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第81話『合流』

書いてる途中で突発的に湧いてきたアイディアを上手くまとめられればいいんだけど、それが出来ないと苦しむハメになる。

 

 覚悟しろ。な〜んてカッコつけてはみたものの、別になんら俺が有利になった訳では無く、ジリ貧の状態が今も続いている。

 今まで動きを制限していた要素を消しただけ、マイナスをゼロに戻しただけであって、事態は何も好転していないのだ。


「【スマッシュ】ッ!」


 ジャジャの尾による叩き付けを、【スマッシュ】を当てることで軌道を逸らす。こんな感じで、アーツももっぱら受け流し用になってしまっている。

 高所からの【グラビトンウェーブ】ならある程度のダメージは見込めるので、何発かぶち込めば倒せるだろうが……


「そんな隙は無さそうだよな……」


 幾度にも渡る不意打ち【グラビトンウェーブ】のせいで、ジャジャも警戒を強めているらしく、『跳躍』しようとすると目敏く察知して妨害してくる。


 十中八九『臆病者』の少年だろう狙撃手の矢も、初発こそ眼球に当てる事でジャジャの動きを止めることに成功していたが、今ではジャジャの動きに翻弄され、尽く鱗に弾かれている。


『ゴポシャ……』

「させるかッ!【スタンショット】ッ!」


 ジャジャの毒液吐瀉を『縮地』で懐に移動し開いた口の下顎を叩き上げる事で無理やり口を塞ぎ防ぐ。


 これは、「毒液を吐かれたら【インパクトシェル】でしか弾けないなら、そもそも吐かせなければいいじゃないか」という事で編み出した防御方法だ。


 と、ここで殴りつけたジャジャの動きが不自然に硬直する。

 たった今放った【スタンショット】による追加効果……一時的に対象の動きを止める、状態異常のスタンである。


「おっ!スタン入ったか!」


 ここでスタンが入ってくれたのはラッキーだ。

 なにげにジャジャ戦で初めてスタンが入った気がする。


「【アースクラッシュ】ッ!」


 このチャンスを無駄にする手は無い。単体で高火力の出る【アースクラッシュ】で下顎を叩き上げた事で剥き出しになったジャジャの喉を殴りつける。


『シャァ゛ッ!?』


 悲鳴にも似た声を上げながら、ジャジャはさらに仰け反った。ジャジャが仰け反りから復帰する前に『空歩』で空を蹴ってジャジャから距離を取る。


『シャ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ゛!!』


 さて次はどうやって攻撃を当てようか……そう考えていると、仰け反りから復活したジャジャが濁った咆哮を上げる。

 今までとは質の違うその咆哮を聞いて、そこでジャジャのHPか今の攻撃で5割を下回った事に気が付いた。


「塵も積もればなんとやら。ジャジャのHPも残り半分まで来たか」


 これが“まだ”半分なのか“もう”半分なのかと聞かれたら、4:6で“もう”の方だろう。

 普段のペースから考えれば“まだ”半分だし、この黒い靄(デバフ)やジャジャのステータスを考えれば“もう”半分とも言える。


『シャ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ゛!!』


 ジャジャの発する濁った音に連動するように、周囲の地面から黒い靄が滲み出した。

 周囲から滲み出た黒い靄が螺旋状に渦巻き、濁った音を撒き散らすジャジャを中心に黒い靄の渦が形成されていく。と言うよりは、吸い込まれていくと言った方が正しいのか。


 まさか回復するんじゃ……

 眷属の戦った時の経験からそう思ったが、どうやらそれは杞憂だったようだ。

 いや、もしかしたら回復してくれた方がよかったかもしれない。

 そう思える程に、吸い込まれ消えていく靄の渦の中から姿を表したジャジャの姿は強烈だった。


 辺り一帯の呪いを吸い込み、自身に呪いの証たる黒い靄を纏わせたジャジャは、先程とは比べ物にならない程のヒリつく様な強烈な威圧感を発していたのだ。


「っ……これはヤバそうだな……」


 緊張からゴクリと喉を鳴らし、無意識の内にジリっと1歩後退る。

 つつぅ……と冷たい汗がトーカの頬を伝って地面に落ち、小さな染みを作り出す。


 それが合図だったかのようにジャジャがその身をくねらせ、その黒い靄を纏わせた尾を地面に打ち付ける。


 何度も。何度も何度も。何度も何度も何度も。


 狂ったかのように、ジャジャは尾を地面に叩き付け続ける。


『シャ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ゛!!』


 1発打ち込まれる度に地面が揺れ、大地に亀裂が走る。繰り返される叩き付けに、周囲はまるで地震のように盛大に揺れ、大地を亀裂が蹂躙していく。


『シャ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ゛!!』


「くそっ!無茶苦茶に暴れやがって……!」


 毒づきながらバックステップの『縮地』でジャジャから距離を取る。

 先程の【グラビトンウェーブ】で更地になってるので動きやすくはあるのだが、いかんせん揺れが強い。

 揺れに足を取られないように必死になって更地地帯を駆け抜ける。


 木々に守られた森の中では、無防備な更地よりも揺れを木々が抑えてくれる。


「ふぅ……森の中まで来れば揺れもそこまで届いてこないな」


 地面の揺れを吸い取るかのように微かに震える大木に背を預け、ふぅ……と小さく息を吐き出す。

 毒沼地獄で散々動き回っていたせいで、精神的に疲れているので、ここで一息つけるのはありがたい。


 とはいえ、この状況もいい事ばかりではない。

 ジャジャは怒りで我を忘れているのか、トーカが森に入り込んだ後も追ってくることは無く、延々と地面を尾で叩き続けている。


 向かってこないのは助かるが、こうも無茶苦茶に暴れられては、まともに近付くことなどとても出来そうにない。この狂乱がいつまで続くのかにもよるが、最悪の場合は強硬策に出るしかなくなってしまう。


 狂乱し尾の嵐を巻き起こしているジャジャに思うように近付けずにいると、トーカの現在地の少し奥の木がガサリと揺れる。

 ジャジャの狂乱による地面の揺れが原因で揺れたのではなく、明らかに何か別の要因の揺れ方だった。


「まさか……まだ眷属が何かがいるってのか……?」


 チッっと舌打ちを打ち、ジリジリとその木に近付いてく。

 と、そこで一際大きく地面が揺れが揺れる。


「っ!危ない……」

「うわぁっ!」

「ん?」


 急な大きな揺れにバランスを崩したトーカは、木を支えにして何とか転倒を免れた。

 だが、先程の物音の主はそうも行かなかったようだ。情けない悲鳴を上げながら、木の上から人影が落ちてくる。


「ってて……」


 視線の先では、木の上から落ちてきた少年が痛みに顔をしかめながら落下時に打ち付けたのであろう尻をさすっていた。


「お前は……」


 今思えばなぜ先程その考えが浮かばなかったのか……ジャジャの狂乱を目の当たりにして少し尻込みしていたのかもしれないが、この物音を立てた者が、例の射手である可能性は十分にあったはずだ。


 もし先手必勝とばかりに殴りかかっていたら今頃『少年のスプラッタ〜粉々の弓を添えて〜』が出来ていただろう。


「あっ!トーカさん!さっきのなんなんですか!?こう……ドバーンッ!って!」

「お、おう……とりあえず。落ち着け落ち着け」


 俺の姿を認めるや否や興奮した様子で詰め寄ってくる『臆病者』の少年。そう言えば彼の名前知らないな。


「あっ、すいません」

「さっきのは【グラビトンウェーブ】っていう俺のアーツ……いや、技って言った方がいいのか……?まぁとにかくそんな感じのやつだ。ところで君の名前は?」

「俺はムートって言います。ここに来たのは、逃げ出した時はもう本当に心の底から怖かったんですが……惰性でうだうだしてた所もあったんで、今回トーカさんと会えたのはいいきっかけだと思って覚悟を決める事にしたんです」


 『臆病者』の少年改めムートは、俺が聞く前にここに来た理由を教えてくれた。覚悟を決めたと語るムートの瞳には、先程洞窟で会った時には無かった光があった。

 どうやらその気持ちは本物らしい。


「そう言えば……さっきはありがとうな。お前がジャジャの動きを止めてくれたおかげで助かった」

「いえいえ!そんな事言ったらその後のトーカさんの方が凄いっすよ!まさか森を消し飛ばすなんて……」


 ……なんだろう。このムート少年のヒーローでも見るかの様なキラキラとした眼差しで見られるとすごく申し訳なさが湧き上がってる。

 俺がやった事って実際はただの環境破壊なんだよね……


「と、とりあえずムートはこのまま狙撃でのサポートを頼む。俺は今まで通りジャジャを直接叩く」


 先程まで断続的に響いていた轟音と地の揺れが収まってきている。ジャジャの狂乱モードも終わりが近いのだろう。

 謎の罪悪感から逃れるように半ば強引に話題を変える。


「分かりました!とは言っても俺の矢はジャジャに全然効かないんですけどね……」

「安心しろ、俺の矢も効かん。まぁこれで安心していいのかは分からないけどな。体を狙っても鱗に阻まれて届かないけど、上手く目や口内に当てればある程度のダメージは見込めるはずだ」


 ムートに「頼んだぞ」と言い残し、トーカはジャジャの元に向かう。

 既に轟音と揺れは収まっている。だと言うのに、1歩進む事に空気が重く張り詰めて行くのが分かる。


 戦いが再開したら、もう他の事を考えている余裕は無くなるだろう。これが、ジャジャに向かって行っているこの瞬間が本当に最後の余裕ある時間となる。

 1度大きく深呼吸をする。意識して呼吸のペースを普段通りに整える。重鋼鉄棍を握り直し、1度2度振って感覚を確かめる。


 大丈夫。普段通りに動かせる。

 ついに、森を抜けた。【グラビトンウェーブ】で更地にされた土地は、ジャジャの狂乱の影響で至る所が陥没し、所々には大きな亀裂も走っている。


 荒れ果てている。そんな表現がピッタリなその場所で、ジャジャは先程までの狂乱が嘘のように静かにこちらを見据えて荒れ果てた更地の中央に鎮座していた。


 トーカとジャジャ、お互いの視線がぶつかる。お互いがお互いの敵をハッキリと認識し、次の瞬間、1人と1匹は自身の持てる最大の速さで動き出していた。


ジャジャ戦グダって来たな……って思ってる方、安心してください。ジャジャ戦は今回を覗いてあと1〜2話の予定です。


今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!


おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします


ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!


今後も当作品をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 今回を覗く…? [一言] 環境破壊だろうがなんだろうが勝てば官軍だから…
[一言] 重鋼鉄棍アーツ使えるのか使えないのか混乱してきた.... 69話の装備制限とジャジャの呪いのステータス固定、 いま重鋼鉄棍アーツ使えないはず..?
[気になる点] いつの間にメイス重鋼鉄棍に持ち替えたんですか 呪いで装備条件満たせないから 鉄の棍棒に持ち替えてたんじゃないですか? 耐久値気になるとかで持ち替えたのなら 書き足しといた方がいいと思い…
2019/11/28 11:42 デジャヴの神様
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