第87話『お祝いの品』
お待たせしました!
状態異常:テスト期間から無事回復したので投稿を再開します!
瞬の突発的お泊まりの翌日。
食材や生活用品の買い出しと昼食を済ませて《EBO》にログインしたのは午後の1時頃だった。
フレンドリストで確認する限り瞬……リクルスはもう既にログインしている様だ。それどころかカレットもログインしている。
数学の課題があったはずだか……終わってるのか?
「っと……噴水広場って事はこっちじゃなくて【トルダン】の方か」
今トーカが滞在している田舎町の【ウクスタ】には噴水は無いので、リクルスが昨日言っていた噴水広場は必然的に始まりの町の【トルダン】と言うことになる。
町と町の移動なので歩いて行くと意外と時間がかかるが……そこはさすがゲームというかなんというか、町間の移動にはちゃんと対応してある。
「んじゃぱっぱと行きますか」
そう言ってメニューウィンドウを開くと、【転移】の文字をタップする。
この《EBO》では、町の中はそういうイベントだったり、決闘だったりでもない限りHPは減らないようになっている。そう言ったHP保護の働いている町同士ならメニューウィンドウの【転移】で一瞬で行き来する事が出来るのだ。
ちなみに、町を【転移】を使用する対象にするためには1度自力でその町にたどり着く必要がある。
そんな便利な【転移】だが、中には【転移】を悪用しようとしたプレイヤーもいたらしい。もちろんそこら辺はしっかりと対策がされていたようで、【転移】による何らかの被害があったという話は聞かないが。
「うおっと」
準備が完了すると、足元に魔法陣が浮かび上がり、アバターの姿を淡い光で埋め尽くす。その後、僅かな浮遊感と共に光が晴れると、そこはもう【トルダン】の町だった。
「ふぅ、しっかし【転移】って便利だな」
初めて【ウクスタ】に行った時は片道1時間近くかかったと言うのに今度は一瞬だ。しかもフィールドエンカウントもないと来た。
「『着いたぞ』っと」
リクルスに噴水広場に着いたことをメッセージで知らせると、待ち構えていたのだろうか、すぐに返信があった。
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《リクルス》
おっ、早かったな
んじゃ共用生産所にいるからそっちに来てくれ
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「共用生産所って言うと……東区か」
しっかし戦闘ばっかりで生産なんてからっきしなリクルスから共用生産所なんて言葉が出てくるとは……いったいどんな風の吹き回しだ?
そんな事を考えながら歩いていると、数分で共用生産所が見えてきた。何気に来るのは久しぶりだな、などと考えながら、トーカは共用生産所の中に入る。
共用生産所はその名の通り共用の生産所なので、ひとつひとつの作業スペースが区切られていて見通しが悪い。ここから探し人をすぐに見付けるのはなかなか難しいが……
「お、来たか。トーカ、こっちだ」
「あぁ、そこか」
中に入ると、共用生産所の奥のスペースにいたリクルスが、でこちらに気付いた様で手を振って位置を教えてくれる。その近くにはメイとカレットの姿もある。
場所とメイがいるということを考えると装備の話か?ジャジャ戦があったとはいえ重鋼鉄棍はまだメンテナンスが必要なほど劣化してはいないが……
そんな事を考えながらリクルスのいる方へ向かうと……
「殺気ッ!」
チリリとした嫌な視線を感じ、咄嗟に振り返るのと弓をまるで槍のように構えた少女が天井から降ってくるのはほぼ同時だった。
「チッ」
下手人は気付かれた事に対してか舌打ちをひとつこぼし、『空歩』で宙を蹴って方向転換し、トーカとは少し距離を開けて着地する。
その鮮やかな身のこなしは、『体術』によるアホみたいな連撃(褒め言葉)を得意とするリクルスに勝るとも劣らない素晴らしいものだった。
誰がこんな事を……なんて考える必要は無い。下手人は既に分かっている。というか何度かこのパターンは経験済みだ。
「気付かれるようじゃリーシャもまだまだだな」
「ちぇ〜、今回は自信あったのになぁ。お兄さん、前よりもさらに気配に、敏感になってるね」
「昨日クエストでドンパチやってたからな。まだその感覚が残ってるんだよ」
初対面時の不意打ちアタックから何故かリーシャは俺に会う度に不意打ちを仕掛けてくるようになった。なんでも、最初の不意打ちを綺麗に防がれたのが悔しいのだとか。
「んで、なんでここに集合なんだ?武器ならまだメンテは要らないと思うが……」
俺がそう言うと、リクルスとカレット、リーシャの3人は今にもふっふっふ……と笑い出しそうな何かを企んでるような笑みを浮かべ、その3人の様子を見てか対照的にメイは苦笑いを浮かべていた。
その4人の反応に何か不穏な物を感じて、トーカは思わず身構える。
「ちょ、なんだお前らその怪しさに満ちた悪そうな笑みは!」
「そう露骨に警戒しないでくだせぇよ旦那ぁ。悪い事はしませんぜ?」
げっへっへっへとあたかも三下風の笑い方をしながらリーシャがずいっと近付いてくる。こんな事を言ったら失礼かもしれないが、正直に似合いすぎてて怖い。
「リーシャ……お前はなんでそんな三下風の言い回しが様になってるんだ……?」
「ん〜、さぁ?才能じゃないかな?」
お、おう……
三下の才能がこの先役に立つのかは知らないが頑張ってくれ。
「で、結局なんでここに集合なんだ?」
このままだと本題に入るのが相当先になりそうだったので無理矢理にでも軌道修正を謀る。
「ん、あぁそれは渡したい物があるからだな」
「渡したい物?」
もうちょっとふざけてくるかとも思ったが、リクルスとカレットの2人もあっさりと企み笑いを収め、普通に返してきた。
「そうそう。遅くなったがイベント総合1位のお祝いってやつだ。トーカからはお祝いの品的なやつをもらったけど俺達はトーカになんも渡してなかったからな」
「はは……そ、そういう訳でこれがトーカへのお祝いの品だよ?」
リクルスがそう言うと、メイが代表してお祝いの品とやらを渡してくれた。とは言っても実物を直接渡す訳ではなく、ウィンドウのプレゼント機能を使ってだが。
お祝いの品って……そんなの気にしなくてもいいのに。
ってこれは……プレゼントボックス的なアイテムに包まれてて開けるまでは詳しい事はわからないっぽいが……ウィンドウの欄から察するに新しい装備一式か?
俺の渡したのだってせいぜい《EBO》内で打ち上げした時に作った料理の特別メニューだぞ?こんなに貰ってもいいのか……?
というか今メイが凄いオロオロして挙動不審なんだが……いったい何が入ってるんだ?
「あのさ、これ……」
「何渡すか結構迷ったから遅くなったが……俺達4人で話し合った結果新しい装備をプレゼントしようって事になってな」
俺がその事について言及するよりも早くリクルスが話し始める。
「あ、あぁ。それはありがたいが……俺の贈った物に対して格が違い過ぎないか?」
「そんな事気にするもんじゃ無いぞ!なんてったってトーカは総合ランキングで1位だったんだ、その分グレードアップするのは当然だろう!」
カレットの発言に追随する様に残りの3人が頷く。
そういうもんかね……
「ほら、トーカの武器ってイベントで壊れてから間に合わせのやつ使ってるんだろ?」
「これのことか。間に合わせって言っても亀甲棍とほぼ同じ性能なんだけどな」
装備制限はあるがデメリットが無い分むしろ亀甲棍よりも性能がいいとすら思える。この武器だって間に合わせにしては十分すぎる性能を備えている。
「ところで今……」
「ほら、それに防具もイベント前にメイに作ってもらってからそのままだろ?だからちょうどいい機会だし装備一式をプレゼントしようってなったって訳だ」
そ、そうなのか……それはありがたいんだがメイのさっきの反応が気になり過ぎてそれどころじゃ……
「モンスター系の素材は俺達3人が集めて、その素材でメイが作ってくれたんだ。まぁ採掘とか採集なんかのフィールド系はメイにも手伝ってもらったけどな。色々あったがそのおかげで会心の出来だぜ?」
最近リクルス達がやる事があるって言ってたのはこれだったのか。
どうやら愛想を尽かされていた訳ではなかったらしい。……よかった。
今回から実は第1回イベントの時からずっと同じ防具を使ってきたトーカの装備更新編(幼馴染編)です!
今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!
おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします
ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!
今後も当作品をよろしくお願いします!




