第6話 自分のことは棚に上げて……
護は1人だとはっちゃける人です、普段は更にはっちゃけてる幼馴染みが居るのでそこまでだけど1人になると反動でヒャッハーします。
亀狩りの手順は普通の亀と一緒だ。相手の背中の苔を剥いでから首を落とす。その為にはまず気付かれずに背中に乗ればいい。
「さて、いっちょやりますか」
短剣を握りしめ隠密を発動する。そのままゆっくりと巨大亀の後ろに回り込む。
相手はまだ気づいていない。そっと甲羅の苔を剥ぐ作業に移ろうと軽く刃を入れる。
その瞬間
『クゲェァァ!』
巨大亀が思いっきり振り向く。すると当然尻尾も横薙ぎに移動する。俺は勢いよく薙ぎ払われる尻尾に弾き飛ばされ地面を数メートル転がり巨木に思いっきりぶつかる。
何とか立ち上がると巨大亀は丁度こちらに歩いてきているところだった。その速度は普通の亀よりは全然速いがそれでも鈍いことには変わりない。落ち着いて距離を取り今の今までまるで使ってこなかった神官要素その1、回復魔法を発動する。
「ちくしょう痛ってぇな、【ヒール】!」
突然だがこの世界での魔法の発動には幾つかルールがある。まず一つ目はMP。これは魔法の発動に必要だ。またこれは魔法に限らずまだ使ったことはないがスキルなどでも『アーツ』と呼ばれる技を繰り出すのにも必要になる。
二つ目に詠唱。これは実際に呪文を唱えるのではなく発動してから使用可能になるまでに魔法一つ一つに決められた詠唱時間がある。ヒールなどの初級魔法の詠唱時間は1秒にも満たない短時間だが、強力な魔法になればなるほど詠唱時間は長くなる。
俺は予想外のダメージに半ばパニックになりながらレベル1から使える回復魔法【ヒール】を発動する。レベル1の魔法ではあるが俺のINTが高めなのとHPが初期値のままな事も相まって残り3割まで削れていたHPが全回復する。
「クッ!油断した!今までのが楽勝だからってこれからもそうとは限んねぇだろっ!」
追ってくる巨大亀から距離を取りつつ隠密を発動する。一瞬見失った様だが隠密のレベルが低いこともありすぐに再び見つかってしまい追いかけてくる。
「落ち着け、体勢を立て直せ。まずは現状確認だ」
自分に言い聞かせるように呟きながら1度深呼吸をする。すると少し冷静になれた気がする。
「取りあえず上げられるだけINTを上げるか」
残しておいた5ポイントをINTに注ぎ込む。これによってINTは15になった。
そして神官のもう一つの武器、付与魔法。レベル1で使えるのは攻撃力を上げる【アタックアップ】と防御力を上げる【ガードアップ】。更に短剣ではあの巨大亀には大したダメージは見込めないだろうと思い武器をメイスに変更する。すると背中の弓が消え腰にメイスが現れる。
「【アタックアップ】!【ガードアップ】!もう苔を剥ぐとか言ってられねぇ!ドロップに期待する!」
背丈が高い草を利用して真横に回り込む。ついでに隠密を使ったり解除したりして気配に緩急をつけて混乱させる。目論見が上手くいった様で巨大亀は俺を見失いキョロキョロしだした。
その過程で隠密のレベルが上がったのは嬉しい誤算だ。
俺を見失い辺りを見回してる巨大亀が逆方向を向いたタイミングで草むらから駆け出す。
大丈夫だ、まだ気づかれてない。
「喰らえっ!【スマッシュ】!」
そのまま駆け寄り巨大亀の右前脚を思いっきり殴りつける。何気に初使用の棍術アーツ【スマッシュ】を乗せた一撃は不意打ち、さらに人間でいう弁慶の泣き所を殴りつける非道な攻撃に対する非道のボーナスにより、間違ってもレベル5のプレイヤーは出せないような威力が巨大亀の右前脚に叩き込まれる。
ちなみに非道の効果で1.5倍、不意打ちは気づかれていない状態でのダメージが2倍、【アタックアップ】でダメージ1.2倍になるので通常の【スマッシュ】の実に3.6倍のダメージだ。
「シャオラァ!」
巨大亀のHPバーを見ると3割近く削れており、更に足にバツのマークが付いたアイコンも出ていた。
恐らくは行動不能、又は部位欠損のアイコンだろう。
《『棍術』のレベルが上昇しました》
更にえげつないダメージを叩き出したためか1回で棍術のレベルが上がる。
「おっ、丁度いい。少し調子に乗ってた俺に現実を見せてくれたしお礼しないとな。今しがた上がったばっかの棍術でタコ殴りにしてやるよ」
自分はガッツリ不意打ちした癖に不意打ちを喰らって地味にキレていた俺は、メイスを肩に担ぎながら凶悪な笑みを浮かべ巨大亀に宣言する。巨大亀の瞳が潤んでるように感じたのは気のせいだろう。池から出てきたし潤んでてもおかしくないよ!
その後はただひたすらに右前脚をメイスで殴り続けるだけの単純な作業だった。ただHPが多いのでそれなりに時間がかかってしまい巨大亀がその身を爆散させたのは殴り始めてから10分後の事だった。
キラキラと撒き散らされるエフェクトを見ながら達成感を噛み締めいていると脳内にファンファーレが鳴り響く。
《レベルが上昇しました》
《レベルが上昇しました》
《レベルが上昇しました》
《称号『ジャイアントキリング』を取得しました》
《称号『非道』が『外道』に昇格しました》
「ふぅ、やっとくたばったか。HPが馬鹿みたいに多いし最初の一撃で動けなくしてなかったら大変だったな。まぁお陰で棍術のレベルが更に上がったし不意打ち狙いでずっと隠密使ってたからそっちも上がったし収穫はあったか」
さて、ドロップアイテムの確認だ。えっ称号?何それ美味しいの?
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・大亀の甲羅
・大亀の尻尾
・大亀の万年苔
・大亀の爪×4
・亀肝
・亀甲棍
・亀のお守り
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「おっ、苔が落ちてる!しかもやっぱ上位のアイテムっぽいしこれは角もあるのはほぼ確定か。でもなぁウサギの角は正直トラウマなんだけどなぁ……」
少し期待してみたがやはりと言うかなんというか頭はドロップしなかった。やっぱりあれは頭を落とさないと落ちないのかな?だとしたらどんな入手法だよ。
更にドロップアイテム群の中に装備品らしき名前があったので実際に出して詳細を確認してみる。
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『亀甲棍』
大亀の甲羅で作った棍棒
LUK%の確率で攻撃に水属性が追加される
ただし亀の呪か動きが鈍くなる
STR+30 AGI-5
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『亀のお守り』
亀の甲羅を模したお守り
身につけると災から守ってくれると言われている
VIT+10 水属性攻撃で与えるダメージが10%上昇する
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おぉ、これはまた強いな。ただAGIが下がるか……いやレベルが上がったしAGIを成長させればマイナス分は気にならないか?それを考慮しても強いな。亀甲棍と亀のお守りの相性も何気に良いし。
やっぱ称号確認しないとダメか?ダメだよな……はぁ。
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『ジャイアントキリング』
自分よりレベルが10以上高くなおかつ二つ以上のステータスが自分より10倍以上高い相手を単独で撃破した証
自分よりレベルが高い相手との戦闘時ステータスが1.5倍になる
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「これは普通に有能だな。特にボス戦とかでは重宝しそうだ。問題はもう一つの方か……よし、覚悟を決めよう。結構エグい事をやってた自覚はあるんだ受け入れようじゃないか」
覚悟を決めたところでもう一つの称号を確認する。
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『外道』
非道と言われてもなお酷い方法で攻撃し続けた証
外道な攻撃のダメージが2倍
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「ッ……覚悟してても心に来るな……しかも効果は有能なのがまたイラッとくる。そういうロールプレイしてる人なら平気そうだけど……うーん何か俺ゲーム内だと性格若干危ない方に変わってないか?」
まぁ、あれだ強くなったからよしとするか(遠い目)
「次は……ここまで来たら角も狙いたいよなぁ今回のパターンから察するに大兎でも倒すのか?」
視界の端に浮かんでいる現在時刻を確認すると約11時半頃だった。
「うーん昼飯の事を考えると遅くても12時にはログアウトしたいしなぁ。よし50分までに見つからなかったら諦めよう」
制限時間も決めたしステータスポイントを割り振ってから(居るのかも不確かな)大兎を探すため池を後にした。
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『トーカ』
ジョブ:神官
サブ:狩人
Lv. 8
HP:100/100
MP:150/150
STR:30(+30)
VIT:5(+14)
AGI:20(-5)
DEX:20(+2)
INT:20
MND:0
LUK:20
SP:0
【パッシブ】
【スキル】
『棍術Lv.3』 『弓術 Lv.1』
『罠術Lv.1』
『回復魔法Lv.1』『付与魔法Lv.1』
『投擲Lv.1』『見切りLv.1』
『体術Lv.3』『咆哮Lv.2』
『不意打ちLv.1』『隠密Lv.3』
『剣術Lv.1』
【称号】
『ラビットキラー』『外道』
『ジャイアントキリング』
【装備】
メイン
『亀甲棍』
サブ
『初心者の短剣』
頭
『なし』
上半身
『見習い狩人の服(上)』
下半身
『見習い狩人の服(下)』
腕
『なし』
足
『ただの靴』
アクセサリー
『亀のお守り』
『なし』
『なし』
『なし』
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これレベルアップ速度早いですかね?
加減がよく分からないので……ちょっと早いかなぁとは思ってるんですが……
おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします。
ブクマしてくれた方や読んでくれてる方、ありがとうございます!
PVが4桁超えてニヤニヤが収まらねぇ