第249話 『一方その頃/side 弓&盾』
サブタイ通り、ヒャッハーな幼馴染達が新たなボスと戦っている間の他の【カグラ】メンバーの視点
今回はリーシャとサクラです
『グルァッ……』
「さて、取り巻きはこれで終わりっと」
「リーシャさん凄い……!」
トーカ達が無敵の《アラーム・スライム》に猛攻を仕掛けているその時。
そこから遠く離れた場所で、別のヒャッハー達がそのヒャッハー性を存分に振るっていた。
「あはは、そんな素直に賞賛されるとむず痒いわね。私からすればサクラちゃんの方がよっぽど凄いんだけど」
「そんな事ないですよ!私1人だけじゃ1匹倒すのにも凄い時間かかっちゃうし……多分、その1匹で打ち止めですし」
「それを言うなら私だって攻撃力っていう意味じゃ平均よりちょい上程度だし、サクラちゃんがいなきゃこんな早く取り巻き蹴散らせないって」
なんとも微笑ましいイケメン系女子と後輩系女子の戯れ。
見るものが見れば、背後に咲き誇る百合の花を幻視するだろう仲睦まじいやり取りだ。
※あくまでそういう人種が幻視するだけでこの2人にそう言った事実はありません
「えへへ……そう言って貰えると嬉しいです。後はボスだけですね。よーし、私もそろそろ気合い入れるぞ〜」
「ええ、新しいフィールドボスに挑んでるあの3人に負けないくらい頑張るわよ!」
だが、やってる事は……否。殺ってる事は微笑ましくない。
何せ、今この2人は都合10もの命を奪ったばかりなのだ。ちなみに、配分はサクラ0リーシャ10である。合計のマジックである。
リーシャとサクラが任されたのは、雑魚以外の討伐系ミッション。
その目的を果たすべく、既に2人は大兎や大亀と言った小ボスや、かつてヒャッハー達が初討伐を成し遂げたロックリザード……岩蜥蜴を屠っていた。
そんな訳でリーシャとサクラの2人は次なる獲物として、群れのボスたる《ウルフ・リーダー》と取り巻きである10体の《ウルフ・フォロワー》の計11体からなる第2のフィールドボス、《ウルフ・パック》の討伐に訪れていた。
ちなみに、プレイヤー間の呼び名は群狼が圧倒的に広まっており、正式名称は全く拡がっていない。
ロックゴーレムをロッ君だの鉱山だの呼ぶのはロックゴーレムをカモに出来る極一部の強者だけだが、群狼に関してはほぼ全プレイヤー共通だ。
正式名称の《ウルフ・パック》が音としてそこまでカッコよくないと言うのも理由の一つだろう。
「このボスはなんで《ウルフ・パック》なのだ?なんというか……ダサくないか?」
「分かる!群れっぽくてカッコイイ言い方はレギオンとかアーミーとかあんのにな。名前からだとパック詰めされた哀れな姿しかイメージできねぇんだけど」
「まるでスーパーで半額シールはられてる売れ残りお惣菜ではないか」
「やだよそんなボス。名前の由来は狼の群れを英語でpackって言うからだろうな。《ウルフ・リーダー》や《ウルフ・フォロワー》に表現を合わせたのか、11体でひとつのボスって意味で《ウルフ・パック》にしたのかは知らんが」
「「マジで!?」」
というやり取りが過去に繰り広げられたとか。
なお、第1のフィールドボスたるロックゴーレムはと言うと……
「あの3人が新しいボスに挑む前のウォーミングアップ、とか言ってそれぞれロッ君に挑んで全員が10秒足らずで核心石引っさげて帰ってきたのには驚いたわ。あんな短時間でウォーミングアップになったのかしら?」
と、言うことである。
「このボスの強みは数ですよね?ならその優位性はもうありません!リーシャさん、防御は任せてください!」
「“防御”は……?」
サクラがぐっと大盾【桜吹雪】を取り出し構えながらそう言うと、その言葉にリーシャが反応する。
「え、あ、その……私防御くらいしか出来ないので」
ある意味他人任せとも言える作戦に腹を立てたのだろうか、そう考えたサクラは、恐る恐るリーシャの顔色を伺う。
「サクラちゃん……防御っていうのはね、相手の攻撃を防ぐっていう意味なのよ?」
「……?はい、そうですけど……」
「サクラちゃん。あなたはさっきまで何してた?」
「リーシャさんが取り巻きを倒しきるまで狼達を引き付けてましたけど……」
「そっかぁ……サクラちゃん的にはあれは防御なのね。盾も構えずまとわりついてくる狼達を受け止めるアレが。まるで動物園の触れ合いコーナーでじゃれあってるみたいだったわよ?」
確かに、サクラはリーシャが《ウルフ・フォロワー》を全て倒すまでの間、《ウルフ・パック》全員の注意を引き付けていた。
だが、それはリーシャの言う通りよく懐いた犬にじゃれつかれているような光景だったのだ。
腕を噛みちぎるつもりだろう噛み付きは甘えたがりの甘噛みしか見えず、吹き飛ばすつもりだろう突進はかまって!とぽすぽす体を押し付けているようにしか見えなかった。
尾による強打も本来なら手痛い一撃なのだろうが、サクラが相手ではぺちぺちとしっぽでじゃれついているようにしか見えない。
鋭い爪での引き裂きも、もはやてしてしとじゃれつく猫パンチならぬ狼パンチでしかない。
某画像を想像すると途端に強そうに聞こえるが。
そして、そのじゃれつき感をより一層の強調していたのがサクラの対応だ。何せ、盾すら構えず、それどころか衝撃に耐えるような踏ん張りもなく計11体の狼達の攻撃を耐え続けていたのだから。
いくら鎧を装備しているとは言え、それでは流石に戦闘中とは思えない。
「ほら……私って時間経過でだんだん防御力が上がるじゃないですか。だから、最初のうちにダメージ稼いでおかないと後々の【仕返し】に響くんですよ」
「普通はダメージを稼ぐって言ったらダメージを与えるって意味なんだけどねぇ……サクラちゃんもしっかりおかしい側ね」
「む、それは酷いですよ!人をまるでお兄ちゃんやカト姉みたいに!」
「サクラちゃんって結構身内には厳しいわよね。あれ?お兄さん……トーカ……さんは違うの?」
今までお兄さんと呼んでいた弊害だろうか、呼び捨てがむず痒いのか後から敬称をくっつけていた。
「トカ兄はまともだよ?《EBO》の中だとちょっとはっちゃける部分もあるみたいだけどね」
「なるほど……?リアルでのお兄さんは保護者感マシマシなのね」
「というか、リアルで荒れてたらただの不良ですよ」
「それもそうね。っと、長話し過ぎたわね。そろそろ介錯してあげないと一切ダメージが通らないのに必死にサクラちゃんの頭がじがじしてる《ウルフ・リーダー》が哀れだわ」
「わっ、いつの間に!?気付かなかった……」
「あまりにも哀れね……」
フィールドボスであるにも関わらず、攻撃をノーダメで防がれるどころか無防備な状態にもかかわらず気付かれる事すら無い姿に、リーシャはとても深い哀れみを感じた。
なので、弦で首を刎ねるという現在発見されている《EBO》唯一の確定即死技である【首刎】で介錯してやった。
こんな感じで、リーシャとサクラの旅はサクラが敵を引き付け、その隙にリーシャが仕留めるという戦法で小ボス以上の敵を次々と打ち倒して行くのだった。
なお、ミッション的には達成するまでポイントが分からない非公開タイプであり、そのポイントは《ウルフ・リーダー》と《ウルフ・フォロワー》共に0ポイントという、めんどくさい上に実りのないハズレ枠なのだった。
硬すぎて最初からフルで防御すると【仕返し】用の被ダメすら出来ないという
決して手抜きや煽りでは無いのです……!戦略なのです……!
サクラに群がる狼達を1発も誤射せずに倒し切ったリーシャの超絶技巧は本編では触れられないのでした(誤射してもダメージは(たとえフレンドリーファイアがあったとしても)無いですが)
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