避けられない運命
*この小説はフィクションです。実在の事故・人物とは一切関係ありません。
涙が貴美から突然の言葉を聞かされる数時間前。
ちょうど、玲央が図書館に着いた頃だった。玲央は真っ先にある分野に向かった。そこは新聞コーナーだった。今度こそある情報を手に入れるために玲央は探した。だが、数分経っても見つからなかった。
「くそ。なんで見つからねえんだよ。絶対あるはずだ」
玲央は思わず悔しさを声にする。その時だった。玲央の前に一人の人物が現れた。その人物はあの時の女性だった。彼女は以前見覚えのある玲央を見つけて、再び声を掛けようと歩み寄った。なにか役に立ちたいと思っていた。それが彼女の仕事の一部でもあるのだが……。
「あの、あの時の人ですよね。なにかお探しですか?」
「あ?」
女性は声をかけたが、玲央は突然の事に威圧的な言葉を発した。
「お探しのものがあるようでしたら、」
「あ、あの時の」
女性の言葉に玲央はやっと思い出した。以前来た時に声を掛けてもらった女性だった。女性は玲央に微笑みかける。しかし、玲央は探してほしいとは言わなかった。大丈夫と言って、その場から立ち去ってしまった。
結局、役に立つ資料はなかった。玲央は悔しさを浮かべながら、図書館を出た。その直後、玲央は激しい頭痛と同時に視界が揺らいだ。ふらっとよろめく。次の瞬間、玲央は倒れてしまった。近くを歩いていた人たちが玲央に呼びかけるが、応答がない。数十分後、玲央は再びあの病院へと搬送された。
***
「玲央くん、大丈夫かしら」
処置室の待合室で貴美が玲央の心配をしながら、終わるのを待った。玲央を搬送した救急車が病院に着くと、偶然近くにいた貴美が駆け寄った。玲央が金髪だった事もあり、直ぐに気付くことが出来た。そして、緊急手術へ。その間に貴美は預かっていた玲央の携帯の履歴を遡ると、何度も電話が掛かっている事に気付いた。何度も電話をするとなると、重要な電話なのではと考え始めた。電話をすると、出たのは女の子だった。貴美は玲央が倒れた事を伝えた。そして、女の子を待つことにした。
玲央の手術は何時間も掛かるかと思いきや、僅か三十分で終わった。処置室から医師と目を閉じたままの玲央が出てきた。貴美は駆け寄った。
「例の血腫が破裂したのかと思いましたが、破裂せずに血腫を除去出来ました。少し遅ければ破裂したかもしれません。危ないところでした。詳しくはあとでお話します」
医師はそう言って立ち去った。貴美はホッと胸を撫で下ろした。だが、それだけでは終わらない事が起きているとは、この時は知らなかった。
「玲央さ、ん?」
涙は病院に着くと、貴美と会って、玲央の居る病室へと案内された。玲央が倒れたと聞いて、不安だった。しかし、涙が病院に着く少し前から玲央は目を覚ましていた。涙は病室に着くと、玲央が起きていた事にホッとした。
「涙ちゃん。どうしてここに来たんだ」
涙の突然の訪問に驚く玲央。すると、貴美が言った。
「玲央くん、御免ね。玲央くんの携帯に何度も掛かってきてたから気になって電話してみたの。そうしたら、この子が出て、」
「……」
貴美の言葉に玲央は黙る。ただ表情は険しい顔をしていた。その様子に貴美は何度も謝った。
「玲央さん、大丈夫ですか? このところ休んでいないじゃないですか。きっと、そのせいです。ゆっくり休んでください」
その言葉に玲央は驚き、一度貴美のほうを見やった。すると、貴美は首を横に振った。
「涙ちゃん、御免。アイツと一緒になんとかしてくれ。様子見として俺はもう暫く入院する事になった」
玲央が言う。
「大丈夫です。ゆっくり休んでください」
涙は答えた。しかし、内心は大丈夫とはいえなかった。人数が減った状況では阻止できないかもしれない。頼りになる玲央と翠が居なければ自分が動かなければという、人々を救う責任を感じていた。
「なら、時間はない。アイツに伝えてくれ。俺から伝えるのも気が引ける」
「はい、無理しないでください」
「おう」
二人がそんな会話をした後、涙が退室した。そのまま病院を後にした。病院から出ると、再び走り出す。事務所で翠の行方を探している蒼の元へと急いだのだった。
____
涙が居なくなった病室では玲央と貴美が会話をしていた。
「叔母さん、言わなかったのか。なんでだ?」
玲央は問いかける。
「言ってほしくないでしょ。そのくらい分かるわよ。でも、良かったじゃない。手術のおかげで治ったも当然よ」
「なんか悪い。兄貴の事もあるのに、俺まで入院して……」
玲央が言うと、貴美は玲央の肩を軽く叩いた。
「遠慮しなくていいの」
貴美はそう言った。それから、怜太の病室に向かった。病室に独りになった玲央はどこか浮かない顔をしていた。突如、頭を抱えると、一度自分の手に視線を移した。その手は震えていた。治ったはずの頭痛も起こっていた。
次話更新は4月5日(日)の予定です。




