第83話『元凶』
《レベルが上昇しました》
《レベルが上昇しました》
光となって溶け消えていくジャジャを見つめながら、無機質なインフォメーションを聞いていた。
「……ムート」
俺を庇ってムートは死んだ。プレイヤーである俺と違って、NPCであるムートは1度死んだら復活しない。
俺とムートの命の重さは対等ではなく、なのに俺は生き残ってムートは死んだ。
「すま……いや、ありがとう」
ここで謝ったら、命懸けで俺を助けてくれたムートに失礼だろう。
助けてくれた事を最大限に感謝しながら、ムートに黙祷を捧げる。
「これは……」
足元に落ちていたのは1本の弓。ムートが使っていたあの弓だ。
壊れていなかった事を素直に喜びつつ、弓を手に取る。
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『覚悟の弓』
持ち主の強い覚悟が込められた弓
かつては仲間が命を懸けて戦っている中で
1人逃げだした臆病者が使っていた弓だった
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「『覚悟の弓』……か。あいつは、乗り越えたんだな……」
油断すれば零れてきそうな涙を堪えながら、『覚悟の弓』をインベントリにしまう。
あとは、園長と村長老に結果を伝えるだけだ。
そう考え、ウインドウを閉じようとしたところでとあるアイテムが目に付いた。
ジャジャのからドロップしたアイテム達だ。ジャジャの素材に加え、ジャジャが溜め込んでいたのだろうか、いくつかの宝石類、そして『蛇装飾の石杖』や『蓄魔麟』などの気になる名前のアイテムもあったが、トーカの意識を引き止めたのは別のアイテムだった。
「『呪増核』……?」
インベントリから取り出したソレは、クリスタル型の黒い水晶だった。
さらに正確に言うのならば、水晶自体が黒色を持っているのでは無く、水晶の中でうぞうぞと蠢く黒いナニカが封じ込められていると言った方がいいだろう。
「まさか……」
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『呪増核』
人工的に作られた、呪いを封じ込めた水晶
生物の体に埋め込んで使用する
呪いを増幅し、対象を蝕むための機能を持つ
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「あのクソ野郎……」
アイテムの説明欄を読み進める程に、重鋼鉄根を握るトーカの手に力が込められていく。
「何が汚染されてしまった、だ。自分で狙ってやってんじゃねぇか」
なんの目的があったのかは知らないし、知りたくもないが、あのクソジジィはこの呪増核をジャジャに……守り神に埋め込み、呪いに蝕ませた。
そして、ジャジャと成り果てた守り神は守っていたはずの村を滅ぼした。
そして、手に負えなくなったジャジャを、俺に……プレイヤーにクエストを出す事で処分しようとしたのだろう。
「胸くそ悪いな……」
無意識に口から漏れたその声は、自分でも驚く程に冷たかった。
こんな事をして平然としている奴がいるという事実に、ふつふつと怒りが湧き上がってくる。
「……ステータス」
小さく呟き、ステータス画面を呼び出す。
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『トーカ』
ジョブ:神官
サブ:狩人
Lv. 52
HP:4750/5200
MP:20/400
STR:175(+165)
VIT:50(+60)
AGI:50(+25)
DEX:50(+30)
INT:275 (+45)
MND:50
LUK:60
SP:20
【パッシブ】
『不意打ち』『峰打ち』『手加減』
『失望』
【スキル】
『棍術Lv.10』 『弓術 Lv.6』
『罠術Lv.3』『回復魔法Lv.8』
『付与魔法Lv.8』『投擲Lv.6』
『見切りLv.8』『体術Lv.7』
『威圧Lv.7』『隠密Lv.10』『剣術Lv.3』
『軽業Lv.8』『疾走Lv.7』『調合Lv.4』
『縮地Lv.8』『鼓舞Lv.3』『暗視Lv.6』
『集中Lv.9』『料理Lv.2』『遠見Lv.7』
『瞑想Lv.6』『呪術魔法Lv.5』
『空歩Lv.8』『豪棍術Lv.1』『透明化Lv.1』
『跳躍Lv.8 (装備スキル)』
【称号】
『ウサギの天敵』『外道』
『ジャイアントキリング』
『一撃粉砕』『通り魔』『飛ばし屋』
『認められた者』『少女の救世主』
『身体破壊』『岩蜥蜴殺し』
『洞窟の天敵』『打撃好き』
『撲殺神官』『蹂躙せし者』
『狙撃手』『呪術師』
『恐怖の体現者』『危険人物』
『大量殺戮者』『災厄の権化』
『破壊の権化』『爆弾魔』『詐欺師』
『いいとこ取り』『横取り』
『初代戦棍王者』『初代呪術魔法王者』
『粘着質』『加減知らず』『邪々堂々』
【装備】
メイン
『重鋼鉄棍』
サブ
『??龍の短剣』
頭
『白狐面』
上半身
『戦神官の服(上)』
下半身
『戦神官の服(下)』
腕
『怪力の腕輪』
足
『兎脚靴』
アクセサリー
『亀のお守り』
『兎のお守り』
『劣地竜の紋章』
『なし』
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【ヒール】で減っていたHPを回復させつつ、ステータスの表記に目を落とす。
ジャジャを討伐した事でレベルが2つ上昇している。
アイツもまた呪いを使う以上、今回のように強化が封じられる可能性も十分にある。
もしそうなった場合、素のSTRの値が重要になってくる。そう考えて、レベルアップで取得した20SPを全てをSTRにつぎ込んだ。
懇願も虚しく食い殺された踊り手とその両親、逃げ切れずに死んでしまった村民、勇敢に戦って散っていった自警団の奴等、1度は逃げたが再び立ち上がり、しかしジャジャに飲まれて消えたムート。
そして、呪いに汚染されて性質を歪められた果てに俺に倒されたジャジャ。
「仇は取ってやるからな」
あのクソジジィの呪いに巻き込まれて命を落とした全員にそう告げ、トーカは蛇の森を後にした
今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!
おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします
ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!
今後も当作品をよろしくお願いします!




