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第233話 『対象捕捉。これより質問攻めを開始する』

新年あけましておめでとうございます!

1話の投稿が2018年の1月1日……

気付けばこの作品も3周年ですよ

3年前のあの日、『新年だしなんか新しいこと始めるかぁ』と軽い気持ちで当時誰に見せるともなく十数話書き連ねていたヒャッハーの1話を投稿しなければ今の自分は無かったと思うと……感慨深いですね

改めまして、2021年もヒャッハー達をよろしくお願いします!


ちなみに内容は新年感全くない本編の続きです

 

「いやー、それにしても、お兄さんと現実で会うとは思わなかったわ。それもお互い遠足でたまたま来たってんだから、もはや奇跡よね」

「確かに、そうだな。タイミングがちょっとでもズレてたらもう会わなかったんじゃないか、くらいの奇跡のタイミングだな。お前もやっぱ《EBO》に惹かれてこの会館に?」

「えぇ、そうよ。んー……」


 本当に奇跡だな……としみじみと実感しながらそう言った護に、軽い相槌だけを返して顎に手を当てて何事かを考え込む『リーシャ』。


「どうした?なにか気になるところでもあったか?」

「いや、ね。お兄さんさ、私の事さっきから『お前』って呼ぶじゃない?なんか他人行儀というか、距離を感じるのよね。そりゃゲームの中の付き合いだけどさ、私は友達だと思ってるわよ?」

「そんな事か……?別に(トーカ)だってお前の事は友人だと思ってるし、リアルとゲームの人間関係をわざわざ分けようとはしてないぞ?ただまぁ……さすがにリアルで普通の格好をしてるお前を『リーシャ』って呼ぶのは小っ恥ずかしいというか、な」


 そう言いながら、護は気恥しそうにポリポリと頬を掻く。

 ゲームと現実の境界線をきっちりと意識している分、こういうところで気恥しさが勝つのだろう。


「はえー、お兄さんも繊細ねー。完全なリアルならともかく、《EBO》感の強いここなら別に気にしなくていいのに」

「そうは言ってもな……お前は『お兄さん』って一貫した呼び方があるからいいんだろうけどさ。ほら、試しに『トーカ』って呼んでみろよ」

「え?どうしてそんな必要があるの?既に呼称があるんだからそっちでいいじゃない」

「お前も呼べねぇんじゃねぇか」


 どうや、『リーシャ』もちょうどいい呼称があるのをいい事に『トーカ』呼びを避けていた様だ。《EBO》内ではちょこちょこ『トーカ』と呼んでいるが、やはり現実では照れるらしい。


「んじゃ、せっかくだし自己紹介でもしとくか?」

「うわーっ、ゲーム内で知り合った女の子にリアルの情報聞くとか、お兄さんもしかして直結厨ってヤツ?」

「よし、じゃあな。ゲームで会おう」


 ピンと伸ばした指先でニヤニヤ笑いを浮かべた口元を隠しての煽りに、イラッと来た護がスンッと表情を他人行儀な取り繕った笑みに変えて踵を返す。


「わー、嘘嘘冗談ごめんなさいー!お兄さんちゃんと反応返してくれるから楽しくってつい!」

「ははっ、俺も冗談だよ。俺がリアクション返してくれるって言うけど、お前も結構いいリアクション返してくれるからな」

「むぅ!ひどいぞー、年下をいじめるなんて良くないんだぞー!あと目が笑ってないから本当に冗談かいまいち分からないんですけど?」

「冗談冗談。というか、1歳差なんてあってないようなもんだろ……」


 放っておいたらこのまま本当に帰りそうな護を『リーシャ』が慌てて腕を掴んで止める。

 そんな『リーシャ』の必死さが面白かったのか、護もくすりと笑って立ち止まる。

 冗談には冗談でやり返す。なんだかんだ言って、護もその場のノリが好きな男子高校生なのだ。

 なお、ここまで男子高校生を連呼するのは別に『リーシャ』にアラサー疑惑をかけられていた事を気にしている訳ではないったらない。


「まー、まー、細かい事は気にしない。じゃ、改めて自己紹介ね!私は……」


 つい先程まで情けない顔で護を引き留めようと必死になっていたのと同一人物とは思えない程の変わり身で自己紹介を始めようとする『リーシャ』だが、そうは問屋が卸さない。


 とりあえず向き直って現実世界での自己紹介をしようとしている2人に向かって、どこか楽しげな驚きの叫び声が聞こえてくる。


「あーっ!!!あーちゃんが他校の男子ナンパしてるー!」

「きゃー!!!さーちゃんが既に結構親しげにしてるー!」


『リーシャ』と同じ制服を身にまとった2名の女子生徒が、話している護と『リーシャ』の姿を見つけてしまったのだ。


「げっ……」

「げっ、とか言ってやるなよ……友達か?」

「えぇ、そうね。ゴシップネタと噂話が大好きなタイプの子達よ。正直今1番会いたくないタイプね」


 遠足という非日常の状況で、友人が他校の生徒とかなり親しげな距離感で談笑している。

 そんな面白いネタをそういうネタが大好きなお年頃の女子高生が見逃すはずもない。個人の趣味として好きなら尚更だ。


 だからこそ、この後かなり面倒くさい事になると理解しているのだろう。驚愕に目を見開き、面白ネタに口元を緩ませながら『リーシャ』を指差す2人の少女を、『リーシャ』はげんなりとした表情で見返している。


 そんな『リーシャ』の様子など知った事かと言わんばかりに、少女達は日頃《EBO》で高いステータスを持つモンスター相手に戦っている護ですら見切れない程の俊敏かつ連携の取れた動きで『リーシャ』を包囲する。

 一方、包囲された『リーシャ』はと言うと、引き攣った笑みを浮かべた顔にでっかく『めんどくさい事になった……』と書かれていた。


「ねぇねぇねぇねぇあーちゃんあーちゃん!この人誰!?待って言わないで当てるから!分かった!彼氏!?ナンパからの即成立!?」

「ねぇねねねぇねさーちゃんさーちゃん!こういう人がタイプだったの!?告白されても『恋愛とかめんどい』って一刀両断してたさーちゃんについに春が来たの!?」

「来てない来てない。彼氏とかな訳ないでしょ。もし彼氏なら秒速過ぎるでしょ関係の進展が。というかナンパですらないから」

「えー!だって遠足の場で他校の男子捕まえてるならもうそれはナンパでしょ!普段とは違った出会いを見事つかんだんでしょ!?」

「あ、分かった照れてるの!?照れてるのね!?そう言うの分かっちゃう。女の子だもん!でも安心して!相手も高校生!押して押して押しまくれば行けるわよ!」

「ダメだコイツら話を聞きゃしないわ……って、あれ?」


 突然降って湧いた友人のゴシップネタに、目をキラッキラと輝かせて捲し立てる『リーシャ』の友人AとB。

 その剣幕は凄まじく、あの『リーシャ』が勢いで押されている。

 そんな『リーシャ』だが、気になる事があったらしい。ドードーと友人二人に一旦ステイをかける。


「ねぇ、(はる)は?一緒じゃないの?」

「あ、はるちー?はるちーならまだ下だよ。あの子、下の等身大フィギュアに釘付けだったわよ。アレは完全にスイッチ入ってるわね。ああなったらテコでも動かないわ」

「ほらアレ、下にあったでっかいゴツゴツした人形?あったじゃない?なんかすっごい興奮した様子でそこから離れないから声だけかけて置いてきちゃった。一応メッセも入れといたから、正気に戻ったらこっち来るでしょ」


 先程までの興奮が嘘のように的確に情報を伝える友人Aと大袈裟な手振りでサイズ感を表現しようとしている友人Bの変わり身の速さに驚かされた護であったが、今は完全に蚊帳の外なので大人しくしている事にした。

 下手に口を出して巻き込まれたくないとも言う。


「そうそう。『うわぁ!凄い凄い凄いよ!こんなしっかりと至近距離で観察できるなんて!生け捕りにした時はどうしてもパーツが欠けたり姿勢が悪かったりするからこんなにしっかり観察できるなんて!ここは天国だぁ!』って、だいたいこんな感じのこと言ってフィギュアのスケッチしてたわよ。後で何か作るんじゃない?」

「生け捕りってどういうこっちゃねん!って感じだけど、ひなっち興奮するとよくわかんないこと口走るからね、いつものアレでしょ。ジェットコースターの骨組みとかにもテンション上げて写真撮りまくってからね。来週くらいには教室にいつの間にか作られてたジオラマにジェットコースター増えてるかもね」

「あー……全くあの子は……。ジオラマもゴーレムもまだアップグレードするつもりなのかしら……いや、するつもりなんでしょうね……加減というか果てというか、際限無さすぎよ……」

「それより!話の続きよ!あのあーちゃんがナンパに至った経緯、全部聞き出すわよぉ!」

「さぁさぁさぁさぁ何があったか根掘り葉掘り聞かせなさいな!今夜は寝かさないわよぉ!」

「夜まで質問攻めするつもりなの!?」


 聞かれた情報に答えると、友人AとBは私達は質問に答えたんだから今度はそっちが答える番よね……!?と言わんばかりに『リーシャ』への質問攻めを再開する。


 その苛烈さに押された護は、いつの間にか蚊帳の外にされていた事をいい事に、もういっその事そっとフェードアウトして逃げてやろうかとチラリと逃走経路を確認する。

 ……が、《EBO》の戦闘で培った観察眼と積み重ねて来た人柄把握で護を逃さない女が1人。考えるまでもなく『リーシャ』である。

 その鋭い眼光で護の逃走の予兆を感じ取った瞬間、逃がさない……!逃がすくらいなら道連れよ!と言わんばかりに、護の手を握り締める。


 ……が、当然というかなんというか、それが裏目に出た。


「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!だいたぁぁぁん!」」


 渦中の人の突然の大胆な行動に黄色い悲鳴を上げ、頬を抑えて体をくねくねと身悶えさせる友人AとB。率直に言って不気味だ。


 狂乱する彼女達の目には、『見せつけてくれちゃってこのこの〜』的な光景に見えているのかもしれないが、その実『決して逃がさん……!1人で楽にはさせんぞ……!』という、必死の捕縛行為なのである。


 現に、今この瞬間も2人は《EBO》で培った信頼関係のなせるアイコンタクト会話で『お前の友達だろ!?お前が何とかしろよ!』『なーに連れないこと言ってるのかしら……!?私とお兄さんの仲でしょう!?【カグラ】の絆は永遠よ!死なば諸共!』『そのセリフは永遠の絆じゃなくて敵を道づれにする時のセリフだ……!』『状況的には道づれでも変わんないわよ!とにかく絶対に逃がさないからね!』と仲睦まじい(?)対話が行われている。


 なお、アイコンタクトとしてお互いの目を見合っているので友人AとBから見ると突然手を繋いだふたりが無言でお互いを見つめあっているロマンスシーンに見えている。

 完全に自爆である。


(くっ……誰か、誰か助けてくれる奴はいないのか……!)


 完全に追い込まれた護が、心の中でとは言え珍しく漠然とした助けを乞う。それは、普段はヘルプに入る側である彼からは考えられない行為だった。


 そして……!助けを乞うなんていう珍しく行動に出るほど追い詰められた護に、天からの助けが訪れる!


 カツカツと足音を響かせてこちらに向かってくる人影。


 それは護の知っている人物だ。


 そう、その正体は……


「うぇぇぇぇッ!?護くんが他校の女子に囲まれてるぅぅぅ!?」


 ゴシップ大好きなみんなのいいんちょ、紫波 環。


 残念。天は護を助けなかった。


なかなか帰って来ない護を探しに来た環ちゃん

思いやり溢れる優しい行動ではあるが人選が悪かった


大胆な自己紹介キャンセルによって『リーシャ』の本名は謎のままに……

次回こそリーシャの本名が明らかに……!?


感想&アイディアをいただけると作者は泣いて喜びます


あとアレですね、面白いなーと思ったら下の方にある『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にして頂けるとさらに狂喜乱舞します

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― 新着の感想 ―
[良い点] 護は逃げ出した!  しかし逃げられなかった!       ですね(笑) 判るでしょう「大魔〇からは逃げられないのだ」 [気になる点] 教室にジオラマとは?!半分くらい占拠しているの? 舞台…
[一言] すみません。前回の感想で陽の名前を、晴と間違えて書いてしまいました。
[気になる点] リーシャの本名は…今回も明かされませんでした。まて!次回(笑) 話に出てきた晴って、聞いた感じメイ…? [一言] ゴシップ好きの女子高生二人に、振り回されるリーシャとトーカ。環まで加…
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