第27話 イベント開幕
今回のサブタイトルにサブタイトルを付けるとしたら
しんかん は えんきょりこうげき を てにいれた!
って感じですかね
大量の足音と共に遠目に見える土煙が開幕の狼煙を上げ、プレイヤー達の鬨の声が開戦を告げる法螺貝となり戦場に響き渡る。
時刻は午後6時。
《EBO》第1回イベント、正式名称『トルダン防衛戦』
ーー開戦
◇◇◇◇◇
「うっひゃぁ〜みんなやる気すげぇな」
「はいはい、凄いのは分かってるからしっかり前衛やってくれ」
遂に始まった襲撃イベントにプレイヤーのテンションやら、やる気やらは既に最高潮に達しており、多くのプレイヤーが我先にと襲い来るモンスターに突撃していく。
俺達が今いる場所は北、つまり一番強い所だ。理由は簡単、リクルスとカレットが行きたいコールを朝っぱらからずっとしてきたので「1回でも全滅したら場所変更」とルールを決めて北に来ている。
正直言って北に行くのは全然構わなかった、ただ、慣れないタイプの戦闘なのでとりあえず南で雰囲気を掴んでから途中で北に行こうかと考えていた。
北か南の二択しか選択肢が無いのは東に行くとカレットが、西に行くと俺とリクルスが本来の実力を出せなくなってしまうのでしょうがないと割り切った。
「バフ掛けたから射線入らない様に」
「分かったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
俺が言うとスグにリクルスは他のプレイヤーよろしくモンスターの大群へと突っ込んでいく。話しながら走っていったせいで声が間延びして聞こえて来るじゃないか。張り切りすぎてバテんなよ?
「カレットも他の奴に魔法ぶつけないようにな」
「もちろんだ」
リクルスを見送りながら横にいるカレットへと一応注意を飛ばす、しかしそんな心配は無用だった様だ。カレットは既に集中モードに入っており、その瞳は正確にモンスターへと向けられている。
「ならいい」
普段のコイツとのギャップに普段からこれの半分でも落ち着いてくれればなぁ……と思いながらも弓に矢を番え、人が少ない所にいるモンスターに狙いを付ける。
今俺が装備している弓は『鉄糸弓』。
メイに余り物でもいいから弓は無いかと聞いたところリーシャ用に作った弓の余りがあるという事なので買わせて貰った。
その性能はこちら
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『鉄糸弓』
通常糸となるはずの弦に鉄糸を使った特別な弓。
本来の用途ではなく弓そのもので戦える様に
様々な仕掛けが施されている
STR+15 DEX+15
製作者【メイ】
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余り物なのにこの性能、本当にメイには頭が上がらないな。
なのでこの弓に振り回されないように弓を練習しようと今日は朝からずっと弓で草原のモンスターを遠距離射撃し続けた。遠距離とは言っても2〜30m程だが。
結果『弓術』、『見切り』、『集中』のスキルレベルが上がり、新たに『遠見』と『瞑想』と言う二つのスキルを習得し、最終的には30m位の距離なら相手が余程俊敏に動いていなければほぼ命中するようになった。基本的にモンスターの動きは直線的なので狙いやすいのもある。
ちなみに新しく得たスキルの内『遠見』は文字通り遠くまで見えるようになるスキルでLv1.だと10m先までならくっきり……とは行かないけど結構見えるようになる。
『瞑想』は他のゲームだと回復系のスキルが多い気がするが《EBO》での『瞑想』は回復ではなく補助系のスキルで、目を瞑り精神を落ち着ける事で次の動作をより良いものにする、と言う一見分かりずらい効果のスキルだが、使ってみるとその有用性がよく分かる。
そしてどんどん命中する様になるのが楽しく、ひたすらやっている内に取ったばかりのはずの『瞑想』と『遠見』がLv.4にまでなっており、更には『狙撃手』なんていう称号も貰ってしまった。
どんどん一般的な神官から離れていく……
称号の効果はこんな感じだ
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『狙撃手』
遠距離からの狙撃する者の証
遠距離射撃補正
遠距離射撃威力上昇
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今の俺は『弓術Lv.5』『集中Lv.6』『見切りLv.6』『遠見Lv4.』『瞑想Lv.4』そして称号の『狙撃手』に加え『付与魔法』によるバフ。この多数のスキルなどの補正のおかげで全身全霊でやれば第一射だけならば100m先に立っているリクルスの眉間を貫ける様にまでなっていた。なんで眉間かって?……さぁ話を戻そう。
「ふぅ……」
自身に『付与魔法Lv.3』の【デクスアップ】更には『付与魔法Lv.4』の【スキルアップ】を使用してから『瞑想』を始める。
自身にかけたバフは単純、名前の通り【デクスアップ】がDEXを上昇させるもの、【スキルアップ】がスキルの効果を上昇させるものだ。
ダラリ、と全身の力を抜き、目をゆっくりと瞑る。
それから深く、ゆっくりと息を吐く、吐ききった所でまたゆっくりと息を吸う、1回で肺の空気を全て入れ替えるイメージだ。
焦ってはいけない、他の事は何も考えず、ただ息を吸い、吐き出す。
「すぅ………………」
同時にスキル『集中』を発動。これにより周囲の音が遠ざかり、やがて周囲の音がほぼ遮断される。
この時俺は完全に無防備になっているのだが……そこはカレットを信じるとしよう。
「はぁ………………」
段々と意識が深い所に落ちていくのが分かる。まるで水の中に居るかの様な感覚。
俺は今、暗く、深い水の底で周囲と一体となっているのだ、そんな風にも感じられる程深い集中。
「すぅ………………」
もはや周囲の音も、プレイヤー達の熱も、近付いてくるモンスターの存在すらも俺の意識からは掻き消え、集中が最大限まで高まるのを感じる。
「はぁ………………………………」
そこで先程までより深く、長く息を吐く。肺だけとは言わず体中の全ての酸素を吐き切る。そう錯覚するほど深く息を吐く。
「すぅ………………………………」
そしてこれまた深く、ゆっくりと息を吸いながらいつの間にか俯いていた顔を上げながら同時に瞼も上げていく。
「はぁ………………………………」
心做しか世界が色褪せて見える。周りの喧騒も激しい戦闘音も聞こえず、ゆっくりと世界が進んでいく。隣で放たれたカレットの魔法がゆっくりと進んでいく、まるでビデオのスロー再生の様に。
「すぅ………………………………」
息を深く吸いながら下げていた腕を上げ、『鉄糸弓』を構える。
先程狙いを付けていたエリアに居る一体。こちらに突進して来ている立派な角を持ったバイソンの眉間に狙いを定める。
狙いを定めた後は息を止めたまま『鉄糸弓』に矢を番え、引き絞る。全力を込め限界まで引き絞る『鉄糸弓』は聞こえるならばキリキリと軋む音を立てている事だろう。
「【ーーーー】ッ!」
これ以上引き絞ったら弓か矢(多分、矢)が限界に達する。
そう感じた瞬間、矢を放つ。
実はこの矢はこの1発のためだけにメイに作って貰った特注品で鏃が蜥蜴鉄製だったりなど様々な工夫が施されている一品だ。
それ以外の矢はルガンの道具屋で購入している。買いに行った時、「こんな状況だが儲かりまくりだな」と笑っていた。しかし、いつもより少し雰囲気が暗かった。
それ以外にも【トルダン】にいる多数の人達や非戦闘職のプレイヤー達も多かれ少なかれ不安そうな表情だったのが印象に残っている。
そして限界まで引き絞った『鉄糸弓』から放たれた矢は高い風切り音を戦場に響かせ突き進んでいく。
そして飛ぶこと数秒、あるいは数瞬。
ドッと言う音と共にバイソンの眉間に突き刺さり、貫通する。
『ブオォォォォッ!』
周囲の音はシャットアウトされているし、仮にされていなくても聞こえるはずのない距離だが、確かにトーカの耳にはバイソンの断末魔の叫びが届いた。
直後。ボパッ!と音がしそうな程の勢いでバイソンの体が光となり、弾ける。周辺のプレイヤーの目玉が飛び出しそうな程の驚愕ぶりを尻目にその光を認識しーー
「っはぁ!」
思いっきり息を吐いた瞬間、一気に世界に色と音が戻る。
短いけどご勘弁を……
今後その場のノリで色々なスキル(複合スキル含む)や称号、武器防具アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!
おかしい所や誤字脱字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします
ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本当にありがとうございます!
今後も当作品をよろしくお願いします!




