第247話 『作戦共有』
「おおっ!つまりは私の超全力【白龍砲】が火を噴くという事だな!?」
「3人で全力を合わせてって言ったろ!初手で俺を殺そうとするな!」
「これに関してはカレットに味を占めさせたトーカが悪いみたいなところあると思うなー俺は」
「うるせぇ!正直俺も反省してる!カレットはMPポーション飲んどけ!リクルスは待機!」
「ジュース美味しい!ジュース美味しい!」
「待機!?いや、まぁ確かに基本今なんも出来ねぇけどさ!」
「素直でよろしい。【バフセット:トリオ】」
もはやポーションをジュースとしか認識しなくなったカレットと、全力と言いつつ早速待機を命じられて肩透かしを食らったリクルスを無視してバフをかけ直す。
それで減ったMPを回復するため、トーカもMPポーションを呷る。
「ぅぇ……」
途端に口の中に不快な甘ったるさと青臭い苦味が広がる。
カレットに渡した美味しいポーションとは違い、不味いくせに効果は高い悪質な失敗作を消費しているのだが、これがなかなかに辛い。
なにか別の用途で使えないか今度メイと調べてみようとトーカは強く決意した。
「さて、作戦を発表する」
「「待ってました!」」
「カレットが足止め、俺が炙り出し、リクルスがトドメだ」
「ふむ…………何となく理解したぞ!」
「トーカの炙り出しがめちゃくちゃ怖いんだけど俺大丈夫!?」
「まぁ大丈夫だろ。まず、カレットが《アラーム・スライム》に1人で出せる全力の【白龍砲】をぶち込む。十中八九効かないだろうが、攻撃中はその場に足止め出来るし触手くらいなら焼き払えるだろう」
「おお!事前に注意が入ったぞ!なるほど、トーカの準備中に邪魔させないのが私の役目だな!」
ふんすふんすとやる気をみなぎらせて杖を握り締めるカレット。やはり彼女の中で全力と言えば【サクリファイス】前提らしい。
「そうだ。その隙に俺が全力の【グラビトンウェーブ】でオブジェクト含めてここら一帯を更地にする」
「ヒェッ……全力って言うと飛び上がるヤツか。確かに無策でやったら邪魔されそうだもんな」
「そういう事だ。んで、仮説通りなら更地になったフィールドのどこかに《アラーム・スライム》の核……あるいは本体があるはずだ。それをリクルスが確実に仕留める」
「しゃぁ!美味しい所貰いッ!これは俄然燃えてきたぜ……!」
フィニッシュ担当に振り分けられたリクルスが嬉しそうに手甲を打ち鳴らす。
この3人の最も素早く、また単体攻撃に限って言えば他2人を凌ぐ一撃を持つリクルスは確かにこの役目にふさわしいと言えるだろう。
「仮説が外れてて一定以下無効のアーマーだったとしても、カレットの本気【白龍砲】なら行けるだろう。そうでなくとも俺の【グラビトンウェーブ】で本体諸共粉砕出来るならそれでもいい。それがダメでもリクルスがいる。三段構えの作戦だ。仮に全部ダメだとしても、後に残るのは環境破壊され切った更地だ。改めて考え直せばいい」
「うっわぁ……トーカがヤバイ目つきしてる……結構ストレスだったんだな……。だって言ってる事がとりあえず殺る。死ななかったらなんか考える。だもん」
「む?なぁなぁひとつ気になったのだが、私の暴発させる方の【白龍崩】なら足止めと炙り出しを一度に出来るのではないか?」
地味にストレスが溜まっていたのか、ヒャッハーの目付きで《アラーム・スライム》を睨め付けとんでもない事をのたまうトーカ。
そんな保護者の様子に、リクルスは戦きカレットは気付かなかったのかふと気になることがあると言い出した。
「あぁ、それは考えたが、ふたつの理由で却下だ」
「ほむん?」
「まず1つ目、意図的に魔法を暴発させる方法だと俺らにもダメージがある。【エリアプロテクション】で事前にカバーするとしても、この魔法は強いだけあってMPの消費も大きい。となると必然的に【白龍崩】の威力も落ちる。正直ちょっと落ちたくらいなら誤差だとは思うが、その差が決定的な違いにならないとも限らないしな」
まるで《アラーム・スライム》の大暴れなど存在し無いと言わんばかりに完全に無視に徹して話を続けるヒャッハー達。
トーカは指を1本立て、理由を告げる。
「む……確かにここぞという場面で全力を出せないのは辛いな……おん?でもトーカの使う【エリアプロテクション】と私の【白龍崩】は関係無くないか?」
「それはつまり【マジックポイントギフト】で俺のMPを分けなくてもいいという意味だな?」
「うむ!それは大問題だな!威力が下がってしまう!」
やはりマジックハッピーは自分の魔法が弱くなるのが許せない。あっさりと引き下がるどころかトーカ側に寝返った。
トーカが2本目の指を立てる。
「2つ目。【白龍崩】だと視界が潰れるせいでリクルスのトドメに支障をきたす。【白龍崩】で諸共焼き払えればいいが、万が一なにかのギミックで耐えられてカウンターされたら面倒だ」
「俺の出番が死ぬ……!?そいつぁ許容出来ねぇな!」
ガンガンとうるさいくらいに手甲を打ち鳴らし自分の出番を意地でも確保しようとするリクルス。別に取り上げねぇって……と、トーカは思った。
「3つ目」
「「3つ目!?」」
そして立てられる3本目の指。
事前に理由は2つと聞いていた2人は驚いた。
無視され続けてる《アラーム・スライム》はそろそろ疲れてきた様だ。
デタラメにめちゃくちゃに縦横無尽に暴れ回っていても、慣れさえすれば会話の片手間に避けられるようになるのがヒャッハーだ。なんと理不尽な事か。
「正直俺も暴れたい」
理由の3つ目はめちゃくちゃ個人的な事だった。
あるいは、だからこそ事前の理由に含めなかったのかもしれない。
「それは大切だな!私だって出番がないのは悲しいぞ!」
「あぁ!暴れる機会はあった方が良いに決まってる!」
「だろ?さすがに【白龍崩】で確殺出来る確信があるならそれでもいいんだかな。他二つの理由がある上で我慢するのはさすがに嫌だ。という訳で、最初のプランで行こうと思う」
「「あいあいさー!」」
正当な理由に我儘……と言うよりは当然の闘争本能を加えた形で【白龍崩】による焼き払い作戦は却下された。
「んじゃ、行くぞ!」
「「おぉーッ!」」
『ピギュ……ぴきゅぃ……』
そうして、作戦会議を終えたヒャッハー達によってなんか疲れて動きが止まった《アラーム・スライム》を対象に恐ろしい作戦が始動した。
今回は大人しめな回でしたが、言わいる嵐の前の静けさって奴です
あるいは、撃鉄を起こした銃を相手の眉間突き付けた状態です
作戦実行まで繋げようと思ったけど、いい感じに切れ目が出来たのとヒャッハーがヒャッハーするのに1話使いたかったのでここで切りました
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