第237話 『これはロマンなので必須です』
新章開幕!(なお、新章の要素は全く出てこない模様)
要素が出てくるまで仮の章タイトルにしときますね(謎の焦らし)
新章のメインとなる新要素が何か予想してみよう!
あの奇跡のような遭遇を果たした遠足から少しして、日常に戻ったヒャッハー達は再び【島】に訪れていた。
そして、【島】の中心にある『草原』でトーカ、リクルス、カレット、サクラ、リーシャ、リベットという、メイを除く【カグラ】のメンバーが立ち尽くしていた。
「……………………なぁ、リーシャ」
「言わないでお兄さん。むしろこっちにまで侵食して来てないだけ頑張ったと私を褒めて」
「えぇ……これで?俺地下行くの怖いんだけど」
「お兄ちゃん、そんな事言わないでよ……私だってちょっと怖いんだから」
「なぁなぁ、アレはなんなのだ?見知らぬ小屋が建っているのだが」
「うーん。まぁいいんじゃねぇの?ここを1番楽しんでるのはあの子な訳だし」
「そう!そうよね!リベットの言う通り!私悪くないもん!むしろ頑張ったもん!地下帝国の地上侵攻を防ぐためにひとり健気に戦ってたもん!」
「幼児退行しやがった……!そんなに大変だったのか……」
「うわぁぁぁぁぁんメイ怖いー!」
「1番メイと付き合いの長いリーシャがここまで壊れるなんて……」
「一体何があったというのだ……!?」
一体何が起こっているのか、事の発端は少し前まで遡る。
◇◇◇◇◇
メイから『見せたいものがあるから【島】に来てほしい』というフレンドメッセージが送られてきた【カグラ】一行は、先に【島】で待っているというメイを追いかけるために【トルダン】の噴水広場で集合していた。
なんだかんだ3つの町が解放されている現状だが、待ち合わせ場所として1番よく使うのは【トルダン】の噴水広場だ。何となく、そういった待ち合わせ場所にしたくなる様な雰囲気をこの場所は纏っているのだ。
「メイが【島】で見せたいもの……ねぇ。嫌な予感しかしないんだが?」
「そうか?むしろ私は楽しみだぞ。メイはいつも素晴らしいものや面白いものを作ってくれるからな」
「メイに『地下洞窟』まるまるあげたのが吉と出るか凶と出るか、だな。リーシャ的にはどうだ?」
「…………いやぁ、私に振らないでよ。頑張ってるんだから」
【カグラ】のメンバーの中でもメイと長い付き合いの4人がワイワイと盛り上がっている中で、噴水のヘリに腰掛けたリベットが何かを考え込むように顎に手を当てていた。
「うーん……」
「どうしたんだリベット?」
「あぁ、いや。改めてメイの事を振り返ってみるとな、他の生産職とはだいぶ毛色というか出来ることの規模とレベルが違うなって」
「確かに、俺は最初からずっと生産関連はメイに頼み続けてたからそういうもんだって思っちゃってたけど、やっぱおかしいよな」
「そういやさ、前にメイと一緒にポーション作ったことがあるんだけど。全く同じ材料使ってるはずなのに俺が効果の低いポーション1本作れたのに対してメイがかなり高性能なポーション三本くらい作ってた事あったな。なんだったんだろアレ」
「む?おいおいトーカ。計算が合わないではないか。同じ材料なのに何故効果も数も増えるのだ?」
「さぁ……?メイは無駄を省いてるからって言ってたが、無駄を省くだけでここまでの差が出るのか俺には分からん」
「メイこわぁ……」
感覚が麻痺して来ていた【カグラ】の面々だが、ほかの生産職ともある程度の交流があるリベットのふとした疑問にそう言えば……と改めて彼女の異常性を認識し始めたのだった。
「ごめーん!ちょっと用事が長引いちゃって!」
そのまま見え隠れし始めた(正確にはようやく周囲とのズレの片鱗を認識し始めた)メイの凄いを通り越してもはや怖いまで至った生産力に戦いていたヒャッハー達の元へ、遅れて来ていたサクラが訪れた。
「おーう。事前にちょっと遅れるってのは聞いてたからへーきへーき」
リアルでサクラの兄であるリクルスはサクラこと舞桜が今日は学校の委員会があって帰って来るのが少し遅くなる事を知っていて、伝言を頼まれていたため全員がサクラが遅れてくる事を把握している。なのでこの噴水広場で待っていたのだ。
「本当に待たせちゃてごめんね?」
「いーのいーの。気にしないの、メイだって別に怒りゃしないわよ。ただ時間が出来たからって最終調整の名目で色々いじくってるだけでしょ。 ごめんやっぱ危険だわ早く行きましょう」
言っているうちに放置すればするだけ嬉々として創り続けるメイを相手に時間は味方ではないと気付いたらしい。
慌てた様子で一行は島へと移動したのだった。
◇◇◇◇◇
そして、現在。
久しぶり……という訳でもないが、そんなに頻繁に来てもいないという微妙な距離感の【島】に訪れた一行は唖然としていた。
そこには、何も無かった。
いや、これでは誤解を招くだろう。正確には、ほとんど変化が無かった。
メイを野放しにしたというのに、地上の『草原』には初めて来た時、そしてこの【島】を探索した時と何ら変わりのない、広々とした『草原』が広がっていた。
変化らしい変化と言えば、【祭壇】を祀る東屋が手入れされて、その周囲の『草原』も自然感を残しながらも美しく見えるように整えられている事と、そこから少し離れた位置に小さなログハウスのような小屋がポツンと建っているくらいだ。
いや、何も無かった場所にログハウスが建っているのは十分異常なのだが、メイに慣れ切った一行には些細な変化にしか感じられなかった。
ほかの生産職と比べてのメイの異常性を理解はしていても、感覚は付き合いの長いメイ寄りなのだ。
「あの小屋は……多分メイよね。いや、メイじゃなかったら困るからメイね。それ以上にメイ以外にゼロから家をこの短期間で創れる人なんていないからメイね」
「まぁメイだろうなぁ。それで、あの小屋に入ればいいのか?」
そう言って、トーカがログハウスの扉を開けようとする。
がちゃん!ざんねん!とびらはあかなかった!
「…………」
がちゃん!がちゃん!かぎがかかっているようだ!
「………………」
がちゃん!がちゃん!がちゃん!そんならんぼうしちゃいやん!
「……………………この音声機能いるのか?今俺はそこそこイラついてるぞ?」
「トカ兄抑えて抑えて!多分イタズラ心だから!」
「トーカがからかわれてるのって珍しいよな」
「これは音声は何種類くらいあるのだろうな?コンプリートするまでやってみるか?」
「やめとけって。正気に戻ったトーカに怒られるぞ」
扉にからかわれた一行(主にトーカ)であった。
「開かないの?鍵とか貰ってないし……あっ、そうだ!ドアを開けて〜ぇ〜♪」
「そのネタもう古くない?」
ヒャッハー共をおちょくる命知らずなログハウスの扉を、リーシャがゆったりとしたリズムとは裏腹にコンコココンコンと結構なハイテンポでノックしまくる。
すると、風情ある木製の扉がプシュー!と白煙を吹き上げて地面に沈み込む。開き方が完全に近未来なサイバー系の扉の開き方だった。
「外見からは想像の出来ない開き方!?けどかっけぇ!」
「おぉ!かっこいいいではないか!だがなんでログハウスの扉でそれをやったのだ!?」
「自由だな……」「自由ね……」「自由にやってるなぁ」「自由だねぇ……」
常識に捕らわれない過ぎる開き方をした玄関をくぐり抜け、ログハウスの中に入る。
そこは、何の変哲もない部屋だった。外から見たら小さく見えたログハウスも、実際に入ってみれば【カグラ】の全員が入ってもまだなお余裕がある程度には広く、テーブルや照明、大きな暖炉やキッチンなどがセンス良く配置されていた。
「おぉ……立派な家だな」
「うむ。だからこそ分からん。何故扉の開き方をアレにした?」
「そこはほら、メイの遊び心じゃない?多分これ作る前にSF系の映画でも見たんでしょ。ところで、メイは?」
短いポニーテールをぽわぽわ振り回しながら、リーシャがログハウスの中を見渡すが、肝心のメイの姿が見当たらない。
「メイー?」
「メイさんいないね。でもこんなもの建れるのメイさんくらいだろうし、ドア開けてくれたからいないってことはないんだろうけど……」
「どっかに隠れてるとか?」
「机の下!ソファの下!キッチン!暖炉!裏をかいて外!どこもいないぞ!?」
「………………」
「どうしたトーカ。何か見つけたのか?」
「あぁ、いやそうじゃないんだが。何か違和感があってな。外から見た時に比べて少し狭いような気がしてな……」
「へ?そうかな……私には分からないや」
早速わちゃわちゃとメイを探し回るリクルスとカレットだが、それでもメイは見つからない。
トーカは何かこのログハウスの間取りに対して違和感を覚えたようだが、それが上手く像を結ばない。
「メイー?来たわよー?」
「メイー!いないのかー?」
「メイさーん?どこー?」
「いないならそう言ってくれないと分からないぞ!」
「いや、返事があったらいるだろ」
「…………なぁ、変な音が聞こえないか?」
そんなこんなで探せど探せど見つからないメイを呼びながらログハウスの中をヒャッハー達が探し回っていると、リベットが小難しい顔で目を細め、耳を澄ませる。
「そうか?俺には聞こえないけど……リベット、どんな音だ?」
「俺も『聞こえた気がする』程度だからあやふやだが、歯車とか車輪が回ってる様な音か?要領を得なくてすまん」
「ふむ……」
リベットに倣ってトーカも耳を済ませると、確かにカラカラカラカラという輪っか状の物が回る音が聞こえて来ている。
それに加えて、ゴウンゴウンという重い物が動く音が響いている。
しかも、それが段々と大きくなって来ている。
「むん?何かが上がってくるぞ!?」
「下から音が聞こえるな。ゴウンゴウン言ってる」
やがて大音量という訳では無いが、耳を澄ませなくても聞こえる程度の大きさの音と微かな振動がログハウスの中を満たす。
「音の発生源は……暖炉ね!」
「みんな!私の後ろに!【ガードアップ】!」
リーシャが音の発生源を突き止めると、すぐさまサクラが前へ飛び出て仲間を後ろにかばう様に大盾を構える。
そして固唾を飲んで暖炉と相対する事数秒。大きな暖炉が、ずずずっ……と今度は重々しく暖炉が地面に沈み込んだ。
「またぁ!?どんだけ沈み込む仕掛け大好きなのよメイ!」
「おぉ!何かロマンを感じるぞ!」
「すっげぇ!なにこれかっけぇ!仕掛け暖炉とかすげぇ……!」
「あれ、暖炉で隠れてた壁、ただの壁じゃないよね?」
「そうだな。暖炉の奥に……あれは扉、だな。隠し部屋か?」
「また凝った仕掛けを……」
大掛かりな仕掛けにロマンを感じる者、それを実現してしまうメイの創造力にもはや驚きを通り越して呆れすら覚え始める者、苦笑いする者など、様々な反応がある中でそんな事は知らんとばかりに暖炉に隠されていた壁面の一部がすっ……と左右にスライドする。
「ごめんごめん。ちょっと最終調整してて遅くなっちゃった」
隠し扉の向こう側には、そう言ってはにかむメイが立っていた。
「………………えっと、メイ。そちらは……どなた?」
見知らぬ3人の男女を従えて。
誰もが1度は憧れる隠し扉から出てきたメイ&謎の三人衆!誰だおまえら!?
何が偉ってこの謎の3人についてメイが事前に教えてくれた事なんですよね
それ以上にメイの領地になった『地下洞窟』についても色々教えて貰ってます
多分自慢したいだけだと思います。
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