第69話『蛇の森』
今回からスランプ後に書いたストック分になるのでもしかしたら作品の雰囲気が変わってるかもしれません
木々が青々と生い茂る森の中に、断続的に木々を揺らす轟音が響いていた。
『シャァァァァッ!』
「ひとぉーつ」
ドゴシャッ!
『シャァァァァッ!』
「ふたぁーつ」
ドゴシャッ!
『シャァァァァッ!』
「みぃーっつ」
ドゴシャッ!
『シャァァァァッ!』
「よぉーっつ」
ドゴシャッ!
『シャァァァァッ!』
「いつぅーつ」
ドゴシャッ!
『シャァァァァッ!』
「むぅーっつ」
ドゴシャッ!
『『『『シャァァァァッ!』』』』
「ななぁー……って……多いッ!!【グラビトンウェーブ】ッ!」
ドゴォォォォォォンッ!
声の主を起点に周囲5m程の地面がクレーターのように陥没し、その場所に生えていた木々と、ついでにその人物に襲い掛かっていた者達が弾け飛ぶ。
局地的に更地になった元森の中心部で、土埃を落とすようにメイスを数回左右に振っている人物……トーカは襲ってきていた敵が一通り片付いたのを確認すると、小さく息を吐き出す。
「ふぅ……片付いたか。にしても数が多いな……何回目だ?」
トーカが現在いる場所は、『ジャジャ』に滅ぼされた村があり、なおかつ先程の老人が呪術で汚染してしまった守り神がいるという『蛇の森』という名のエリアである。
この森は、量こそ多いもののどこか元気の無い印象を与える木々が生い茂る、その名の通り蛇系の敵が多く出現するエリアとなっている。
トーカがこの森に入ってから既に1時間近くが経過しているが、異様にエンカウント率が高いのだ。
今回のような5体以上の群れとの遭遇が5回、それ以下のグループとの遭遇が8回、単騎との遭遇が実に13回とこの1時間で計26回総数54匹もの蛇と遭遇し、その度に屠ってきた。約2分に1回のペースで敵と遭遇しているこの状況は、異常だと言わざるを得ないのではないだろうか。
ステータス的には1対多は向いているとはいえ、こうも連戦続きでは精神的な疲労も溜まるというものだ。
ソロプレイが大変ならば幼馴染2人を誘えばいいのだが……
「カレットとリクルスもやる事あるって言ってたし。ってか最近あの二人よく一緒にいるな……あれ?もしかして俺、ハブられてる?」
いやいやいや、無い無い。あの二人に限ってそんな事は無い……はず。
「そういや一緒にやろうって誘われたのにソロプレイばっかだったからな……愛想尽かされたか?」
うわぁ……やっちまったかなぁ……今度謝っとこう。
『シャァァァァッ!』
トーカがどんなにブルーな気分になっていたとしても、敵にとってはそんな事は関係ない。
「はぁ……」
そして、どんなに気分がブルーな所を狙われても、トーカにとってはそんな事は関係ない。
バックステップでの『縮地』で飛びかかってきた蛇の後ろに回り込むと、標的を見失った蛇の頭部にメイスを叩き込む。
称号と付与魔法によって強化されたSTRから繰り出される高威力の一撃が称号やスキルでさらに強化される事で、無造作に放った一撃ですら雑魚相手には必殺の一撃となる。
そんなものを頭部にくらった蛇は頭部が爆ぜ、少し遅れて胴体も光となって消えてゆく。
「おぉ柔い柔い。亀甲棍が壊れて一時はどうなるかと思ったが……これなら十分だな」
天に召されていく蛇だった物を眺めながら、トーカは呟いた。
トーカが今装備している武器は、見た目こそ市販品の『鉄のメイス』と変わらないものの放つ存在感は市販品所の比ではない。
それもそのはず。今トーカが装備しているのは、『重鉄鋼棍』という市販品とは一線を画す性能の武器である。
メイに依頼して作って貰ったこの『重鋼鉄棍』はただひたすらに『重く、硬く』をスタンスに作られており、生半可なSTRでは装備する事はおろか、持ち上げる事も出来ない程に重いという代物だ。
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『重鋼鉄棍』
硬さと重さを突き詰めて作られた戦棍
生半可な力では持つことすら出来ない
装備条件……STR300以上
STR+30
製作者【メイ】
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トーカの素のSTRでは重鉄鋼棍を使う事は出来ないのだが、『撲殺神官』の効果によってINT分の数値がSTRに加算されるため、装備する事が出来ている。
《EBO》における装備条件とは、『システム的に装備できるか否か』ではなく『装備したとして扱えるかどうか』を表しており、装備条件を満たしていない場合は装備こそできるものの、ステータス的な恩恵も得られず、アーツも使えなくなる。
さらに言えばまともに振るうことも出来なくなるので、装備条件を満たしていない武器や防具は装備するだけ無駄でしかないという事だ。
とはいえ、装備条件を満たしていなくても装備するだけなら不可能ではない。
つまり、装備条件を満たしていなくても装備するだけなら可能であり、『撲殺神官』の発動条件は『打撃系武器装備時』であるため、装備しているだけで発動するのだ。
それによってSTRにINTの数値が加算され、その結果STRが300を超える。そうすれば重鉄鋼棍の装備条件を満たすため、恩恵も得られるしアーツも使用可能になるという寸法だ。
まぁ今のトーカなら亀甲棍が壊れてからの繋ぎに使っていた鉄のメイスでも今のと同じ事は出来るのだが……それはそれ、これはこれである。
「もう結構奥まで来たし、そろそろなんかあってもいいと思うんだけどな……」
孤児院の園長から村があったという場所は聞いているので、その方角に向かって進んではいるものの、1時間以上歩き続けて未だに蛇しか出てこないというのはどういう事だろうか。
今トーカが歩いているのは、何度も人の往来があったようでその部分だけ土が踏み固められてできた道のような場所で、その道を道なりに進んでいる。
「ま、進むしかない……かッ!」
嘆いていても何か変化がある訳では無い。
何か変化を求めるなら進むしかないのだ。後ろから飛びかかってきた蛇を振り向きざまにフルスイングでかっ飛ばしてから、奥へ向かって歩いていく。
そして、トーカが件の村と思しき廃村にたどり着いたのは、それからさらに1時間後の事だった。
今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!
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今後も当作品をよろしくお願いします!




