第268話 『蠱毒・2日目《鬼退治③》』
投稿頻度が酷すぎて申し訳ない
そろそろペース戻すので許して……許して……
間隔空きすぎてもう覚えてねぇよ!って人は《鬼退治》の①と②を見返してから読んでくだせぇ……!
「お、なんだなんだ。人手を増やすのか?」
ミミティアとマリアンヌの指笛を聞いて、リクルスは楽しそうに拳を打ち鳴らす。
「今更ひとりふたり増えたところで……」
「自分をさるに見立てたマリィちゃんには驚いたけど。それなら確かにぴったり」
「あんらぁ、ご指名があったわん。なら不肖アタシがお猿さんの大役、努めさせてもらおうかしらん」
「……?いまいち話が見えてこな……ッ!?」
鬼を置いてけぼりに会話を進める桃太郎と猿。
どういうこっちゃねんとリクルスが問いかけた、その瞬間。リクルス目掛けて天空から光の槍が降り注いだ。
ドガッシャンッ!と耳を劈くような轟音と目も眩むような閃光。それが落雷だと判断するのに大した苦労はいらないだろう。
ソレが自分目掛けて不意打ちで降り注いでさえいなければ。
「っぅ……なん、だ今の!?……まさか、雷……か?」
音も光も届く前。嫌な予感という不確定な警告に弾かれるようにその場を飛び退いたリクルスは目の前に降り注いだ光の槍に頬を引き攣らせる。
自分目掛けて雷が降り注ぐという異常事態に一瞬理解が遅れたものの、即座にその正体を暴き、しかしだからこそ驚きが隠せない。
「ウッソォ!?ハルちゃんのアレを避けるの!?」
「びっくり……たおせるとは思ってなかったけど、なにかしら手札はきらせられると思ったのに……」
一方、驚いているのはリクルスだけではなかった。ミミティアとマリアンヌの2人も一連の出来事に驚きを隠せない。だが、それはリクルスとはまた違った理由によるものだ。
この2人の反応から、今の落雷が偶然によるものではなく、何かしらの手段で意図的に引き起こしたという事が分かるだろう。
だからこそ、『不意打ちの雷を避ける』というリクルスの異常さに軽く引いていた。
そして、リクルスも『意図的に落雷を引き起こす』という事象の異常さを【島】という実例を知っているからこそ驚かずにはいられない。
「おいおい……誰だよそのハルちゃんってのは。雷とか卑怯だろ」
「ん。それを平然とよけるキミには言われたくない。なんでよけられるの?」
「本当にすんごいわねぇ……第六感ってヤツなのかしらん?それに……」
「あっと、その手には乗らねぇぜ?」
お互い距離を測りながらの舌戦。を装った不意打ち。しかし、それに気付かないリクルスでは無い。
リクルスが前動作無しで跳び上がると、一瞬前までリクルスがいた場所をガキンッ!と鋭く硬質な音と共に喰いちぎられる。
そして、ソレを避けるために跳び上がったリクルス目掛けていくつもの細い雷が降り注ぐ。不意打ちだけで満足しないに二段重ねの攻撃。
だが、『軽業』の派生スキルである『立体機動』と『空歩』の派生スキルである『空走』の組み合わせによる3次元的挙動と類稀なる直感で補佐された戦闘経験によってそれら全てを躱し切ってみせた。
「おいおい、ソイツは一体……どういうことだ?」
雷と不意打ち。それら全てをいとも容易く避け切って見せたリクルスはようやく視界に入った乱入者達に驚いたような声をあげる。
「どうもこうも。ハルちゃんもカルちゃんもわたしたちの大切なお友達だよ」
「ハルちゃん?カルちゃん?……なるほど、そういう事か。それに、だからこその桃太郎か。はん、出来すぎな程に整ってんな」
ミミティアの言葉を聞いて何か納得したように呟くリクルス。
そんな彼の視線の先にいるのは、先程まで激戦を繰り広げていたマリアンヌとミミティアの2人。更に、ハルちゃんとカルちゃんなる助っ人の姿が増えていた。
片や、バチバチと弾ける雷を身に纏った巨大な猛禽。
片や、毒々しいまでの蒼を見に纏った霞む猟犬。
「まさか人ですらねぇとはな」
「思い込みはきけん。ひと以外はいないなんて言われてない」
「ソイツら、特殊なモンスターってヤツだろ?仲間になるパターンもあるのか」
「あんらぁ、勘がいいわねぇ。そうよ、こっちのバチバチしてるのがハルちゃんこと『天雷のハルハシャ』で……」
「こっちの蒼いのが『空駆のカルシェ』。わたしたちはカルちゃんってよんでる」
キュェィ!と、グルルッ!と、それぞれが紹介に合わせて鳴き声をあげる。
鬼を前にして桃太郎と猿と犬と雉が揃う。それは、確かにリクルスが言うように出来すぎな程に出来すぎな偶然だ。
しかし。
「そんで?犬と鳥が増えてパーティーが揃ったところで……」
ニヤッと好戦的な笑みを浮かべ、リクルスはガンッ!と手甲を打ち鳴らす。
「何が変わるよ」
天雷のハルハシャと空駆のカルシェの増援によって止まっていた戦況が動き出す。
リクルスは『縮地』とそれをノーモーションで発動させる『無拍子』を駆使して一瞬でカルシェに肉薄すると恐ろしいまでに力の込められた拳を躊躇なく振り抜く。
ズガンッ!と響く轟音は、リクルスか振るった拳が大地を砕く破壊音。それはつまり、一瞬前まで確かにそこにいたはずのカルシェの姿が消えているという事。
どこに行きやがった!?
リクルスがそう思う間もなく、その背後に瞬間移動していたカルシェの牙が首筋目掛けて襲い掛かる。
咄嗟に頭を下げて噛み付きを躱すリクルスだが、それによって生まれた死角を狙って雷が駆け抜ける。
「チィッ!」
それすらも予期していたとしか思えない動きで横に飛んで回避するリクルスを、それこそを待っていたと言わんばかりに拳を振りかぶるマリアンヌが出迎えた。
「いくわよォ!」
地面と挟んで押し潰す?まさか。地面ごと砕く!と言わんばかりの剛腕は、しかし。先程のリクルスとカルシェの一幕を再現するかのように誰もいない地面を穿っただけに終わった。
虚空を踏みしめる『空歩』と足場さえあれば発動する『縮地』の組み合わせによる擬似瞬間移動で窮地を脱した。これで一息つける……訳が無い。
どう予測したのか、リクルスが移動した先には既にミミティアが待ち構えている。
彼女の振るう短剣の鋭い斬撃を手甲で受け弾くリクルスの背後には、音もなく空間を駆け抜けて出現したカルシェが鋭い爪で引き裂こうと振り抜いている。
鬼退治組の猛攻が始まった。
大地を壁を虚空すらも足場に縦横無尽に跳ね回り、逆手に構えた2本の短剣で絶え間ない連撃を浴びせ続けるミミティア。
一撃で全てが終わる程の威力が込められた拳を弱攻撃のように気軽に放ちまくるマリアンヌ。
雷雲を呼び寄せそこから自在に雷を操るという規格外の能力と唯一大空を翔け回れるというアドバンテージを最大限に活かし、上空から常にリクルスを視界に収め雷を落とすハルハシャ。
強力な毒と瞬間移動というこれまた厄介極まりない能力で時に大地を駆け回り、時に空間を渡り常に相手の思考を掻き乱し続けるカルシェ。
どれかひとつを取っても強力無比な攻撃を、息のあった連携を駆使してたった1人を対象に絶え間なく行い続ける。
もしこれがただの鬼を相手にしているのならば、間違いなく数分と持たないであろう過剰な程の密度の連携攻撃を浴びせ続ける。
そう。浴びせ続けるのだ。
それはつまり、未だにその攻撃に晒されている鬼が力尽きていない事の証明であり、ここからですら負ける可能性があるという事にほかならない。
空を灼く雷が雨のように降り注ぐ。風を置き去りに剣閃が走る。距離を無視した無法な毒攻撃が絶え間なく襲う。振るわれた拳どころか踏み込みすら大地を割る剛腕が荒れ狂う。
断続的に響く破砕音は地面の砕ける音だろう。
金属同士が打ち合うような音は短剣を弾く手甲の音だ。
雷の音や獣の咆哮も絶え間なく混じっている。
だが。それでも。最も聞きたい音だけは聞こえない。
それは拳が肉を打ち据える音であり、刃が切り裂く音であり、雷が焼く音であり、鋭い爪牙が抉る音であり、この世界での命の終わりを表す微かな音である。
そんな、求める音は鳴らず、代わりに微かに聞こえ続けるのは、押し殺したような笑い声。
実に楽しそうに、喜ぶように、狂ったように、実に爛々とした。
それは
狂気の笑い声だった。
狂喜の笑い声だった。
狂■の、嗤い声だった。
「……けひゃっ」
カレットは有象無象を相手に無双したけどリクルスはトップクラスの猛者を相手にしてるから多少はね?
・天雷のハルハシャ
雷雲を呼び、降り注ぐ落雷を身に纏い大空を翔ける雷の鳥
因縁『大空を夢見て』を特定ルートでクリアする事で幼体の『空を夢見る雛鳥』が進化し、味方になる特殊モンスター
クリアルートは『覇者の雷を継ぐ』
特殊モンスター『雷翼のビャクゴウ』を『空を夢見る雛鳥』と共に倒す事で分岐
他にも『氷翼のアクリエイス』や『霧翼のミルアスト』などの○翼系のモンスターがいる
その場合クリアルートは『覇者の○を継ぐ』になり、名前も天○のハルハシャとなる
当然能力も○に対応するものになる
・空駆のカルシェ
短距離瞬間移動を行う暗い蒼色の猟犬
強力な毒を持ち、ひと噛みで勝敗が決まることすらあるという
因縁『蒼赫の牙』を特殊ルートでクリアすることで味方になる特殊モンスター
クリアルートは『蒼き友』
1度カルシェと戦闘を経験した上でカルシェが『 『時裂のグランゼ』と戦闘している場面に遭遇し、カルシェに助太刀してグランゼを討伐し、戦闘終了後に疲弊したカルシェに対して何らかの友好的処置(肉や回復アイテムを与える、手当をする、など)を行うことで味方になる
カルシェとグランゼの立場が全く逆の『赫き友』やどちらにも遭遇した上で決闘を見守り相打ち後どっちも助ける『蒼赫の友』などのルートもある
割と希少な『仲間になるルート』がある特殊モンスターの2体と遭遇してそのルートをしっかり通った実は凄いことしてるのがミミティアとマリアンヌだったりする
ちなみにミミティアがハルハシャの因縁を、マリアンヌがカルシェの因縁をクリアしている
なお、ヒャッハー達が画面外キルした『ムジンのアルバドルン』や『空里の墓守』は仲間になるルートは無い
が、もう少し感動的なルートはあった
あとカレットが焼いた『豊命の大樹海』には『木彫りの聖女』っていう特殊モンスターがいたり……
普通モンスターと絆を結ぶのって主人公サイドがやるものじゃない……?(【島】の獣たちは除く)
イベントだからって好き勝手してるヒャッハー達が書籍版でも大暴れ!
書籍版1巻は発売中、2巻も予約受付中&近日発売です!素敵なイラストで彩られたヒャッハー達の冒険をお楽しみください!