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第41話 捨てる神あれば拾う神(官)あり


コメント欄での大量の指摘を受け、やはり『呪術魔法』が強すぎると言う結論に至ったので修正致します。


『頼む……待ってくれよ……そっちは……そっちはダメだ、ダメなんだ……アイツの、アイツがようやく手に入れた場所を壊させる訳には行かないんだよ……!』


(さわ)れぬ手を伸ばし、届かぬ声を(つむ)ぐリベットは、必死に、縋り付く様に《劣地竜(バジリスク)》に声を投げかけ続ける。


しかしその声は、その手はその巨大な背中に届く事はなく、《劣地竜(バジリスク)》は着実に町へと、彼の親友がようやく手にした工房のある東門へと近付いていく。


『ごめんな……止められ、なかった……本当に、ごめんなぁ……』


遂に膝を折り、その場に崩れ落ちるリベットの霊体、その口からは守れなかった悔しささと不甲斐なさを混ぜ合わせたのここには居ない親友への言葉と、彼の心情を何よりも雄弁に語る涙が零れ落ちていた。


しかし、そんな涙も、草原の地面を濡らす事すら出来ずに虚空に溶け、掻き消えていく。


「【………………】ッ!」


『ッ!?』


膝を折り、地面に四つん這いになっていたリベットの耳にふと声が聞こえた気がし、ハッと顔を上げ、辺りを見渡す。


もしかしたら、他にも誰かが《劣地竜(バジリスク)》に挑んでいるのかもしれない、そう希望を持って《劣地竜(バジリスク)》に視線を向けるが、《劣地竜(バジリスク)》は先程までと全く変わらぬ様子で悠々と町へ向けて這いずっているままだった。


いや、『全く変わらぬ』と言うのは少し語弊があるだろうか。

去りゆく《劣地竜(バジリスク)》の巨体に少し何かがまとわりついている様な気はしたが、それはもはやリベットには関係無い事だ。


『気のせい、か……』


落胆の声を零し、《劣地竜(バジリスク)》に向けていた頭を、もう1度地面に向けたその時。


「オラァッ!【グラビトンウェーブ】ッ!」


『ッ!』


聞こえた、今度そこ聞こえた。気のせいではない、確かに誰かの《劣地竜(バジリスク)》へと挑む声が、リベットの耳に届いた。


そして、バッと視線を上げた先にいた《劣地竜(バジリスク)》は……


ドガァオォォォォォォォンッ!!!!!


『ギシュァァァァァァァァァァァァァァッ!?』


轟音と共に、冗談抜きで言葉の通りに吹き飛ばされていた。


◇◇◇◇◇


時は少し遡り、《劣地竜(バジリスク)》ーー東エリアのイベントボスの出現地に空を跳びながら猛スピードで向かっているトーカへと場面は移る。


「意外と遠いな……まぁ俺が奥に行き過ぎなだけなんだが」


軽くボソッと呟いてからこの時間をどう潰すかと思案した後、取得した『呪術魔法』を少し確認して見る事にした。

確認とは言ってもそこらのモンスターに使ってる時間は惜しいのでわざわざ足を止めたりはしないが。


ちなみにMPに関しては心配ない。と言うのも、イベントの準備期間の間にメイにMPポーションを頼んでおいたのだ。無理そうなら別に大丈夫だとは伝えたが、しっかりと当日までに10本は用意してくれた。それに俺が作った4本も加えて計14本のMPポーションを所持している。

そしてすべからくメイから貰ったMPポーションの方が性能がいいと言うね。いや、別に悔しくはないんだよ?だってメイは生産が本職だしね、だから別に悔しくなんか無いぞ?


それを、魔術士のカレットの方がMPは多く使うだろうと、カレットには9本渡し、残りの5本は俺が持っている。リクルス?アイツはMP使わねぇだろ。使ったとしてもあればあるだけ使うのがリクルスなのでそこまで渡さなかっただろうけどな。


「ただ……カレットは俺が渡したMPポーションの事覚えてるのか?」


不安な点はそこだ。イベント直前の慌ただしい時に渡した俺も悪いとは思うが、カレットの「?よく分からんが了解だ!」と言う返事を思い出し不安に駆られている俺であった。


閑話休題


気になる『呪術魔法』の効果は、簡単に言えば『付与魔法』の真逆バージョンと言えるだろう。

レベル1で使用可能になるのは【弱化の呪い・攻】と【弱化の呪い・防】、前者は相手のSTRを下げる呪いで、後者はVITを下げる呪いだ。


ちなみに取得条件は『付与魔法Lv.5』かつ称号『外道』の所持でした。


しかも『付与魔法』には無い効果まで付いている。それは、呪いと言うだけあって、持続時間も長く、と言うか術者が解かない限り自動回復することは無く、解呪も術者が解く以外での解呪で簡単には出来ないと言う、実に厄介な性能を誇っている。


まぁ強みがあれば弱みもある。という事で『呪術魔法』には『付与魔法』にはないデメリットが存在する。

それは、『呪術魔法』を発動する際には実際に詠唱ーー呪文を唱えなければならないと言うものだ。


いい年して厨二な呪文を公衆の前面で口走るのも、恥ずかしいと言えば恥ずかしいのだが、そこはゲーム内と言う事で現実よりは(心への)被害が少ないだろう。


しかし厄介なのは途中で呪文を唱えるのを止めてしまうとその呪いは発動失敗(ファンブル)してしまうのだ。

これが実に厄介で、呪文を唱えているからどんな効果の呪いを掛けてくるのかも丸分かりだし、妨害して呪文を紡ぐのを中止してしまえば発動せずにMPだけ無駄に持っていかれる事になる。

更に発動失敗(ファンブル)すると一定の確率で呪いが自分に跳ね返ってくることもあるらしい。


でもまぁ……


「相手のVIT(防御力)を下げられるってのはありがたいな、火力が更にインフレする。この移動で『空歩』と『跳躍』もまたレベルが上がったしな、1回でいいから全力で【グラビトンウェーブ】打ってみたいな……」


そんな恐ろしい事をボソッと呟くトーカ。運営の「やめてくれッ!いや、マジで!」と言う声が聞こえてくる様だ。


「以外と遠いもんだな……一応『疾走』も発動してるから結構早いはずなんだが……」


どうしたもんかな……そうだ、【グラビトンウェーブ】による大災害でレベルが3上がったからポイント振り分けちゃうか。


…………はい、振り分け終了。


30あったSPをINTに20、STRに10割り振りましたっと。

他には特筆すべき点は無いからな、特に悩む事も無いし数秒後で終わってしまったな。


他には……そうだ、なんか増えた色んな称号でも確認するか。


==============================


『呪術士』

呪術に手を染めた者の証


==============================


うん、大丈夫。まだ使ってないから……これから使うけど……

別に呪術が悪って訳じゃ無いし……『呪術魔法』持ってる時点で『外道』ではあるけど……


次だ次!


==============================


『恐怖の体現者』

圧倒的恐怖を齎す者の証

威圧系スキルの効果上昇

常時威圧(弱)を発する


==============================


まぁ……さっきはやりすぎた感はあるよな。

ちょっと空跳んで頭冷やす(物理)したら流石にやりすぎたと思ったよ、うん。ただねぇ……これ威圧OFFに出来るの?あっ、出来るんですか、そうですか。


次ぃ!


==============================


『危険人物』

とても危険な人物である証

もうやだこの人……ホント怖い……

初めて出会うNPCから恐れられやすくなる


==============================


……………………怖くてごめんなさぁい!


次ぃ!(泣)


==============================


『爆弾魔』

大量に爆殺した証

爆発で与えるダメージが1.2倍になる


==============================


【チェインボム】も爆殺判定に入るんだな、これが今回では1番マシかな?爆発ダメージって事は【〜ボム】系の魔法でも効果はあるのかな?(目を擦りながら)


っと称号を確認してたらボスっぽいのが見えてきたな。


「あれは……でっかい蛇?アイツがボスか?何でプレイヤー達は棒立ちしてんだ?」


悠々と町へ向かっていくボスと思しきモンスターを立ち尽くしているプレイヤー達が傍観している事に違和感を覚えながらも『空歩』と『跳躍』に『疾走』と『縮地』を駆使して近付いていくと……


「あっ!誰か飛び出した!ってスゲェ!っておわっと!」


他のプレイヤーが傍観している中1人だけ飛び出したのプレイヤーがボスモンスター(暫定)の噛み付きを回避してからの眼球に槍を突き刺すシーンを『遠見』を使用してる最中に目撃し、思わず声を上げてバランスを崩し落ちかける。


そして続くシーンも目撃してしまう。


「うわぁ……あれはキツイな……」


目に槍を突き刺したままの大蛇(暫定ボス)がめちゃくちゃに尾を振り回した後に槍を突き刺したプレイヤーに尾を振り下ろし続ける。


「あんなん見せられたら流石に硬直しちゃうのもしょうがないか、ってあれは……」


先程1人飛び出し、暫定ボスの大蛇に尻尾で滅多打ちにされたプレイヤーが透けた霊体の状態で(確か蘇生待機中だったか)その場から動く事が出来ないらしくその大蛇に力なく手を伸ばし、項垂れてしまった。


俺には何となく分かった。彼には何か必死に守りたいものがあったのだろう。それこそ、誰もが動き出せない中、たった1人でも強大な敵に立ち向かえる程には。


「アイツ……カッケェな」


自然と俺の口は笑みを形作っていた。


「よし、どこまで出来るかは分からないけどアイツを全力でぶっ飛ばそう」


元々東エリアのボスモンスターは標的ではあった。しかし名前も知らない彼の勇姿を見せられた俺は仮にアイツがボスモンスター出なくても絶対にぶっ飛ばしてやろうと決意する。


そして俺は先程確認したばかりの新たなスキル、『呪術魔法』の詠唱ーー呪文を唱え始める。


本来なら射程距離外だが、『呪術魔法』は発動ワードを唱えた時に効果が発動するので、射程距離外で呪文を唱えようが発動さえ射程内なら関係無いのだ。


そういう訳でなるべく人に聞かれないように距離がある内に、自身にいつものバフを掛けてから味のしないMPポーションを煽り、覚悟を決めて呪文を唱え始める。


(われ)が紡ぐ言の葉に、あらん限りの呪詛(じゅそ)を込めて。

(なんじ)(むしば)む呪いは我が祈り、【汝が守り、薄き紙の如くなりて】。願わくば我が祈り、汝を縛る枷とならん事を」


今俺が唱えたのは【弱化の呪い・防】の呪文だ。

紙の如きと言うが、実際にVITを半減させると言うレベル1から使えるとは思えない強力な効果を持っている。

とは言え純粋に半減にする訳では無い、それだと流石に強すぎるだろう。『呪術魔法』は込めたMPによって相手のステータスを最大で半分減少させる。また、相手によっては(ボスなど)効き辛い事もある、と言う効果になっているのだ。


MPを全て注ぎ込めば半減する、つまりMP100%なら減少率50%、MP10%なら減少率5%、MP1%なら減少率0.5%と言った具合に、注ぎ込むMPと減少する数値比率は2:1となっている。


なので2重の意味で精神へのダメージも大きいのだ。(厨二的な意味とMP的な意味で)

基本的な呪文は同じだが【】の中の言葉によって効果が変わってくる。


っとそろそろだな。


「【弱化の呪い・防】ッ!」


射程圏内に大蛇を捉えた瞬間に早速呪いを発動する。

今回はMP全てを注ぎ込んで対象のVITを半減させる程の呪いに仕上がっている。幸いな事に『呪術魔法』自体にヘイト判定は無いらしく、呪いと思しき光(闇?)を身体に巻き付かせながらも俺には気付いていないようで町へと進み続ける。


俺は空になったMPを補充する為にMPポーションを喉に流し込み、空になった瓶を投げ捨て、1度地面に着地して『空歩』の回数をリセットすると『隠密』の発動を確認し、『跳躍』と『空歩』を組み合わせSTRに物を言わせてガンガン加速していく。


ちなみに投げ捨てられた瓶は地面にぶつかり。バウンドしてから光になって空中に溶けていった。環境を汚さない素晴らしいシステムだな、地球もこれを導入するべきだと思う(無茶振り)。

ポイ捨て、ダメ、絶対。


「こ、こッ!」


そして大蛇ーー確認した所《劣地竜(バジリスク)》と言うらしいーーの5mほど離れた位置に来た所で『縮地』を発動し、《劣地竜(バジリスク)》の顔の下に移動する。


突然だが《EBO》の『縮地』についての豆知識、あるいは小技を少し。


一つ、『縮地』は足が地面(『空歩』の足場など本当の地面でなくても可)に着いた瞬間に発動する。


つまりは走ったりしてる時でなくても、その場で軽く足踏みしても発動するという事だ。


二つ、『縮地』で移動する前の加速などは縮地先に引き継ぐかは任意で決められる。判断していない時は失われる。


これは全力ダッシュ中に『縮地』をした時に縮地先でもその加速は引き継いだままダッシュを続ける事も出来るし、急停止も出来るという事だ。


三つ、『縮地』出来る最長距離以下なら好きな距離を任意で移動可能。判断していない時は最大距離で発動される。


これは例えば『縮地Lv.5』のプレイヤーは5m以下なら好きな地点に移動する事が出来ると言う事だ。それこそ1cmでも1mmでも大丈夫なので、何かに吹き飛ばされた時に地面に足さえ付けばその場に縮地すれば衝撃を受け流せるという事だ。もちろん物凄いシビアな判定だが。


四つ、多少回り込めたり、通れたりする程度の隙間があれば無視して移動出来る。


これは、例えば大盾を装備したプレイヤーの真後ろになら少し回り込めば行けるので移動可能だが、ダンジョンなどの壁を無視して向こう側に行く事は出来ないという事だ。


この小技はイベントの準備期間に少し『縮地』について検証している時に発見した技だ。いくつかは掲示板で上がっているようだが、一つ目と四つ目はまだ未発見の様だ。そもそもの話『縮地』を使えるプレイヤーが少ないと言うのもあるのだろう。


そして今回俺はこの豆知識と言うか小技を全て使用し、一つ目の小技で『空歩』の足場で『縮地』し、二つ目の小技で今までの加速を全て引き継ぎ、三つ目の小技でちょうどいい位置に移動し、四つ目の小技で《劣地竜(バジリスク)》の目の前(の下)に移動した。


そして、相手のVITを半減させ、自身のSTRは最大限まで強化し、称号による諸々の効果を載せた、俺が今放てる最強の一撃を《劣地竜(バジリスク)》の下顎に全力で打ち込む!


すなわち……


「オラァッ!【グラビトンウェーブ】ッ!」


『呪術魔法』の効果って強すぎますかね?

強すぎるかなーって思いとこれくらいでいいかなーって思いの二つが作者の中で同居してるんですよね……





今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!

『呪術魔法』の呪文もぜひ!


おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします

ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!

今後も当作品をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] いつも楽しく読まさせてもらってます。 誤字報告です。 元々東エリアのボスモンスターは標的ではあった。しかし名前も知らない彼の勇姿を見せられた俺は仮にアイツがボスモンスター出なくても絶…
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