手であれば実弾を使うが、そうではない時は非殺傷の弾を使う。

 それでも痛い事には変わりない。


「でも、防ぐ事は可能でしょう?」

「まぁ、防げない訳ではないが……」


 匠の技量なら剣で防ぐ事は出来るだろう。

 しかし、それが拳銃一丁だったらの話だ。


 つまりは……


「おい!もしかしてもう一丁あるのか!」


 匠が見たのはいつの間にか右手に持っていた剣が消えていて、代わりに拳銃を持っていた。

 それは二丁拳銃という事になる。


「仕方ない。『全力』でやらせて貰う」


 流石に二丁拳銃はキツイと判断し、今度は全力の能力解放。

 匠のフェアベルゲンを詳しく言うと、特に時間制限は無い。

 しかし、解除後は次に使うまでの待機時間と疲労が襲う。

 いつもは瞬間的に使うのだが、本気になる時だけ『全力』を使うようにしている。


 匠は能力解放して、あらゆる身体能力を上げる。

 それは攻撃の面でも防御の面でも強くなっている。


「次からはこちらから仕掛けるぞ」


 そう言って、匠は迅澄に向かって駆け出す。

 その速さは先程より速くなっていた。


 それでも、迅澄は小雨の速さよりも遅く見えるので、側宙で躱し、その間に銃を撃つ。


「はっ!」


 普通の人なら防ぐ事も躱す事も出来ない銃の弾を匠は剣を振った風圧で防いだ。


 その後も迅澄は躱しては撃って、匠は撃たれたら風圧で防いで接近して攻撃をするを繰り返す。


「このままでは何も変わらない」


 流石に何も変わらないので、迅澄は銃を仕舞って槍を出す。


「それが本命か?」

「いえ、今まで使った武器は利点があり、この槍も利点があります。その中で『これ』というのはありません」


 迅澄にとってそれぞれの武器の利点は、剣が扱いやすさ、剣と短剣が手数の多さ、拳銃が遠距離と攻撃速度、槍がリーチの長さとこのようになるだろうと考えている。


「そうか、でもこの状況で槍とはなぁ」


 でも、槍には弱点がある。

 それは接近戦では不利だという事。

 槍は接近戦なると、振り回す事も刺す事も無くなる。


 その点で言えば、匠にとっては接近戦に持ち込めば良いという事だ。


 匠は駆け出し、迅澄に接近する。


「何!?」

「忘れたのですか?これは伸縮可能な槍だという事を」


 今迅澄が持っているのは四十センチ程の縮めた槍だ。

 先程、服の中から出した時は一瞬で伸ばしたため、匠には見えなく、そして勝負する前に伸縮可能な槍だと言われたのに忘れてしまっていた。


「確かに忘れていた。しかし、縮めた状態ではリーチは短い。伸ばしてもまた、接近戦に持ち込めば縮める。それを繰り返す事は難しい。そして短い状態なら、刃渡りは剣より短い。さあ、防げるか」


 匠の言った通り、一々伸縮しても余計に疲労するだけになる。逆に接近戦を恐れて縮めた状態では刃渡りは短い。かろうじて、匠の持つ剣を防げても、柄の部分は保たないだろう。


 その後も二人の攻防は続く。

 見るに迅澄は防いでいるが、押されている。


 もしかしたら、先程の二丁拳銃の方が良かったかもしれない。


「もうこの辺にするか。迅澄の実力は知れたし、最後に()()の力を見せる」

「やはり、全力では無かったのですね」


 今から全力を見せようと言う匠。

 実は先程から『全力』は能力解放の全力で、今から行うのは能力を解放した上での力の解放。

 つまりは今までは能力解放はしていたけど、それは能力解放した力のごく一部を使っていただけである。本気は本気でも今からの本気は本当の本気だ。


 それを迅澄は見抜いていた。


「何故、分かった?」

「何故って、能力解放したにもかかわらず、能力解放前とあまり変わらないし、僕と差が無いから」


 迅澄からしたら、自分は半月で匠は三年以上の差なのに戦ってもそんなに変わらない訳が無い。

 なら、先程言っていた『全力』は全力であって全力では無いと迅澄は判断した。


「そうか。なら、俺の全力を味わってくれ」


 匠は何を思ったのか、剣を地面に刺した。


「俺は本来徒手空拳。つまりは武器無しが本気だ」


 匠のフェアベルゲンを最大に活かすのに一番良い戦法は徒手空拳になる。

 武器はリーチの長さがあっても、匠の全力を出しきる事は出来ないのである。


 匠は腰を落とし、右手を引いて、目を瞑り、集中する。


 そして、カッと目を開いた。


『正拳突き』


 匠が放った正拳突きは空気を空気圧に変え、迅澄に襲う。


「ぐわっ」


 あまりの衝撃に、迅澄は口から血が出て、吹き飛ばされる。

 迅澄は圧倒的な差で負けた。

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