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第70話『臆病者の弓』

 

「こりゃひでぇな……」


 森を歩き続ける事実に2時間。トーカは、ついに件の『ジャジャ』に滅ぼされた村と思しき廃村にたどり着いた。


 しかし、その村はトーカの想像以上に荒れ果てており、事前に言われていなければ最近まで人が住んでいたとは思えないような有り様だった。


 村をぐるっと囲っていたであろう柵は無残にもなぎ倒され、家屋はほぼ全てが倒壊し、畑もぐちゃぐちゃに荒らされている。


 それこそ巨大な怪物でも暴れたかのような惨状を前にトーカは少しの間立ち尽くしてしまう。


 もう本来の役目を果たせていない柵達の中に、出入口になっていたであろう開閉式の柵を見つけたので、そこから入ろうと開閉式の柵に手をかける。

 しかし、その柵はたいした力も込めていないのにバギッと音を立てて倒れてしまう。思っていた以上に損耗が激しいようだ。

 そんな柵を越えて村の中に入ると、より一層廃村の惨状が際立って見える。


 家屋の残骸は不自然に飛び散っていて、自然に倒壊したのではなく何者かが明確な意図を持って壊したのが分かるし、畑も作物が食い荒らされた様子が見て取れる。

 さらには、村のあちこちに巨大な生物が這いずり回ったような跡が残されている。十中八九この跡の主が『ジャジャ』なのだろう。

 名前やエリア名、その他の情報からなんとなく想像出来てはいたが、やはり『ジャジャ』と言うのは巨大な蛇のようだ。


「これじゃ生存者は期待出来そうに無いか……」


 倒壊した家屋を確認しながら村の中央に足を向ける。

 園長から聞いた話では、村の中央に小さな広場があるとの事なので、とりあえずはその広場を目指して進んでゆく。


 今回の目的は、大まかに分けて2つ。


 1つ目は生存者の保護ないし遺品の回収。


 これは、自警団として『ジャジャ』に立ち向かって行った者達や、逃げ遅れた者達、そして最初の被害者となった踊り手やその家族など意外と対象者が多い。


 2つ目は『ジャジャ』の討伐ないし情報収集。


 これは、あの呪術師の老人からのクエストでもあるし、何より個人的に果たしたい目標だ。

 とはいえ、この村の惨状を見る限り『ジャジャ』はボスクラス……下手したらレイドクラスの可能性がある。

 1人で倒せそうなレベルならいいが、もし無理そうならカレットとリクルスに声をかけよう。強敵との戦いとなればあの二人も飛び付くはずだ。

 それでも勝てないようなら……その時はその時だ。他の助っ人を探すでもいいし、レベルを上げて強くなってから倒してもいい。やりようはいくらでもあるはずだ。


「これは……」


 村はあまり広くなかったようで少し歩くとすぐに開けた場所に出た。

 そこにあったのは、広場の中央に設置された噴水を踏み潰して鎮座する、巨大な漆黒の蛇……の抜け殻。


 巨大な影が視界に入った瞬間に思わず取っていた臨戦態勢を解いて、その抜け殻を調べていく。

 それは、抜け殻とは思えない程に硬質な手触りで、小突くとコンコンと音が響く。そんな抜け殻が、どう脱皮したのかとぐろを巻いた姿で鎮座している。


 とぐろの頂点……頭部に相当する箇所の抜け殻が無く、小さな破片が周囲に散らばっている所を見ると、とぐろを巻いた状態で脱皮する皮膚を硬質化させてから頭部の殻を割って外に出ていった、という事だろうか。

 現実の蛇にそんな脱皮の仕方が出来るのかは知らないが、奴さんは出来るのだろう。


「というか……『ジャジャ』ってのはこんなデカいのか……」


 サイズとしてはイベントの時に交戦したバジリスクと同じくらいだろうか。そんなサイズの蛇が村を襲ったとなると……ひとたまりもなかっただろう。


「お、この抜け殻ってアイテム扱いなのか」


 何とはなしに手に取った抜け殻の破片だったが、物は試しとインベントリに収納しようとした所、簡単に入ってしまった。


 =========================


『蛇神の抜け殻の欠片《汚染》』

 呪いに汚染された蛇神の抜け殻の一部

 微量だが呪いを宿している


 =========================


「これで確定……だな」


『ジャジャ』の正体はアルテフの呪いによって汚染されたこの村の……いや、この森の守り神で確定でいいだろう。

 まぁ元々疑う余地はなかったが……


「なにやってくれてんだよあの爺さんは……」


 ボヤきながら散らばっている抜け殻の欠片を回収していく。

 クエスト的に何かに必要かもしれないし、そうでなくても素材として使えるかもしれない。見逃す手はないだろう。


 落ちていた欠片を全て拾い終えると、本格的に探索を開始する。

 園長や村の男衆が『ジャジャ』と交戦したのは、村の近くにある森が少し開けた場所らしいので、その方面に向かいつつ倒壊した建物などを調べていく。


 小一時間ほどの探索で名前の刻まれたペアリングの片割れや生前身につけていたであろうアクセサリーなど、いくつか遺品になりそうな物を発見し、さらには所々に血が乾いたような跡も何ヶ所か見かけた。


 そうこうしているうちに、村を囲っていた柵の残骸を超えて木々が開けて広場のようになっている場所に出た。


「ここが園長達が『ジャジャ』と戦った場所か……」


 その広場の荒れようは酷いものだった。


 村の惨状とは比べ物にならない程に荒れ果てた地面は所々に掘り返された箇所や余程強い衝撃を与えられたのか陥没している箇所があり、木々がなぎ倒された事で広場になっている場所が広がっている。


 さらには、所々に槍や剣、弓や盾などの武具の残骸が転がっていて、ここで起こったであろう戦いの激しさを物語っていた。


「この武具も遺品……って事なんだろうな」


 試しに剣を回収してみると、アイテム名に『遺志の剣』と表示された。他の武器にしても、槍ならば『遺志の槍』弓ならば『遺志の弓』盾ならば『遺志の盾』といったふうに全て『遺志の〜』という名を与えられていた。


 ちなみに、アイテムの説明は『村のために戦った勇敢な者達の遺志を宿した〜』となっている。

『〜』の部分には剣や弓などのアイテム名に対応する武具の名が入るが、これらの『遺志』はあくまで遺品扱いらしく、装備する事は出来ないようだ。


 依頼とは関係無しに勇敢に戦い、散って逝った者達に敬意を込めて1つ残らず回収しようと広場に落ちている『遺志』を全て回収していく。


 そんな中、無数の『遺志』の中に、1つだけ『遺志』では無いが武器が紛れている事に気が付いた。

 だが、そのアイテムは『遺志』とは違ってはお世辞にも名誉な名を与えられている訳では無かった。


 その武器の名を見て、少しの間黙り込んでいたトーカの口から小さく声が漏れる。


「臆病者……ねぇ」


 =========================


『臆病者の弓』

 仲間が命を懸けて戦っている中で

 1人逃げだしてしまった臆病者の弓


 =========================


 当時の状況がわからないからなんとも言えないが……酷い言われようだな。とは言え、まだこの『臆病者』は生きてる可能性がある。


 まずはこの『臆病者』とやらを探すとするか。


今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!


おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします


ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!


今後も当作品をよろしくお願いします!

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