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第60話 ウザイって強い

書きたい事や起こるイベントのビジョンはあるのに文字に起こせない……

はっ!これが噂に聞くスランプってヤツか!?

 

 突如響いたその聲に、中央広場は今日何度目かの凍結を見せる。

 その声は厳格にして強大。荒々しさの中に見える確かな王者の風格。感じ方に差異はあれど、根幹に来ている感情は皆同じく「コレはヤバイ」である。


 これも演出の一つなのかと空を見やれば、先程までエボ君がいた場所に視線を上げると、エボ君もキョロキョロと辺りを見渡しており、その背後では分厚い暗雲が紫電を帯びていて、どこか禍々しいオーラを放っている。


「な……んだ、あれ」


 そんな声がどこからとも無く聞こえてくる。

 姿は見えねど声だけで、その者が圧倒的強者と理解させられる程の重みが乗ったその響きに恐怖しているのか、聞こえてきたか細い声は震えていた。


『どうした?先程までの様に騒げばいいではないか』


 再び聞こえる聲。しかしその言葉通りに騒げる程心が強い、あるいは頭が弱い者はおらず。まるで社長室で楽にしなさいと言われた平社員の様にガチガチに固まるだけで、先程の騒がしさは全く戻ってこない。


「あ……う、あ……」


 緊張し強ばった喉から漏れ出た声は、意味ある単語とはならずタダの掠れた音として空気を震わせた。


『ふむ、なぜ我が語りかけているかが分からないと言う顔だな。ふはは、特に理由など無いさ。なかなかに面白い事をやってるようだから覗かせてもらったと言うだけの事』


 面白い事……?イベントの事か?


『やはり人間というのは何をしでかすか分からない生き物だな。中には我には想像も出来なかった事をしている奴も何人かいたしな。なかなかに楽しめたぞ』


 そう聲が響いている中で、全身を舐めるように凝視された様な、見繕いされている様な不快な感覚に陥り、思わず身体を震わせる。


 あの大量襲撃も謎の聲の主に取っては面白い出来事の一つなのか……いや、まぁ俺達にとっても面白い出来事(イベント)にだったけどさ。


「何者なんだ……?」


 そして強ばるトーカの喉から絞り出されたのは、ほとんど誰にも……それこそ自分にすら聞こえないような小さな声。もはや吐息と言っても過言ではない様な、声どころか音になっているかすら怪しい声。


 しかしナニモノかはその声を聞き取ったようで、再び聲が辺りに響く。


『ふむ……誰、か。別にここで我の名を名乗ってもいいのだが……それよりもこちらの名の方がわかりやすいだろう。我は人間達の言う……ま『魔王だぞ〜!』



 魔王。それは、歌やら酒やらラスボスやら主人公やらヒロインやら幼女やらかませ犬やら戦国武将やらと幅広い活躍を見せる存在。

 とある世界(作品)では絶望の名を冠する程の強大な悪であり、またとある世界(作品)ではまったり生きる自由人であり、またとある世界(作品)では名前すら出ずに巻き込まれで死ぬ様なかませ犬であったりする、多芸な存在である。


 今でこそやれロリ魔王だやれザコ魔王だと幅広い生息区域を持っている魔王であるが、その根源、本来の生息域は恐怖の象徴であろう。


 それが、どうしてここに……?


 ってあれ?今なんか変な事が起こらなかったか?今のってなんかデジャヴなんだけど……具体的には結果発表の時とかランキング発表の時とか……

 いや、確かにここにはいないけど、確かにどっか飛んでったけど……でも、まさかね?いや、それはないでしょ。ありえな……


『なぁ!?お前どうやって抜け出した!?』

『ふっふっふ……私達妖精は脱出が大得意なのだよ!いや、まぁ今回は助けて貰ったんだけどね』


 暫定妖精ちゃん(ほぼ確定)の登場により、先程までの恐怖など冬にぬくいおこたを満喫している時の脱出の意思の様にあっけなく消え去り、なんとも言えない空気が蔓延する。


『助ける!?誰がそんな事をした!?』

『それは〜お、来た来た』


 そして先程の威厳の様な物は知らんと言わんばかりの魔王の声に妖精ちゃん(たぶん)が答えようとすると、トテトテと足音が聞こえてくる。

 って言うかこれって声を届けてるんじゃなくてその場の音を伝えてるみたいだな。じゃないと足音なんて聞こえないはずだしな。


『パパ〜っ!何してるの!?』

『お父さん何してるの?』

『なぁっ!?なんでお前達が……って違う!今パパお仕事中だからあっちで遊んでなさい!』

『え?遊んでたよ?』

『そうそう!探検ごっこしてたんだよ!そしたらこの子が入った瓶があったから……そりゃ開けるっきゃ無いよね!そしたらお友達になれたんだよ!』

『なぁっ!?また勝手にパパの部屋に入ったな!?』

『だって暇だったんだも〜ん』

『世話係を付けていただろう!?』

『だってお父さん、あの人遊んでくれないんだよ』

『〜ッ!アイツはクビだッ!』


 ……………魔王も苦労してるんだな。

 一部のプレイヤー(たぶん子持ち)がどこか優しい、仲間を見る様な表情をしている。そしてたぶん俺も似た様な顔をしている事だろう。


 って言うか魔王は子持ちなのか。

 一部のプレイヤー(たぶん非リア)が殺意と憎悪さらに嫉妬に塗れた表情をしている。そしてたぶんリクルスも似た様な顔をしている事だろう。


『ってそうじゃなくて、今パパ大切なお仕事中なんだよ、だから別の所で遊んでてね?』

『えーだってこの前今日なら一緒に遊べるって……』

『お父さん言ってたじゃん……』

『それについては本当にごめんな?今度遊んであげるから……』

『『それ前も言ってたじゃん』』

『そうだそうだ〜』

『ッ!テメェは黙ってろクソ妖精が!』

『わ〜!今の聞いた!?酷くない!?』

『パパひっど〜い』

『お父さん……さすがに……』

『〜〜ッ!』


 現在魔王のお子さんだと思われる少年の声と少女の声、そして妖精ちゃん(断定)の声に翻弄される魔王様の声がリアルタイムで中央広場に放送されており、どの様な反応をすればいいのか分からないプレイヤー達は困惑の顔と同情の顔と嫉妬の顔を見せている。

 そしてこの結果発表乱入は仕事なんですか……魔王の業務も大変なんだな。


『えぇい!妖精!そもそもお前はどっから来たんだ!いきなり俺の部屋に突っ込んで来るや否や俺が読んでる本のネタバレしやがって!あの新刊どれだけ楽しみにしていたかわかんのか!?』

『え〜そんな事言われてもねぇ……ネタバレってしたくならない?』

『お前その癖マジで直した方がいいいぞ、相手によっては本気で殺されるからな?』

『ひっ……は、はい!』


 あ、聲のトーンがガチだ。妖精ちゃんもビビっちゃってるし。

 つまり魔王様はそういう人種(読書好き)って事か……仲間だな。俺もネタバレだけは絶対に許せない人種だしな。

 たしか当時俺が愛読していたシリーズの最新刊のネタバレをリクルス……瞬がしてきた時は珍しくガチギレしたな。その後一週間くらい瞬に出す料理はアイツの嫌いな物のオンパレードにしてやった記憶がある。


 なんだろうね、急に魔王様が身近に感じられてくるよ。


『じゃ、じゃあ今度2人と遊んでくれる人(新しい世話係)探してあげるから今日はガマンしてくれないか?パパも2人と遊びたいんだけどお仕事忙しくてね……』

『えぇ〜しょうがないなぁ、絶対だよ?』

『えぇ……まぁしょうがないね、絶対だよ?』

『あぁ、絶対だ』


 わぁお、とってもほのぼのしているね。

 さっきの殺気 (ダジャレではない)が嘘のようだよ。


『ほんとに〜?またそうやって今度も仕事が〜とか言うんじゃないの〜?』

『テメェはホントに黙ってろ!お前マジでどっから来たんだよ!?もう帰れよ!』


 子供に甘い魔王(パパ)も妖精ちゃんには容赦がない模様。まぁ自室に突っ込んでくるや否やネタバレする奴に人権なんて無いからいいんだけどね。


 しかし、厄介な事に妖精ちゃんとお子さん達が意気投合してしまっているのだ。そのせいで妖精ちゃん相手に強く出ると……


『うわ〜ん、こわいよ~(棒)』

『パパ!リリ(妖精)ちゃんいじめちゃダメでしょ!』

『お父さん、弱い者いじめは良くないよ?』

『いっ、いや!そういう訳じゃなくて……』

『いじめちゃダメなんだよ〜?(ニヤニヤ)』

『こんっのクソ妖精がッ!』

『パパ!』

『お父さん』

『あぁっ!違うんだ!』

(以下無限ループ)


 となるのだ。なんと恐ろしい弱味につけ込んだ妖精ちゃんの口撃……さっきまでのエボ君とのやり取りなんか可愛いもんだね。


『もうやだコイツ……送ってやるからもう帰れよ……いや、帰って下さいお願いします』


 遂に懇願しだしましたよこの魔王様……妖精ちゃんのウザさは魔王をも屈服させるというのか……


『えっ?送ってくれるの?それはありがたいね〜』

『……はぁ、それで?どこに送ればいいんだ?火口にでも沈めるか?』


 おう魔王さんや、言ってることが生々しくて物騒だぞ。


 トーカがそんなくだらない事を考えている間にも、魔王様と妖精ちゃんの対談(?)は続いていく。


『なにそれこわい、さすがにそれは勘弁かな〜。えっとね……今中継繋いでる所に送ってくれればいいよ』

『わかった、そこに送れば……って、え?まさかまだ中継繋いでるのか?』

『はい、魔王様!切れとご命令がなかったので中継は続けております!』

『切っとけやぁぁぁぁッ!って事はあれか?中継先に全部丸見えの筒抜けって事か!?』

『あっ、いえ。音声は繋げられたんですが映像は出来なかったので声だけです』

『えっ!?いつから?』


 最初の威厳のある恐ろしい聲と同一人物とは思えない呆気にとられた様な声が聞こえてくる。


『最初から声だけです』

『おまっ!それ先に言えよ!こっちは映像も繋がってると思ってかっこよさげなポージングしてたんだけど!?』

『えぇ、なんかやってましたね。映像向こうに見えてないのに何してんだろうな〜とは思ってたんですけどね?』

『なにそれめっさ恥ずいヤツじゃん!ってあれ?まさか今も中継してる?』

『はい!しております!』

『切れやぁぁぁぁぁぁぁッ!』


 ブツッ!


 そして、そんなやり取りを最後に音声は途絶えてしまった。


 その数分後……


『へぶっ!』


 いなくなった時と同じようにロープ(紐?)でグルングルン巻きにされた妖精ちゃんが禍々しい魔法陣の中からポロッと落ち(転送され)てきて、ロクに受け身も取れずに地面に墜落した。


 更には妖精ちゃんに括りつけられていた手紙(と言うよりメモ書き)には『もう二度と来るなクソ妖精』と殺意と憤怒に塗れた筆跡で書かれていた。


 ……魔王様はご立腹じゃい。


 先程までの事はなかったかのように威厳たっぷりな聲で『これからも我を楽しませてくれよ?』と言う言葉を最後に魔王様の聲は聞こえなくなり、空も覆っていた紫電を帯びた暗雲もいつの間にか跡形も無く消え、夜空は雲一つなく星々が明るく輝いていた。


 その後、妖精ちゃんを持っている手の指で妖精ちゃんの口をおさえながらエボ君が結果発表から始まり魔王様威厳霧散事件(主犯妖精ちゃん)に終わる一連の流れのまま二回目の〆の言葉で締め括り、今日何度目かのプレイヤー達の歓声が中央広場を満たした。


やらなきゃらやなきゃと思うとときたま思考が一周してなんもかんもどうでもよくなるって事ありません?



今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!




おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします


ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!


今後も当作品をよろしくお願いします!

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