第63話 ロッ君マラソン(ハードモード)
「次!踏み付け来るぞ!」
「範囲は!?」
「じゃないパターン!」
「おうよ!避けたら……【鎧砕】ッ!」
現在俺達は……いや、リクルスはロッ君マラソンに勤しんでいた。
最初期こそ俺も戦闘に参加していたが、ちょっとミスると簡単にロッ君がポックリ逝ってしまうので、現在は後方からの指示出しと『鼓舞』、回復、付与を逐一かけていくポジションに収まっている。
現在ロッ君マラソン1*※周目、俺はもう今回と前回におけるロッ君マラソンによって完全にパターンを把握しているので、焦ること無く細かに指示を出していく。それこそ攻撃モーションの最初の数瞬を視認出来ればどんな攻撃が来るか完全に分かる程度には脳に焼き付いている。
そしてリクルスはこちらの指示に的確に実行してくれるので指示してて楽しくなってくる。
最初こそ大振りに避けていたリクルスではあるが、現在では俺がどんな種類の攻撃が来るか言うだけで攻撃が当たらないスレスレで回避して即カウンターを叩き込めるまでになっている。
カレットとロッ君マラソンしていた時は俺が前衛をしてカレットが後衛だったからな。カレットが派手な魔法を思いっきりぶちかましてヘイトがカレットに移った瞬間に俺が【ロックバッシュ】をする……という2コンボで確殺だったから周回はめっちゃ早かったんだけどね。
「左薙ぎ払い!」
「いけるか!?」
「真芯とらえれば!」
「ウォァァァァ!【破豪】ッ!」
ドゴシャァァァンッ!
ロッ君渾身の左腕での薙ぎ払い攻撃は、リクルスに完璧にタイミングを合わせられ完璧なカウンターを喰らうという結果に終わった。そして、薙ぎ払いを行った左腕は、いくつもの岩石となって辺りに散らばっていった。
「チャンス!たたみかけろ!」
「ウォラァ!【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝け……」
「起き上り拳右!」
「んぉいっ!」
ロッ君渾身の起き上がりつつの無事な右腕でのぶん殴りも、完璧にタイミングを合わせたトーカの指示とリクルスの限界スレスレのミリ単位回避によって全くの無意味どころか無防備に右腕を晒すだけとなった。
「右腕いけるぞ!」
「おっし!【振壊】ッ!」
ベゴォォォォォォンッ!!
憐れなロッ君の右腕をど真ん中からへし折ったのは、『体術』Lv.9で使用可能になるリクルスが使える現段階最強のアーツ『振壊』。
その字面が示す通り殴った対象に与えた衝撃を、振動を増幅される事で強化し、内側から破壊するという現実にあったらなかなかにエグい効果を発揮するアーツである。
【ズズズズズズズズッ!】
両腕を失ったロッ君が頼れる攻撃手段は使用前後の隙が大きくなる踏み付け攻撃と突進しかなく、ほどなくして残された攻撃手段も、踏み付け時に受けたリクルスの完璧なカウンターによって左足を砕かれる事で奪われ、憐れに地面に転がるしか出来なくなってしまった。
「あとはどうとでもなる!ただし転がりには注意しろ!」
「よっしゃ、行くぞオラァッ!【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】」
「ちょっ、やりす「【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】【衝拳】」
「もうやめて!ロッ君のライフはゼロよ!」
「【衝け……お?マジだわ」
血も涙もないリクルスの【連衝拳】により、死ぬ事すら許されずにひたすらにサンドバッグにされていたロッ君……ロックゴーレムはようやくその身を光の粒子へと変換させ、逝く事が許された。
その死に顔は……とても穏やかだったそうな。
「リクルス、しっかり相手のHPバーを確認しような?《EBO》は例えHPが0になっても攻撃を受けている間は消滅しない仕様なんだからさ。しかも【連衝拳】はコンボが続く限り1つの技として認識されるんだから下手したら永遠に死体殴りを続ける事になるぞ?」
「いやぁ分かっちゃいるんだがな、連続で殴ってると段々と頭の中がからっぽになって行ってな……」
「危ない薬か何かなのか?」
「ほらあれだよ、お前でいう……読書に没頭する感じ。その事以外何も入ってこなくなるっていうさ」
「なら仕方ないな」
リクルスの言葉を聞いた瞬間真顔で言い切るトーカ。
「お、おう……分かってくれるならいいんだ」
「でもレベル上げの為に周回してるんだから無駄な時間は過ごしたくないだろ?」
「へいへーい次から気をつけまーす」
「はぁ、本当に分かってるんだか……」
忠告を右から左に聞き流し空返事を返すリクルスに呆れた様な視線を向けるトーカ。
普通ならブチギレ案件だが、これは長年積み上げてきた信頼関係を元に行われているやり取りであり、リクルスはしっかりと忠告を聞き入れた上での言動だし、トーカもリクルスがしっかりと忠告を聞き入れた上での言動だと理解してる。
「……と言うかまだやるのか?もう100回はやってるだろ?『粘着質』も取れただろうしさ。俺でももうレベル2つは上がったぞ?」
「あぁ、もちろん取れたぞ?そもそも条件が同じヤツと100連戦だろ?取れてない方がおかしいって」
「いや……そういう事が言いたいんじゃなくてな……」
「称号取得から更に100連戦すればステータスも経験値も2倍になるだろ?やらなきゃもったいないって」
「そうか……よっし!やるならとことん殺るぞ!」
「おっし!レベル40まであと少しだ!やっちゃるで!」
「リクルスがレベル40になったらカレット連れてきて更に周回すっぞ!目指せ『レベル50』or『核心石&各宝石類3桁』!」
「おぉぉぉ……ぉ?えっ?今なんて?」
「いいからやるぞ!」
「あ……これはダメだわ……トーカに変なスイッチ入っちゃってるわ……」
リクルスはトーカとのやりとりを終えると、半ば諦めた様な顔で初戦時のトーカの様にノールックですぐ側に出現した『弱体化しますか』のウィンドウのいいえを押し、トーカの『付与魔法』と『鼓舞』を背に受けロッ君に向けて駆け出していく。
「おどれぇぇぇぇ!経験値とレアドロップよこせぇぇぇぇぇ!」
自ら言い出した事とは言え、この状態のトーカはもう止められないと知っているリクルスは、諦めてロッ君マラソン(ハードモード)に勤しむ事にした。
その後、宣言通りに核心石とロックゴーレムからドロップする各宝石類が3桁を超えた頃にはリクルスのレベルはとうに40を超え、途中からカレットも巻き込んで行われた盛大なロッ君マラソンは最終的にこの様な結果で幕を閉じる事が出来た。
『核心石』×103個
『ルビー』×149個
『サファイア』×131個
『エメラルド』×139個
『トパーズ』×124個
『ダイヤモンド』×113個
『アメジスト』×109個
『パール』×100個
『トーカ』レベル49(6up)
『リクルス』レベル45(13up)
『カレット』レベル46(6up)
【癒属性宝石が何も思い浮かばなかったのでダイヤモンドになっています。他にいい宝石があったら教えてくれるとありがたいです】解決
感想欄にてダイヤモンドの方が光っぽい、パールは薬としても使われている。と言う事を教えていただき、確かに……と思ったのでパールを癒属性、ダイヤモンドを光属性に変更しました。
フローライト、アメトリン、ムーンライト等の様々な案を出してくださりありがとうございます。
石言葉を調べたらなかなか面白く……もしかしたら今後別アイテムとして出てくるかも知れませぬ
今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!
おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします
ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!
今後も当作品をよろしくお願いします!




