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第88話『迷いの森』

今回から幼馴染サイドに入ります

……そう言えば投稿開始してからトーカとリクルス、カレットの3人で遊んでるところ書いたのって蜥蜴洞窟だけなんじゃ……

 

 プレゼントを受け取ったあと、リクルスやカレット、リーシャが制作秘話を話したそうにうずうずしていたので、制作秘話とやらを聞いてみる事にした。ちなみにメイは相変わらず挙動不審だった。このプレゼントにいったい何があるというのだ……

 制作秘話を聞くのは単に俺も聞いてみたいというのもあるが、それも含めて確かめるため、というのも大きな理由の一つだ。


 なので、共用生産所では他の利用客に迷惑がかかりそうだったので『泣鹿亭』に移動して話を聞く体制を整えた。3人のうずうず的に長話になりそうだったしな。


「トーカの装備を作るってなった時に最初に決まったのはとりあえず強いメイスを作ろうって事だったんだよ。んで俺とカレットは良質な木材のために『迷いの森』に、メイとリーシャは鉱物系の素材のために『忘れられた廃坑』に行ったんだ」


『迷いの森』……確か【ウクスタ(第2エリア)】に2つある森フィールドのうち俺が行った『蛇の森』じゃない方だったか。

 その名の通り油断するとすぐ迷ってしまうような複雑に入り組んだ深い森で、場所によっては薄く霧がかかっていたりもするんだとか。更には【トルダン】の路地裏のようにマップにも霧がかかってしまうため、出てくるモンスターのレベルはそこまででもないが危険エリア扱いらしい。

 んでメイ達が行ったっていう『忘れられた廃坑』ってのは知らないな……え?メイが見つけた隠しエリア?良質な鉱石素材を探してさ迷ってたらたまたま見つけた?すげぇな。


「あ、でも宝石系はやっぱりロックゴーレム産の方が質がいいからいつでも買い取るよ。核心石もね」


 メイ……生産に関してはとことん本気だな。目がマジだぞ。


「『迷いの森』にはエリアボスのエルダートレントから取れる木材が欲しくて行ったんだけど……」


 そこまで言うとリクルスは1度笑いを噛み殺すように言葉を止め、カレットと目を見合わせて、そこで我慢できなかったのかくくっと小さく笑い声を漏らした。


「何があったんだ?」


 この2人がそうなるって事は相当面白いことがあったのだろう。それが気になって聞いてみると、リクルスとカレットが息ピッタリに「「よくぞ聞いてくれた!」」と嬉しそうに言ってきた。相当言いたかったらしい。


「「『迷いの森』でこんなことがあって……」」

「話すのはどっちか片方にしてくれ」


 2人はそのまま同時に話し出す。ハモっていたとはいえさすがにそれは聞き辛いので、どちらか片方にしてもらいたい。


 そんなに面白いことがあったのか、2人ともどうしても言いたかったらしい。どちらも譲る気配はなく、最終的にジャンケンによってカレットが説明役を勝ち取った。


「では改めて。『迷いの森』でこんなことがあってだな……」


 ◇◇◇◇◇


 薄く霧がかかった森の奥深く。

 少し進めば元来た道すら分からなくなるような深い森の中に4つの人影の姿があった。

 いや、うち半数の2つは人影と呼んでいいのかすら怪しい。どちらかと言うと、ひとりでに動く樹木と言った方がしっくり来るだろう。


 どうやら、動く樹木と人影は戦っているようだ。


「【ファイアランス】ッ!」


 ひとつの人影から燃え盛る炎の槍が動く樹木に向かって放たれる。


『ーーーーーーーッ!』


 炎の槍に貫かれ、その身を燃やしながら暴れ回る動く樹木。

 トレントと呼ばれる『迷いの森』に生息する樹木型のモンスターには発声器官など無いはずなのに、悲鳴をあげている気すらしてくるのは、それほどまでにトレントの身を包む炎の勢いが激しいからなのだろう。


 トレントが炎をパートナーに踊り狂っているその横で、もう一体のトレントもまた枝葉を震わせ、声ならぬ声で悲鳴をあげている。


「【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝……拳】ッ!」


『ーーーーーーーッ!』


 馬鹿の一つ覚えのようにひたすらに、ただひたすらに拳を放つ人影に、一回り以上も大きな体を持つトレントが一切の反撃を封じ込められ、ただのサンドバッグに成り下がっていた。


 炎をパートナーにして激しく踊り狂っていたトレントは数秒の後に真っ黒な炭となって空に溶け消え、サンドバッグに成り下がったトレントもまた最後の一撃とばかりにためを作って放たれた拳によって吹き飛ばされ、同じく空に溶けて消えた。


 後に残ったのは、トレント2匹相手に危なげなく勝利を収めた2つの人影だけだった。


「むぅ……もう終わりなのか?」

「ったく……カレットお前やりすぎだろ。あんなに燃やしたら絶対炭しか落ちねぇじゃねぇか」

「なっ、そういうリクルスだってあんなに殴っては木片しか残らないだろうに」

「へっ、木片だろうと木材は木材だろ。完全に炭にしちまうお前と違ってな」


 炭だろうと木片だろうとどちらにせよ『木材』として使えない事に変わりは無いのだが、この2人からしてみればそこは重要ではないのだろう。

 もしこの場に2人に『木材』集めを任せたメイや2人の保護者的ポジションにいるトーカがいたとしたら、間違いなく巨大なため息をついていたことだろう。


 一見険悪にも見えそうなこのやり取りだが、かれこれ17年を幼馴染として過ごして来た2人からすれば、このやり取りももはや恒例のイベントのひとつでしかなく、むしろ楽しんでいる節すらある。


「ただのトレントじゃ相手にならねぇな」

「『木材』を集めると言っても相手がこう脆くてはな……」


 もう口喧嘩ごっこに飽きたのか、片や炭の塊、片やとても使い物になりそうにない木片と、どちらにせよお目当ての『木材』の代わりにもなりやしないドロップアイテムを眺め、仲良くトレントに責任を擦り付けていた。


「ただの【ファイアランス】にすら耐えられないとは……トレントの火耐性は相当に低いものと見た」

「そりゃ見た目からして火が弱点ってツラしてるもんなぁ」

「言ってしまえばただの動く木だしな!」

「ちげぇねぇや。まぁリスポーン待ちの間の暇つぶし(トレント狩り)に文句言ってもしゃあなぇか」

「むぅ……それもそうだな。と、ヤツはもうリスポーンしたころじゃないか?」


 2人が言っているリスポーンとは、エリアボスであるエルダートレントの事である。

 この2人は既にエルダートレントの討伐に成功し、それどころか周回を行っている状態なのだ。


 トレントは硬い表皮としなやかな体を持っており、斬撃や刺突には強い耐性を持つが打撃には弱く、魔法……特に水と土にも高い耐性を持つが火属性にだけは弱いという特性がある。

 つまり、籠手による打撃主体のリクルスに、装備で強化された『火魔法』を主体とするカレットとはすこぶる相性が悪いのだ。


 トレントが長い年月のうちに大地の恵を蓄えて進化するという設定を持つエルダートレントも、当然のようにその特性を引き継いでおり、同じくリクルス、カレットとは相性最悪と言ってもいい。


 つまり、これまでの積み重ねによって異常とも言えるフレンドリーファイアを克服したリクルスとカレットにとってトレントの上位種であるエルダートレントも等しく雑魚であり、倒せるかどうかではなく、『木材』が取れるように上手く倒せるかどうかが問題となってくるレベルの相手なのだ。


 そして、既に幾度か行われた周回によって判明した事だが、エルダートレントは1度討伐するともう一度出現するまでにある程度のインターバルが存在する。

 同じボス枠であるはずの鉱山ことロッ君ことロックゴーレムにはこのインターバルが存在しないのだが、そこら辺はフィールドボスかエリアボスかの違いによるものなのだろう。


「確かボスエリアは……あったあった」


 そのままトレントの軟弱さへの愚痴を言いながら慣れた足取りで迷路のような森をスイスイと進んでいき、着いた先は木々が少し開けた広場のような場所である。


 この場所こそが『迷いの森』エリアボス、エルダートレントの出現するポイントであり、別名木材倉庫である。


 既にリスポーンは終了し、もう戦える状態だと分かると、リクルスとカレットの2人は、ほんの僅かにすら気負った様子もなく木材倉庫の中央へと向かって歩き出して行った。


次回ボス戦!

強くなった幼馴染2人の活躍をお楽しみに!


今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!


おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします


ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!


今後も当作品をよろしくお願いします!

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