第二十九話 迅澄が思う美結の印象
迅澄は教室に戻って来た。
「迅澄、何の話だったんだ?」
「そうだぞ。あの美結って女が走って来て、荷物を持って教室を出てったぞ」
迅澄が教室に入ると、太助と匠が言った。
他のクラスメイトもこちらに来ていた。
「あぁ、学園長に呼ばれて、森菜さんの事で用事があっただよ」
「森菜さんの用事?」
学園長に呼ばれた理由が美結だと聞き、疑問に思う太助。
他のクラスメイトもそのようだ。
「何の用事だったの?」
「森菜さんって、僕と違って今日初日でしょ?」
「そうですね」
「だから、学校の事を色々教えて欲しいと言われたんだよ」
「確かに迅澄さんは約半月は私達三人に教えられましたね」
用事の内容を聞くのは小雨。
そして、返ってきたのは学校での知識無いから、教えて欲しいというのを知り、同じ高等部入学の迅澄は事前に知っているので、必要なのは美結だと理解する。
「でも、何で迅澄だけなんだ?」
「中等部の匠達は教える事は出来ないって学園長が言ったし、太助達は一応お金持ちの家系だから緊張するじゃないかという事らしい」
「そこで、ある程度教えられて私達三人の間に入る事も出来るという事ですわね」
それで、学園長に呼ばれたのが迅澄だけというのに気になった太助が言うと、迅澄は学園長に言われた事を言う。
それを聞き、摩利は迅澄が呼ばれた理由が分かった。
「僕は了承したんだけど、当の本人である森菜さんは悩んでるらしい」
「確かに朝の様子を見ると、私達と関わりたくないご様子に見えました」
「あぁ、俺が親切に挨拶したのにな」
「貴方は少し強引ですわよ。少し抑えて下さいませんと」
迅澄から美結が悩んでいると聞くと、来栖が眼鏡をクイっと上げて、朝の様子を言う。
匠は美結に挨拶をした事が親切な事だと言うと、摩利はそれは少し違うと応えた。
「でも、あんなにまで動揺するでしょうか」
「まぁ、確かに朝とは違いますわね」
ただ、教室を戻って来た美結の様子は朝とは違うと小雨と摩利は言う。
「迅澄は何かやったの?」
「いや、何もしてない。ただ一つ言える事がある」
「それは何だ?」
「朝はガツガツしてたけど、あれが本来の性格では無いんじゃないかな」
迅澄は美結の様子を見て、何か隠しているんじゃないかと思った。
「無理をしているとか?」
「そこまでは分からないけど、明らかに朝と違うって事はそうじゃないかなと思っただけ」
ただ、これは迅澄の推論であって、本当の事かは分からない。
「まぁ、あの子の事を探るのはやめましょうか」
「そうだな」
この話題はやめようと言う摩利に匠も同意する。
「それでは今からどうしましょうか?」
「まだ、午前十時半ぐらいですか……」
「昼食も出来ません」
もし、十一時だったら食堂で飯を食えたが、まだそれまで三十分ある。
「とりあえず、食堂に行きましょうか。あそこの席で時間まで待ちましょう」
「そうしますか」
摩利の提案に太助は返事をする。
他の人も頷いている。




