表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/310

第85話『呪いより造られし獣共』

本体は雑魚だけどギミックが厄介なボスってギミックさえ対処できれば完封できることが多い気がする

 

 アルテフを追ってたどり着いた先は、淡い緑色に照らされた棚だらけの部屋だった。

 大量の棚と、棚から零れ出る光が作り出す不気味な影に邪魔されて部屋の広さは推し量れない。


 よく見ると、棚に並ぶ緑色の光源の正体は前の部屋でも見かけた、謎の生物が入ったホルマリン漬けの様なものだった。

 ひとつひとつの発光は淡く弱々しいが、それらが大量にある事で光源として十分な光量になっている。


「コレクション部屋か……?全く趣味の悪い……」

「ひょひょひょ、趣味が悪いとは言ってくれるのぉ!」


 何気なく呟いたトーカの独り言に答える声。

 一足先にこの部屋に入ってきていたアルテフが、部屋の少し開けた場所でトーカを待ち構えていた。


「ワシの素晴らしい作品の数々を趣味が悪いなどと……その暴言、見逃す訳にはいかんのぉ!」


 仰々しく身振り手振りを交えて声高に叫ぶアルテフの声に反応したように、ホルマリン漬け達の放つ光量が僅かに増加したような気がした。


「目覚めよ!呪造獣(じゅぞうじゅう)共!【ーーーーー】ッ!」


 アルテフが呪文と共に杖を一振すると、近くの棚のホルマリン漬けが激しく震え軋み声を上げ、明滅を繰り返し始める。

 そして……


 パリンッ!


 負荷に耐えかねたガラス筒が砕け散ると、中から黒い靄をまとった獣達が姿を表した。

 ポタリポタリと発光する緑色の液体を滴らせながら、狭い筒の中から開放された獣共は唸り声を上げる。


「くふふふふ……どうじゃ!これが我が呪いの集大成、呪いによって性能を大幅に強化した獣……呪造獣じゃ!」


『『『『ヴルルルル……』』』』


 蛇やトカゲ、ネズミや蝙蝠、狼や亀と言った様々な種類の呪造獣が唸り声と共に、トーカににじりよってくる。


「まさかお前……ジャジャ、あの村の守り神も呪造獣とやらにしようと……?」

「ほぉ、さすがに気付くか。そうじゃ、あの大蛇もこやつらの様にしてやろうと思ったのが……元の力の強大さ故か支配下に置く事は叶わんかった」


「………………」


 性根の悪さが滲み出る様なニタニタとした不快な笑みを貼り付けながらそう答えるアルテフには何も答えず、トーカはただ無言で呪造獣達に視線を向けている。


「あの聞かん坊にはワシも手を付けられなくて困っておったんじゃ、お主には助けられたぞ。じゃがもう用済み、知られたからにはお主には死んでもらう。まさか身代わり人形を全て使わされるハメになるとは思わなかったが……それもここまでじゃ。呪造獣共、奴を殺せい!」


 アルテフの指示に従ってトーカに飛びかかる呪造獣。

 最初にトーカの元に到達したのは、狼型の呪造獣だった。トーカを噛み殺さんと飛びかかり……


「【チェインボム】」


 哀れな獣はその身を爆弾に変えられ、元来た道を強制的に遡ることになった。

 【チェインボム】で爆弾に変えられた狼型の呪造獣が巻き起こした爆発は何体かの呪造獣を爆殺し、さらにはまだまだホルマリン漬けが大量に収められた棚をいくつもなぎ倒してようやく収まる。


「お前が知ってる訳も無いだろうが……俺相手に数で攻めてくるのは悪手だ」


 唖然とするアルテフにそう言い放ち、あまりの出来事に硬直していた呪造獣の内の1匹を【チェインボム】で殴り殺し、爆弾に変える。


 『蹂躙せし者』の効果で、1対多になった瞬間に俺のステータスは1.5倍に跳ね上がる。さらに、相手が多数の場合はそこら辺も考慮して発動してくれる『ジャイアントキリング』のおかげで、ステータスはさらに1.5倍になる。


 つまり、俺に対して数で攻めてくるというのは、範囲攻撃(グラビトンウェーブ)を得意とする俺にとってはなんら辛いものではなく、むしろステータスにバフをかけてくれるありがたい作戦なのだ。


 2発目の爆発も収まり、俺の前にいるのは唖然としているアルテフと、若干怯え腰になっている随分数を減らした呪造獣達。


「とりあえず……死にたい奴からかかって来い」


 彼等に向かってそう言うと、トーカは自身にバフをかけ直し、重鋼鉄棍を大きく振るった。


 ◇◇◇◇◇


 爆ぜる、爆ぜる、爆ぜる。

 CTの極端に短い【チェインボム】によって、多数のホルマリン漬けが並べられていたこの部屋は見る影もない程に破壊し尽くされてしまった。


 アルテフが悪足掻きで呪造獣共を生み出す度にそれらが爆弾に変えられ、さらに部屋を蹂躙していく。

 アルテフは上手く呪造獣を盾にしているため爆発によるダメージは無いが、時間が経つに連れて生み出される呪造獣の数も減り始めている。ストックが尽き始めたのだろう。


「ワシの……ワシの手駒達が……!貴様、よくもッ!【ーーーーー】ッ!」

「ッ……!」


 アルテフが呪文を唱えると、呪造獣共を蹴散らすために動き回っていた足から、ガクリと急激に力が抜ける。今度はAGIに対する呪いだろうか。


「効かねぇっての!【カースキュアー】!」


 アルテフの掛けてくる呪いは、【カースキュアー】で解呪出来る上に、事前に準備していても1度呪いをかけるのにある程度の時間が必要なのか、【カースキュアー】が間に合わないレベルで呪いを連発してくることも無い。

 もはやアルテフの呪いは脅威足りえない。


 とはいえウザイこともまた事実。


「【チェインボム】」


 大型のネズミ型呪造獣を【チェインボム】で爆弾に変えてアルテフの方に吹っ飛ばす。ネズミ型爆弾が飛んで行った方向に他の呪造獣共が気を取られた隙に、アルテフはガン無視して呪造獣共の数を減らしにかかる。


 まったく……ジャジャに比べればどいつもこいつも紙装甲に低HPで張合いが無い。ジャジャは厄介極まる敵だったが、そういった意味では最高の相手とも言えた。

 その戦闘の後に胸糞悪くさせられてまたこんな作業のような対雑魚戦……嫌気がさしてくる。


「いっそ【グラビトンウェーブ】で全部消し飛ばすか……?いや、さすがに町中でそれはまずいな」


 他よりも一回り大きい双頭の蛇を殴り飛ばし、大口開けて突っ込んで来た狼の口に重鋼鉄棍をねじ込む。その隙に背後から奇襲を仕掛けてきた蛙を回し蹴りで蹴り倒し、勢いそのままに蝙蝠を野球よろしくホームランする。


 一対多にも関わらず無双するその光景は、まさに称号が示す通り蹂躙と呼ぶにふさわしい光景だった。


「クソガキがッ!調子に乗るでないぞ!【ーーーーーーーーーーーー】ッ!」


 アルテフが今での倍以上の長さの呪文を唱えると、生き残っていた呪造獣達の身体から黒い靄が噴き出し、サイズが一回りほど大きくなる。

 アルテフの呪術による呪造獣の強化……いや、凶化と言った方がいいかもしれない。呪造獣達の瞳からは、先程までは僅かに感じられた理性の光……生物らしい反応が一切消え失せ、ただただ俺への殺意のみが滾っている。


 ここからが本番ってか……?

 だとしたら……


「本気を出すのが遅せぇよ」


 既に呪造獣の数は最初の1割にも満たず、在庫切れなのか新たに出てくる様子も無い。

 狂ったような咆哮を上げて飛びかかってきた狼型の頭蓋を叩き潰し、蛇型の吐いた毒液を【インパクトシェル】でお返しする。

 不快な鳴き声を大音量で撒き散らし始めた蛙型には重鋼鉄棍を投げ付けて黙らせ、『縮地』で瞬時に蛙型にめり込んだ重鋼鉄棍を回収し、すばしっこい鼠型も凶化の影響か単純な動きしかしてこないので、すぐに動きを見切ってすり潰す。蝙蝠型は当然のようにホームラン。


 確かに凶化によって強化はされていたが、そのどれもが攻撃力に偏った強化だったようで、動きが単純化してくれたおかげて逆に殺りやすかった。


 アルテフが呪造獣達に凶化をかけてからほんの数分で僅かに残っていた呪造獣達の姿は消え失せた。


「後はお前だけだ」


 あれだけいた手駒を全て失い、たった一人で呆然と立ち尽くすアルテフに重鋼鉄棍を向けてそう言い放つ。


 身代わり人形も使い尽くし、呪造獣達も全滅した。

 そこにいるのは前衛を失った呪術師(こうえいしょく)。しかもご自慢の呪術は効かないと来た。


 もはや、彼にトーカを止める手段は存在しない。


今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!


おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします


ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!


今後も当作品をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 主人公は前後左右囲まれてもダメージ受けないの何で? グラビトンウェーブ使えない状況だと後ろも気にしなきゃいけない筈なんだけど 耐久力ないのが1.5倍されても、ないのは変わらないし範囲攻…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ