第52話 イベント結果発表(前座②)
次回投稿は早くても3日後と言ったな、あれは嘘だ
と言うことでささやかなエイプリルフールでした
1日越しのエイプリルフールってありなんでしょうか?
そして何故か長引く前座……
約1日ぶりに訪れた《EBO》の世界、降り立ったのは町の東門のすぐ側だった。イベント終了のアナウンスの後に一斉ログアウトが行われたので、その時にいた場所から最も近い門がログイン地点になったのだろう。という事を、同じ東エリア(俺は北東だったが)でイベントに参加していてプレイヤーが密集しているのを視界に収めながら考える。
現在時刻は午後6時35分。結果発表は中央広場で盛大にやるそうなので、いい場所を取りたければ早めに位置取りをした方がいいだろうが……生憎と俺は花見や遊園地のパレードなども、チラッと見れればいいかなぁ程度の人間なのでなので、そこまで場所に執着は無い。花見は大人数でどんちゃんやるよりも1人で静かに眺めてたいのだ、大人数でやる時はやる時でそのどんちゃん騒ぎを楽しめるから構わないのだが。
俺達3人の中で場所に一番執着の強いのはリクルスなのだが、今回は特に何も言っていないので平気だろう。花見とかやっても全然桜見ないのにやたら場所にこだわる奴いるでしょ?まさにそれだよ。その代わり一番盛り上げるんだけどね。
そんなことを考えながら俺は集合場所に指定された『泣鹿亭』に向かう。リクルスは一度行った場所は瞬時に行けてもいいんじゃね?とか言ってたが、広大なフィールド間の移動はともかく町中の移動すらめんどくさがるのはどうかと思う。
と、普段はそう思っているのだが、さすがにこの人口密度だと少し歩くのも億劫になるな。普段はそんな事は感じないのだが……今日1日ログイン出来なかった事で一斉にログインしてきた結果そうなってるのだろう。さすがに結果発表まで1時間しか無い中で町周辺の雑魚を狩りに行くプレイヤーはいないだろうしな。いたとしてもそれは少数派だろう。
カレットとリクルスの2人は多分真っ先にログインしてるだろうから変に町中を探す必要は無いので、ログイン地点から直接『泣鹿亭』へ向かう。
「それで……ってあれ?トーカじゃないか!」
人の多さにげんなりしながら歩いていると、突如として声がかけられる。俺は大体俺とリクルスとカレットの3人でパーティを組んでいたので、俺に声をかけてくる様な知り合いなんていないと思うが……
そう思いながらも振り向くと、そこには数少ない俺の知り合いであるリベットと、もう1人見知らぬプレイヤーの姿があった。
「ん?おぉ、リベットか、奇遇……でも無いか?」
「はは、かもな。ログインが密集してる時間帯だろうし、2人とも東にいたからな」
「それにしてもよく気が付いたな、カーソルで名前が見えるとは言えこの人混みだ、見逃してもおかしくなかったと思うが……」
「まぁたまたまかな、チラッと神官服が目に入ってもしかしてと思って名前見てみたらトーカってあったからさ、あの狐のお面は被ってなかったから一瞬見逃しかけたよ」
リベットが言ったように、俺は今イベント中に付けてた白狐面は装備していない。理由は単純、現段階で顔を隠す装備のプレイヤーは意外と目立つ。
白狐面の効果である『認識阻害』でカーソルのプレイヤーネームは見えなくなるとは言え、さすがに大人数の中で注目を集めるというのは避けたい。それが尊敬とか憧れなどの物ならまだしも、珍しい物を見るような視線は結構見られる側としては不快なものなのだ。
他にもリクルスとカレットにからかわれそうと言うのもある。INTが上がる以上戦闘時は付けるが、平時に町中で付けたいとまでは思わない。
「えっと……リベット、この人は?」
俺とリベットが話していると、リベットの傍らにいたプレイヤーが遠慮がちにリベットに尋ねる。
「あぁ、ごめんごめん。この人はトーカ、イベントの時に一緒……って言っていいのかは分からないが、ボスと戦った人だよ」
「そこは一緒でいいだろ」
「いや、まぁ……うん……」
そこで目をそらすなリベットよ。まぁ確かに一緒に戦ったと言っていいかは微妙なラインだけど……そこは一緒に戦ったでいいだろ。むしろ俺ボス戦お前以外と一緒に戦った記憶ないんだけど。お連れの人もポカーンしちゃってるじゃん。
「今紹介があったけど俺はトーカ、リベットとボス戦で共闘したフレンドだ」
「あぁ!リベットが言ってた人ですか!僕の名前はウォルカスです。メインは生産、特に鍛冶をやってます。よろしくお願いします」
「これはご丁寧にどうも。こちらこそよろしくお願いします」
ウォルカスが丁寧な言葉で挨拶してくるので、こちらも自然と丁寧な言葉使いになる。確かに普通は初対面の人にはそういった対応をするべきだよな。リアルじゃ間違っても初対面の人に「鷹嶺 護だ」とか言わないしな。とは言えゲーム内でまで敬語などでしっかりとするべきなのか……ここら辺は迷う所だな。
ちなみにリベットがイベントの時に言っていた親友は彼だと補足を入れてくれたのだが、なんとなく察しは付いていた。
「リベットとはイベントの時にフレンドになったんですよ、彼がボスと戦ってる所を見てカッコイイなと思いまして」
「あぁ、その節はお世話になりました。おかげさまで工ぼゲフンゲフン町が無事だった様で……本当にありがとうございました。あと、ゲーム内ですし普通に喋って貰って大丈夫ですよ」
今この人工房って言いかけなかったか?まぁリベットの話を聞く限りだと相当工房を持つのに苦労したそうだけど……
「あぁならそっちも楽にしてもらって構わないぞ、パッと見た限り歳も近そうだしな」
「いえ、僕はこれが素なので大丈夫です。親がそういった礼儀に厳しくて半分癖みたいた物なので」
「でもウォルは丁寧な言葉の割に結構腹黒い事考えたりするからなぁ、トーカも気を付けろよ」
「そんな事は無いとは言えませんがそういう事は言わなくてもいいでしょう!」
「ははは、2人は本当に仲がいいんだな」
「そりゃかれこれ10年以上の仲だしな」
その後少し立ち話をして2人と別れたトーカはそのまま『泣鹿亭』目指して歩いて行く。ちなみに話の中でウォルカスと結構気が合い、フレンド交換もしっかり済ませている。多分メイとも気が合うんだろうなぁと思いながら歩みを進める。
『泣鹿亭』の位置関係上、『泣鹿亭』を目指すと自然と足は大通りからそれた小道に向き、人通りも道の細さに比例して少なくなっていく。
「遅かったじゃん、なんかあった?」
「むぐもっ!……ごくん、ようやく来たか!」
俺が『泣鹿亭』の扉を開けると、やはり既に来ていたリクルスとカレットに出迎えられる。カレットは丁度焼き鳥(または焼き兎)に齧り付いたばかりだった様で、慌てて食べ切った様だ。喉に詰まらせるなよ?(ゲーム内で喉に詰まるのかは知らないが)
ちなみに大将は厨房で調理をしており、こちらをチラッと見て「おう、来たか」と言うとすぐにまた背中を向け調理を再開した。いらっしゃいくらい言ってくれてもいいんだよ?
「大将、焼き鳥一皿」
「トーカ、お前は自分でやりやがれ」
「今の俺は客なんだけどなぁ……」
リクルスとカレットが座っているのはカウンター席で、間が1人分空いていたので、そこに腰を下ろし注文すると自分でやれと言われた。確かに一時期この店でバイトさせられてたけどさ……
しぶしぶ厨房にたって調理の準備をしている時にチラッと大将の方を見ると、兎の解体をしていた。あれ?俺等はドロップアイテムとして肉が出てくるんだけど……
なにか踏み込んでは行けない領域を垣間見た気がしたトーカはそっと目をそらし、自身の料理に取り掛かる。
えーっと……あ、鶏肉もってねぇや。そうだ、俺も焼き兎にするか。えーっとウサギ肉は……そういや『上質なウサギ肉』ってのもあったな、ってあれ?量が多くなってる様な……あぁ、イベントで兎大量に狩ったからか。
実は、イベントモンスターのアイテムはポイント換算されて入手は出来ないのだが、ボス討伐後のエリアではポイント換算とは別にしっかりとドロップアイテムとして入手出来ているのだ。
そういう意味でもボス討伐後はボーナスエリアと言えるだろう。
「おっ、『ヘビ肉』なんてのもあるな、これは《スタンピード・スネーク》からのドロップアイテムだな」
他にも『蛇皮』なんてのもあった。財布にでも入れてみるか?あれ、それは抜け殻だったっけ。まぁいいか。
「まずはヘビ肉と串を……ってこれヘビ肉ってかまんまヘビじゃん」
いざ調理を開始しようとヘビ肉を取り出すと、ウサギ肉のようにブロック肉の状態ではなく、全長10cm程度の小さなヘビの姿になっていた。
これをドロップした大元の奴はもっとでかかったんだけど……
とりあえず開いて見たが、特に内臓の類は無く身がぎっしりと詰まっていたので、そのまま焼いても大丈夫だろう。一瞬ソーセージを想像したが実際その解釈で間違って無さそうなのがなんとも言えない。
そんなヘビ肉は、串に真っ直ぐ刺すとさすがに長すぎるので、くねらせて串に刺すことにした。ちょっと食べずらそうではあるが、ボリューム感があっていいだろう。
何故かヘビ肉などの肉類が大量にあったので(現実逃避)興味津々にこちらを見ている2人の分も含めてヘビの串焼きを5本、焼き兎を15本を焼いていく。まだ『料理』のスキルレベルはあまり高くは無いが、店の設備がいいのと、単に焼くだけと言う簡単な調理ーー焼き一生と言う言葉があるくらいだしそんな事を言ったら焼きの大変さを知ってる人にキレられそうだがーーなので失敗する事も無く焼き上げる事が出来た。
「トーカ、その美味そうなヤツは……」
「安心しろ、しっかりお前等の分もあるから」
「おぅ、トーカ。俺の分は無ぇのか?」
「大将……はぁ、1本どうぞ」
「おっ、優しいねぇ、ありがたく貰うぞっと」
大将にもヘビの串焼きを1本手渡し、カウンターに座っている2人の皿にも1匹ずつ置いてやる。サイズが結構大きいので、焼き鳥が5本乗っていた皿に1本しか乗らなかったが、2人既に空き皿はあるので問題は無い。ついでに焼き兎も5本ずつそれぞれの空き皿に乗せてやる。
「おぉっ!これもこれで美味い!」
「焼き兎とも焼き鳥とも違う味で美味いッ!トーカおかわり!」
「食べるの早いな……てか夕飯の直後なのによくそんなに食べられるよな」
「美味しいものは別腹だ!」
それってスイーツとかに用いられる理論なんじゃ……美味しいものは別腹ってそれ美味ければ無限に食えることになるだろ。
「俺がまだ食ってないからおかわりは無理だ、また今度作ってやるから我慢しな」
そう言いながら俺もヘビの串焼きを頬張る。
弾性のある肉質で噛みごたえは抜群だ。味付けは塩だけと言うシンプルな物だが、素材本来の味だろうか結構な旨味がある。
現実ではヘビなんて食べた事は無いが、ネットなんかでは鶏肉に近い味がすると書いてあったので焼いてみたが正解だったようだ。
そのままヘビの串焼きと焼き兎を齧りながら、俺とリクルスとカレット、そして解体を終わらせた大将の4人で談笑しながら結果発表が始まるまで過ごすのだった。
ちなみに意外と話が弾んでしまい、気が付いたら55分で焦って中央広場まで走っていく事になってしまった。
ヘビ肉……実際どんな味がするんでしょうね?
鶏肉やササミみたいと言う意見もあればよく分からない、味がしない、などの話も見かけ、よく分からないです、1回ぐらい食べてみたいものです
次回も早ければ3日後、遅ければ5日後最低でも一週間以上は空けないようにします
生活の変化などで執筆時間がなかなか取れない……
感想も読ませては貰ってますがなかなか返せず……申し訳ない
今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!
おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします
ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!
今後も当作品をよろしくお願いします!




