第56話 わたしのかんがえたさいきょうまほう
感想欄の優しい言葉がありがてぇ……
感想はしっかり読ませていただいていまする
返信する時間が無いだけで……
そして今回も作者の悪癖が……
筆が乗るにも二種類あるんですよね
サクサク書き進められる時と思い付きで密度がぱんぱんになる時と……今回は後者ですね
※一晩寝て正気に戻った作者は称号のくだりを消す事にしました
改めて見ると流石に変な方向に行ってたので……
夜空に咲き誇った【豪炎烈花】に魅入っていた人々の意表を突く様に、真後ろから【ウィンドランス】4本分の威力を秘めた風の槍が【豪炎烈花】を突き破る。
突然の出来事に思わず驚きの声を上げた人々の反応も耳に入っていないのか、カレットは俺の真横でいつ無く真剣な眼差しで自らの魔法を見据えていた。
「今だッ!!」
【豪炎烈花】を突き破り、花を構成していた炎を纏った風の槍がある程度の高さに達した瞬間に、カレットが声を上げる。
そして、その声に呼応するかの様に炎を纏った風の槍は1度震えると、まるでライフルの弾丸かドリルの様に鋭く回転を初めーー
『ーーーーーーーーッ!』
風切り音を人間が聞き取れる限界ギリギリにまで高めた様な鋭い鳴き声と共に、炎の残滓の中から炎を纏った鳥が現れた。
「「『「「なぁっ!?」」』」」
「うぼはっ!?」
人々が突如現れた巨大な火の鳥に目を奪われる中、それを知ってか知らずかその火の鳥は、空中で優雅に身体をくるっと一回転させ、見せ付けるように翼を広げ、『ーーーッ!』と一声強く鳴いた。
「「『「「うっ……」」』」」
火の鳥の鳴き声に当てられた人々は一瞬言葉を詰まらすものの、その一瞬後にはカレットのパフォーマンスだと言う事を思い出した様で……
「「『「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!!!」」』」」
先程の【豪炎烈花】を見た時以上の歓声が中央広場から湧き上がる。
先程の【豪炎烈花】と言い今回の火の鳥と言いカレットの魔法が正直別次元過ぎて怖いな……これはなんとしても近い内に魔法に対抗する手段を手に入れなければ(使命感)
謎の強迫観念から魔法に対する対抗手段の取得を決意しており、俯いているトーカの肩をカレットがトントンッと叩く。
「ん?どうした?」
「ふっ、名付けて【鳳凰招来】!」
そして、キリッ!と聞こえてきそうな程の凄まじいドヤ顔でこちらを見てくるカレットの姿が……
「……マジでどうした?」
ちょっと本気で心配になったトーカがガチのトーンでカレットに声をかける。そんなトーカのガチトーンに一瞬怪訝そうな視線を向けるが、すぐに持ち直した様だ。
「どうだ!私の最強魔法は!まぁたった今作ったのだがな!」
「あっ?、あの魔法って即興なのか?」
即興であんな魔法を生み出したと言うカレットの言葉に、間抜けな声を漏らし、未だに空に佇む火の鳥(カレット曰く鳳凰)を指差し、カレットに問いかける。
「うん?そうだぞ、最初はあの大爆発だけのつもりだったのだが……気分が乗ってしまってな!」
「そうか……凄いな」
「ふんん!そうだろう、そうだろう!」
自慢気に両手を腰に当てて胸を張るカレットを微笑ましい瞳で見守っていたトーカは、一つの疑問を持った。
「そういやさ、さっきの花とか今の鳥みたいに魔法って形を変えられるのか?」
トーカが疑問に思ったのはカレットの放った魔法の形である。
通常の魔法は花や鳥の様な姿は持たず、簡単な姿を象っている。例えば【〜ランス】系の魔法なら両端が尖った棒状の形を、【〜ボール】系の魔法ならシンプルに丸まった球状の形を、【〜ストーム】系の魔法なら広範囲に渦巻いた形を……と言う様にそれぞれが簡単な形をしているのだ。
しかし、カレットの放った二種類の大技は片や花を象り、片や鳥を象っている。少なくとも俺は花や鳥の姿を持つ魔法は知らないし、そもそもカレットが使ったのも【ファイアボム】【ファイアストーム】【ウィンドランス】の三種類のみであり、花や鳥を象る魔法は使われていない。
しかし、結果としてカレットの放った魔法は花と鳥を象っている。それがどうしても気になってしまったのだ。
そしてカレットの答えは……
「うむ、変えられる様だな。私もびっくりだ!」
「へっ?知らなかったのか?」
なんとカレットも変えられると知らなかったらしい。
「なんか派手な事したいなーと思ってな、最初は爆発だけのつもりだったのだぞ?」
「え?そうだったのか?」
「うむ!だがな、ふと途中で爆発したら花みたいになるんじゃないか?と思ってな。半分冗談で花になれ〜と思ってたらホントに花になるじゃないか!そこで私は思ったのだ、実は魔法って自由に形を変えられるんじゃないか、とな。」
なんともまぁカレットらしいと言うかなんと言うか、爆発を花に似てると思ったから花になれって念じるとは……しかも実際に花に出来てる所がなんとも……
「それで皆がすっごい盛り上がっただろう?」
「あぁ、相当盛り上がってたな今日一番、は火のと「鳳凰」……鳳凰だから……今日二番の盛り上がりだったな」
「むぅ、そう言われると急にしょぼく感じてしまうな……」
「確かに、まぁ凄い盛り上がりだったってのは確かだ」
カレットは一瞬しょぼん……と肩を落としたが、すぐにシュバッ!と復活する。わーリスポン時間みっじかーい。
「そして私は考えた、まだ行けるんじゃなかろうか……と。」
「それの結果が鳳凰か?」
「うむ!そうだぞ!最近読んだマンガに風魔法を使う奴が居たのだが……そいつが風で鳥を作り出していてな。それを思い出して、爆発で花が作れたなら風で鳥も作れるだろうと思ってな」
あーあのマンガか、瞬イチオシのヤツだろ?ったくアイツ小テスト前日に「これおもしれぇぞ!」じゃねぇよ……暗記科目のテストだったから登校中も使って朝の内になんとか詰め込んだからなんとかなったものの……そう言えば明楽もその日の内に瞬に借りて読んでたな。
借りるのは構わないが小テスト前日に人の部屋を経由して借りに行くのはどうかと思う。
「でもただの風の鳥ではインパクトが弱いだろう?」
「そうだな……隣に【豪炎烈花】があるからな」
「そう!そこで私は考えた、【豪炎烈花】が派手すぎて他が霞んでしまうなら、ソレを糧にすればいいじゃないか。とな!そして目論見は大成功だ!」
「確かに大成功だったな、よかったじゃないか」
「ふふん!どうだ凄いだろう!」
「わーすごーいなーあこがれちゃうなー」
「そうだろう!そうだろう!」
あっ、ダメだ棒読みが通じない。こんな所でもカレットのポジティブシンキングに邪魔される事になるとは……
「そんな訳で誕生したのが【豪炎烈花】と【鳳凰招来】だ!」
「まさかあの大魔法がその場の思い付きなんて誰も思わないだろうなぁ」
「まぁまぁ、成功したんだからいいじゃないか」
「まぁ……そうだな。と言うか俺の魔法でも出来るのかね、その形を変えるヤツ」
夜空を回遊する鳳凰を眺めながらボソリと呟く。
だってしょうがないじゃん?あんなん見せられたら自分でもやってみたくなるじゃんよ。とは言っても俺って攻撃系の魔法何一つ持ってないんだけどね。
「ぬぁーどうだろうな?トーカの魔法って回復と付与……だっけか?」
「あと『呪術魔法』ってのもあるな」
「ほぉ、増えたのか。むーん……トーカの魔法は全て攻撃系魔法じゃないからな……そもそも発動時に実体として飛んでいかないし……無理じゃないか?」
「だよなぁ……どうすっかな、なんか攻撃系魔法でも取ってみるか?」
神官ならやっぱ『光魔法』とかか?敢えての『闇魔法』とかも面白そうだし、『火魔法』で炎を纏って炎のメイスを振り回しながら「汚物は消毒だ〜!」とかも楽しそうだな。
……そうだ、今思い付いたんだけど『火魔法』と『光魔法』とかを組み合わせて『聖火』とか作れないかな?聖なる焔で神敵を焼き祓え!的な。神官にめっちゃ似合いそうだな。
「ふーむ……トーカの魔法か……光魔法か神官だから敢えての闇魔法だろうな」
「やっぱそうなるよな」
「む?そう言うって事はそこまでは思い付いてた感じだな?」
「あぁ、他にも火と光で聖火とかかな」
「おおっ!なら……水、風、土とそれぞれ光で聖水、聖風、聖灰。闇と火で邪炎に水と土で泥、風と水で霧に火と水で蒸気、光と闇で矛盾、闇と土で毒、土と火と闇で地獄に風と水と光で天国、水と風で嵐に火と風で熱風、土と風で砂嵐、風と闇で侵食……」
「ストップ!ストップ!」
「んあ?まだあるぞ?」
「大丈夫、もう大丈夫だから」
流石は本職と言うべきかアイディアが出てくる出てくる。ほっといたら延々と語りそうなので慌ててストップを掛けたが……いくつか興味深いのもあったな、後で掘り下げて行こう。
カレットと魔法談義(?)をしていると、夜空を我が物顔で回遊していた鳳凰がもう一度『ーーーーーーーーッ!』と強く鳴くと、その身体を畳み込む様に丸め、ポンッと音を立てて小さな(と言っても拳大の大きさはあるが)炎になる。
そして、その炎が1度だけボウッ!と強く燃え上がり、夜空に溶ける様に消えていった。
「「『「「………………」」』」」
その光景を、言葉一つ発すること無く見守っていた人々に向って、実はまだスポットライトを浴びたままだったカレットが声を投げかける。
「皆の衆っ!楽しんでくれたか!?」
その声にはっ!と意識が現実に帰還した人々は、自分達を魅了していた魔法を放ったカレットの方を向き、歓声をあげる。
「うぉぉぉぉぉッ!すげぇよ!」「なんだあの魔法!?かっこよすぎだろ!」『カレットちゃん最高ぉぉぉぉぉッ!』「キャーーッ!弟子にしてーッ!」「カレットちゃんスッゲェー!」
どうやら早くもカレットに一定のファンが出来たようだ。
ガチムチのオッサンから普通の少女まで幅広い層から黄色い声援を送られている。まるでがアイドルみたいだな。
人々の声援に対してもカレットが誇らしげに手を振り返すものだから、より一層人々のテンションが上がっていく。
「なにあの魔法!もう1回見たいッ!」「おおっ!俺も見てぇ!」「私も私もッ!」「カレットちゃぁぁん!もう1回やってくれぇぇぇ!」「アンコール!アンコール!」
「「『「「アンコールッ!アンコールッ!アンコールッ!」」』」」
そして響き渡るアンコールの嵐。誰が最初かはもう分からないが、少なくとも今この瞬間は中央広場にいる人々の心は一つになっていた。
「……アンコールだってさ、もう1回やってやったら?」
「そうしたいのはやまやまなんだが……MPがな……」
「だったら……MPポーションくれたらやるって言ってみれば?普段ならふざけんなとか言われるだろうけど、今この場のテンションならパフォーマンスの一種として案外みんな楽しめるんじゃないか?」
「おおっ!その手があったか!」
カレットはそう言うと、アンコールをしている人々に向けて声をかける。
「それではアンコールにお答えして!と、言いたいところだが……実はもうMPがすっからかんでな……」
カレットがそう言うと、「アンコールにお答えして」の辺りで盛り上がった人々がバラエティよろしくずこっ!とずっこける。大層ノリのいい奴らだ。
「そこでだ!私にMPポーションを恵んでくれる人、絶賛募集中!おひねりでも可!」
カレットが声高に宣言すると、おおっ!と一部の人達が「これ使いな!」「俺エムポもってねぇや!そらっ!おひねりだ!」「よーしおじさんがお小遣いあげようねぇ」「変態だ!HENTAIがいるぞ!」「でもあの変態めっちゃおひねり投げてやがる!」「HENTAIに負けるなぁぁぁ!」とざわめき出し、中央広場からカレットに向けておひねりやMPポーション、果てには何かの素材まで飛んでくる程の盛り上がりとなった。
カレットもおひねりはウケ狙いの冗談だった様で実際に貰えた事に驚いていたが、一瞬後には嬉しそうにしていた。
傍から見れば完全に貢がれてる状態なのだが……本人達が楽しそうだからどうでもいいか(諦め)
ちなみに《EBO》の世界では他人にトランを譲渡する際に、一定金額以下の場合、普通はそのまま数値上の変動しか無いところを、『おひねり』として実体化出来るのである。そんな実体化されたトランが結構な量カレットに投げられており、カレットのパフォーマンスは相当好評だった様だ。
おひねりは対象のプレイヤーを選択し、投擲して使用するアイテムで、ダメージ判定は無く、当たった瞬間『おひねり』として通常の所持金枠とは別枠で金額換算され、『開封』のアイコンを押すことで所持金として加算されるシステムとなっており、いくらおひねりが貰えたか分かる仕様になっている。
とりあえず俺も3000トランをおひねりとして投げておく。
ちなみに『おひねり』に出来る金額は1万トランが上限であり、何人かのプレイヤーは狂ったように1万おひねりを連投している。
現実よりかは簡単に稼げるとは言え、そこまで躊躇無く大金を投げつけられるとは……恐ろしきかな。
また、これは関係の無い話だが、後日効率よくトランが稼げる狩場やクエストにプレイヤーが群がったと言うが……それはまた別の話である。
貰ったMPポーションをがぶ飲みし「味がしない!」と叫んで魔法職プレイヤーからの同意を得たりしていたカレットがアンコールに答えて【豪炎烈花】や【鳳凰招来】を放ち、またまたMPポーションを飲んで「まずい!もう1杯!」とネタに走って笑いを取ったりしていると、それを生暖かい目で真横から見ていたトーカにピコン!とメッセージが送られてきた。
こんなタイミングで誰からだ?とトーカが訝しげに思いながらメッセージを開いてみると、差出人は初日に知り合ったプレイヤーであり、歌舞伎ランキング大剣部門の覇者、アッシュであった。
初日にフレンド登録こそしてはいたが、これまで一切干渉の無かった思わぬプレイヤーからのメッセージに一瞬驚いた顔をしたが、特に声をあげることも無く内容に目を通す。
=========================
《アッシュ》
アッハッハ、カレット嬢ちゃんの魔法はすげぇな!
いいもん見してもらったぜ!
ってなわげで俺からのおひねりだ
嬢ちゃんに渡しといてやってくれ
リクルス経由で渡そうとも思ったが……
すぐ側にいたトーカも嬢ちゃんの知り合いなんだろ?
だから頼んだぞ
所でなんかアイツ軽く拗ねてたんだが……
なんか知らねぇか?
っとそうだ、俺からのおひねり……パクんじゃねぇぞ?
結構いいもんだが……俺達には宝の持ち腐れと言うか
嬢ちゃんの為にある装備と言うか……
まぁその目で確かめてくれや
決して変なもんじゃねぇから安心してくれよな
じゃあな!また機会があったらよろしくな!
『贈り物』
=========================
なんと彼もカレットにおひねりをくれるらしい。リクルスとアッシュがイベントで知り合って意気投合したのは知ってたが……今も一緒に観てるのだろか?そして拗ねた原因は十中八九俺とカレットにハブられた事だろう。しょうがない、後で蛇肉の串焼きでもあげるか。
そして送られてきた『おひねり』は……まさにカレットの為にあるような代物だった。これがあればカレットは更に高みへ登るだろう、それが少し楽しみでもあり、恐ろしくもある。
とりあえずお礼のメッセージをお礼の意味を込めて焼き兎と蛇肉の串焼きをそれぞれ兎20本蛇11本を添付して送信する。
蛇肉の串焼きは1本リクルスにあげてくれと言う旨のメッセージもP.Sで書いておいたのでとりあえず大丈夫だろう。
ちゃ……ちゃうねん気付いたらこうなってたねん……
あ、トーカが攻撃魔法を取るなら……何がいいですかね?
今後は週一投稿で余力があれば早まるかも……と言うスタンスで行きまする
今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!
複合魔法のアイディアも絶賛募集中!
おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします
ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!
今後も当作品をよろしくお願いします!




