第264話 『蠱毒・2日目《白き焔を討て②》』
めでたい日なので投稿
今週からペース戻すって言ったのに戻ってなくてごめんね……
まさか今ボックスイベ来るとは思わなくてね……
ごうごうと燃える森の中、向き合った1人と6人。
1人の側に立つカレットは右手の人差し指と親指を直角にピンと伸ばし、残った3本の指を折りたたみむとその形を維持してそっと6人の内の1人を指で指し示す。
しゅるしゅると指の先端に渦を巻くように緋色の群れが集まると、ビー玉サイズに圧縮され煌々と輝き始める。
「っ……!」
指を指された瞬間に危機を感じとった青年は咄嗟に回避動作を行うも、カレットが普段から競い合っている相手に比べればあまりにも遅く、単純な回避だった。
だから、青年が回避した先で指先の照準がピタリと合っているのは仕方が無い事なのだ。
「ばんっ」
ぽしゅっ。
「ふむ……火属性への対策を用意していた様だから少し気合いを入れたが……戦闘になって装備でも変えたのか?」
ほんの数秒前まで青年がいた場所を、カレットは不思議そうに眺める。
「うそ、でしょ……?これ一式で火属性のダメージを80%も減少させてるのよ……!?」
「めちゃくちゃだ……!」
だが、それ以上に斥候隊達は困惑していた。
なんの気負いもなく(曰く少し気合いを入れたらしいが)放たれた攻撃で耐性を固めたプレイヤーが消し飛ぶ。
機動力重視の軽戦士型の宿命として防御力が低いのを加味してもあまりにもイカれた威力。文字通りの超高火力だ。
「む?80%軽減だと?」
「っ、そうよ!アンタ対策にガッチガチに固めてきてるんだから……!なのに……!」
「舐められたものだな。そんなちゃちな軽減率でどうにか出来ると思われていたのか」
カレットが不機嫌そうにそう吐き捨てる。
80%軽減。つまりは、20%も通ってしまう。HPの5倍の威力なら、問題なく仕留められる訳だ。
対策は練って来たと聞いていたから楽しみにしていたというのに、これはあんまりではないか。
そんな感情を隠すこと無く浮かべている緋色の少女に、斥候隊達はプライドを傷付けられつつも迂闊に動く事が出来ないでいる。
「……はぁ。もういい」
「なんですって……?」
そんな理不尽とも言える憤りを覚えたカレットは、それ以上に強い落胆の表情を浮かべると、ホコリでも払うようにサッと手を振る。
次の瞬間、生き残っていた5人の視界は紅蓮一色に染まり上がる。
そして、次に視界が他の色を取り戻した時。そこは既にそれぞれの拠点の中だった。
◇◇◇◇◇
「なんというか、肩透かしを食らった気分だな。これならメイの作る耐火ゴーレムの方がまだ手応えがあるぞ」
周囲に広がる炎の一部をくるくると指先で弄ぶように舞い散らせ拗ねたようにカレットは呟く。
ここはとても居心地がいいが、それでも暇を持て余し始めた。死んでいなくても今日の昼には帰って来いと言われているため、時間を無駄にはしたくない。
自らが生み出した炎達をきっかけにこの樹海全土が火の海に沈んだ事は確認済みだし、そろそろ場所を移そうか。
そう考えたカレットの視界のひとつが、50人近くの集団を捉える。大盾を担いだ者や立派な武器を身に付けた者、ローブを纏った者などが揃った統率の取れた集団。
その誰も彼もが一目見て一級品と分かる装備に身を固めていて、傍から見れば完全に強大なボスに挑むレイドパーティであった。
「む。これが彼らの言っていた本隊と言うやつか……?しかし、また肩透かしはごめんだぞ……?」
気合十分いざ決戦!と見るからに張り切っている一団に先程の経験からか少し疑る様に目を細めたカレットは、試すようにサッと腕を払った。
◇◇◇◇◇
「これより白龍姫討伐作戦、『対炎革命』を決行する!」
この作戦のリーダーとなった青年は、討伐対象である白龍姫が陣取っている燃え盛る森を前にして、作戦メンバー達を鼓舞するために声を張り上げる。
『オォォォォォォォォッ!』
それに応えるのは、50近くからなる鬨の声。
それぞれが持ちうる最強の装備に身を包んだ総勢52名の猛者達が、たった1人のプレイヤーを討つ為に集っていた。
彼らは白龍姫討伐部隊。通称『革命軍』。白龍姫を倒す事だけを目標にしたレイドパーティだ。
「つい先程、斥候部隊がリスポーンしたという連絡があった。防御力は消して高いとは言えないが、それでも対火属性装備で固めていた。それでも一撃で殺られたそうだ」
「おいおい……確か斥候隊は8割軽減まで行ってなかったか……?」
「あぁ。それでも白龍姫にしてみれば『ちゃちな軽減率』らしい」
「ははっ、バケモンかよ……」
「あぁ。レイドボスも真っ青なバケモンだ。そして、俺らはソレを倒しに行く。英雄譚にゃ十分じゃねぇか。いっちょ革命起こして英雄になってやろうぜ!」
リーダーは腰に提げた鞘から剣を抜き、天へ掲げながらそう声高に叫ぶ。
「っ……だよな!やってやろうじゃねぇか!」
「おう!白龍姫言えどプレイヤー、殺って殺れない事はねぇ!」
『おっしゃァァァァァァァ!』
プレイヤーの身でありながらボス扱いを受けるようなバケモノに挑むために集まるようなプレイヤー達だ。多少怖気付こうとも、テンションが上がればそのくらい吹き飛ばせる。
一瞬前の逡巡はどこへやら。既にテンションは最高潮に盛り上がっており、その盛り上がりといえば眼前へ燃え盛る炎が飛び込んでくる程であった。
不意を突かれた一団は対応も出来ず、革命は失敗に終わったのだった。
「ッ!先制攻撃が来たぞ!防御陣B!」
なんて、くだらないミスをするはずもなく。
白龍姫からの先制攻撃に事前に対策していた防衛策を発動する。リーダーの指示に瞬時に従い、タンクは前に立ち火耐性と魔法耐性を上げるスキル、あるいはアーツを使用し、魔道士達はさらに火耐性のバフを重ね更には『水魔法』で壁を作る。
「っぁー!先制パンチでこの威力とかマジやべぇ」
「いやはや、過剰防衛かと思いましたが、結構ギリギリでしたね」
結果。燃え盛る大樹海が吐き出した炎の波を彼らは無傷で耐え切った。
「ってもこのレベルのが断続的に飛んで来たらさすがにきびぃぞ?」
「そんくらい出来なきゃあのバケモノには勝てねぇって、気合い入れてけ!」
「はっ!言われなくても!」
手荒い洗礼を潜り抜けた革命軍が気合いも十分に燃え盛る大樹海へと突撃しようとすると、突如ごうごうと燃え盛っていた炎が左右に分かれ、森の中へ続く道を形作る。
「これは……かかってこいって事か?」
「今のは挑戦資格があるか確かめる試験だってか?やってる事がマジモンのボスじゃねぇか」
「いい傲慢さだ……!それでこそぶっ倒し甲斐があるってもんだぜ……!」
使命を背負った革命軍と言えど、その本質は好戦的なプレイヤーの集団。
こんなあからさまな挑発に、そして何よりド派手な演出にテンションが上がらない訳がなかった。
「待ってろよ白龍姫!その首たたっ斬ってやっからな!」
突入の瞬間にリーダーがそう叫ぶと、やってみろとでも言わんばかりに大樹海を包み込む炎が一際強く燃え上がった。
今回でカレットのは区切り付ける予定だった
終わらなかった。次回で区切り付ける
ちなみに、今のカレットが最強過ぎて負ける未来が見えなくて頭抱えてるって話はしたっけ
さて、キャラデザ紹介も全員分終わったし(2巻勢はその時に)、キャラデザ紹介はしばらくお休み……
???「おおっと!私を忘れてもらっちゃぁ困るよ!主役は遅れてやってくる!真打登場!」
「と、言うわけで!私のキャラデザだよ!可愛いね!美しいね!守ってあげたくなっちゃうね!」
……はい。という訳で今本編で家出してるせいで出せないのにキャラデザ紹介はして欲しいとわがまま言ってる妖精ちゃんことリーリアのキャラデザです
「ふっふっふ〜そりゃこんな祭りに参加しなきゃ嘘でしょ。あ、ちなみにもう1人のキャラデザは挿絵にしかないから1巻を買って確認しよう!」
はい。露骨な宣伝ありがとうね
という訳で(2回目)リーリアのキャラデザですが、このバー「バーコードいいでしょ〜。もうね、初めて鏡で自分の体見た時すごっ!ってなったもんね。いやぁ、このぷりちーな見た目はさすが私だね。ちなみに、この制服ってマーシャのなんだよね。なんでマーシャの制服着てるのかって?おとめのひみつよー」
……とまぁ、こんな愉快な感じで表紙にも口絵にもしれっと入ってるリーリアのキャラデザ紹介でした!
(デフォルト衣装を制服って言うのやめて欲しいなって……)
それにしてもここまで来るとか自由過ぎない?
ところで君いまメイに誘拐(or匿われてる)って噂が立ってるんだけど……
「ふっふっふ。さすがにプレイヤーに捕まるヘマはしませんし特定のプレイヤーに肩入れする行為もしませんって。そこはさすがにわきまえてますよ〜だ。まぁ私は今お友達のお家におじゃましてるんで、自由にのびのびやってますよ。ところで、私達に焦点当てた章っていつ来るんです?」
ギルド対抗戦編と【ファジー】編が終わってからだから……次の次が最速、かな?これ一応まだ未開時の情報なんだけど
「いや勘のいい人なら気付いてますって。まぁ私のーーー」
それ以上いけない!
それでは次回お会いしましょうありがとうございました!
プレイヤーのくせにレイドボス扱いを受けてるヒャッハー達が書籍版でも大暴れ!
書籍版1巻は発売中、2巻も予約受付中です!素敵なイラストで彩られたヒャッハー達の冒険をお楽しみください!




