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ヒャッハーな幼馴染達と始めるVRMMO 【書籍版発売中!】  作者: 地雷酒
ギルド結成!ヒャッハーの魔窟【カグラ】!
256/310

第238話 『だって僕だよ?』

突如現れた謎の3人組の正体とは!?

ちなみに、今回の章はまたしてもメイン舞台が【島】になります

【島】編が【島】の開放だとすれば、今回の章は【島】の開拓の章と言えるかも知れません

あと1番弾けるのはやはりメイ

 

 暖炉の後ろに隠された扉の奥から、探していたメイが現れた。

 見知らぬ3人の男女を従えて。


 メイの後ろに佇む3人。

 ピッシリと燕尾服を着込んだ生真面目そうな顔の金髪オールバックの背が高い男性。

 フリフリのメイド服に身を包んだ、どこか気の抜けるぽわぽわした笑みを浮かべた紺色の髪のおだんごヘアーな少女。

 そして、ダボダボなパーカーとズボンを身に着けたメイより一回りほど小さい澄まし顔した水色のショートヘアーの女の子。


 当然だが、トーカ達に見覚えはない顔ぶれだ。


「トーカ、知ってる奴か?」

「いいや、初対面だな」

「つまりメイの知り合いか?メイがこの【島】に呼んだと?」

「って事なんだろうが……少なくとも俺はそんな話は聞いてないな。メイ、説明してくれるんだよな?」


 何故か無言で自慢気にむふーっとした顔をしているメイに、少し事務的な声音でトーカが尋ねる。

 別に、メイが個人的な友人を【島】に招待する事を咎めるつもりも禁止するつもりもない。

 ただ、この【島】は【カグラ】の共通財産であり、名目上とはいえ所有者はトーカである。招待するなとは言わないが、せめて、事前に一声かけて欲しいというのが本当のところだ。


「………………あれ、反応薄い……?しかもみんななんか怖い顔してる!?」


 少し緊張した面持ちでメイの言葉を待つヒャッハー達の険しげな顔に、むふーっとしていたメイが戸惑うように、あるいは不安そうにオロオロとしだす。


「反応が薄いというか、混乱してるだけだな。別に責めてるわけじゃないんだ。ただ、そちらの3人の説明をして欲しいだけだ」


 全員が全員混乱しているが、それで各々が思うままに騒いだら話が進まなくなる。

 それを理解しているからこそ、代表をトーカに絞る事で対話するのをトーカとメイだけにしている。

 皆の混乱を背負って矢面に立つ以上、少なからずトーカの雰囲気に緊張というか真面目な空気が滲むのは仕方の無い事だ。

 一方のメイはと言うと、サプライズやドッキリが滑った時のようないたたまれない様子でオロオロとしていた。トーカ達の反応が予想外だったのだろう。


「あ、えっと……その。うん。みんなはこの子達を見てどう思った?」

「どう、と言われると、『混乱した』だな。メイがこの【島】にほかの人を連れて来てるなんて全く知らなかったからな」

「へ?そんなの呼んでないよ?」

「ん?じゃあそっちの3人は……?」


 何か、会話が噛み合わない。トーカもメイも、ほかのメンバーも、全員が頭に疑問符を浮かべている。

 メイもきょとんとしていれば、トーカ達もきょとんとしている。

 逆に、このなんとも言えない空気の原因となっている3人は何食わぬ顔でメイの背後に佇んでいる。君達の話なんですが。


「うん。今日みんなを呼んだ理由のひとつだよ!この子達をお披露目したかったの」

「この子達……?」

「お披露目……?」


 トーカに対応を任せて背後に控えていたリクルスとカレットがどういう事なんだと言いたげな様子でメイの背後に控えている3人をじろじろと見ている。


「「………………」」


 逆に、メイと最も付き合いの長く暴走するメイのブレーキ役になる事の多いリーシャと《EBO》において初日から……つまりは最も付き合いが古く話も合うため関わりが深いトーカは既に何か察した様でこめかみを押さえている。


「えっと、そうだな。うん。なら、説明を頼む」

「もちろん!この子達はね、僕が作ったゴーレムなんだよ」

「なんと!?」「マジでか!?」「えぇっ!?」

「これはまた……凄いのを作ったわね……」

「ゴーレムを作ってるの自体は知っているし、実際に見た事もあったが……まるで違うな。言われてもなお信じられん」

「不気味の谷は完全に埋め立てられてるな……生身の人間と違和感ないレベルでアバターを生成出来るんだから理論的には可能なんだろうが……」


 メイ、ついに人造人間に手を出す。

 ……と、それはさすがに冗談として、観察眼に富むトーカですらパッと見では気付かないクオリティの『人型ゴーレム』を作ったというメイのカミングアウトに、形は違えど【カグラ】の面々は驚きを隠せない。


「それで『この子達』か……。完全にテンションが作品を自慢する時のそれだもんな」

「あー、だから私達の反応が微妙だった時に不安そうな感じにしてたのね」

「う、うん……結構自信作だったから。反応が薄くてちょっとショックだったよ……」

「いや、うむ。それは仕方ないと思うぞ?」

「そうそう。クオリティ高過ぎてゴーレムとか発想すら出てこなかったわ」

「こう……分かりやすくゴーレムっぽいワンポイントがあれば良かったんだけどな」

「この人達を初見でゴーレムって疑うなら、町とかで人を見かけてもプレイヤーかNPCかゴーレムかを常に疑わなきゃ行けないと思うんだ」

「え、えっと?つまり……?」


 ようやく後ろにいる3人が見知らぬプレイヤーではなくメイドインメイのゴーレムであると知って、口々に感想を口にする【カグラ】達。

 その反応を見て、メイは困惑した様子でオロオロとしている。

 自信作に反応が少なかったショックからの急な変化に脳が追い付いていない様だ。


「そのゴーレム達のクオリティが高過ぎてゴーレムに見えなかったって話だな。微妙だったから沈黙してた訳じゃなくて、凄すぎて作品(ゴーレム)紹介とは思えなかったってことだ」

「へ?って事はみんなは僕が他のプレイヤーをこの【島】に招待してみんなより先に地下に迎えてたと思ってたってこと?人見知り(ぼく)が?他の人を?」

「もしかして、だけどさ。メイ、あなた『自分が紹介するんだからプレイヤーな訳ない。つまり自分の作品だ』って伝わると思ってこの人にしか見えないゴーレムを前フリなしにサプライズ紹介したって事?」

「?うん。だって僕【カグラ】のみんな以外と『メイ』としての関わり無いもん。生産取引の掲示板とかで匿名で依頼を受けたり売買とかはしてるけど、直接顔を合わせたりはしてないし」

「メイ……!」

「わぷっ!リーちゃんどうしたの……!?」


 あまりにも普通に悲しい事を言うメイに、リーシャが瞳を潤ませて抱き着く。

 この限りなくリアルに近い感覚でファンタジーを楽しめる世界で閉じた狭い人間関係だけを過ごしているメイに涙を堪えられなかったのだろう。

 リーシャはコミュ力が高く、物怖じしない性格なので実は結構野良パーティを組んだり顔見知りのプレイヤーが多いのだ。

 生活リズムが近いトーカ達幼馴染組はそのメンバーで固まってプレイすることも多いが、それでも顔見知りのプレイヤー達は少なくないし、【クラウン】や【魔導研究会】などのかつて激戦を繰り広げたプレイヤー達とは交流があったりする。

 リベットは言わずもがな、イベントのPvP大会の時に【カグラ】に誘われてから一緒にいる事が多いがそれ以前は普通に様々なプレイヤー達と交流を持ちながら遊んでいたし、今だってその交流は続いている。


 そういった訳で、完全にこの場にいる面々で人間関係が完結しているメイは圧倒的に交遊範囲が狭く、このメンバーの中で一二を争う程に交遊範囲の広いリーシャにしてみれば、メイのこの人間関係の乏しさは哀愁を誘うのだろう。


 ただし、『メイ』としてではなくメイが活動している生産掲示板での名前である『作る人』としては恐らくこの中どころか《EBO》トップの知名度、交遊範囲である事を【カグラ】のみんなは知らない。

 なにせ、人脈という最強の武器によって基本的に全ての生産系需要をメイによってカバーしているトーカ達と、基本的に生産系需要は親友であるウォルカスに頼っているリベットである。


 リベットには槍に限って言えばメイに匹敵するかそれ以上の能力を持つウォルカスがいる上にポーション等の雑品はメイが試作品の消費をして欲しいという名目で最高品質クラスの物を渡してくるし、トーカ達はメイのカバー範囲が広すぎるせいで基本的に他に頼る必要が無いのだ。

 もし仮にメイが《EBO》を引退した場合、トーカ達は消耗品や武器の手入れ、更新などにとても苦労する事になるだろう。


 閑話休題


「それより!みんなを紹介しないとね!」


 そう言ってリーシャを引き剥がしたメイがずいっと前に押し出して来たのは、長身の金髪オールバックの男性。

 整った顔立ちは生真面目そうなキリッとした顔をさらに引き立たせている。


「まずはこの子!精密人型ゴーレム男性型初号機のモネ!自己紹介してね」

(マスター)よりご紹介に与りましたモネでございます。よろしくお願いいたします』


 メイが紹介すると、それに合わせて燕尾服を着た金髪オールバックの男性……に見えるゴーレム、『モネ』がそう言って恭しく一例する。


「喋った!?」

「うん。今はまだ事前に用意した定型文を簡易的な状況判断で発声するくらいしか出来ないけど、一応喋れるよ。行く行くは言葉のパターンと状況判断基準の量を増やしてスムーズに会話出来たらなって。自分でパターンを増やしたり状況判断条件を更新、詳細化出来るように……まぁつまりは自分で考えて話せるように、ってのが最終目標かな」

「やってる事がAIの学習なんだよなぁ……」

「NPCっていう実例がいる以上、根気さえあれば不可能ではなさそうなのがまたなんとも言えないわね……」

「現段階でも十分やばいと思うんだよなぁ俺は」

「あはは、そんな事ないよ。今はまだ『Aと言われたらBと返す』くらいの事しか出来てないからまだまだだよ」


 恭しく一礼した後は再びメイの背後で待機するモネ。

 少なくとも、体の動かし方については特にメカメカしい違和感は感じない。ゴーレムと現実のロボットはそもそも作りが違うのだが、それにしても動きや見た目だけなら違和感を感じさせないレベルの完成度に驚きが振り切れて素直に感心するしか出来ない。


「それで次はこの子!精密人型ゴーレム女性型初号機のフィオネ!はい、自己紹介どうぞ」

『はいっ!ご主人様(マスター)よりぃっ!?』


 続いてメイが紹介したのは、ぽわぽわした笑みを浮かべた紺色の髪をお団子ヘアーにしたメイド服の少女。

 柔らかな雰囲気とほわっとした可愛さの顔立ちの相乗効果で見ていると何やらとても微笑ましい気分にさせる雰囲気を纏っている少女は、元気よく挨拶しようとして……ずっこけた。

 それはもう盛大に、顔からずっこけた。


「…………あの、メイ?この子、コケたんだけど?」

「うん。転んだね。緊急性の低い状況に限ってあらゆる行動時に20%の確率でどんくさいミスをする設定にしてみたんだ。ドジっ子メイドってやつだね」

「その設定いる?」

「この前見たアニメで出てきたドジっ子メイドのキャラが可愛いかったからつい……てへ?」


 ド派手に顔面からすっ転んで額をさすっていた女性型のゴーレム……フィオネをメイが助け起こす。


『お恥ずかしい所をお見せしてしまい申し訳ありません!ご主人様(マスター)よりご紹介(ひょうかい)いただきましたフィオネと申します!よろしくお(ひゃ)いいたします!』

「…………メイ?」

「どんくさいミスと同じ条件で話す時に噛むようにしてみたよ。個性って大事だよね。特にゴーレムって意識しないと没個性になっちゃうし」

「そっかぁ……まぁ、メイがいいなら良いわ。別に私達が口出しする事でもないし」


 フィオネは自己紹介を終えると、恥ずかしそうに顔を赤くしながらメイの後ろに控える。この赤面機能はドジが発動した場合に発動する機能らしい。

 些細な遊び心もメイ程の技術があるとここまでの事が出来てしまうのだ。


「最後はこの子!精密人型ゴーレム男の娘型初号機のフィモネ!はい、自己紹介どうぞ」

『フィモネ、よろしく』


 最後に紹介されたのは、小柄な体格に反して落ち着いた雰囲気の少女……否、少年である。

 中性的な顔立ちどころか完全に将来美人になるであろう可能性を感じさせる女の子な顔立ちのフィモネは、ボディラインの隠れるダボダボのパーカーのポケットに両手を突っ込んで一言だけで挨拶を済ませるとそそくさとメイの背後に戻ってしまう。


「とりあえず、ひとつはスルーするとして。他のふたりに比べるとえらく簡潔だな」

「うん。モネのコンセプトは敏腕執事。フィオネのコンセプトはドジっ子メイドでこの子(フィモネ)のコンセプトは無愛想な男の娘だからね」

「男の子……?メイさん的に男性型と男の子型に分けるポイントなんだ」

「あー、サクラ?多分お前が想像してるのは漢字が違うな」

「へ?どういう事?」

「それはだな……」


 男の娘という概念を知らないらしいサクラにリクルスが説明する。

 サクラは《EBO》を始めるまで、いわゆるサブカルチャーに造形が深くなかったため、こういった事には疎いのだ。

 逆に、リクルスはゲームを初めとして漫画やアニメなどをそこそこ嗜んでいるため、そういったネタにはある程度の知識がある。


「へぇ……そういうのもあるんだ」

「なんというか、メイは本当にカバー範囲が広いよな」

「作るのが好きだから知識やネタ集めに色々見漁ってたのが高じて……って感じでね。インプットは大事だよ」

「メイに《EBO》を進めた時も、決まり手になったのは『面白いものが沢山あってしかも色々作れるらしいよ』の一言だったものね」


 と、そんなこんなでモネ、フィオネ、フィモネの3人の紹介が終わり、ようやく本題へと入る事ができるようになった。


「それで、この3人?3体?がここに呼んだ理由のひとつって言ってたが、他の理由は?」

「それはもちろん、マッピングとある程度の開拓が終わった『地下洞窟』のお披露目だよ!色々あったから報告も兼ねてね」

「ある程度の開拓が終わっちゃったのかぁ……メイのある程度と私達のある程度って基準が違うからかなりガッツリ開拓されてると見た方が良いわね」

「そんな事ないよリーちゃん。今回は本当にそこそこくらいだよ。『地下洞窟』かなり広くてね。多分この【島】全土に広がってるんじゃないかな?」

「そんなにか……」

「うん!開拓のしがいがある広さだよ!それじゃあ、早速『地下洞窟』にご招待〜!」


 不発気味だったもののゴーレムを紹介できた事や、これから開拓した『地下洞窟』を紹介出来るという事もあってテンション高めなメイは、暖炉の裏に現れた隠し扉の奥に続く小さな明かりの灯された通路を【カグラ】のみんなと三体のゴーレムを引き連れて進んで行く。


 メイによる開拓済み『地下洞窟』ツアーが開催されようとしていた。

え?まだここは地上のはずだろうって?いやぁ、本当にメイは無駄なギミックを仕込むのが大好きな御方やで


と、言うことで謎の3人組の正体はメイの作ったゴーレムでした!

感想欄で当てられてバレた!?となった作者です

ちなみに、男性型と女性型の違いは骨格(体格)で判別しています

現状はまだシルエットや露出している部分を人間に寄せるのにリソースを割いているので服の下などの隠せる部分はかなり手抜きというかマネキンしています

男の娘型の判定は男性型の骨格と女性型の容姿を違和感が出ないように調整しながら作成しているため何気に1番手間がかかっています……が、やりたいことにかける手間を手間と感じないのでルンルン気分で作っていたことでしょう

ちなみに、3人の名前(特にフィオネとフィモネ)がややこしいのは理由があります

この3人の名前はいわいるコードネームのようなもので、命名法則というか理由がしっかりあります。

メイが3人に名付けた名前の表記はそれぞれ『MOne』『FeOne』『FeMOne』です

名前の理由を当ててみよう!(忘れていなければ次回のあとがきででも答え合わせをしようと思いますが、普通に感想返信で答え合わせするかもしれないので予定は未定であって決定ではないという事で)


感想&アイディアをいただけると作者は泣いて喜びます


あとアレですね、面白いなーと思ったら下の方にある『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にして頂けるとさらに狂喜乱舞します

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 特定分野だけなら他の人の方がってあるけど メイは範囲広すぎて組み合わせて作れば特定分野すら超えると思うんだ [一言] 多分VRの歴史に名を残すレベルだと思う 初めてのVRの大会で優勝し…
[一言] 今回もありがとうございました! ドジっ子メイド最高…… 2次元だから許される存在、現実にいたら余程のことがない限り即刻クビですからね…… メイちゃん大人になったらノーベル化学賞ばんばん取って…
[一言] 謎の三人の男女は、ゴーレムでしたか…。 敏腕執事に、ドジっ子メイド、無愛想な男の娘とメイらしいチョイスのキャラですね。(* ̄∇ ̄*) サプライズのドッキリは、ゴーレムのクオリティが高すぎて滑…
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