第37話 地に落ちた竜にも出来ることはある
たくさんの人が待っていてくれたようで本当に嬉しい限りでございます!
これからも投稿は続けていくので是非ともよろしくお願いします!
現在西エリアでは、恐らく身長にコンプレックスを持っていたのであろう1人のプレイヤーの心に大ダメージを与えた《劣風竜》の円状風刃をなかなか攻略出来ず、苦戦を強いられていた。
避ける事自体はそこまで難しくもなく、ただしゃがめばいいだけ。
しかしそのしゃがむという行為がとても厄介なのだ。しゃがむ為には攻撃を中断しなければならず、《劣風竜》の追撃を回避する為に、円状風刃を回避したらすぐさま立ち上がらなければならないと言う、強制バービージャンプをさせられるのだ。それが地味に辛く、「ならしゃがみ続ければいいんじゃね!?」とか言ってたプレイヤーは真っ先に匠の手によって大地の染みに早変わりさせられる事となった。
なんということをしてくれたのでしょう。
「くっ!飛んでいる時も厄介だが地上に降りてからも厄介とは!」
「カレットちゃん、焦らない、焦らない。焦ってもいい事なんて無いわよ〜」
「むぅ……分かってはいるのだが……【風炎球】!」
雄叫びを上げながらめちゃくちゃに尾を振り回し、叩きつけている《劣風竜》にカレットは苦虫を噛み潰した様な表情で【ファイアボール】と【ウィンドボール】の合成魔法である【風炎球】を放つ。
しかし,暴風と炎で形成されたその魔法は、その巨体をぶんぶんと振り回して暴れ回る《劣風竜》に当たる事は無く、遥か彼方へと飛んでいってしまう。
HPが半分を切ってからと言うもの、《劣風竜》の行動パターンが本能的と言うか理性の欠片もなく暴れ回るだけになってしまっているので遠距離攻撃が大変当てにくいことになっている。
加えて《劣風竜》の尻尾が振るわれる度にその直線上に高威力の風刃が発生するので危険極まりない。
さすがに動く度に……と言う訳では無いが、尻尾の叩き付けや振り回しなど、尻尾による攻撃モーションには必ず風刃が付随するのでとても厄介な事になっているのだ。
それでも、攻めあぐねているなりにヘイトを集めたりなど頑張っている前衛組や色とりどりの魔法を放つ後衛組の努力もあって着々と《劣風竜》のHPは減り続けいている。
「今度こそっ!【風炎槍】ッ!」
カレットが放った【風炎槍】は先程の【風炎球】の様に外れる事はなく、暴れ回っている《劣風竜》の背中を抉るように着弾し《劣風竜》のHPを確かな量削り取り、《劣風竜》のHPがレットゾーンに突入する。
『クギガァァァァァァァァッ!』
突如背中に走った激痛に、標的も何も無く、ただ暴れ回るだけだった《劣風竜》がその瞳に明確な怒りの感情を込めてカレットを睨みつけている。どうやらヘイトは完全にカレットに固定された様だ。
『グガガッ……グガァァァァァァァァァァァァァァッ!』
《劣風竜》はカレットを睨みつけ、両脚に思いっ切り力を込める。心做しかその脚には血管が浮き出ている様にすら見える。相当な力が込められているだろう所は想像に難くない。
そして力をため切ったのだろう、一瞬の停滞の直後。
《劣風竜》はその場でバク宙を繰り出し、《劣風竜》の身体が凄まじい勢いでその場で一回転する。イメージ的にはリ〇レイアの空中一回転の地面バージョンと言うのが1番しっくり来るだろう。
すると、当然、尋常じゃない勢いで《劣風竜》の尾が跳ね上げられる事となる。結果、今までとは比べ物にならない威力の風刃がカレットたった1人目掛けて襲いかかる。
「【風炎じ……ぬおわっ!!」
咄嗟に合成魔法の【風炎刃】で相殺しようとするが、発動する前に目の前まで迫ってきた風刃に咄嗟に横っ飛びする事で難を逃れた。しかし、場所を動いてしまったことで固定砲台の効果がリセットされてしまう。
ちなみに【風炎刃】はもうおわかりだろうが、【ファイアカッター】と【ウィンドカッター】の合成魔法だ。他にも【ファイアボム】と【ウィンドボム】を合わせた【風炎爆弾】と言うのもあったりする。
「なんなのだ今の一撃は……喰らったら即死じゃまいか!」
「あらら〜さすがにあれは危険ねぇ……」
間一髪で《劣風竜》の超火力の風刃を回避したカレットはすぐに起き上がり『緋杖』を構え直す。
ノルシィもさすがに危険と判断したようで尻尾狙いに切り替えるようだ。
そしてカレットとノルシィが《劣風竜》の尻尾にカッター系の魔法……カレットは【風炎刃】、ノルシィは【四色刃】を放とうとしたその瞬間。
《北エリアのイベントボスが討伐されました》
《以降は北エリアに新モンスターが出現します》
《北エリア、東エリアの両イベントボスが討伐されました》
《以降は北東エリアに新モンスターが出現します》
北エリアのボスが討伐されたと言うアナウンスが響き渡り、そのアナウンスは《劣風竜》戦ラストスパートをかけようとしていた西エリアのプレイヤー達の耳にもしっかりと届いた様だ。
「ぬぁぁぁぁぁッ!北にも負けたぁぁぁっ!」
「うわぁぁぁぁっ!」
「くっそぉおぉぉぉっ!」
「ちくしょぉぉぉぉぉっ!」
「みんな元気ねぇ〜でも私も悔しいわねぇ〜叫んじゃおっと、くそ〜♪」
相当悔しかった様で今この瞬間だけは目の前にいる《劣風竜》すらも意識の隅に追いやられ、プレイヤー達の悲痛な慟哭が各種魔法によって荒れ果てた草原に響き渡った。
若干一名は何処か楽しげな声ではあったが。
「むがぁぁぁぁぁっ!東にも北にも負けた以上南にだけは絶対に負けられん!《劣風竜》!覚悟しろっ!【風炎刃】ッ!【ファイアカッター】【ウィンドカッター】ッ!」
そしてカレットも相当悔しかった様で、『魔法合成』でショートカットされている【風炎刃】に加え、手動で【ファイアカッター】と【ウィンドカッター】を組み合わせたセルフ【風炎刃】を発動させ、《劣風竜》の尻尾の付け根へと打ち込んだ。
なんとショートカットされた【風炎刃】と手動で作られたセルフ【風炎刃】が『魔法合成』によって更に合成され《劣風竜》に襲いかかる。
単品の【風炎刃】とは比べ物にならない威力を持った【二重風炎刃】が《劣風竜》の尻尾の付け根に大きな傷跡とダメージ刻み込む。
更にはノルシィの【四色刃】がこれまた的確に【二重風炎刃】によって出来た傷跡へと着弾し、《劣風竜》が苦しげな咆哮を上げる。
「おうっ!あの赤い嬢ちゃんの言う通りだッ!負けてたまるかッ!」
「そうだ!そうだ!」
「負けないわよッ!」
そんなカレットの意気込みと派手な攻撃に感化された他のプレイヤー達の士気も天元突破でグングンと上昇していく。
HPが残り1割を切った事で発狂状態となった《劣風竜》(先程までは辛うじて発狂では無かったらしい)も狂ったようにーー実際狂っているのだがーー円状風刃やら超絶風刃やらを連発し、その度に少しずつ、しかし着実なペースでプレイヤーの数を減らしていく。
そして……
『グルアァァァァァ……』
遂に《劣風竜》がHPバーをカラにし、その巨体を地に沈ませ、爆散させた。
その時には大量にいたボス戦に参加したプレイヤーの数は、元の半分にまで減っており、生き残ったプレイヤー達のMPもほぼ空っぽになっていた。
《西エリアのイベントボスが討伐されました》
《以降は西エリアに新モンスターが出現します》
《北エリア、西エリアの両イベントボスが討伐されました》
《以降は北西エリアに新モンスターが出現します》
ノルシィみたいなキャラのセリフって難しいですね……個人的には一番書くのが苦手なキャラです。
言わせたいセリフはあれど文に表すと脳内で展開していた雰囲気と全く異なってしまうという不思議……
今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!
おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします
ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!
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