第77話『二者択一』
これこれ!
書いてる内に気が付いたらアイディアが湧いてきて初期構想からズレてくけど筆が進むこの感覚!
ようやく感覚が戻って来たなぁと書いてて楽しかったです(満足)
「っつ……投石も数喰らえば結構なダメージなんだな」
洞窟を後にしたトーカは、『臆病者』の少年の投石で受けたダメージを回復しつつ遠巻きにジャジャを見据える。
結構な数を喰らっていたとはいえ、投石だけでHPを3割も減らされるとは……これは『投擲』の練習をした方がいいかもしれない。緊急時には立派な武器になるだろうしな。
トーカは軽く屈伸などをして体を解しながら、先程のジャジャとの戦闘を思い起こし、一向に消える様子のない黒い靄に恨めしげな視線を向ける。
時間経過で回復しない所を見るとこの靄のデバフは戦闘中は永続っぽいな……
スキルや魔法、称号での強化どころか装備によるステータス追加も無効化されるせいで素のSTRでしか殴れないのがキツすぎる。
特に俺の戦闘スタイルは『付与魔法』と称号に物を言わせたバカ高いSTRによる一撃必殺が主だからな……くっそ、とことんジャジャとは相性が悪い。
「まぁ、いつまでもうだうだ言ってても仕方ないんだけどな」
トーカは重鋼鉄棍をインベントリにしまうと、大地を蹴り『跳躍』と『空歩』による高速移動でジャジャの元へ向かう。
ちなみに、わざわざ武器をインベントリにしまった訳は、重鋼鉄棍の最大の特徴とも言えるその重さにある。あまりに重い重鋼鉄棍を装備した状態では、『跳躍』込みでも大した高さまで跳ぶ事が出来ないのだ。
というか、そもそも称号などの強化がされていない状態だと重鋼鉄棍は装備できない。
《『隠密』のレベルが上昇しました》
《派生スキルを取得可能です》
「っと、このタイミングで上がったか」
半ば程まで来ていた空中移動を中断し、1度森の中に降り立つ。
距離と『隠密』のおかげか、ジャジャにはまだ気付かれていない。
この隙に派生スキルとやらを確認するとしよう。戦闘が始まってからは悠長にウィンドウなんて開いていられないからな。
空中移動の道中に運良く『隠密』のスキルレベルが最大まで上がったことで、ジャジャとの戦闘前に派生スキルを取得出来る。これはデカい。
そもそもの話派生スキルってなんぞやと言うと、見てわかる通りスキルのレベルをMAXまで上げた時に取得出来るスキルの事だ。
派生スキルの派生スキルがあるのかは不明。
そんでもって今回取得可能な『隠密』の派生スキルは『潜影』と『透明化』の2つ。
なんとなく前者はフィローが好きそうな名前だなってのと後者はカメレオンが真っ先に浮かんだってのがスキル名を見た感じの第一印象。
とりあえず名前からしてヤバそうなのは無さそうだ。いや、これは俺の称号がおかしいだけなんだろう。
「取得出来るのはどちらか片方だけか……」
今回取得出来る『潜影』と『透明化』は派生スキルと言うだけあってどちらのスキルも素晴らしい性能をしている。
1つ目の『潜影』は読んで字のごとく“影に潜れる”というスキルで、最大使用可能時間は『スキルレベル』分で、任意のタイミングで外に出る事も出来る。そして再使用には使用時間と同時間のCTが必要。
繋がっている影の中なら自由に移動出来るので、森の中や洞窟の中など、影の多い場所ではそうとう活躍する事だろう。
2つ目『透明化』も読んで字のごとく“透明になれる”というスキル。
どちらも……というか《EBO》のスキルは基本的に読んで字のごとくの物が多い。まぁ中にはスキル名からは効果が想像出来ないのもあるけどな。
っと、話を戻そう。肝心の『透明化』の効果時間はというと、『スキルレベル×10』秒。
もう片方の派生スキルである『潜影』と比べると随分短く感じるが……スキルレベル1の時点で1分間も透明になられたらさすがに強すぎるので妥当なところだとは思う。
こちらも任意解除が可能で、再使用にはどんなに短い使用時間だろうと関係なく1時間のCTが必要。
そして隠密の派生だからだろうか、どちらのスキルも『不意打ち』と相性がいい。つまり、俺にとっても相性最高のスキルなのだ。
「迷うな……そうだ、ここで選ばなかった方ってもう取得出来ないのか……?」
スキルページをよく見ても派生スキルの再取得の可否については書いてなかった。再取得は不可能と考えて選んだ方がいいだろう。
俺のバトルスタイルを考えると……短時間で再使用が可能な『潜影』よりも1時間に1回だけど確実に相手を欺ける『透明化』の方が相性がいい気はする。
今回みたいな1対1はもちろんだが、1対多でも【グラビトンウェーブ】による範囲攻撃がある。称号やスキルの諸々を考えると、やはり確実に初撃は1番デカい一撃をかましたい。
「やっぱり『透明化』だな。『潜影』も捨て難いが……いやいや、男に二言は無い!『透明化』だ!」
迷いを振り切る様にを振る。ここでうだうだ言い出したら永遠に決められないぞ。変に迷わないで決めた事を貫き通そう!
《スキル『透明化』を習得しました》
スキルページから『透明化』を選択すると、スキル欄にしっかりと『透明化Lv.1』の文字が刻まれる。
よし、これでさらに俺の初手不意打ちが凶悪になった。姿を消せるならそうとう鋭い相手でもない限り避けられることはないだろう。
一発限定とは言え喰らったらほぼ即死の不可視の一撃を放つ神官とかもう俺がどこ向かってんのか自分でもわっかんねぇや。
「そういやジャジャとの戦闘はどういう扱いになってるんだ……?」
この靄がまだまとわりついてきてるってことは戦闘は継続してると考えていいのか?にしては吹っ飛ばされてジャジャとは結構な距離が空いたし、『臆病者』と会話もしてる。
これは……どっちだ?仮に戦闘が1度途切れたとするとまた初手不意打ちでバカみたいな威力が出せるが、あの黒い靄によるダメージ無効化も復活しているかもしれないし、せっかく1割程削ったジャジャのHPも回復している可能性がある。
一方、戦闘が継続してるなら、不意打ちも初撃ほどの威力が出ないのでひたすらちまちま削っていく必要がある。
………………あれ?戦闘が継続していようがしていまいが戦闘再開の一撃は不意打ちで確定じゃね?ならどっちでも関係無くね?
……なんだ、悩む必要無かったわ。とりあえず不意打ちブッパすればいいだけだし。
「よっし、行くか!」
結局不意打ちブッパするんだから関係無いね!と脳筋思考に振り切ったトーカは、再び『跳躍』と『空歩』による空中移動を開始する。
派生スキルのごたごたで1度停止したとはいえ、既にジャジャのいる場所にそうとう近かったため、数秒もしないうちにジャジャがトーカの存在に気付く。
「よぉジャジャ。俺は帰ってきたぞ!」
『シャァァァァァァァァァァァァッ!』
トーカはジャジャのキルゾーン1歩手前に降り立つと、高らかに声を上る。
その声に返すように、ジャジャも鋭く殺気のこもった声を上げる。
好戦的なジャジャの反応に、トーカはニヤリと口角を上げると、ジャジャへ向かって駆け出す。
『シャァァァ……ッ!?』
応戦するように大きく顎を開いたジャジャの声が、不自然に途切れる。
だがそれも仕方の無い事だろう。自分に向かって来ていたはずの相手が、突如として消えてしまったのだから。
一瞬たりとも目を離してはいないのに目の前から敵の姿が消えるという理解不能な状態にジャジャの動きは、一瞬だけ硬直する。
そして、その一瞬が命取りだ。
直後、ジャジャの頭部にとてつもない衝撃が襲いかかる。
まるでその瞬間を見計らっていたかのようなタイミングで訪れた不意打ちの一撃に、さすがのジャジャも反応する事が出来ない。
結果、ジャジャの巨体はそのまま地面に叩き付けられ、周囲に盛大に土煙を巻き上げる事となった。
そう言えば1話につきだいたい文字数は2千後半から3千前半を目安に書いてるんですが、そうするとやはりひとつの戦闘で話数が多くなってしまうんですよね。それって読者的にはどうなんですかね?
意見を頂けるとありがたいです。
今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!
おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします
ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!
今後も当作品をよろしくお願いします!




