1 箱
初投稿です! 文章書くの下手で勉強中ですので、見苦しいところもあると思いますが大目に見てください。
楽しんでいただけると幸いです。よろしくお願いします。
火野桐花のロッカーを開けたら爆弾が入っていた。
爆弾を見たことがあるわけではないけど、直感でこれは爆弾だと思った。30センチ四方の正方形の透明の箱の上に、15:00で止まった赤い色のタイマーがあり、そのタイマーの下にはいろいろな色の細いコードが絡み合っていた。
別に彼女のロッカーを開けたのは、彼女のプライバシーを覗こうという変態の思考や、何かを盗んでやろうというバカの欲求によるものではない。
火野桐花の友達とかいう女子が、借りた教科書を返しに来たらしいのだが、彼女はトイレかどこかに行っていたのか、教室にはいなかった。その子は廊下にいた俺に、返しといてと教科書を押し付け、帰ってしまったのだ。俺は火野桐花の机の上に置こうかとも考えたが、廊下にいるからついでにという怠け心で、教科書をロッカーに入れることにしたのだ。
女子のロッカーだから綺麗に整頓されているだろうと想像しながら開けた扉の向こうには爆弾があった。
この状態にどう対処すべきか、ロッカーの扉を一旦閉めた途端、鳥肌が立った。
「鈴木くん、どうしたの?」
ギョッとして振り返ると、黒髪のショートヘアーの似合うパッチリとした目を持ち、背が低く胸が寂しいクラスメイト、そしてこのロッカーの持ち主の火野桐花がきょとんと首を傾げて立っていた。
どう答えてよいか分からなかったから、えっととかそのとかしか言えないでいたら、火野桐花はあ!と声を上げ、俺から教科書をむしり取った。
「これ、次の授業で使うやつだよね。あずさが返しに来たんだ。鈴木くんが受け取ってくれたの?」
爆弾をロッカーに入れている人間とは思えない明るい言葉に、俺はただ頷くしかできなかった。いや、爆弾じゃないんだ、あれは。火野桐花の遊びの道具の何かに過ぎないんだ。どうして高校生が学校に爆弾を持って来るんだ。バカみたいだ。
「ロッカーの中見たの? 爆弾入れてたんだけど。」
俺の「この箱は爆弾じゃない説」は見事に砕かれてしまった。
「うん、ちょっとね…。」
本当はちょっとどころではないのだが。俺は彼女が、「爆弾じゃなくて、イタズラ道具だよ~。」と笑うのを大いに期待した。
「見られちゃったか〜。」
あちゃーとおでこを抑え、口を緩ませていた火野桐花は次の瞬間、無表情になり俺の右腕を引っ張って耳元で低くささやいた。
廊下には、もう誰もいなくて教室からの笑い声も聞こえた。
「それ、ガチの爆弾だから。警察に言ったら殺すよ。」
よし!と笑顔に戻った火野桐花は軽快に教室へ戻って行った。でも、俺はこの状況が飲み込めぬままただ立ち尽くしていた。
そして、3時間目の始まりを告げるチャイムが鳴った。
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