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謎のメールと衝撃的ニュース

 それは、ある事から始まった。ある男がパソコンの前にいる。その男はフードを深く被りながら、キーボードを叩いて作業をしていた。操作するパソコンの画面にはある文字が写っていた。

『××市 ××事故』

 それと何かの画像が画面上に表れた。その画像をよく見ると、過去にあった事故の新聞記事のようだ。それは、おそらく茜音(アカネ)玲央(レオ)(すい)の三人が関わっていたに違いないだろう。

 男はなにも言わず操作を続ける。そして、数分が経った頃だろうか。

「よし、完了。これで後は、」

 男は誰に言うわけでもなく、独り言を口にし、立ち上がった。暫くすると、その場から去ってしまった。

 この男はいったい誰なのだろうか。紫弦(しづる)か、はたまた別人か。それを知る者はたった一人しかいない。

 誰が知っているというのだろうか。


   ***


 玲央が退院する前の時間。ここは《ビクターライフ》の事務所。事務所内には翠が一人、パソコンを弄って、なにかを調べていた。

 そんな時だった。


 突然、電話が鳴り出した。その電話は翠に掛かってきたようだが、翠は電話を不審に思った。その電話は非通知からだったからだ。

 辺りは誰も居ないにも関わらず、視線を感じるのかキョロキョロと見渡して、電話を取る。


「……紫弦だよな?」

 誰からか分かっているものの確認するように電話の相手に問い掛ける翠。


『よ、眼鏡。元気か? あ、元気な訳がねえよな。俺がバカを罠にハメて、殺ったもんな。まんまと引っ掛かるなんてな。笑えるな。ハハハ』

 紫弦は嘲笑いながら、長々と言葉を続ける。紫弦の言葉に静かに耳を傾ける翠だったが、内心は冷静でいられなかった。紫弦から出る言葉は如何にも楽しんでいるのかが伝わってきていた。人の命を軽々しく見てる姿を想像すれば、普段冷静沈着である翠も怒りが込み上がる。それでも、冷静でいようと耐えていた。


『あの女も殺ったし、これで眼鏡の御前とあのガキだけだな。まとめて殺るか。なんつってな。ハハハ』

 紫弦は電話の向こうで余裕で話を続ける。冗談のつもりで言ったつもりだろうが、紫弦の冗談は今まで起こしてきた事により本気に聞こえてくる。翠にとっては冗談には思えなかったのだ。


「紫弦、調子に乗るなよ」

 翠は小声でそう言う。


『は? 今、何か言ったか? まあ、いい。今度は××市を狙う。せいぜい頑張るがいい』

 紫弦は次の《予告》らしき言葉を口に出した。

「おい、待て。それはどういう意味だ? それにレオは、」

 翠は言葉で紫弦を引き止めようとしたのたが、途中で切られてしまった。紫弦の言葉に疑問と焦りを見せ始める。


「え?」

 なんとか阻止出来ないだろうかと中断していたパソコンの操作をした時、開いていたメールの通知欄に気付く。

「これは、」

 それは一通の新着メール。見知らぬメールに疑問を抱いていたが、内容に目を通すと驚き、急いで調べを進める。その《メール》は三人にとって良くない事を示す内容だった。もし誰かに知られたら命に危機が及ぶかもしれないと危険を察知した。

 その《メール》は、どんな内容でいったい誰からなのだろうか。


   ***


 時間は進んで、玲央が退院した翌日。事務所には三人が集まっていた。


「すい、翠!」

 呼びかけるように声を出しているのは玲央だ。

「……」

 しかし、翠は考え事をしているのか、気付いていない様子だ。玲央は眉間に皺を寄せる。


 一方、その場に居る(るい)は何事もなく、落ち着いた表情で寛いでいた。今起きていること、それと今後起きる出来事も知らずに。


「おい、翠!」

 再び玲央が呼びかけると、翠はハッと我に返った。

「悪い。考え事をしてた」

「しっかりしろよ。紫弦の事だろ? んなの考えたって無駄だ」

 なにを考えているのか直ぐに察し、確認するように口にする玲央。自分の身に起きた事をまるで忘れているような軽い言い方に翠の表情が一変する。


「自分の身になにが起きたのかを忘れたのか? 油断したら、本当に紫弦に殺られるぞ。奴は平気で人の命を狙うんだ。それも弄ぶかのように。それに御前は殺ったことにもなっている。分かってるのか?」

 突然、翠が声を張り上げるように大きな声を出した。その声は事務所全体に響き渡った。不意の出来事に涙は恐怖を感じた。翠と玲央に視線をチラッと向ける。状況は一変しようとしていた。


「……分かってる、」

「分かっていない。レオ、御前はもっと周りを見ろ!」

 玲央は一瞬の出来事に思わず怯んだ。というのも、翠は玲央と違ってあまり大声を出さない。そもそも口数が少ない。今までに無かった翠の態度に、涙は唖然としていた。事務所内の空気は一気に重くなってしまう。

 身の危険があった以上、玲央は翠の言葉に言い返す事も出来ず、その場に留まっていた。まるで玲央と翠の立場が変わっていた。


「あの、翠さん。少し落ち着きましょう。そんなに大声出したってなにも変わりませ、」

「涙ちゃんは黙っててくれないか。レオ、なにか言えよ」

 涙がその場の空気を変えようと翠を宥めるようとするが、それも上手くはいかない。あの冷静沈着な翠が豹変するが如く、態度を変えている。


「気分悪い。外の空気を吸ってくる」

 暫くして、無言が続いていた事務所内に誰かが話す声が響いた。その声の主は意外にも翠だった。翠は誰に言う訳でもない言葉を発すると、事務所内を出ていった。事務所に残された涙と玲央は依然として動こうとしない。


「玲央さん。いいんですか? このままじゃ、」

 涙が玲央に声を掛ける。

「放っておけ。アイツなりの考えがあるんだ。俺と違って直ぐに元通りになる」

 玲央は分かりきっているかのように言った。そんな玲央の対応に涙はこれ以上なにも言わなかった。いや、自分より翠の事を分かっていると思って、黙っていた。


 再び、静まり返る事務所内。ふと、玲央がリモコンを取って、テレビを付けた。情報入手手段としてメディアの一つであるテレビ。以前から事務所にテレビはあったものの涙が訪れてから付けていなかった。リモコンでテレビを付けると、真っ黒だった画面から、あるニュース番組の映像が映る。


『次のニュースです。昨日、突如車道を走っていたバスが蛇行し、建物に衝突しました』

 玲央と涙はその言葉を耳にして、衝撃を受けた。

次話更新は2月24日(日)の予定です。

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