第46話 正直やり過ぎたと思ってる
今回と前回のサブタイトルを繋げて読むと、作者とトーカの気持ちを代弁しています
「ちょいちょいちょいちょい!山田さーん!斎藤さーん!吉野さぁぁぁぁんッ!これどうすればいいんですか!?こんなプレイヤーいるとか聞いてないですよ!?どうすればいいんですか!?もしかしなくてもイベントフィールドが死にますよ!?」
トー……プレイヤーXが【グラビトンウェーブ】でやらかそうと空を駆け上がり始めた頃、とある部屋ではパソコンに向かって絶叫している1人の若者がいた。
パソコンに向きながら絶叫している若い男性ーー加藤 満(22)、イベント構成担当の運営チーム最年少で二児の父、趣味は森林浴と温泉巡り(お気に入りは草津温泉)。双子の兄妹(3)を大変可愛がっていて、家族写真を待ち受けにしているーーは先輩方に助言を乞う。
しかし先輩達は口を揃えて言う、「「「どうすればいい?そんなもんこっちがしりてぇよ」」」、と。
しかし救世主が現れた。それは、彼等より少し早く被害にあったがために少し早く対策を取るために動き出せていた男性、山田だ。
救世主が施した対策。それは他でもないプレイヤーXへの『手加減』の付与である。
◇◇◇◇
「……………………っぁ……っはぁ!」
生命の気配がまるで無い草原にドサリと倒れ込む人影が一つ、トーカである。
トーカの全身全霊の【グラビトンウェーブ】が、より正確に言えば【グラビトンウェーブ】の起点となる亀甲棍の1点が地面に触れ、衝撃波が大地を駆け抜けた瞬間、トーカの時間が止まった。
あまりの負荷にトーカが【グラビトンウェーブ】の被害処理を一気に行った反動でフリーズしてしまったのだ。VRMMOと言うゲームに置いてフリーズと言うのは最も起こりにくい不具合であると言えるだろう。
しかし、そのフリーズが起こってしまったのだ。トーカの【グラビトンウェーブ】により、あまりに広範囲のモンスターが一斉に消滅した際の処理がトーカに一気に降りかかったのが原因なのだろう。
幸いと言うか、ナイス山田と言うか、強制発動された『手加減』の効果でフィールドへのダメージは全カットされたため、環境の変化は無かったが、辺り一帯のモンスターは余さず消し飛んだようだ。
確定耐えの《スタンピード・スネーク》や、恐らく持っていると思われる《スタンピード・リザード》だが、【グラビトンウェーブ】の衝撃波でHPを限界まで削られ、『飛ばし屋』も含めたノックバックでお空へ、素敵なお空の旅の後は着陸です。当然モンスターにも落下ダメージは入るので、それで終わりです。
「数秒とは言え動けなくなるとは……金縛りってこんな感じなのか……」
珍しい体験をした事を少しばかり楽しみながら、寝っ転がるのをやめ、土埃を払う動作をしながら立ち上がる。
辺りを見渡せば、モンスターの残光が辺りを埋め尽くしていた。呆気に取られ固まってしまったが、数秒もすると残光も空に溶けて消えてしまい、閑散とした草原だけがその場に残された。
【ハイヒーリング】のおかげで、落下ダメージで死ぬと言う事は免れた。だが、【グラビトンウェーブ】によるモンスターへの無差別大虐殺の代償は大きく、負荷に耐えかねた亀甲棍が砕け散ってしまった。
なんだかんだで初日から連れ添った相棒との別れは辛いものがある。それも激戦の果に散るのではなく、俺の無茶が原因と来れば尚更だ。亀甲棍を握っていた右手に向けて小さく「ごめんな。いままで、ありがとう」と呟く。
手に残っていた亀甲棍の残骸が溶けるように空中に消えていくのをトーカはゆっくりと見つめていた。
打撃系武器を持っていないトーカなど、ただのちょっと殴れる器用貧乏な神官なので、亀甲棍との別れによる軽い放心状態から復活してすぐに、慌てて『初心者のメイス』を装備する。
初期装備なので亀甲棍とは比べ物にならない程低い性能なのだが、打撃系武器さえ持っていれば大体の敵なら粉砕できる火力は確保できる。現に亀甲棍から初心者のメイスに変わったことで、STRが25下がり、AGIが5上昇したが、正直ここまでくると25の差などあってないようなものだろう。まぁ絶対にあった方がいいのだが。
「あ……さっきの結果は……うん、もういいや」
遅れて出現した惨劇の結果を示すウィンドウをチラッと一瞥し、すぐ閉じる。チラッと見ただけでもう見る気が失せてしまった……
暴走兎……10P×99+α
暴走狼……20P×99+α
暴走(ry
みたいなのがズラッと並んでましたよ。もうね、見る気なんて一瞬で萎えたよ、怖くなって来て反射的に閉じちゃったぞ。
1回閉じたら再び見る事は出来ないので、もうどの程度の被害だったかを確認する術は無い。それがいい事なのか悪い事なのかは……トーカには分からない。分かりたくない。
《称号『いいとこ取り』を取得しました》
《称号『横取り』を取得しました》
《称号『意志を持った災害』が『災厄の権化』に変化しました》
《レベルが上昇しました》×4
《運営からのメッセージが届きました》
「このイベント始まってからレベルがグングン上がってくな、【グラビトンウェーブ】での大虐殺2回にボスのほぼ単独討伐だからな、仕方ない……のか?」
考えたら負けな気がする。リクルスとカレットに勝ち誇れる内容が増えたんだしいいじゃないか、と自分を誤魔化しておこう。
レベル上がったばっかなのに一気に4も上がるのおかしくない?とか、そもそもレベル上がるの早くない?とか言いたい事はいっぱいあるけど……まとめて意識の隅にそぉぃっ!
えーっと、称号は……『いいとこ取り』はカレットのと同じだな、トドメ刺したら経験値が1.2倍になるってやつだ。
それで……他のはっと。
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『横取り』
人の獲物を横取りをしまくった証
自分以外のプレイヤーによって
HPを減らされている相手へのダメージが1.2倍
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あぁ……【グラビトンウェーブ】で他のプレイヤーと戦闘中のモンスター横取りしちゃったんだな、本当にすいません……
って【グラビトンウェーブ】の被害が他のプレイヤーのいるエリアまで到達したって事だよな?相当迷惑なんじゃ……やばい、尋常じゃない罪悪感が……
……かもんねくすと!
に、逃げた訳じゃ無いぞ!?
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『災厄の権化』
もはや災厄です(断定)な証
範囲攻撃に災厄属性を付与
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運営に断定された……一応プレイヤー何ですけど……確かに【グラビトンウェーブ】は災害って行っても過言では無いけど……
ところで……災厄属性って何ですかね?
え?一種のレイドボスクラスのモンスターが持つ特殊属性?倍率が1.5倍と低い代わりに(通常弱点はダメージ2倍)全ての存在に弱点判定が付く?アイテム破壊にボーナス?相手に確率で恐慌の状態異常を与える?……もういいです、お腹いっぱいです、勘弁してください。そんなもの受け取れません返却いたします。え?出来ない?受け取ってくださいよぉぉぉぉ!
はっ!錯乱してた。
絶叫を中断し辺りを見渡すと、チラホラとモンスター達がリポップし始め、少しずつ周囲は喧騒を取り戻し始めていた。俺は初心者のメイスを握る手に込める力を少し大きくしながら、誓った。
流石に全力の【グラビトンウェーブ】は自重しよう、と。
そのまま『疾走』を駆使して奥へ駆け出す。充分速度が乗ったら、『跳躍』で斜め前に飛び上がり、そこからは『空歩』での移動に切り替える。
なんか空を跳ぶのが普通になってきたな……このイベントで変な方向に進んだ気がする。果たして普通の神官に戻れるのだろうか……と言うか狩人らしい事して無いな……イベントの最初の1発だけじゃないか?まぁ神官らしい事もして無いのだが……
そんな事をぼんやりと考えながら、モンスターが再び湧き始めたとはいえ、未だ閑散としている地上が高速で後方へ流れて行くのを尻目に、トーカは奥へと進んでいく。何故か地面は無傷だが、木々や岩などのオブジェクトは綺麗に無くなってたな……まぁ気にしたら負けだ。
……………………やっぱ見なきゃダメ?これ
やり過ぎたとは思ってる。ただ限界まで突き抜けてみたかった、だってイベントだもの。
災厄属性に付いては賛否がありそう……まぁやっちまったもんはしょうがない!
今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!
おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします
ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!
今後も当作品をよろしくお願いします!




