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慮外な出来事、再び

*この小説はフィクションです。実在の事故・人物とは一切関係ありません。

 数分前の出来事。突然、翠(すい)の元に電話が掛かってきた。電話の相手は涙(るい)だった。翠は電話に出ると、焦りを見せた。

 電話に出た途端、

『翠さん、今から言う場所に来てください! お願いします』

 涙の焦りのような言葉を耳にしたからだ。その後、電話は切れた。


(まさか、また巻き込まれたのか?)

 一瞬、翠の頭の中で最悪な出来事が過ぎる。次の瞬間、翠は事務所を素早く出ていった。扉が勢いよく閉まる。それから、翠は涙から聞いた場所へと一目散に向かった。


(なんだ、この渋滞は? なにか起こっているのか?)

  不意に翠の視界に異様な光景が映った。その光景は道路に並ぶ乗用車やトラック。所謂、渋滞。だが、普通の渋滞ではない様子だった。翠が幾ら歩を進めても永遠と続いているかのように渋滞の列が途切れない。

「いったい、なにが起きているんだ……」

 翠は渋滞の列に圧倒され、思わず言葉を口にした。


「翠さん、こっちです!」

 不意に少し離れた場所で、大きな声を出しながら、手を振る涙の姿が現れた。翠は手を振る涙に駆け寄った。

「これはどういうことなんだ?」

 涙に駆け寄ると、直ぐに問い掛けた。

「私にも分からないんです。病院から出たら、この状況をおかしいと思って、翠さんに連絡したんですけど……」

 涙は問い掛けに答えたが、言葉に詰まってしまう。

 実をいうと、涙にもなにが起こっているのか分かっていなかった。先程まで怜太(りょうた)の見舞いの為に病院に居た。玲央が戻って来なかったので、許可もとらず、一人で事務所に戻ろうかと外に出た。そこで気付く。普段、空いている道路に乗用車などが列を作っていたことに。それも長い。その光景を見た直後、ある事が過ぎったのだ。

 湊人(みなと)の事故の時のように、渋滞が起こっているのではないかという考えに至った。だがしかし、そこには玲央の姿がない。


「涙ちゃん、レオは? 今まで一緒にいたんだろ?」

「いや、それが……」

 翠の問い掛けに涙は言葉に詰まる。そして、俯いてしまった。

「まさか、また巻き込まれたんじゃ、」

 涙の様子に翠は最悪な考えを呟いた、その時だった。突然、翠の携帯が鳴った。翠は躊躇うことなく、電話に出た。


「レオ、今どこでなにをしている? 何度も連絡したんだぞ。まさか、また巻き込まれたのか?」

 どうやら、電話の相手は玲央(れお)だったらしい。翠はやや怒り気味にいう。

『あ、悪い。ちょっと気になる事があって出れなかった』

 玲央がたったそれだけ言うと、翠は安心したように溜め息を吐いた。

「それで、今どこにいるんだ? 涙ちゃんと居たはずだろ。一人にしちゃダメだろ」

 そう言いながら、涙を見やる。涙はどことなくそわそわしている様子だ。心のどこかで翠のように玲央がまた巻き込まれたのかと心配していたのだ。それを知らない玲央は電話の向こうで平然としている。

『あー、それが白関市内に来ている。ここで交通事故があったみたいだ。それも大きな事故らしい。おそらく、奴《・》、』

「紫弦か。取り敢えず、事故の様子が分かりそうなら調査してくれ。俺も調べる。くれぐれも気を付けろ」

 玲央の言葉に察した翠はそう言う。玲央に指示をした後、返答を待たずに直ぐに電話を切った。それから、一度涙に視線を移した。


「事務所に戻る。ついてきてくれ」

「事務所、ですか? でも、玲央さんに、」

 涙が疑問を抱いている間に翠は先に行ってしまう。

 涙は急ぎ足で後をついていった。


   ***


「これって本当なのか? だとすると、今すぐ動かなければいけない」

 言葉にするのは蒼(そう)だ。蒼はある事に気付いていた。翠(すい)と同じパソコンスキルを持っている蒼はそのスキルを駆使して、裏で起こっている事柄を察知出来た。

 それは、もはや家系なのだろう。いや、おそらく努力の賜なのだろう。実際に、柚葉(ゆずは)は全くといっていいほどそのスキルがない。それは、良かったのかもしれない。もしも、柚葉にもスキルがあったならば、もっと危ない目に遭ったかもしれない。

 そんな事を他所に、蒼の部屋を叩く音と柚葉の声が扉越しに聞こえてきた。

『蒼お兄ちゃん、今大丈夫?』

 二人は親戚だが、柚葉を気遣って、部屋を別々にしてある為、なにかあったら柚葉はよく尋ねてくる。今もだ。だが、どうやら蒼は気付いていない。パソコン作業に集中していた。

『蒼お兄ちゃん、居るよね? 入ってもいい?』

 それでも、気付かない。扉の開く音がした後、柚葉は入っていった。車椅子のままで。

 その音にやっと気付いた蒼は柚葉のほうへと振り向いた。

「柚葉、気付かなくて悪い。どうした?」

 蒼は驚くことなく、冷静に声を掛けた。

「私、翠お兄ちゃんのところにはもう行かない。邪魔をしたくない」

 その言葉に蒼は驚いた。

次話更新は2月16日(日)の予定です。


マイペースですが、よろしくお願いしますm(_ _)m

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