第二十八話 学園長の頼み事
三ツ葉先生は迅澄に用事があるようだ。
「迅澄君すまないが、ちょっと話がある」
「はい、何でしょう?」
迅澄は三ツ葉先生に向かうと、何故か美結が居た。
「今から学園長室に行くのだが、時間は大丈夫?」
「大丈夫ですけど……」
迅澄は了承すると、三ツ葉先生は移動を始めた。
何故か美結も来ているのだが、迅澄は気にしない事にした。
数分後、学園長室に着く。
「学園長、迅澄君と美結さんを連れて来ました」
「入っても大丈夫よ」
三ツ葉先生が声を掛けると、向こうから声が帰ってくる。
まぁ、学園長なのだが。
三人は学園長室に入る。
「やあ、久しぶりだね」
「はい、入学式まで見かける事はありましたけど、話すのは久しぶりですね」
学園長とは学園に来た時以来、学園長を見かける事はあったが、実際に話すのは久しぶりだ。
「入学式まで、あの三人に指導して貰ったらしいじゃない」
「そのおかげで、ある程度学ぶ事が出来ました」
「そうですか。そこで、本題に入るんですが……」
いきなり、話を変える学園長。
学園長は美結の方を見る。
どうやら、彼女と関係のある話らしい。
「実は貴方かあの三人の誰かで、美結さんの指導をお願いしたいと思いまして……」
学園長は迅澄と同じ境遇(高等部からの入学)である美結の指導を頼みたいらしい。
「あとの三人は?」
「中等部組の事?」
「はい」
「あの子達は教える事はしないと思うんですよ」
迅澄は自分と太助達以外のあとの三人……つまりは中等部組の匠達はどうなのかを聞くと、学園長は「難しいのでは?」と答えた。
まぁ、実際に匠は自主練に忙しい、来栖は知識増加をするために読書で忙しい、華花実は人見知りで難しい。と言う点で、学園長は難しいと言っているのだ。
「それで、僕達四人中の誰かにと言う事ですか」
「そうです」
(確かに僕の指導しようという時、太助達は匠達が教えてくれるのは難しいと言ってた。ていうか、それ認識を学園長も持っているんだ)
迅澄を学術と技術に分けて教えようとした時に、太助達は一度匠達を入れようとしたが、教える事が出来ないという事を思い出し、誘う事を辞めていた。
迅澄は匠達が出来ないだろう事を太助達が知っているのに少し驚いていた。
「僕だけ呼んだのは?」
「貴方は一般市民という事で共通します。あの三人もフレンドリーに話してくれると思いますが、お金持ち相手というのは緊張するのです。そこで貴方は貴方自身で指導するのも良いけど、現状貴方も教えて貰う側なので、あの三人の間に入るのには丁度良いと思いましてね」
お金持ち相手というのは慣れるまでが一般市民同士と比べて長い。
中等部組も最初は同じく緊張気味に話していていました。現在はそんな事もなく、会話出来ている。
「まぁ、良いですけど、森菜さんはどうなんですか?」
そこで迅澄は美結に問いかける。
「これは別に断っても良いのだろう?」
「そうですね。強制はしません。ですが、みんなより遅れていますよ。同じ入学生である迅澄さんは既にある程度は教わっています。学術、技術どちらも基礎知識は覚えているでしょう」
美結は拒否している様子。
確かにこれは強制では無い。しかし、他の人より遅れている事は試験やチームワークに影響がある。
その点、迅澄は太助達から学んだので、問題無い。
「う〜ん」
(結構ガツガツ言っていた割には考えているな。もしかして、それ程ガツガツ系では無いのだろうか)
美結が悩んでいる様子を見て、迅澄は美結の性格がガツガツ系だけではなく、もう一面あるのではと考えた。
「とりあえず考えておいて下さい。その間は授業で三ツ葉先生に習って下さい。よろしくお願いしますね」
「了解しました」
クラスメイトからの指導が無い場合は授業の時間に学ぶしか無いため、担任である三ツ葉先生にお願いをする学園長。
「それでは用事はこれで終わりです」
今回は迅澄達が美結に教えてくれるかという事なので、美結自身が教えて貰いたいとかの話では無い。
美結には「教えて貰うけどどう?」と言っておき、後日返事して貰えばいいので、重要なのは教えてくれる人が了承してくれる事である。
三人は学園長室を出る。
「時間取ってすみませんでした。私は職員室に行くから、ここで解散にします。美結さんはちゃんと考えておいて下さい」
「はい」
「では、これで」
そう言って三ツ葉先生は廊下を歩いて行った。
迅澄は教室に戻ろうと美結を見ると、何か考えていた。
「森菜さん、どうしたんですか?」
「え?あっ、な、何でもない!」
「森菜さん!何処に行くんですか!」
美結はそう言って、廊下を走った。
迅澄が呼びかけたが、そのまま走って行った。
美結が何処に行ったか分からなかったが、迅澄は教室に戻った。




