第91話『マジックハッピー』
やはりこうなる
「吹き荒べッ!【四重息吹・風】ッ!かぁらぁのぉ!焼き尽くせッ!【四重息吹・火】ッ!!」
『ーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!』
瞬間、荒れ狂う風の咆哮によって勢いをました火の咆哮が収束され純白の輝きを放つ一筋の閃光となって迸る。
その純白の閃光は、特殊ボスとしての意地なのかスタンにかかりながらも本体を守るように射線に差し込まれた1本の太枝ごとエンシェントトレントの本体である巨木を突き抜る。
高い防御力と耐火性を持つ太枝をものともせずに突き破った純白の閃光は、エンシェントトレントのHPバーを丸々2本吹き飛ばすだけに飽き足らず、背後の森を数kmに渡って焼き尽くし、ようやくその輝きを収めた。
この大破壊を引き起こした魔法は、攻撃系魔法スキルのスキルレベル10で解放される、純粋な魔法攻撃では最強クラスの火力を誇る【ブレス】系統の魔法である。
しかも『多重詠唱』によって『火魔法』の【ファイアブレス】、『風魔法』の【ウィンドブレス】の両方が四重に展開され、さらには『風魔法』によって『火魔法』が強化されるというおまけ付き。
そして、この【ブレス】系の魔法は『収束型』と『拡散型』、つまり単体攻撃か範囲攻撃かを任意で選べるという特性がある。
『拡散型』は広範囲にダメージ与えるため、一体一体向けられるエネルギーが分散されてしまい、逆に『収束型』は全てのエネルギーを一体に与える代わりに攻撃範囲が極端に狭いという特性を持つ。
もちろん今回使われたのは単一の敵に超大ダメージを与える『収束型』である。もしまだ木の葉が舞っていれば『拡散型』なった可能性もあるが……そんなもしもの話をしても仕方ないだろう。
「見よ!私史上最強の一撃!名付けて【白龍砲】!ヒャッハー!汚物は消毒だァ!」
「うっはぁ……なんだそのアホみたいな威力……」
メイド・イン・メイの火・風魔法の強化に特化した最高クラスの装備とイベントで手に入れた『火魔法』のスキルレベルを+1するアクセサリー、そしてエンシェントトレントの猛攻に耐えつつ今の今まで温めてきていた称号の『固定砲台』による強化などが相まって、威力だけ見ればトーカの高所からの【グラビトンウェーブ】にも引けを取らない程の高威力の一撃へと至ったのだ。
もちろんMPやCTの都合上連発は出来ないが、それでも切り札として握るには十分すぎる程の一撃だろう。しかも『多重詠唱』のスキルレベルはまだ4。この一撃にはあと6段階もの上が存在するというのだから恐ろしい限りだ。
あまりの威力にまさに開いた口が塞がらないといった様子で頬を引き攣らせているリクルスの横で、カレットは再びインベントリを開きMPポーションを取り出す。
「アッハッハッハッハッ!全快したMPが1発でからっぽになったぞ!んぐっんぐっ、ぷはぁ!不味い!もう一杯!」
唖然としているリクルスとは裏腹に、カレットは自らが引き起こした大惨事にご満悦な様子で2本目のMPを喉に流し込んでいる。
とてつもなく不快なはずのMPポーションを飲むカレットの顔は一切の曇りの無い輝かんばかりの幸せそうな笑みを浮かべていた。
そんなアホみたいな威力の一撃を喰らったエンシェントトレントはと言うと、炭化した貫通痕からプスプスと煙を上げて固まっていた。
普段ならば部位欠損を起こした樹木系のモンスターはすぐにでも欠損した部位の再生が始まるのだが……
身体の大部分が残っているからなのか傷口が炭化しているからなのか、炭化した貫通痕からプスプスと煙を立てつつも空いた穴が塞がったり、吹き飛んだ太枝の片割れが再び生えてくる様子はない。
そんなエンシェントトレントの様子を見て、カレットはさらに満足気に頷く。
「いやぁ今のは爽快だった。ただCTが長くて連発出来ないのが難点だな」
後日、『付与魔法』には【アクセプト】という、他のアーツやスキルのCTを代わりに受け持ち、そのアーツやスキルを瞬時に再使用可能にするという魔法があると知ってカレットがトーカに詰め寄る事になるのだが……それはまた別のお話。
「こんなの見せられてじっとしてるなんて訳にはいかねぇな」
カレットの超高火力の一撃に触発されたのか、リクルスも以前より殺る気に満ち溢れている。
「MPは回復したな?俺もちょっとやりたい事あるから少しの間1人で耐えてくれよ。【チェンジNo.0】!」
言うや否や『早着替え』をもって武器を太枝を弾くために装備していた『大地の豪剣』から、メイン武器である『大地の豪腕』へと入れ替える。
「もちろんだ!私だって軽戦士の端くれ、1本だけの太い枝を躱しながら他を処理するなんて造作も無いぞ!」
「よく言った!死ぬなよカレット!」
そう言い残し、リクルスは1度ガンッ!と『大地の豪腕』を打ち鳴らすと『縮地』を駆使して駆け出して行った。
……………………
「【四重火弾】ッ!」
……………………
「【三重火槍】ッ!」
……………………
「【二重火槌】ッ!」
……………………
「んぐっんぐっ、ぷはぁっぶない!【ファイアランス】ッ!」
……………………
「……?何も【四重火弾】ッ!起こらないが……リクルスは何をやっているのだ?」
この時点で既にリクルスが駆け出してから5分近く経過している。
その間カレットは持ち前の身軽さを活かして太枝を回避しながら、隙あらば『多重詠唱』した『火魔法』を打ち込み応戦を続けているが、待てど暮らせどリクルスが帰ってくる様子も何かしでかすの様子も無い。
「逃げた?いや、あいつはそういう【ファイアボール】奴じゃないし、そもそもボス戦を終わら【ファイアランス】せないとボスエリアからは出られないはず【ファイアハンマー】だからそれはありえな【四重火弾】ッ!だぁぁぁぁ!鬱陶しいッ!」
的がひとつになったことでより過激になるエンシェントトレントの猛攻についにカレットがキレた。
ついでにタゲを擦り付けて(先程の一撃で完全にヘイトがカレットに向いていたので冤罪)消えたリクルスにもキレた。
「えぇいもう我慢ならん!んぐっんぐっんぐっ、ぷはぁ!MP全回!ブレスは撃てないがレーザーなら撃てる!」
ちなみに、カレットが撃てるといった【レーザー】は、攻撃魔法のスキルレベル8で使用可能になる、先程の【ブレス】系の下位スキルである。
使用者の意思で範囲攻撃にもなる【ブレス】系と違い【ブレス】系で言うところの『収束型』しかないが、その分威力は攻撃魔法の中で【ブレス】系に次ぐ威力を誇っている。
「吹き荒べッ!【四重風……」
超高火力の一撃に酔っているのとプッツン来たのがいい感じーーあるいはダメな感じーーに噛み合い、完全に魔法乱射魔として目覚めかけていたカレットが劣化版【白龍砲】を放とうとしたその瞬間。
ドゴメキシャグパンッ!!
普通は聞かないような怪音を立ててエンシェントトレントの巨躯が弾け飛んだ。
味のしないどろっとした液体とか……想像するだけでオエッってなる作者です
今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!
おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします
ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!




