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第48話 現実世界とリンゴ

当初の予定ではリンゴがサブタイ飾るほど出張る予定は無かったんですよ……書いてるうちにヒートアップしてしまいましたが




「ふぅ、結構疲れたな……」


《EBO》からログアウトしたトーカ……鷹嶺 護は、長時間のログインで固まった体をほぐすようにベッドの上で伸びをしたり軽くストレッチをしたり、首をポキポキ鳴らしたりしている。


ふと護が外に視線をやると、ログイン前はまだ明るさを残していた外の景色は既に闇に飲まれ、夜の帳が降りていた。その色の違いが今回の激戦の濃密さを物語っているようで、護は数秒の間、何の変哲もない、見慣れたはずの風景に見入ってしまった。


しかしそれは、隣の米倉家から「うぃぬぬぬぬろぁ〜」と言う奇声が聞こえくる事で中断された。

恐らくその奇声の主だと思われる瞬は、伸びなどの体をぼぐす動きをする際に変な声を出す癖があるので、特に気にせず瞬のスマホに「うるせぇ」とメッセージを18件程送っておく。


「初日もそうだったけど長時間やり続けると体が固まってしょうがないな……」


肩を回すと鳴る、ポキポキという音を聞きながら呟く。


ゲーム内では忙しなく動き回ってるとはいえ、現実の体は1歩も動いていない。それでは体が固まってしまうのもしょうがない。

平日はそうでもないのだが、今日みたいに長時間プレイを続ける休日なんかは何かしらの対策が必要だろう。


そんな事を、屈伸した時に膝からなったポキッと言う音を聞きながら考える。そこで、ふと喉が乾いてる事に気付き、階下へ降りる。そして冷蔵庫から麦茶を取り出し、コップ2杯半程を一気に飲み干す。


うーん、体は1歩も動かないとは言え、脳はフル稼働してたし軽く小腹が空いてるな。一日中勉強してるとずっと椅子に座ってても腹が減るしそういうもんなんだろう。


今からガッツリ食うのも流石に躊躇われるので、冷蔵庫の中にあったリンゴでガマンする事にした。リンゴを取り出す時にチラッと先日特売で買った豚肉が目に入り、焼いてタレかけて白飯と一緒に食べたい誘惑に襲われたが、何とか理性を効かせてリンゴに手を伸ばす。


パパッとリンゴをウサギ型に切ってからお皿に盛り付けると、何故か無性に麺棒か何かで殴り付けたくなる欲求に駆られたが、ここは現実だと自分に言い聞かせる。イベントで大量に兎爆弾作ってたからな……


「はぁ……こうやって現実とゲームの区別がつかなくなってくるんだろうか……」


ゲームはゲーム、現実は現実でしっかり意識を切り分けなければと己に言い聞かせ、誰もいないリビングに向う。


うさちゃんリンゴに爪楊枝を刺す手に力が入ってしまったのはしょうがない事なのだろうか……そういう所も気を付けないとな。


リンゴを食べ終えた後は、リンゴを切った時に出た洗い物をちゃちゃっと済ませてから自室に戻る。

今この家には自分以外誰もいないので、別に自室に行かなくてもいいのだが、やはり自室が一番落ち着くので自然と足がそちらに向う。


「疲れたから今日は早めに寝るか、体は動いてないけど精神が疲れるんだよな、ふぁ〜」


欠伸をしながら自室のドアノブに手をかけ、扉を開ける。


「あっ!やっとき……

「あっ!どこいっ……


バタンッ!


部屋の中にいた二つの人影の姿を確認した瞬間に自室の扉を超速で閉める。あれ?なんかデジャヴ……


…………まぁ、たまには和室で寝るか。日本人たるもの日本文化は大切にしないとな。


そうして護は鷹嶺家の和室(普段は客室として使われている。主に瞬とか明楽とかが泊まりに(押しかけて)来た時用)に向う。二階にも空き部屋はあるのだが、あえて一階にある和室へ向う。

普段はベッドだし、たまには布団も悪くないだろう。


そう考え、護が扉に背を向けた瞬間。「待てぇぇぇぇい!」と叫びながら扉を開け放たれ、人影が飛び出してきた。

完全に不意を突かれる形になった護は、一瞬体をビクッとさせると、一瞬浮きかけた足が沈むのと同じタイミングで左足を軸足として体ごと振り返り、右足で蹴りを放つ。


「今何時だと思ってる、近所迷惑だ」

「ひゃ、ひゃい……」


飛び出してきた人影……いつの間にか侵入していた瞬の顔の真横で足を止め、注意する。瞬は、若干顔を引き攣らせながらも返事を返してきたので、とりあえずは足を下ろす。


「こ、怖かったぁ……」

「変な事するからだろ」


本気でビビっている瞬を促して自室に入り、もう1人の侵入者と顔を合わせる……言わずもがな明楽である。


「それで?こんな時間に何のようだ?」


いくらイベント終了直後とは言え、現在時刻は午後10時過ぎ、無断で人の家に押しかけるには非常識な時間だろう。そもそも無断で人の家に押しかける事が非常識だろ、と言うツッコミは聞こえない聞こえない。まぁ無断で押しかけてるのは今に始まった事じゃ無いしな。


「それはほら、イベントはどうだった〜的な?」

「そうそう、やはり近くに住んでるのだからリアルで顔を合わせて話したくてな」


俺が理由を聞くと、瞬と明楽はそう答える。まぁ気持ちは分からんでもないが……


「明日の朝でもよかっただろ。なんで今なんだよ」


問題はそこ(時間)である。確かに、話すならメールやチャットよりも、実際に顔を合わせて話す方がいいだろう。特有の煩わしさはあるかもしれないが、大体は実際に顔を合わせた方が話しやすい。


「「イベントで興奮して居ても立っても居られずに」」

「仲良しかよ」


一言一句違わずにハモった説明に思わず突っ込む。時たま瞬と明楽の言動が完全に一致する事があるが、それを見せられるとつい突っ込んでしまうのだ。


「それにしたって事前にメールするなりしてくれればいいのに……俺は別に構わないけど人によっては通報もありえるぞ」

「「通報されかけた記憶があるんですが……」」

「ん?なんだって?」

「「なんでもないです!はい!」」


ビシィッ!と背筋を伸ばす幼馴染み達、相変わらず息ピッタリだな、少し疎外感を覚えるぞ。


「まぁいいや、明日休みだし少し話すか。小腹空いてるだろ?ちょい待ってな」

「俺唐揚げがいい!」「私はお好み焼きがいいぞ!」

「そんな重いもん出すか!リンゴ剥いてくるから待ってろ」

「「は〜い」」


瞬と明楽を部屋に待機させてリンゴを剥いてくる。

20分ほどして戻ってきた俺は、明楽にはノーマルバージョンとうさちゃんバージョンのミックスを乗せた皿を、瞬には丸々1個のリンゴをそれぞれの目の前に置く。


ちなみに、この部屋には俺の勉強机の他に、瞬や明楽が来た時用の机も用意してあるので、今はそれを使っている。


「おおっ!相変わらず小洒落てるな!普通の大きさのうさぎの他にも半分くらいの大きさのうさぎもいるじゃないか!」

「あぁ、何となく遊び心でな」

「母親に群がる子うさぎみたいで可愛いぞ!」

「だろ?結構作るの大変なんだぞ」

「ほえ〜」


明楽は俺の作ったうさちゃんリンゴ(親子Ver)を目をキラキラさせながら色々な角度から見たり、写真を撮ったりしている。早く食べれば?流石に白兎が茶兎になるのは見たくないんだけどなぁ……


俺の思いが通じたのか単に満足したのか、明楽はもしゃもしゃとうさちゃんリンゴを食べ始める。あれだけ可愛いとか言ってた割には容赦なく頭から食べていくんだな……あっ、今度は頭に爪楊枝刺して尻尾からちびちび食べてる。

明楽は「美味いっ!」とか言いながら食べてるが……無意識っぽいしイベントの後遺症だろうな。

俺にもあったし、しょうがないよね。


「おぉ〜凄いなぁ……っておい!」

「ん?どうした瞬、食べないのか?」

「いや!これはおかしいだろ!?」


そう言って瞬の目の前に置かれたリンゴを指さす。そこにはそのまま木に実っていても問題なさそうなリンゴが……


「どこかおかしいか?」

「えぇッ!?」


瞬がギャーギャー騒ぎ立てる。わがままだなぁ……何が不満なのだろうか。


「ほら瞬、ギャーギャー喚いてないで早く食べろよ。あ、でもその前にヘタの部分持って持ち上げてみな」

「ギャーギャー喚きたくもなるわ!こんなんただのリンゴじゃん!丸々一個ってのはいいにしてもさぁ!明楽のは剥いてあって俺のはノータッチじゃん!男女差別いくない!」

「いいからヘタの部分持って持ち上げてみろよ、面白いぞ」

「なんだよ……ってうぇぃ!?」


俺の言った通りに、瞬はヘタの部分を摘んで持ち上げる。文句を言いつつしっかりとやって見るのがコイツの面白いところだよな。


「なんだこれ!?某国民的アニメ(日曜日の憂鬱)よろしくリンゴが上下に分離した!?」

「それだけじゃないぞ、中も見てみろ」

「ん?まだ何かあるの……かうぇッ!?中がくり抜かれて真っ白いウサギが!」


そう、瞬に出したリンゴは上下分離式で中にはミニウサギリンゴを入れてあるのだ!実は作業時間の7割はこのミニウサギ制作に費やされている力作だったりする。


瞬が面白いくらい反応してくれるので、頑張って作った甲斐があったな。明楽も面白い反応をしてくれそうだが……やっぱり瞬を弄りながらやる方が面白いな。


俺は内心ニヤッと笑いながら、驚いてる瞬に(追い討ち)をかける。


「はぁ……頑張って作ったのにただのリンゴ呼ばわりか……酷いなぁ、瞬は本当に酷いなぁ……(棒)」

「えっ!ちょっ!いや……」

「めっちゃ頑張ったのになぁ……一つのリンゴを切り離さないようにウサギ型にするのめっちゃ大変だったのになぁ……(棒)」

「えッ!?ホントだ!切り離されてない!ちょ、お前これ削り出して作ったのか!?」


俺の渾身の演技(超棒読み)に、声色と長年の付き合いから冗談とは分かりつつも、自分に非があるのは理解していた故にどう反応していいか分からずに言葉に詰まっていた瞬が、俺渾身の作品の秘密に気が付いた様で、驚き半分、驚愕半分の声を上げる。


「あぁ、そうだぞ?雪兎をイメージしてみた。特に尻尾と耳に苦戦したな」

「やたら遅いなぁとは思ったけど……まさかこんなの作ってたとは……雪兎ってなんかデフォルメされてんじゃん、でもこれ結構リアルに作ってあるじゃん……」

「作業時間のほぼ全部がお前のリンゴ作るのに費やされたぞ」

「本当に無駄な所に力入れるよな、お前って……」

「うわーむだっていわれたーおれのどりょくをむだっていわれたー」

「なにその棒読み!?」


俺と瞬の愉快なやり取りを横目に、隣でうさちゃんリンゴをもしゃもしゃしていた明楽が瞬の目の前に置かれたリンゴに、より正確にはリンゴの中にいるウサギに反応する。



「ぬおっ!?瞬のリンゴにもウサギが!?護、護!写真撮っていいか!?」

「もう食べ終わったのか!?まぁ食べるのが早いのは今に始まった事じゃないか。写真なら俺より瞬に聞いてくれ、一応アイツのだからな」

「瞬!写真撮っていいか!?」

「え、俺もそろそろ食べた「ありがとう!」

「返事を待たずに写真撮り始めた!?」


瞬の突っ込みも虚しく、明楽は瞬を押しのけ、俺渾身の作品、『兎内包接続型上(ウサギイ)下着脱式林檎ンリンゴ』をこれまた様々な角度やパターンで撮りまくっていく。俺としてはそこまで写真に撮りたいとは思わないのだが……これが男女の差って奴なのかね。


結局、明楽の撮影が終わり瞬がリンゴにあり付けたのは、これから5分後の事だった。


君達、何しに来たのさ。原因作った(リンゴ出した)のは俺だけどさ……


感想欄でのご指摘で、更新予定日時を伝えた方がいいとのアイディアをいただき、確かにと思ったので軽く予告をば


とは言っても感想欄でもちろっと言いましたが、作者の執筆速度は非常に安定しないので、本当に大まかなものとなります


まだ何も書けていないので、次回は出来れば3日後までには、最低でも1週間後までには投稿したいと思います


今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!


おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします

ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[一言] 護器用だね
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