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第74話『堕ちた守り神』

「小説を読んでると頭の中でイメージ化されたアニメーションみたいなの流れない?」って聞くと「分かる」って人と「はっ?」って人に分かれるから大抵はそれで本読む人か分かる(雑談)

 

 ーー堅い。


 それが何発かジャジャに打ち込んだトーカの感想だった。


 あまりに唐突な開戦から既に何発も【スマッシュ】と、【スマッシュ】代わりの【チェインボム】を打っているが、ジャジャのHPバーの減少は決してかんばしいと言えるものでは無かった。


 確かに【スマッシュ】や【チェインボム】は『棍術』最弱のアーツだが、称号によって最終的に650を超えるSTRをほこり、更に『付与魔法』によって自身のSTRとINTを強化出来るトーカが使うとなれば話は別だ。


 トーカに限って言えばアーツを使うまでもなく大抵のザコ敵は消し飛び、ボスクラスであっても相当の痛手は免れないだろう。


 そんな超火力をほこるトーカの攻撃が大したダメージになっていないのは、ジャジャの防御力が高いのか、それともHPが異様に多いのか、はたまたその両方か。あるいは……


「この黒い靄(デバフ)のせいなのか……だな」


 今現在、トーカの体には初撃で爆ぜたジャジャが纏っていた黒い靄と同じ様な靄がまとわりついている。爆ぜた際に吹き散った靄の一部がそのままトーカにまとわりついたのだ。

 だからと言ってこの靄がトーカに味方するかと言うと……そんな事は無い。


 トーカは自身に絡み付く黒い靄を振り払う様に重鋼鉄棍を2度3度振り抜き、予想出来ていたとはいえそれでも絡み付いてくる靄に忌々しげに舌打ちを放つ。


 自身のHPバーの上に見えるは黒枠のデバフアイコン。

 ただ、通常ならそのデバフ内容にそったイラストが乗っているはずのそのアイコンは黒一色に塗り潰されており、呪い系統である事は間違いないだろうが、ステータスを開いて確認している余裕なんて無いので、見た目だけではどのようなデバフがかかっているのか分からない。


『付与魔法』で自身にかけた本来は白枠なはずのバフアイコンが灰色にくすんでいる所をみると、バフ妨害系のデバフなのは間違いないとは思うが……


「だからってバフが盛れない程度でここまで極端に火力が落ちるはずはないが……」


『棍術』の高威力アースである【アースクラッシュ】ですらほんのわずかにしか減少しないジャジャのHPバーを見てげんなりしたように呟くトーカの真横にジャジャの極太の尾が叩き付けられる。


 体勢を崩しながらも致死の一撃を紙一重で避けたトーカはそのまま真横にあるジャジャの尻尾へと【ハイスマッシュ】を叩き込む。


 ごぉぉんっ!というとても生物の体から発せられる音とは思えない、まるで鐘を突いた時のような重厚な音を響かせながら重鋼鉄棍が軽く弾かれる。


「くっそ……どんだけ堅いんだよ……!」


 歯を食いしばり、痺れる手で重鋼鉄棍を握り締め直す。

 アーツを使わない攻撃はほぼほぼダメージにはならず、アーツであっても大したダメージは見込めない。


 大抵の敵をその火力に物を言わせて消し飛ばしてきたトーカにとって、ここまでダメージを与えられない敵は初めてだった。

 それこそ、現銀行係のロッ君ことフィールドボスのロックゴーレムに初めて挑んだ時でさえもう少しまともにダメージを与えられていただろう。


 今のところはジャジャの攻撃パターンは尻尾でのなぎ払いや叩き潰し、頭部に接近した時の噛み付きの3種類なので注意していれば躱すことはそう難しくはない。


 とは言え、食らったら一撃でアウトなのは哀れな先達(周囲の木や岩、地面など)を見れば一目瞭然だし、攻撃パターンに関してもいつまでもそうとは限らない……と言うかHPが一定以上減れば攻撃の種類は増えるだろう。


「ここまで絶望的なのは初めてだな……」


 1発でも喰らえば即死する様な攻撃がデフォルトでこちらの攻撃はほぼ効かないと来た。さらにはその巨体と反撃のせいで外道の効果が乗る頭部への攻撃は困難を極める。そのうえ視点が高所にあるため背後への攻撃も難しい。


 間違いなく今まで《EBO》をプレイして来た中で最も強い敵だ。断言出来る。

 勝てるビジョンがまるで見えない、綱渡りのような絶望的な状況。


 一撃一撃が即死クラスの攻撃力に、こちらの攻撃はほぼ通さない鉄壁の防御力も併せ持つ。

 視野は広く俺を見失わず、撹乱しようにも『威圧』や『隠密』もほぼ効果無し。


 甘く見積っても絶望的以外の言葉が見つからない様な状況。

 なのに……なぜだろう。なぜここまで心が踊るのだろうか。


「【インパクトショット】ォォッ!」


 全身の捻りを加えた重い一撃がいとも容易く弾かれ、お返しとばかりになぎ払われる極太の尾による一撃を『跳躍』による飛び退きで回避する。

 目の前を通り過ぎていく『死』に、首筋をチリチリとした痺れが通り抜ける。


 楽しくてしょうがない。

 攻撃が弾かれる度に次はより重い、より強い一撃をお見舞いしてやろうと心が踊り、攻撃を避ける度に命を繋いだ高揚感に心が震える。


 村を滅ぼした化物だとか、呪いに蝕まれた哀れな被害者だとか、クエストだとか、他の事は全てがどうでもいい。

 この戦いが始まる前はその事にも心を砕いていたし、戦いが終わった後も同じ事だろう。


 ただ、今この時だけはトーカは強者と戦うという純粋な喜びに満たされていた。この絶望的な状況を、心から楽しんでいた。


 最近は大抵の敵が一撃で消し飛び、どんな敵でも2発以上耐える事は無い。それこそフィールドボスクラスの敵ですら簡単に消し飛ぶ。

 その事に、どこか退屈さを感じていたトーカがこの戦いに高揚感を覚えるのも仕方の無い事だろう。


 普段の生活では決してしないような、瞬や明楽が見たら心底驚く様な攻撃的な笑みを浮かべながらトーカはジャジャに立ち向かう。

 こんな化物に立ち向かった村の戦士達を心から尊敬するし、逃げ出してしまう者がいたのも仕方ないだろう。


 そんな事を考えながら、トーカはジャジャに【スマッシュ】を打ち込む。全く効いていない様子のジャジャが反撃に放つ尾による叩き付けの一撃を、尾の側面を思いっ切り殴り付ける事で軌道をそらして回避する。


 巻き上がった土煙に身を隠しながら、全力の『隠密』でもってジャジャの背後に回り込む。当然ジャジャには直ぐに気付かれたが、迎撃の出だしにほんのわずかの遅れが生じた。


 ほんの1秒前まで俺がいた空間をジャジャの噛み付きが抉りとっていく。食らったらひとたまりもないだろうが……当たらなければノーダメージだ。


 そして噛み付きと言う事は当然顔がすぐ真横にあるわけで……


「【アースクラッシュ】ッ!」


 高威力の一撃をジャジャの目玉にぶち込む。


『シャァァァァァァッ!?』


 眼球に重鋼鉄棍をぶち込まれた痛みに、ジャジャは思わず仰け反り叫び声を上げる。

 そこでようやくジャジャのHPが目に見えて減少する。全体から見れば僅かな量ではあるが、今までのダメージを見る限り確かな手応えを感じ取ることができる。


 目玉を殴り付けるとかいう容赦の欠片もない攻撃にバッチリと『外道』が反応し、つい最近手に入れたばかりの『邪々堂々』もしっかりと仕事をした。

 更に『眼球』という鱗による防壁が無い箇所に攻撃する事で、トーカを悩ませていたジャジャの防御力という点についてもほぼスルーされた。


 それらによって、トーカは戦闘開始からここまで来てようやくダメージらしいダメージをジャジャに入れる事に成功したのだ。


「やっと1発いいのが入ったな……!」


 超重量の武器を空中で振り回した事で体勢を崩しながらも、トーカはなんとか無事に地面に着地する。


 ようやくまともなダメージを入れられた事で勢い付いたトーカを、仰け反りから回復したジャジャは片目で忌々しげに睨み付け……次の瞬間。


「っ……!?」


 トーカの体がまるで冗談の様に簡単に、とてつもない勢いで吹き飛ばされた。


称号達のせいなのかトーカって攻撃がナチュラルに外道になってるよね……


今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!


おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします


ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!


今後も当作品をよろしくお願いします!

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