第十四話 太助と小雨と摩利の家系+α
翌日から迅澄は太助と一緒に練習場に向かう。
「太助、練習場にはどんな人が来るんだ?」
「う〜ん、どんな人か〜。多分だけど、近接面のフェアベルゲンとかかな。やっぱり、身体能力が必要だからじゃないかな」
近接という事は相手と接敵する時が多いという事だ。だから、それを補うとともに向上も必要とされる。
身体能力も上がれば、フェアベルゲンの使える幅を広げる事ができるという事である。
「もしかして、小雨さんも?」
「はい、あの方も近接なので来る事が多いです。ただ、小雨さんは古式武術の家系という事もあり、出会う時から強かったです」
中等部から通常で入学できるのに対し、初等部はお金がなければ、入学できない。つまりは早めにこの学校に入学できる方がレベルが高いという事。
また、家元が何かの武術の家系であれば、幼少から学んでいるため、初等部入学時の生徒より高い。
「そう言えば、太助は中等部から?それとも初等部から?」
「うん?あ〜、言ってなかったね。僕は初等部からだよ。一応は金持ちの家系だからね。しかし、小雨さんや摩利さん達みたいにフェアベルゲンの人がいる家系ではなく、家系で一人しかいないフェアベルゲン持ちなんだ?」
「えっ?どういう事?」
迅澄は太助が言った事に疑問に思う。
「フェアベルゲンってあまりいないっじゃなかったの?そんな同じ家系で何人もいるって事」
「あれ?あの二人、言わなかったんだ」
「言わなかったって?」
「本当はあの二人、古い家系なんだ」
「古い家系?という事は太助はそうじゃないんだ」
「うん、そうだよ。僕の家系は意外と最近で、戦後になってからなんだ」
太助の実家の波間谷家は、元々が普通の国民で一応は力仕事をしていたが、戦後になって貿易業で成功し、金持ちになった。
もしかすると、家系を辿れば、いるかもしれないが、あっても戦時までである。
「逆にあの二人は、小雨さんの家系は名のある武士がいたと言われているし、摩利さんの家系は元々西洋の貴族と日本人が結婚した家系らしいから。結構長い家系なんだよ」
「そうなんだ。でも、初等部から一緒なんだよね」
「うん、一応は幼馴染という事かな」
太助とあの二人は仲良しという事かと思う迅澄。
「太助はどちらかと男女関係にはなっているの?」
「何故、聞くのかな?」
「別に何もないけど」
「そう」
太助は聞かれた事が言う必要があるかと問うと迅澄は照れる事なく、言う。
「まぁ、一応言うけど、何もないよ。家系の問題か兄弟としか思ってないんじゃないかな。僕も恋心はないからね」
幼馴染となると、恋心を抱く場合と密接過ぎて兄弟姉妹と思う場合があるけど、太助は後者の方だ。
幼馴染というステータスは一番近くにいる異性という事で、付き合いやすいというのもあれば、知り過ぎて兄弟姉妹としか思えなかったり、嫌いな部分が見えたりして付き合いにくいという事でもあるので、そこまで大きなステータスとは思えない。
「太助は恋をした事がある?」
「まぁ、ある。というか今しているよ」
「そうなんだ。恋心ってどんな感じ?」
この質問は一度も恋をした事がない迅澄の問い。
「僕の場合は静かな鼓動かな。激しく鼓動が鳴るのではなく、その人だけ静かに鼓動がする事かな」
意外にも素直に太助は応えてくれる。
「太助の場合はそうなんだ。学校内での恋愛とかもあるの?」
「あるよ。暗殺者育成学校だろうと、生活や学術はほとんど一緒だからね。暗殺者になった人の中にもいるんじゃないかな」
一応、フェアベルゲン関係以外は他の学校と変わらないので、恋愛もする人はいる。
卒業後、結婚する場合は妻を専業主婦にしてもいいが、暗殺庁への登録をする必要がある。
一応、裏の職業は暗殺者という事になる。
「どうやら、着いたみたいだね」
目の前には練習場と思われるドーム状の建物があった。




