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閑話 ミッション・イン・クリスマス

メリークリスマス(リア充爆発しろ)

クリスマス閑話の後編をどうぞ


本編は……しばしお待ちを


慌てて付いてきた瞬と一緒に階段を上り、明楽の部屋のドアノブに手をかける。

 ケーキを食べている時間や話していた時間もあるし、何より明楽の父親から報告があったので、明楽がもう部屋に戻って寝ている事は確実だ。

 護はプレゼントを持っているため、扉を開けるのは瞬が担当する事になった。


「音を立てないように静かにな」

「分かってるって。って……ん?」


 扉を開けようとした瞬だったが、途中で何かに引っかかったように動きを止めた。疑問に思ったら護が声をかける前に瞬は扉を静かに閉めると、護に向かって首を振る。


「なんか引っかかってる。もしかしたら……っていうか十中八九何か仕掛けられてる」

「おぅ……マジか」


 神崎家に連れて帰ってきた時は明楽はもう半分以上寝ていたが……それでも寝る前に何か仕掛けたようだ。


「明楽のあの様子じゃそこまで大掛かりじゃ無いとは思うけど……」

「それでも開けたら明楽が起きるような仕掛けがあるって考えた方がいいだろうな」

「だよな。さて、どうしたものか……」


 入らないでと言った上で万が一に備えて入ってこようとした時用のトラップを仕掛けておくとは……

 もしサンタさんが実在したとして扉を開けて入ってくるんだったらどうするつもりなのか……まぁ明楽の事だからそれはそれでサンタさんを見れてラッキーとでも思うのだろう。


「部屋に入れないんじゃどうしようも無いな……扉の前に置いといたら明楽の中で『サンタさん=親』が成立しそうだしな……」


 しばらくの間、2人はああでもないこうでもないと明楽が仕掛けたトラップを突破する方法を考えていたが、明楽が仕掛けたトラップはシンプルが故に付け入る隙が無く、どんなに考えても扉から入るのは無理という結論しか出なかった。


「あれ?アイツ……もしかしたら!」


 護が頭を悩ませていると、瞬が何かを思い付いたらしく護に「ここで待ってろ。上手く行けば入れるかもしれない」と伝えると、足早に階段を降りて行ってしまった。


 一瞬追いかけようか迷った護だが、瞬の思い付きに全く心当たりが無いので、おとなしく瞬を待つ事にする。


 護がプレゼントを抱えたまま1人で部屋の前に立ち尽くすこと数分。

 明楽の部屋から小さく物音がしたかと思うと、ゆっくりと扉が開き始める。明楽が起きてしまったのかと、護は慌てて扉の裏側に回り込んだが、扉の影から顔を出したのは明楽では無く数分前にどこかに行ってしまった瞬だった。


「やっぱりトラップが仕掛けてあったぞ。音立てないように静かに入ってこい」

「あ、あぁ……お前はどうやって明楽の部屋に入ったんだ?」

「あいつベランダから護の部屋に来ただろ?でも帰りは護がおぶってったから下からだ」

「なるほど……それで窓が開いてるかもしれないと思ったって事か」

「そ、結果は大当たりビンゴだ」


 護は、一瞬この幸運を喜ぶ前に防犯的に考えてかなり危なかったこの状況に危機感を抱くべきか迷ったが、とりあえず結果オーライという事にしておいた。聖夜の奇跡が起こったのだ。窓の鍵は帰りに閉めていけばいい。


 ちなみに、明楽が仕掛けたトラップは、ドアノブと防犯ブザーを紐で括りつけておくという簡易的な警報装置だった。

 瞬が違和感に気付かずに扉を開けていたら、ドアノブに括り付けられた紐が防犯ブザーのピンを引っ張り、どこで集めたのか計20個にもなる防犯ブザーが一斉に鳴り響く事になっただろう。すんでのところで回避していた極大の危機に、護は思わず息を呑んだ。


「後は枕元にプレゼントを置いて帰るだけだな……」

「あぁ、帰りはどうする?」

「窓を開けてくのも危険だし、普通に扉からでいいだろ」


 瞬と小声でやり取りしながら明楽の枕元にプレゼントをそっと置く。

 ミッションコンプリート。後はバレないように帰るだけだ。


 だが……“お家に帰るまでが遠足”という言葉があるように、何事も最後まで油断してはいけないのだ。もちろんこのミッションもまだ終わっていない。

 明楽にバレずに帰らなければミッション達成とは言えない。


 そんな2人を嘲笑うように、プレゼントを枕元に置いた時の僅かな衝撃が明楽の目を覚まさせてしまう。

 明楽が起きる兆候であるんんっ……という小さな呻き声を上げ、寝返りを打つと目を擦り始める。明楽は目を覚ます1歩手前だ。


 しかしこの時の護と瞬はトラップを掻い潜り無事にプレゼントを届けられた事で完全に油断していた。

 明楽の小さな声に気付いて急いで部屋を出れば明楽が完全に目を覚ます前に間に合ったかもしれない。だが、2人が明楽の異常に気付いたのは明楽が体を起こしかけたタイミングであった。


 これではもう間に合わない。そう判断した2人は、咄嗟の判断で身を隠すための場所を見つけ出し、そこへ駆け込んだ。


 瞬は明楽が寝ているベッドの下に、護はちょうど明楽の位置からは死角になっている勉強机の影に、それぞれ身を隠す。


「んん……サンタさん……?」


 明楽は寝起きでボヤける目を擦りながら部屋を見渡す。

 しかし特段変わった所は見当たらない。確かに誰かの気配を感じたのだが……


 寝起きで頭が働かない明楽は、部屋の電気を点ける事も忘れて必死に部屋の中を見渡す。その時、ふと手元に何かがある事に気が付いた。


 それはリボンでラッピングされた四角い物体。

 クリスマスの日に枕元にある物と言ったらひとつしか無い。


 明楽は誰かを探していた事も忘れてプレゼントを抱き寄せると嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。


「あれ!?プレゼントがある!やっぱりサンタさんはいたんだ!」


 その後、プレゼントを見つけてはしゃいでいた明楽がもう一度眠りにつくと、それまでの間息を殺して隠れていた2人は、ほっとした様子で明楽の部屋を後にした。


 ◆◆◆◆◆


「あの時は大変だったな……」

「明楽が起きた時は幼心にも詰んだと思ったなぁ」

「んぅ……」

「お、明楽起きたか。じゃあ俺は明楽送ってくるから残りは瞬頼むわ」

「おう、任せとけ任せとけ」


 片付けながら懐かしい話に花を咲かせていた2人は明楽が起きた事に気付くと、明楽には秘密の昔話を終わらせ、それぞれの仕事に移ってゆく。


 護が明楽を無事送り届けて帰ってくる頃には、瞬も部屋の片付けを終えていてもう護の部屋はクリスマスの“ク”の字も見当たらない。


 帰ってきた護を見るなり瞬はニヤッと笑う。それにつられた護が苦笑を浮かべながら、手に持った包みを瞬に見せる。


「今年はソレか」

「あぁ、去年よりも小さくて助かるな」

「違いねぇな」


 2時間ほどそのまま護の部屋で時間を潰した2人は、時計の針が12時を回ったのを見届けると、ベランダに繋がる窓に手をかけた。


 2人は全く同じタイミングでニヤッと笑い、心底楽しそうに呟く。


「「さぁて今年もミッション・イン・クリスマスの始まりだ」」



皆さんはいつ頃までサンタさんを信じていましたか?

作者はだいたい小学校3〜4年生くらいまでだった気がします。


おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします


ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!


ようやく再開の兆しを見せ始めた当作品を今後もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 10周目です [一言] 私は小学一年生の頃に護みたいに母親とバッチリ目が会いましたよ・・・わりかし悲しかったです。信じていたので 現実は、残酷ですね
[気になる点] 明楽はまだ信じてるのか...
[一言] 最初からサンタ信じていない派です(´・ω・`)
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