第239話 『メイだもの』
遅くなり申し訳ない
ちょいとリアルでやらなきゃ行けないことがあって次の投稿は2月下旬頃になるお知らせのための投稿です
「それじゃみんなついてきてね」
「ほいほーい」
「……あれ?ここってログハウスの中よね?なんで暖炉の後ろに通路があるの……?」
わくわく顔で【カグラ】のみんなを案内しようとするメイに、リーシャが訊ねる。それを皮切りに、それぞれが気になっていた部分を口々に訊ねていく。
「そう。ここは確かにログハウスの中だよ。でもね、それと同時に地下なんだよ。それで、この扉はログハウスと『地下洞窟』を繋ぐ通路にもなってるの」
「はい?どういうこと……?」
「えっとね、みんながこのログハウスに入った時点でログハウスごと下に下がって地下に来たんだよ。いわば大きなエレベーターだね」
「んなっ!?ログハウスエレベーター!?マジで!?」
「いやいやいやいやいや!おかしいってメイさん!だってほら!窓の外は普通に景色があるし……!」
「うん。普通にしてたら気付かれちゃうから、窓に外の映像を投影してるんだよ。こう……スクショを上手く貼り付けてるの。結構微調整大変だったんだよ?」
「だとしても部屋全体が下がってたならさすがに気付くと思うが……?」
「そこは小さな遊び心だよ。下がる時に発生する音と逆の音を当てて相殺して無音下降させて、振動とかも上手く相殺するようにしてるんだ。下降時の浮遊感は下降をゆっくりにする事で気付かれないようにってのが今は精一杯かな」
「だが、その暖炉の奥から何かが上がってくるような音が聞こえたのは?さすがにそれを聞き間違えるほど自分の耳に自信が持てないことは無いぞ?」
「下降時の諸々を相殺するついでに上昇してくる気配を偽装してみたよ!あたかもログハウスは地上にあるままで暖炉の後ろに隠しエレベーターがあるように見せるためにね!」
「それでもおかしいぞ!何せ私はメイを探すために1回ログハウスから出ている!ログハウスが下がっているなら外に出れるのも取り残されないのもおかしいぞ!?」
「うん。ログハウスだけじゃなくて、ログハウスの周りもある程度はまとめて下がるようになってるんだ。下降しはじめたら周囲の自然を偽装するために天井とかがせり出て来てログハウスの周囲を箱庭みたいに囲ってね。明かりの具合とか閉塞感を誤魔化すのとか本当に大変だったよ。ここの調整に時間食って招待が遅れたくらいにはね。それでもまだまだ作り物感は拭えないかなぁ……トーカだったら多分すぐ気付いただろうし、カレットも多分別の事に気を取られてなかったら気付いたと思うよ」
様々な疑問に、ひとつひとつ丁寧に、成果物を自慢するように答えていくメイ。
得られた答えは実に単純だった。
Q.なんで暖炉の後ろに通路があるのか?
A.ここが地下だからだよ!
Q.なんでまだログハウスの中なのにもう地下なの?
A.ログハウスはエレベーターだからだよ!
Q.窓の向こうの景色が外のままだけど?
A.いつからそれが外の景色だと錯覚していた?
Q.下がったのに全く気付かなかったんだけど?
A.そうなるように工夫しました!
Q.暖炉の後ろから上昇してくる気配がしたのは?
A.そう感じるように偽装しました!
Q.でもログハウスから出れましたよ?
A.ログハウスの周りも下げちゃいました!
「今更だけど……私の親友が頭おかしい……」
「む、酷いなぁ。僕は自分に正直に全力で楽しんでるだけだよ?」
「メイ……あなた自分で言ってること分かってる?このファンタジーな《EBO》の中にエレベーターを作っただけに飽き足らず、【島】に大穴開けて超巨大なエレベーターを作ってしかもそれを搭乗者に悟らせないギミックをつけてるんだよ?」
「うん!実は前から乗ってるのに気付かないエレベーターを作ってみたくてね!現実だとさすがに挑戦するのすら諸々の理由で大変だったけど、ここなら魔法とかもあって無茶できるからね!すっごい楽しかったよ!」
「そっかぁ……楽しかったなら……いいわ……」
「えへへ。単純作業ならゴーレムに任せられるようになったからやりたいことに注力出来るってのが大きね。突き詰めて良かった『人形創造』!」
サラッと恐ろしい『地下洞窟』の労働実態を匂わせながら、とてもいい笑顔で頷くメイに、リーシャは何も言い返せなくなってしまう。
諦めたとも言う。
心做しか、メイの背後に控えるゴーレム達が誇らしげに見えたのは……気の所為だろうか。
「それじゃあ最初はここ!地下拠点!主にみんなが地下に来た時に拠点にする場所だよ。僕なんかは作業場で全然いいんだけど、みんなはそうもいかないでしょ?」
そう言って案内されたのは、先程のログハウスよりもしっかりとしたリビングのような一室だった。
ログハウス風の作りのその部屋は、ログハウスにも使われていた窓の外の景色を偽装する技術で『草原』の景色を映し出しており、地下にあるとは思えないほどの開放感に満ちていた。
言われなければ、地下にあるという発想すら出てこないだろう。
「あ、ちなみに、通路挟んだ向かい側は高級ホテルのエントランスみたいな豪華絢爛な作りになってるからその日の気分で使い分けられるよ!」
「もしかしなくても家具とか全部手作りよね?」
「うん!家具から壁紙から空間から全部手作りだよ!この前見た大豪邸スペシャルで無駄に豪華な家具も作ってみたいなって思ってね!」
「うーん、この影響のされやすさ。本当に好きなだけ発散出来る場所が見つかってよかったわ……もう大晦日の大掃除にメイの部屋から忘れさられた作品掘り出してフリマアプリに出店する作業で1日潰される事も無くなるのね……」
「えー、リーちゃんいい小遣い稼ぎになるって喜んでたじゃん。お年玉だーって」
「数が多いのよ数が……しかも結局メイが作った物だから過剰にピンハネするのも気が引けるし」
「完全に忘れてた二度と日の目を見なかったはずの物だから別にいいのに……。まぁリーちゃんがそういうところ誠実だから材料費とか結構気にせず作れてるんだけどね」
「感謝しなさいよ?作る一方だと材料費で破産するわよ?ほんと、メイはそうやって作るだけ作って満足する所あるわよね。作品に関心を持ちなさいよ」
「えー?いい感じの出来の作品はちゃんと保存してるよ?」
「だーかーらー、メイと他の人じゃ基準が違うの。メイが作ってその瞬間満足して忘れ去る作品もフリマアプリに投げれば4桁……下手したら5桁で売れるんだから。覚えてない?1回だけ6桁行ったことあったでしょ?」
「あはは、あれはびっくりしたねぇ。リーちゃんがすっごい慌ててスマホの画面突き付けてきてね。『10万出すから他の人じゃなく自分に売ってくれ』って本当に10万で買ってくれた時はさすがにぽかーんとしたよ」
そんな、2人にだけ通じる思い出話に花を咲かせるメイとリーシャ。その2人を、置いてけぼりを食らった【カグラ】の面々はものすごいなんとも言えない様な表情で見ていた。
「…………なぁなぁ。さすがに冗談……だよな?」
「もう一周まわって怖いよ……」
「むぅ……だが2人だけで話す中で冗談を混ぜる必要があるのか?思い出が美化されて盛ってるだけかもしれないが」
「いやぁ……メイだしなぁ……現実でもメイがものづくりに精を出しているってのは聞いてたがここまでとは……」
「俺的にはそこまで利益があると確定申告とかしてそうで怖いなって思ってるぞ」
そんな、やべぇヤツらを見る様な顔で自分達が見られていた事に気付いたのか、メイとリーシャが苦笑いで思い出話を終わらせる。
確実に手遅れだと思うが、何故か2人はセーフ!とでも言いたげな顔をしていた。
「それじゃあ本格的に案内するよ〜!まぁ広いは広いけど殆どは坑道になってるからちゃんと紹介するような場所は少ないんだけどね」
「メイの少ないが一般的な少ないと同じなのかね?」
「私は質も不安ね。だってメイだもの」
「メイだものなぁ……」
「みんな酷くない!?」
和気藹々(?)としたやり取りが『地下洞窟』に響き渡る。
この場に染み付いた狂気に似合わぬ、明るい声が。
この作者、メイならどこまで盛っても構わないと思ってる節があるな?
フリマアプリのくだりは実際のところどういう裁定なのか軽く調べた限り、合計でそこまで行かなかったり一発でドカンと稼ぎ過ぎなかったりすれば非課税らしい……?よくわからんから濁しとくぜ!
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【以下ゴーレムの名前の答え合わせ】
感想欄で答えてくれた方には解答をお伝えしましたが、ここで改めて解説をば
精密人型ゴーレム男性型初号機
名前の由来はMaleOne
MaleOne→MOne→モネ
精密人型ゴーレム女性型初号機
名前の由来はFemaleOne
FemaleOne→FeOne→フィオネ
精密人型ゴーレム男の娘型初号機
Femaleに見えるMaleのOneでFeMOne
そのまんまですね
ちなみに、フィモネの名前の案には有一もありましたが……
さすがに、ねぇ?という訳で見送られました
「僕の自信作のゴーレム達を紹介するね!モネ!フィオネ!有一!」
みたいな事になりかねなかった。よく思いとどまったぞ




