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一刻を争う時

*この小説はフィクションです。実在の事故・人物とは一切関係ありません。

 あれから、数十分。建物崩壊が起きた現場は騒動が収まった、とはいえなかった。瓦礫に埋もれている者がいないか、救助が進められていた。当然、現場は立ち入り禁止。涙と蒼は立ち入り禁止の前で見ていた。他の者たちも何人か、状況を見ていた。しかし、どうなっているのか分かりにくい状況だった。そのせいか、近くに人が少なくない。救助隊が近付かないように声を掛けているが、聞き入れない者がいた。

「状況が分かりにくいですね。どうしましょうか」

 (るい)(そう)に問い掛けた。蒼は隣に居るが、周りが騒がしいせいか、聞こえていないようだ。涙は蒼の肩を叩いた。すると、蒼は振り向いた。涙は人がいない場所を指で示した。二人は人がいない場所へと移動した。


「あの、今の状況が分かりにくいですよね。ここを離れて、次の予告の場所を探しましょう。止まっていては、なにも変わりません」

 涙は答えると、次の行動を提案した。蒼は少し考えるような仕草をした後、口を開いた。

「そうだな。一旦、事務所に戻ろう。犠牲者が居ないことを祈ろう」

 その後、二人は玲央(れお)が動いている事も知らないまま、事務所に戻った。


   ***


 玲央は聞いた。近くで建物崩壊が起こった事を。その崩壊の現場では未だに救助は進められていることも耳にしていた。急いだおかげで、目的地まであともう少しのところまで来ていた。しかし、玲央の身体は限界を迎えていた。

(痛え。頼む、持ってくれ)

 玲央は心の中で願いながら、必死に耐えていた。次の瞬間、玲央はなにかにぶつかった。玲央は転びそうになったが、なんとか体勢を立て直した。


「あ、すみません」

 不意に女性が謝った。そして、その場を直ぐに去っていた。玲央は人にぶつかったようだ。だが、ぶつかってきたのは女性だった。急いでいた拍子にぶつかってしまったのだろう。玲央は怒りも不機嫌にもならなかった。女性も、玲央もそれどころではなかったのだ。目的地までもう少し、涙たちと合流するために先を急いだ。

____


 無惨に崩れている建物。救助隊は十名ほど。しかし、救助は難航していた。その理由が瓦礫を退かすのに時間が掛かっていたからだ。小さい瓦礫なら、急げば退けられるだろう。瓦礫のほとんどが大きく、重量だった。鍛えられている救助隊でさえ困難だった。

「増援はあとなん分ですか?」

「あと十分です」

 間に合うかの瀬戸際だった。その光景を目にしていた玲央。既に辿り着いていた。

(嘘、だろ。最悪じゃねえか)

 玲央は思わず呟いていた。そして、辺りを見渡した。実際には(すい)を除いて涙と蒼が行動しているが、玲央には翠が居ない事を知らない。それでも辺りを見渡し探した。

 結局、見つからなかった。長居しているわけにもいかず、玲央はその場を後にした。



(や、やべえ。早く病院に戻らねえと……)

 玲央は事務所に向かおうとしていた。しかし、それはいつも唐突にやってくる。玲央は頭を抱えていた。頭痛だ。それも途轍もなく、激しい痛みだった。薬を飲んでも痛みは治まらなかったのだ。行き先の方向を変えて、病院に戻ろうと歩を進める。一歩一歩と足を動かすが、限界がきてしまった。

 突然、玲央は地面に倒れ込んだ。しかも、頭を強く打ちつけた。

「だ、大丈夫ですか? 誰か、救急車を!」

 近くにいた者は、大声で叫んで助けを求めた。すると、周りはざわつき始めた。

 玲央は起き上がらない。この時、最悪な状態が起きていた。それを知らない周りの者たちはざわつき続ける。

「あの人、大丈夫かしら?」

「人が倒れている。大丈夫かよ」

 各々に言葉を発している。


 それから、約三十分後。漸く、救急車が到着した。なぜ、こんなにも時間が掛かったのか。それは、あの崩壊事故があったため、近辺の救急隊はほぼ出動していた。他の救急隊が向かうのに、遅くなってしまったのだ。

 玲央は一刻を争う状態だった。直ぐに搬送されたのだが、入院していた病院とは別の病院へ運ばれたのだった。


「成人男性。年齢二十代後半だと思われます。道端で倒れていたそうです。外傷は頭部に手術痕が有り、それ以外はほとんど見られません。お願いします」

「はい。ありがとうございます」

 病院まで着くと、すぐに救急隊から医師に引き継がれた。玲央は未だに意識不明だ。容姿で二十代後半だと判断された。手術痕だけでは別の病院に入院しているとはまだ気付かない。そのまま、処置室へ運ばれた。


   ***


 一方、事務所には涙と蒼が戻ってきていた。

「あれ、玲央さんは?」

 柚葉(ゆずは)は先程まで、事務所に来た玲央が居ない事に疑問を感じた。途中で二人と出くわして、戻ってくると思っていた。しかし、幾ら確認しても玲央の姿が見当たらなかった。

「玲央さん、ここに来たんですか? 今は入院しているはずじゃ」

 涙の言葉に柚葉は首を横に振った。

「現場に居ることを伝えると、玲央さんが行くって言って、現場に」

 不意に涙と蒼はお互い見合った。

「あの、私、探してきます。蒼さん、あとお願いします」

 涙は言うと、事務所を飛び出していった。

 二人は涙の後ろ姿を無言で見守るように見送った。

次話更新は5月24日(日)の予定です。

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