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ヒャッハーな幼馴染達と始めるVRMMO 【書籍版発売中!】  作者: 地雷酒
ギルド結成!ヒャッハーの魔窟【カグラ】!
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第251話 『一方その頃/side 槍&槍匠②』

連続投稿!

ウォルカスを書くのがとても楽しいです

 

「なぁちょっと!?マジで俺にソロ討伐させる気!?」

「……?」

「クッソ!見えねぇけど半笑いで首傾げてんのは分かる!」


 エルダートレント。

 かつてリクルスとカレットがトーカの新装備の素材集めに伐採(しゅうかい)しまくった相手である。


 その姿はまさに生きた樹木とでも言うべきであり、鬱々とした森の中で一部分だけがぽっかりと空いているボスエリアの中央にそびえ立っていた。

 枝葉をまるで手足のように縦横無尽に振り回す、幹におどろおどろしい顔の浮かんだ樹木の化け物。それがトレントであり、そのサイズが一般的な木々と同じ程度だとすると、その親玉とも言えるエルダートレントは立派な大樹と言えるだろう。


 かつてリクルスとカレットの2人が激戦を繰り広げたエンシェントトレント程ではなくとも、バー2本にまたがる膨大なHPを持つ大樹の化け物はその質量だけでも十分な脅威たりえる。


「ふむ……ムチのようにしなる硬質な枝、ですか。しかも生えている葉っぱが鋭い刃物のようになっている事でより殺傷能力を高めている、と。当たったらズタズタですね。気を付けてください」

「情報提供どうもッ!【槍演乱舞・(ながし)】ッ!」


 相手の攻撃を受け流し隙を作ることに特化した【槍演乱舞】の『型』を駆使してエルダートレントの攻撃を全て受け流すリベット。

 幾本もの枝鞭をまるでひとつの演舞のように受け流し、背後のウォルカスへは枝鞭どころか葉の1枚すらも届かない。

 なんだかんだ言いつつも、しっかりと親友を守っている。


「さて……本来なら防御寄りであるリベット1人でボス戦は厳しいでしょう。となると、彼が引き付けている間に攻撃出来るアタッカーが欲しいところですが……」

「いるよな!?今1人暇してる奴が!」

「暇人……ですか?はて、僕の視界にはいませんね」

「だろうな!お前の視界にいたらそれはドッペルゲンガーだ!」

「冗談です。まぁやれるだけやってみますよ。期待しないでくださいね?」

「そりゃ無理だ!俺はお前を信じてる!」

「……はぁ。君はサラッと恥ずかしい事を言いますね」


 口の中でもごらせるように呟くと、荒れ狂う枝鞭の間隙を縫って槍を振るう。


「ふッ!【針突(しんと)】ッ!」

『ーーーーーッ!』


 メイすら凌ぐ槍の名匠が生み出した槍の鋭さは筆舌に尽くし難い。槍の腕自体は中の上程度のウォルカスが放つ一撃ですら、まるで豆腐に針を突き刺したようになんの抵抗も無くエルダートレントの硬い樹皮を貫いた。


「これだけじゃありませんよ!【閃弧(せんこ)】ッ!」


 そして、突き刺した槍をそのまま力任せに振り抜く。

 そうすると当然、エルダートレントご自慢の硬質な樹皮にバックリと大きな傷跡が刻まれる。


『ーーーーーーッ!!』


 それに激昂したエルダートレントが憎き下手人を叩き潰そうと枝鞭の矛先をウォルカスに変えれば……


「防御一辺倒だからって舐められたもんだ」


 ウォルカスの持つ槍以上の性能の槍を持ったウォルカス以上の腕前の槍使いがフリーになる。


「【槍演乱舞・(はしり)】」


 一瞬だった。

 ウォルカスが樹皮を大きく切り裂き、激昂したエルダートレントが狙いを変えたその一瞬後には、既にエルダートレントの持つ全ての枝が断ち切られていた。


『ーーー!?』


「【(はしり)】は【槍演乱舞】最速の技だ。一瞬でも目を離してみろ。次の瞬間には輪切りだぞ」

「おぉ……カッコつけますね」

「結構頑張ったんだからキメさせて!?」

「別に否定はしてませんよ。安心してください。しっかりカッコイイですから」

「……っ!そうかい!ありがとうな!【槍演乱舞・(はりつけ)】!」


 親友いじりはもはやウォルカスの趣味なのか、凄いことをやってのけたにも関わらずいまいち格好のつかないリベットであった。


 やるせない気持ちを力に変えて、突きと言うよりは打撃に近い連撃を叩き込むことで相手の行動を阻害する『型』である【磔】によってエルダートレントが立て直すのを妨害し続けるリベット。


「それより、新しい槍の使い心地はどうですか?」


 そんな彼に、同じく攻撃を続けながらウォルカスが尋ねる。

 そう。リベットの槍はウォルカスによって進化し続けているのだ。


「おう。やっぱすげぇよお前。完璧で最高だ。さすがだな」

「ん……まぁ当然です。クセのある子ですが、そこら辺はどうですか?」

「そこはまだ微調整が必要な感じだな。とはいえ、それはこっちの感覚の問題だ。性能で言うなら、100点満点中1300点だな」


 今なおエルダートレントを滅多打ちにしながら、まるで工房にいるかのように話し続ける親友コンビ。

 2人に挟まれでボコボコにされ続けているエルダートレントの瞳のような(うろ)に、うっすらと樹液が浮かんでいるように見えなくもない。


「強化したり新しいの作る度に100点ずつ加算してくせいでもうバカみたいになってますね」

「しゃぁねぇだろ。毎回完璧で最高のもんが出てくんだ。前と同じ点数なんかつけられるかよ」

「はぁ……頭小学生ですか。まぁその子は結構なじゃじゃ馬ですから、頑張ってくださいね」

「おう。まぁ任せとけって。お前の槍なら何の心配もねぇや」

「下ネタですか?つまらない上に最低ですね」

「お前の!作った!槍なら!なんかお前今日はいつにも増して飛ばすな!?」


 いくらくだらないやり取りをしていようと、やっている事はボスを封殺しつつのおしゃべりだ。

 エリアボス相手にそんな事が出来るのは、やはり彼らが高い実力を兼ね備えたトッププレイヤーだからなのだろう。


『ーーーーーーッ!!』

「なっ!【槍演乱舞・(くだき)】ッ!」

「ぐぁっ……!そう来ますか……!」


 だが、当然エルダートレントもやられっぱなしではいない。

 地上で抗うことは難しいと判断したエルダートレントは、地下から攻めることにした。

 張り巡らせた根を操り、それを地下から地上に向けて突き出したのだ。


 リベットはさすがの反応力と言うべきか、地下から何かが突き出す際の微細な振動を察知して出てきた瞬間に破壊力抜群の『型』で迎撃する事に成功した。

 だが、ウォルカスはそうもいかない。槍作りの腕が確かでも、中の上程度の槍の腕があっても、それでもやはりウォルカスは生産がメインであり絶対的に戦闘経験が足りない。


 反応する事は出来ても、迎撃する事は出来なかった。

 幸いだったのはエルダートレントがウォルカスよりリベットを警戒していたという事だろう。

 突き出された根の7割近くがリベットの方を狙っていた。


「っふ……大丈夫か?」

「えぇ、何とか。君のおかげで助かりました」


 そして、大半が自分を狙うならリベットにもやりようがある。

 まとまっている根の槍群を【(くだき)】でまとめて薙ぎ払うと、勢いもそのままにウォルカスの周囲の根も砕き散らしたのだ。


「すげぇなこの槍。()()()()とかどうなってんだ?」

「どうなってるもこうなってるもありませんよ。説明したように、イメージした通りの長さに変化するだけです」

「さっきはメイのこと色々言ったが、お前も大概だかんな?」

「当然です。誰かさん曰く、僕は槍に関してはこの世界で最高らしいですから」

「はっ、言うじゃねぇか」

「言いますよ。自己評価はともかく、他者の評価にまで口出しはしない主義なので。それと、今のところその子の名前は如意槍(にょいそう)です。語感最悪ですね」

「お前にゃネーミングセンスも足りてねぇな……いや、ある意味どういう武器か一瞬で分かる最高の名前ではあるんだが」


 そんな、分かりやすくなったがためにダサさの業を宿した『如意槍』は普段はリレーのバトンほどの大きさの円柱だが、戦闘が始まると使用者のイメージに従って伸び縮みするという能力を宿している。

 これはつまり、この武器1つで短槍から長槍まであらゆる長さの槍として扱えるという事であり、このような開けた場所でも『迷いの森』の中のような木々の生い茂った森の中でも変わらず使う事が出来る。


 リベットが離れた位置にいるウォルカスの周囲の根を全て叩き潰したのも、それより前に一瞬の隙に位置がバラバラな全ての枝をその場から動かず切り落としたのもこの能力があってこそだ。


 なお、アイテム自体の効果としてサイズの任意変更を付与するというのは、現状ではメイすら出来ていない異常な程の技術だ。

 つまり、槍だけという縛りはあるもののウォルカスはメイすら出来ない事も出来てしまうのだ。


 そんな2人が出会ってしまう時を、【カグラ】のメンバー達は怖いもの見たさで半分興味半分で楽しみにしていた。

 運営は胃を痛めていた。


「多分、コイツは対モンスターよりも対プレイヤーの方が強いよな。なんせ、紙一重が存在しない。リクルスなんかには特に効きそうだ」

「えぇ。伸縮の速度はそれだけで攻撃になるほどではありませんが、突きなんかと組み合わせればだいぶ混乱させる事が出来るでしょう。ギルドシステムなんて実装されたのです。近々、ギルド対抗戦とか言ってPvPに勤しむ機会もあるでしょう。その時までには完全にモノにしておいて下さいよ」

「おうよ。んじゃそのギルド対抗戦が来る時の箔付けのためにも……」


 そう言って、ようやくリベットとウォルカスはサンドバッグ(エルダートレント)に意識を向ける。


「はい。この無様な丸太をなます切りにしてやりましょう」

「お、言ったな。頑張れよ!」

「何言ってるんですか。君がやるんですよ。僕はほら、非戦闘職なので」

「さては根に持ってるなお前!?」


 これから数分後、エルダートレントは宣言通りにバラバラにされ、ウォルカスのインベントリに無数の木材として収まった。


 ちなみに、エルダートレントにはポイントが設定されていなかった。


最初期ウォルカスとの設定のズレが散見されますが、初期ゆえのガバガバ設定です

まぁある程度の整合性を持たせるために理由付けはしますが

ウォルカスは槍だけならメイ以上の腕前のヒャッハーの領域に至りし者です

つまりヤベェ奴です。メイとの化学反応で何が起きるか……


感想&アイディアをいただけると作者は泣いて喜びます


あとアレですね、面白いなーと思ったら下の方にある『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にして頂けるとさらに狂喜乱舞します

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― 新着の感想 ―
[一言] 槍=長物、長物+打撃=戦鎚→トーカに渡る
[一言] 何だろうこの既視感… 有能ドS執事と若様?
[一言] とても面白かったです! 更新お待ちしています!
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