第36話 空飛ぶ敵は叩き落とせばいい!
復活ッ!
地雷は設置は簡単でも撤去は難しいんだよぉぉぉッ!
という事で(どういう事だ?)舞い戻ってまいりました
地雷酒でございます!
お待ちしてくださっている方!(いますよね?)
当作品はようやく更新再開致します!
長らくお待たせして申し訳ありませんでした!
これからも当作品をよろしくお願いします!
《東エリアのイベントボスが討伐されました》
《以降は東エリアに新モンスターが出現します》
「なんっ!?早すぎないか!?」
西エリアのイベントボスと戦闘していたカレットは突如辺りに響いたインフォメーションに驚きの声を上げ、思わず辺りを見回す。
現在カレット達は西エリアのイベントボスと戦闘中だ。
そのボスモンスターの名前は《劣風竜》。
今回のイベントボスの中では唯一空を飛んでいる、実に厄介なボスだ。
西エリアの空を飛翔している《劣風竜》の皮膚は灰色に近い緑色をしており、一般的に想像されるドラゴンと言った見た目の顔にある顎には鋭い牙が生えおり、比較的細い(とは言っても人間と比べると充分大きいのだが)二本の後ろ足、前足と一体化した一対の大きな翼に、大木ほどもありそうな尻尾の先には、これまた巨大な鏃のような棘を携えている。
そんなボスモンスターは《劣風竜》にだけ許された特権を存分に発揮し、多くのプレイヤーが見上げる大空を我が物顔で悠々と飛翔し、上空から一方的に尻尾による薙ぎ払いや翼で巻き起こす風刃でプレイヤー達を攻撃してきている。
《劣風竜》にダメージを与える為には魔法か弓や投擲などの遠距離攻撃か、突進などで地上近くに降りてきた時に攻撃するしか現段階で手段は無く、それにも高い集中力やエイム、度胸など色々なものを求められる。
飛行しているというアドバンテージに加え、多彩な攻撃を持つ《劣風竜》は今イベントにおいて最も戦いずらい強敵であると言えるだろう。
しかし幸いにも《劣風竜》の弱点属性は『火』。
ヒャッハーの片割れが最も得意とし、最近更に強化された属性である。
「みんな〜カレットちゃんの射線は邪魔しないようにね〜」
このフィールドにおいて最強の『火魔道士』であるカレットを軸にした作戦がノルシィの指揮の元、ボス戦に参加しているプレイヤーによって展開されていた。
他のプレイヤーは貫通力の高いランス系の魔法で左右の翼を狙い、《劣風竜》の動きを阻害し、そこをカレットが装備や称号などで強化された『火魔法』で狙い撃つ。
同じ称号を持っているノルシィの判断で、数少ない近接職でありながら西エリアに来る事を選んだ変わっ……チャレンジ精神旺盛なプレイヤーが動けないカレットを護衛するように陣営を組んでいる。
そんな陣営が組まれているおかげで、カレットは周囲を気にかけること無く、最大のパフォーマンスを発揮することが出来ている。
「私の魔法、受けてみろッ!【風炎槍】ッ!」
『グギガァァァァァァッ!』
『魔法合成』によって登録された【ファイアランス】と【ウィンドランス】の合成魔法【風炎槍】。
【ウィンドランス】によって強化された【ファイアランス】を相手に放つ、ランス系魔法二種類の合成魔法である。
こうして仕組みだけ聞くと単純に思えるが、効果は単体で放つよりも跳ね上がっており、一撃でイベントボスである《劣風竜》のHPが5%以上削れた事実がその火力を物語っているだろう。
『魔法合成』は二種類以上の魔法を組み合わせた魔法を登録し、それをオリジナル魔法として次回以降に使う事が出来るようになるという、複数属性を使う魔道士御用足のスキルである。
登録方法は簡単で、一度自力で成功した組み合わせの魔法が自動で登録され、それにメニュー欄から名前を付けることでそれ単体の魔法として発動可能になる。しかしMP消費が普通に使うよりも多くかかってしまうと言うデメリットもある。
それでも『魔法合成』によるスキルを使用しているのは、手動でやる場合と違い、失敗する心配は無いと言う点が大きい要因を占めている。他にも自由に名前を決められるなどというメリットもあるが、やはり失敗する心配がないと言うのが最大の特徴になっているのは間違いない。
「【ウィンドカッター】、【ウォーターカッター】、【アースカッター】、【ファイアカッター】」
ノルシィが四つの属性のカッター系魔法を連続で発動し、的確に《劣風竜》の左翼を引き裂いていく。
魔法系スキルLv.2で使用可能になるカッター系の魔法は属性効果の他に、斬撃属性も兼ね備えている魔法だ。
他にもランス系の魔法は刺突属性を兼ね備えているなど、魔法系スキルは意外と副属性が多く設定されているのだ。
「カレットちゃんはMP大丈夫かしら〜?」
「むぅ……さすがにそろそろ厳しいぞ……」
ノルシィの言葉にカレットが声を沈ませながら答える。
カレットは対《劣風竜》におけるメイン火力となっているため、MPの消費が他のプレイヤーに比べてとても早いのだ。
「ならこれ使ってねぇ〜」
「これはッ!?」
ノルシィから手渡されたのは丸底フラスコの様な容器に入った紫色の液体ーーMPポーションである。
「……なんだ?」
「あらぁ?知らないの?」
「うむ、皆目見当もつかないぞ」
「……カレットちゃんは魔道士よねぇ?まぁいいわ、飲んでみてねぇ」
ノルシィが不思議そうに聞いてくるがそれもしょうがないだろう。魔道士、特に一定レベル以上の実力を持っている者ならばMPポーションは必需品であり、よしんば持っていなくてもその存在くらいは知っていて当然の物なのだ。故に、それの存在を知らなかったカレットに驚きを禁じ得ない。
「それではお言葉に甘えて、ングッ、ングッ……おおッ!MPが回復したぞ!」
「MPポーションだもの、当然よ〜」
「こんな便利な物もあるのだな!」
「魔道士なら知っておくべきなんだけどねぇ〜」
MPポーションを飲み干したカレットが驚きの声を上げ、ノルシィが若干呆れたように額に手を当て、首を振りながら呟く。
「ぬ?いや、待ってくれ確か……」
「あら?どうしたのかしら?」
ノルシィの呆れた様な顔に一瞬気まずそうな顔をしたカレットだったが、何かを思い出したのかインベントリを漁り始めた。
そして数秒後、ドヤ顔をしながらノルシィに自身のウィンドウを見せつけてきた。
「あら?カレットちゃんもMPポーションしっかり持ってるじゃない」
確かにそこには《MPポーション×9》と言う表示が映し出されており、それを確認したノルシィの感心したような声に、更にカレットが言葉を続ける。
「うむ!イベントが始まる前にトーカが持たせてくれたのを思い出したのだ!」
「あらら〜結局カレットちゃんは知らなかったって事なのかな?」
持っている事には持っているが、結局はカレットがその存在を知らなかった事には変わらないので、結局ノルシィに呆れられてしまっている。
「だっ、だが見た目の割にMPポーションには味が無いな!りんご味が良かったぞ!」
「あら、話を逸らしたわねぇ。でもまぁポーションに味が欲しいって言うのには賛成だけど、そこはグレープじゃ無いかしらねぇ?」
戦場にあるまじきほのぼのした雰囲気に護衛の近接プレイヤー達若干呆れてしまっている。先程は呆れる側だったノルシィが今度は呆れられる側に早変わりしてしまっているのは彼女の人徳か。
「2人とも!ほのぼのするのも良いけど攻撃もしてくれ!」
「了解だ!【風炎槍】ッ!」
「わかったわ〜、【四色刃】〜」
カレットが放った風と炎で構成された槍が《劣風竜》の右翼に風穴を開け、ノルシィによって放たれたオリジナル魔法ーー先程のやり取りの中で片手間で登録された四属性のカッター系魔法の複合魔法ーーは、ノルシィののんびりとした穏やかな声とは裏腹に火、水、風、土の四属性を持った刃が一斉に相手に襲いかかると言う凶悪性を秘めている。
そんな【四色刃】が既にボロボロだった左翼を完膚無きまでに破壊していく、もはや左翼は使い物にならないだろう。
両方の翼、主に左翼がズタボロになった事で、翼による飛行を維持出来なくなった《劣風竜》が錐揉み回転しながら地面に追突する。
《劣風竜》の強み、それは間違いなく空を飛べる事だろう。その強みが今、カレットとノルシィ2人のオリジナル魔法によって奪われたのだった。
「みんな!今だッ!一斉に行くぞっ!」
「「「「おおッ!」」」」
カレットの号令と【ファイアランス】を皮切りに多数のプレイヤーから大量の魔法が《劣風竜》を襲う。
炎槍が《劣風竜》の胴体を貫き、水球が頭部に当たり、弾ける。風刃が《劣風竜》の身体を切り裂き、土の爆弾が既にズタボロ翼に追い打ちをかける。
しかし《劣風竜》もただ魔法に撃たれるがままにはならず、不用意に近付いてしまったプレイヤーを噛み砕き、尻尾で拭き飛ばしていく。
「ぐあっ!」
「おわっ!大丈夫かっ!?【ハイヒール】!」
「すまねぇ!助かった!」
珍しく西エリアに来る事を選択した騎士のプレイヤーが剣で《劣風竜》の皮膚を浅く切り付けるが、その攻撃は《劣風竜》にろくなダメージを与えられず、それどころか直後に尾による強烈な反撃を受け、吹き飛ばされてしまう。
辛うじて残っていた吹き飛ばされた騎士のHPを、吹き飛ばされた先にいた神官が【ハイヒール】を使い回復させる。
騎士のHPは全回復とはいかないものの8割近くのまでHPが回復され、無事戦線に復帰する事が出来た。
ちなみに【ハイヒール】は『回復魔法Lv.4』で使用可能になる【ヒール】の強化版だ。もちろんトーカも使えるのだが、彼やリクルスとカレットがHPにSPを振っていないのと、彼のINTが高いのもあり【ヒール】で充分なので使っていないのだ。
「しかしカウンターがあるのは辛いな……俺達前衛組が全く近付けなくなっちまう」
「そこは西エリアを選んだのだからしょうがないんじゃないかしら?とは言っても全く何も出来ないのもつまらないでしょうしねぇ〜何かないかしら?」
前衛組を代表したプレイヤーの嘆きにノルシィが律儀に答えつつも首を傾げる。魔法特化の西エリアを選んだ自業自得とは言えさすがにボス戦で何も出来ないのは辛いだろうと解決策を模索している様だが妙案は浮かばないらしい。
「だめだ……何もアイディア出ねぇ……」
「私もダメねぇ……何も浮かばないわ。Lv.7のエンチャントならカウンター対策はともかくダメージは入るんでしょうけど……使える人いないわよねぇ?」
ノルシィが周りに尋ねるもいい反応は帰ってこなかった。
そんな沈んだムードの中、《劣風竜》に【風炎槍】を放ったカレットがそれを聞きつけた。
「私の『火魔法』ならさっきLv.7に上がったぞ!」
「あら!でもカレットちゃんかぁ〜さすがにメイン砲台の動力を削ぐ訳にもいかないのよのぇ」
「むぅそうか……」
唯一エンチャント系魔法を使える自分が使う訳にはいかない現状にカレットはしょぼくれた声で悔しそうに言葉を漏らす。
その隙を見逃さず、《劣風竜》が近くにいたプレイヤー達に雄叫びを上げながら突っ込んで行く。
《劣風竜》の巨体に見合わぬ素早い、半ば倒れ込むような突進はそこに居た数人の魔道士を一瞬で大地の染みに変える。
『グギガァァァァァァッ!』
一瞬で起き上がった《劣風竜》は大きな咆哮を上げる。よく見るとHPが既に半分を切っている。そのためのパターン変化だろうか、その咆哮には多少のダメージ判定があるらしく、巻き込まれたプレイヤーのHPの少なく無い量が減少する。
「パターン変わるわよぉ〜!気を付けて〜!」
それに気が付いたノルシィの号令によりプレイヤー達が警戒を強める。しかしその中の数名ほどが動けずにいる。
よく見ると動けていないプレイヤー達のHPバーの横にはスタンを示すアイコンが出ていた。あの咆哮には低確率でのスタン性能もあったようだ。
『グガァァァァァァッ!』
スタンにより動けずにいるプレイヤー達に狙いを定めた《劣風竜》はその場で大きな尾をしならせ一回転する。
ビュオウッ!と言う鋭い風切り音が辺りに鳴り響く。そしてそれは風の刃として《劣風竜》を中心にしたサークル状で全範囲に撒き散らされる。
「おわっ!?回避っ!」
咄嗟に状況を把握したプレイヤーの掛け声もあり、大体のプレイヤーがサークル状に展開される風刃を回避する事に成功した。
《劣風竜》の体の大きさもあり、円状風刃はただそこに棒立ちしていれば丁度首辺りを通過する高さになっているため、しゃがめば簡単に回避できるのだ。
「ぎゃぁっ!」
「ぐわぁっ!」
しかしそれはしゃがめればの話。咆哮によるスタンのせいでしゃがむ事の出来なかった数人のプレイヤーはほぼ全員がスポーンっと綺麗に首を跳ね飛ばされて死亡した。
『ほぼ』と言うのはスタンさせられていたプレイヤーの内の1人が、身長が小さかったが為に円状風刃が頭の真上を通過して無事だったからだ。少し悲しそうな目をしていた気がするが気のせいだろう。
あっ、スタンが解けて泣きながら崩れ落ちた。
……気のせいだろう(take2)
そして感想欄での前話のことわざのくだりへのツッコミが……急いで書くとろくな事ないですね!(泣)
今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!
おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします
ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!
今後も当作品をよろしくお願いします!




