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過ぎゆく時と往訪と

*この小説はフィクションです。実在の事故・人物とは一切関係ありません。

 あれから、数日後。三人は事務所『ビクターライフ』に居た。

 あの後、無事に新幹線が動き、乗っていた柚葉(ゆずは)(そう)に会えたのだ。言うまでもないが、(すい)は柚葉を叱った。なぜここに来たのかを何度も問い詰めた。しかし、柚葉は臆することも無く、ただ『お兄ちゃんに会いたかったから』ばかり言っていた。

 それから、柚葉と蒼は新津(にいづ)駅の近くのホテルに泊まる事になった。勿論、車椅子受け入れが大丈夫な所だ。

 ほぼ毎日、翠は二人に会っている。『ビクターライフ』の場所を教えずに。


 そして、今現在。三人たちはいつも通り、事務所で作業をしているはずなのだが……。

玲央(れお)さん、大丈夫ですか?」

 (るい)はソファで寝そべっている玲央に声を掛けた。玲央は腕で目を隠しているが、涙にとってはなんだか元気がないように見えた。

「あ? 俺なら大丈夫だ。俺よりも翠だ」

 涙の声に気付いた玲央が起き上がり、答えた。

「翠さん?」

 涙は思ってもいない名前を聞いて、思わず声に出した。

「いや、確か、寝てないはずだ。翠、大丈夫なのか?」

 玲央は説明するように言うと、翠に問い掛ける。

 翠はいつもと変わらずパソコンを弄っている。玲央の言葉通り、前日から寝ていない。普通ならば、睡眠不足で判断が鈍る状態だ。それなのに、今の翠は逆に頭が働いている。そんな翠が玲央の言葉に振り向いた。

「今は休んでいる時間なんてないだろ。いつ、紫弦(しづる)から次の、」

「休戦だと言われたんだぞ。休める時に休んどけ」

 翠は言葉を口にするが、玲央がそれを遮った。言葉通り、紫弦から数日前に《休戦》を告げられた。今後、動きがあれば休んでいられないだろう。それでも、翠は納得していない様子だ。

「なんだよ。もう一度言わせるな」

 翠の様子に察した玲央が眉間に皺を寄せて言った。

 涙は翠のほうへと視線を向ける。本当のところ、涙も寝ていない翠の事が気になっていた。もし、なにかあってからでは遅いと思っていた。それは、以前に経験している。


 ある日、突然ある人を亡くした。涙にとってはお兄さん的存在だった人物。名は鳴海(なるみ)湊人(みなと)。交通事故だった。その事故も紫弦が関わっていた。理由は違えど《何か》あってからではという考えが過ぎっていた。


「翠さん。玲央さんの言う通り休んでくださ、」

 ふと、翠に向けて声を掛ける涙だったが、翠が苦笑いを浮かべてこちらを見ていた事に気が付いて、(つぐ)んでしまった。


『次のニュースです。数日前に新津駅で起こった事故ですが、』

 突然、涙の耳にそんな言葉が聞こえてきた。

 数日前の新津駅での事。あれは、車両の不備で起こった事故だった。しかし、単なる不備じゃなかった。その真相を知るのは三人だけだ。紫弦が上手く操作をし、車両に事故を起こさせた。幸い死者は出なかったものの、重傷者は数名いた。

 実のところ、事故の直後、新津駅では惨事が起きていたのだ。もしかすると、死者が多数出ていたかもしれない事故だったせいか、数日経った今でもニュースで報道されている。車両点検の回数など、見直しが必要という意見が少なくなかった。おそらく、新幹線に乗っていた柚葉と蒼も被害を受けていたかもしれないのだ。

 そんな事もあり、涙はニュースを見聞きすると、身震いを感じた。

 その時だった。不意に事務所の扉の開閉音がした。この事務所に居るのは三人だけで知っているのも三人。ならば、誰か来たのだろうか?

 三人はほぼ同時に音がした方向へと視線を向けた。

「本当にここにいるの? それよりも勝手に入っちゃ駄目なんじゃ……」

「大丈夫。俺がなんとかするから」

 そんな会話が聞こえてきた。見覚えのある声だ。すると、翠が駆け寄るように扉へと足を向ける。

「柚葉! それに蒼兄さん!」

 目を丸くして驚きながら、名前を呼ぶ翠はあまりの出来事に固まってしまう。


「やっぱり当たり。翠、説明してくれないか?」

 蒼は当たり前のように言うが、翠は困惑している。その場に居た涙と玲央も分からず、口をぽかんと開けている。暫く、事務所内には沈黙が流れる。


 翠は気まずさに頭を搔く。沈黙のせいか、気まずさは増していく。そんな中、ある事が起こった。

「!」

 電話が鳴ったのだ。それは、事務所の電話でもなく、翠の携帯からでも無かった。玲央の携帯からだった。


「悪い、叔母さんからだ」

 玲央はそう言って、電話に出る。

「もしもし。今、大丈夫。分かった。今から行く」

 相槌を打ちながら応える。

「翠、悪いが今からいつものところに行ってくる。後はよろしく」

 言葉を残してその場を後にした。翠は止めることをしなかった。なぜなら、行き先を知っていたからだ。


「え、玲央さん?」

 ただ、その場に居た柚葉は疑問を浮かべていた。

発生から数日、柚葉たちは無事だったのだが、突然の往訪に戸惑う三人たち。

これからどうなっていくのだろうか。


次話更新は11月10日(日)の予定です。


マイペースですが、よろしくお願いしますm(_ _)m

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