第35話 燃えるプレイヤー達(掛詞)
今回から暫く更新が停止いたします
しかし!必ず蘇ってやる!待っていろ!
すいません、ナマ言ってすいません、何とぞお待ちください
※致命的な欠陥が感想欄より明らかになったので本来したかった形に修正させていただきます。ほんとにすいませんでした。
「あ゛ぁ゛ッ!近付けねぇッ!」
《劣火竜》のHPが5割を切ってから既に10分近く過ぎている。しかしHPの減りは遅々として進んでいない。
理由は単純、強化された《劣火竜》の纏う炎の火力が高すぎて、先程までのように近付いても少しは大丈夫……と言う訳には行かなくなってしまった。それこそ近付いた瞬間に結構な量のスリップダメージが入り始めてしまう程度には高火力の炎を纏っている。
「『付与魔法』を使える奴に【レジストエレメント】を使える奴はいるか!?」
「すまん!使えねぇ!」
「ごめんなさい!私もまだ無理!」
「クッ……遠距離攻撃組とヘイト調整組は今まで通りに!近距離組は死なない程度にダメージ覚悟で頼む!『回復魔法』持ちは近距離組の回復を優先!」
「「「「オウッ!」」」」
「「「「了解!」」」」
リーダー役の指示によって各々が自分の仕事を確認し、行動に移す。しかし困ったのは《劣火竜》によじ登る事をメインとしていたプレイヤー達だ。
そういったプレイヤー達は大体『軽戦士』や『軽業師』をジョブとして選択しており、大体の場合HPにはSPを割り振っていない。
故に、他のプレイヤー達のようにダメージ覚悟で近接攻撃を仕掛ける訳には行かないのだ。そんな事をしたら一瞬で消し炭である。
「俺たちはどうすりゃいいんだ!?」
「このままハブなんて嫌だぞ!?」
他のプレイヤー達が《劣火竜》と決死の覚悟で戦っている中、自分達だけ傍から見ているなんてのは《劣火竜》によじ登るような度胸を持ったプレイヤー達には出来そうになく、されど今の《劣火竜》相手に自分達に出来る事が無い、と言うジレンマに陥り、焦ったように声を上げる。
「近付けねぇなら近づかなきゃいい!邪魔んなんない程度に石でも投げてようぜ!」
そんなプレイヤーの1人であるリクルスは(ヘイト調整組は『挑発』持ちが主に担当している)そう周りに言い放つと、足元に落ちていた拳大の石を振りかぶって《劣火竜》に投擲し始める。
「その手があったか!」
「おっしゃぁ『投擲』合戦じゃぁぁぁっ!」
「やったるでぇぇぇッ!」
「「「「「「オラッ!オラッ!オラッ!オラッ!オラッ!オラッ!オラッ!オラッ!オラッ!オラッ!オラッ!オラッ!オラッ!オラッ!オラッ!オラッ!オラッ!オラッ!オラッ!オラッ!オラッ!」」」」」」
十人近くの近づけない組が足元や周囲の石を拾っては《劣火竜》に投げつけると言うシュールな光景が出来上がった。
中には『投擲』のレベルを上げていたプレイヤーも居たようで、武器を使う時とは比較にならない程に少ないが、しっかりとした量のダメージを《劣火竜》に与える事に成功している。
「うっわぁ!ダメージしょっぺぇ!」
「ばかやろう!塵も積もれば富士マウンテンって言うだろ!……言うよな?」
「言わねぇよ!近いけど!有名なことわざくらい覚えとけ!」
「俺が知ってることわざなんて泣きっ面蹴ったりくらいだぞ!」
「テメェは鬼かッ!」
「ありゃ?二兎追う者の皮算用だっけ?」
「そんなもんもねぇ!何で全部ちょっとずつ違うんだよ!」
「はぁ!?じゃあとは仕事幽霊飯弁慶その癖夏痩せ寒細りたまたま肥ゆれば腫れ病しか知らねぇぞ!」
「逆に何でそれ知ってんだよ!」
「お前も何で知ってんだよ!博識かよ!」
「あっバレた?」
「「「うっぜぇぇぇぇッ!」」」
近付けない組改め、投擲組は愉快な会話をしながらも機関砲もかくやと言うペースで『投擲』をし続けている。自然と『投擲』持ちのプレイヤーがメインで石を投げ、『投擲』を持ってない、または『投擲』のレベルが低いプレイヤーが周囲から石を拾い集め、『投擲』レベルの高いプレイヤー達に渡すと言う形が出来上がっていた。
結果、《劣火竜》に石を投げつつ会話にせいを出す十人近いプレイヤー達と言うボス戦においてどこかシュールな雰囲気を醸し出す事となっている。
「レベル上がりました!【レジエレ】行けます!」
「そうか!MPに気を付けながらそこの……投擲組に掛けてやってくれ!」
「了解です!」
しかしそんなシュール空間にも終わりが訪れた、1人のプレイヤーが『付与魔法』のレベルが上がり【レジストエレメント】を使えるようになった様だ。
【レジストエレメント】は『付与魔法Lv.6』で使用可能になる魔法で、名前の通り、各属性からのダメージを減らす魔法である。
正式な名前は【レジスト〜エレメント】となっており、この『〜』
の部分に、火属性なら【ファイア】、水属性なら【ウォーター】、風属性なら【ウィンド】、土属性なら【アース】、光属性なら【ライト】、闇属性なら【ダーク】と各属性に対応した名前へ変化する。
そして今回使うのはもちろん【レジストファイアエレメント】である。さすがに一気に全員に掛ける余裕は無いらしく、先程のよじ登りで活躍していた3人程が薄い橙色の光に包まれる。
この他にも、『水魔法Lv.6』で使用可能になる【ウォータースーツ】でも同じ効果を得ることが出来き、更には各属性への対抗を使える『付与魔法』よりも一つの属性のみの『水魔法』の方が効果が高いのだが、《劣火竜》に対しての切り札になりうる『水魔法』を使えるプレイヤーのMPを消費するのは惜しいという事で保留にされていた。
もちろんゲーム定番のポーションなどもあるにはあるのだが、MPポーションの材料となる素材が取れる場所が現時点で少ししか発見されていないため、未だにMPポーションは貴重なものとなっている。
「おっしゃァ!これで蜥蜴野郎をぶん殴れるぜ!」
「切り刻んでやるよぉ!」
「野郎、ぶっ殺してやらぁ!!」
三者三様に《劣火竜》に向かって吼えながら、近寄れなかった鬱憤を晴らすように素早い動きで《劣火竜》によじ登り、籠手や短剣で連撃を喰らわせていく。
もちろんリクルスもその内の1人であり、【狂化】を発動し、蒸気を纏いながら《劣火竜》の背中へ【連衝拳】を放ち続ける。
「【衝拳】!【衝拳】!小僧!【衝拳】!【衝拳】!やるじゃ!【衝拳】!【衝拳】!ねぇか!【衝拳】!【衝拳】!」
「【衝拳】!【衝拳】!おっさん!【衝拳】!【衝拳】!こそ!【衝拳】!【衝拳】!すげぇじゃねえか!【衝拳】!【衝拳】!」
「【衝拳】!【衝拳】!はっ!【衝拳】!【衝拳】!まだ小僧に【衝拳】!【衝拳】!負けてたまるかってんだ!【衝拳】!【衝拳】!」
「【衝拳】!【衝拳】!小僧だからって!【衝拳】!【衝拳】!舐めてっと【衝拳】!【衝拳】!痛い目見るぞ!【衝拳】!【衝拳】!」
近場でリクルスと同じく【連衝拳】を放っていた渋いフェイスのオッサンが【衝拳】の合間にリクルスに話しかけてくる。
それに対しリクルスも【衝拳】の合間に返事を返す。
会話の途中にアーツを発動するため、聞き取りずらいことこの上ないが、それでも二人の間では普通に通じているらしい。
互いに相手の言葉を受けてその顔に凶悪な笑を浮かべ、更に【連衝拳】のペースを早めていく。
「「【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝……アッチャァァッ!?」」
そして全く同じタイミングで熱によるスリップダメージにより飛び退くおっさんとリクルス。動きは完全にシンクロしており、傍から見れば完全に仲良しである。
「お前らッ!あの2人に負けて良いのかッ!?俺は嫌だね!お前らもそうだろッ!?全力振り絞って行くぞぉぉぉぉッ!」
「「「「「ウォォォォォォォォッ!」」」」」
リーダー役が2人の競走による猛攻を利用し、更にレイドパーティの士気を高める。まぁ負けず嫌いとも言うが。
そしてリーダー役の言葉に反応する負けず嫌い達からの攻撃がより一層激しくなる。
そして、プレイヤー達の士気が最高潮に達したその時、上がりきった士気とテンションを更に上げる人物が豪快に登場した。
「間に合っ、たァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」
絶叫にも似た大声を上げ、巨大な大剣を《劣火竜》》の背に振り下ろされる。
「【絶、断】ッ!」
轟音と共に《劣火竜》の背にめり込む刃がそのHPを確かな量削り取っていく。
『大剣術Lv.5』のアーツ【絶断】。
全てを断ち切る絶対的な威力を孕む、(どこかの神官を除く)全《EBO》プレイヤーの中でも最高の破壊力を秘めているであろう最強の一撃。
『グガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!』
その一撃をモロに喰らった《劣火竜》》は身体中の炎を荒れ狂わせ、絶叫を上げながら暴れ回る。
「兄貴ッ!」
その人物、アッシュの豪快な、そして最高のタイミング登場にリクルスを初めとしたプレイヤー達が一気に色めき立つ。
「ホアッチャァッ!?」
そしてなんとも閉まらない叫びを上げ飛び退くアッシュにプレイヤー達が声を上げて笑い、それに対してアッシュが「何笑ってんだテメェらッ!」と叫び、それが更に笑いを誘発する。
士気が限界突破し、バカ笑いした事で適度に肩の力が抜けたプレイヤー達が《劣火竜》を光に変えるのにそれから大した時間は掛からなかった。
《北エリアのイベントボスが討伐されました》
《以降は北エリアに新モンスターが出現します》
《北エリア、東エリアの両イベントボスが討伐されました》
《以降は北東エリアに新モンスターが出現します》




