第257話 『イベント前日の過ごし方』
イベント開催!前日
ぶっちゃけた話イベント始まってからルール周りを説明してテンポ悪くするくらいなら事前にリアル側でルール開示して《EBO》内ではスムーズに進めようかなと試してみる
まぁ余裕が出来たらその分の自由に暴れ回るのがヒャッハーなんですがね!
「「いっべんっとだー!」」
「うるさい」
ついに第3回イベント『ギルド対抗戦』が翌日に迫った日のこと。
イベント直前のメンテナンスで《EBO》にログイン出来ない事もあって長丁場になるであろう翌日のイベントに備え、リアルで済ませるべき家事などをまとめて処理していた護の元へ瞬と明楽の2人が訪れた。
「しかもイベントは明日だろ。1日早ぇよ」
「いやいや、これがワクワクせずにいられるかって!」
「まさかの超技術を盛り込んだ長期戦のイベントだぞ!」
「いや、そりゃ度肝を抜かれたけどさ……」
2人の言葉に1週間前……イベントの詳細が発表された日のことを、そしてその内容を思い出す。
「ゲーム内で5日間を過ごすことになるとはな」
そう。この言葉から分かるように、今回のイベント期間は5日。つまり、特設フィールドにて5日間を過ごす事になるのだ。
しかも、ただ5日間を過ごす訳ではない。さすがに5日間もの間ぶっ続けでログインなどしていたら肉体に被害が出てしまう。というか普通に死ねる。
そこでこの度導入されたのが『意識加速システム』と呼ばれる新機能である。
これは、今後長期間が予想されるイベントや特殊なフィールドにおいて導入される予定らしい新ギミックであり、その先駆けとして今回のイベントでお披露目されるのだ。
その時間倍率は20倍。現実でのイベント期間が正午から午後6時までの6時間で《EBO》内時間5日を過ごすという事になる。
「6時間で5日だぞ!もはやタイムスリップでは無いか!正直私はそっちの方にワクワクしているぞ!」
「いや、タイムスリップでは無いだろ」
「なぁなぁ、お菓子はいくらまでだ?やっぱ300円までか?」
「おう、税込300円だぞ」
「ツッコミ放棄すんなよ!というかみみっちい!」
「はいはい。明日のイベントは長期間、しかも最初から拠点がバレてるっていう最初から激戦が予想される状態だ。今のうちに改めてルール確認しとくぞ」
「「あいあいさー!」」
いつになくテンションが上がっている2人を適当にあしらいながら、改めてルールの確認をするヒャッハー達。
「あれ、舞桜は?」
「なんか今日は友達の初デートをびこ、見守るんだってよ。朝早くから拉致られてったぞ」
「……まぁ明日のイベント開始前までに改めて確認すればいいか。そうじゃなくても舞桜ならしっかりルールは把握して来るだろうし」
頭の中でキャトルミューティレーションされていく舞桜を想像しながら、しっかり者の舞桜よりこの2人の方がリソースを割くべきだと判定を下した護はジュースを餌に2人をステイさせ、イベントのルールページを開くのだった。
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ギルド対抗戦となる本イベント『蠱毒』では試験的に意識加速を導入する
これによって、現実で6時間のうちにゲーム内で5日間のイベント期間となる
また、本イベントの特設エリア『壺』内においてのみ、睡眠や気絶等で意識を失ったとしても強制ログアウトは発生しない(身体的に害のある意識遮断の場合はログアウト処置を行う場合があります)
自主的なログアウトも可能。ただし、意識加速の関係上1度ログアウトして再び復帰することは出来ない
『イベントルール』
・ポイント制。指定の方法でポイントを獲得し、最終獲得量を競い合う
また、ポイント獲得の上限および下限は存在しない
・各ギルドの拠点となる地点には、後述するコア・オーブが納められる台座が設置される
台座の位置はランダムで、ギルドの規模やランクによって立地が変わる(大規模ならそれだけ不利な、小規模ならそれだけ有利な地形に)
また、台座を動かす事は出来ない
・イベント開始時にひとつ、イベント内時間で1日(24時間)経過毎に追加でひとつコア・オーブ(以下コア)が台座に納められる形で配給される
コアは各ギルドに最大で5つずつ支給される
コアは1度破壊されると復活しないが全て壊されてもその時点で終了という訳ではない
ただし、イベント終了時に台座にコアがあるとそのコアに応じたボーナスポイントが得られる
・フィールドにはトレジャーやボーナスモンスターが出現し、それらの発見、討伐によってボーナスポイントが獲得出来る
また、トレジャーやボーナスモンスターからはアイテムが手に入る
・他ギルドのコアを破壊すると50ポイントを獲得出来る。また、コアを奪い取って自陣のコアに納める事で200ポイントを獲得出来る
ただし、他ギルドのコアを自陣の台座に納めてからポイントとして吸収されるまでに1時間かかる
また、他ギルドにコアを破壊ないし奪取(正確には相手の台場に吸収)された場合、相手が獲得するのと同値のポイントが減少する
・死亡したプレイヤーは何度でも復活出来るが『10×復活回数×経過日数』分のポイントが相手プレイヤーに入り、相手プレイヤーの獲得したポイントと同値のポイントが減少する
また、復活するのは死亡から10分後に拠点でであり、復活直後10秒はあらゆるダメージ、能力を無効化する
・発見するまでは他ギルドの拠点はマップに記されないが、【カグラ】の拠点のみ全体に公開される
また、【カグラ】所属のプレイヤーを撃破または【カグラ】のオーブを破壊ないし奪取した場合の獲得ポイントが10倍になる
・大凡の情報が記された特設エリアのマップが初期配布されるが、実際にその場所に行くことで詳細追記される
初期状態のマップに記載されている情報は『大まかなエリア』『自ギルドの拠点』『自ギルドのオーブの位置と種類』『【カグラ】の拠点』の4点
このマップ情報は常時自動更新されるが、手作業による追記も可能
また、別ギルド同士でマップ情報の提供も可能
・その他、未知の要素もありそれらもポイントに結び付く事がある
・このイベントで最終的に獲得したポイント、またその他要素によってギルドランクが変動する場合がある
『ポイント入手手段』
トレジャー発見……10〜P
ボーナスモンスターの討伐……10〜P
特殊モンスター討伐……500P
プレイヤー撃破……『10×死亡回数×経過日数』P
敵コア破壊……50P
敵コア吸収……200P
第1コア防衛……500P
第2コア防衛……400P
第3コア防衛……300P
第4コア防衛……200P
第5コア防衛……100P
死亡……-『10×死亡回数×経過日数』P
コアを破損される……-50P
コアを別ギルドのコアに捧げられる……-200P
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「これは……基本的にはプレイヤー、ギルド同士で殺った殺られたでポイントを奪い合う形で、その他にもポイントを稼ぐ要素があるって事か。言い得て妙だがイベント名がなかなかにアレだな」
「これみよがしな『ボーナスモンスター』と『特殊モンスター』の表記分けだな。いわゆるボスモンスターみたいなのも出るって事か?ワクワクしてきたな!」
「知ってはいたが【カグラ】への狙い撃ちが凄いな。これが有名税と言うやつか!」
「なるほどな。イベント開始前に【カグラ】で集まってある程度の会議はしときたいな」
◇◇◇◇◇
ヒャッハーな幼馴染達がイベントルールを改めて確認している時、奇しくも【カグラ】の他のメンバーも明日から始まるイベントについて考えていた。
◇◇◇◇◇
「りーちゃん、改めてルール確認したけどさ、これ多分僕達のギルドは初期地点の立地最悪だよね」
「そうね……人数規模的には8人でかなり小規模な方だけど、唯一のS+ランクでもうある種のイベントギミックに取り込まれてるからね。逃げ道のないどん詰まりの短い洞窟とか見通し最高のダダっ広い広場とかになるんじゃない?」
「どっちかな……どっちにしても色々試したいことがあるから楽しみだよ」
「普通はかなり大きなデメリットなはずなんだけどなぁ。けど、事実として私らが安心して戦えるかは生産組の2人に懸かってるからね。頼んだわよ」
「それなら頑張って砦を築かないとね。寝てもログアウトしないって事は、裏を返せば眠くなるって事だろうから。まずは安心して眠れる拠点の確保が最優先だね!」
「今回は止めないわ。陽、好きにやっちゃいなさい」
「うん!全力でやっちゃうよ!」
◇◇◇◇◇
「ふむ……【カグラ】は位置が割れてる上に殺られた時のポイント減少が10倍か……これは結構キツイな。特にコアが他ギルドに吸収された場合が最悪だ。マイナス2000Pはキツすぎる」
「いや、逆に考えてみようよ努。相手から見ても2000Pは破格だよ?仮に奪われたとしても吸収まで1時間あるし、その間は……というか運搬中もだけど敵の拠点を知らせるマーカーになるんだ。ならさ、2000Pって餌で釣って襲撃かければいいんだよ」
「まぁ、そうなんだけどさ……」
「努はさ、悪い方に考え過ぎなんだよ。 じゃあこう考えようよ。仮にコアを吸収されて2000Pを奪われたとしても、最終日に最高40人倒せば帳消しだよ」
「改めて思ったけど……満月お前、一瞬で【カグラ】に馴染めそうな思考回路してるよな」
「『ふむ……褒め言葉として受け取っておきましょうか』……ウォルカスならこう返す場面かな?」
「足の甲踏み抜きながらな。あぶねッ!リアルで足踏み抜きはやめろって!」
◇◇◇◇◇
「あれ、護兄からメッセージ来てる。なになに……ルールを改めて確認しといてねって感じかぁ。そうだね、結構色々書いてあったから後でまた読み直そっと」
「(各員に通達。観察対象に動きあり、移動を開始する!)」
「(いえすまむ!)」
「(りょーかい!)」
「コソコソし過ぎて逆に怪しいよ……」
◇◇◇◇◇
そんなこんなで、ある意味イベントのギミックのひとつとして組み込まれた【カグラ】の面々は、イベント前日の余暇を過ごしたのだった。
おや、なにやら見知らぬ名前が……
『意識加速機能』の安全性は保証されています
なぜかって?元々運営が作業効率上げるために使ってる機能を今回のイベントでユーザーにも提供しているだけだからです
もちろん加速中もしっかり給料は発生してるので一月分の給料で20ヶ月働かされてるとかいうブラックどころじゃない悪行は行われいませんので悪しからず
意識加速やら時間加速やら表記揺れしてるかもしれませんが、設定考えてる時の名残です
『意識加速』がファイナルアンサーなのでミスってたら教えてくれると助かります
ちなみに、舞桜の友達はモブです
モブからネームドキャラに出世した一守くんとか環ちゃんとかいるけど彼女らに関してはモブ確定演出です
ところで、前話にてリーリアの家出でメイが捕まえたと疑われまくってたのには笑いました
運営側のAI捕まえて保有するような真似はさすがにプレイヤーには無理ですね……
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