第231話 『エンカウント』
大変遅くなって申し訳ない
周年イベが……新章が……クリスマスイベが……レイドイベが……ボックスイベが……色々、大変でしす……(現在進行形)
「しょんぼりら…………」
意気揚々と挑戦したはいいものの、見るも無残な結果に終わってしまった初挑戦にガックリと肩を落とした環がとぼとぼとフィールドから帰ってくる。
「まぁまぁ、そこまで落ち込むなたまっきー。誰だって最初はあんなものだ。そこなリクルスも最弱モンスターの角ウサギを相手に必死に追いかけ回した挙句足元のくぼみに気付かずにずっこけて顔面から地面に叩き付けられて死にかけた事もあるのだ。上手くいかなかったからといって気にする事はない」
「そうそう。カレットだって最弱モンスターの角ウサギにまともに魔法を当てられなくて、それどころか追いかけ回されてテンパって必死に逃げ回った事だってあるんだ。気にすんなって」
「「なにぉう!?」」
そんな環を見かねて慰める瞬と明楽だったが、互いの黒歴史をさらけ出しての慰めだったために環そっちのけでガンのくれ合いへとスムーズに移行した。
「ちょっ、2人とも……?」
慰めてくれていたと思ったら喧嘩を始めた2人に、落ち込むのも忘れてオロオロとする環。
「あぁ、気にしなくていいよ。ただのじゃれ合いだから。ま、コイツらが言ってたように誰だって最初はあんなもんだ。気にすんなって」
「そうそう。大事なのは慣れだよ。何事も慣れればそこそこには出来るようになる。そこからどれだけ極められるかは努力と素質によるけどね」
「地味に慰めきれてない発言……!でも、まぁ、そうよね!直前にみんなを見て頑張らなきゃ!って焦っちゃったけど、良く考えればみんなしてランキングに乗るハイスコアだすくらいのスーパープレイだったもの、圧倒されちゃっても仕方ないわよね!」
額を付き合わせて睨み合っているバカ2人に代わって、護と一守の(普段は)まとも組がオロオロしていた環を落ち着けつつ慰める。
元々ののらりくらりとした性格のおかげか、切り替えも早かったようだ。
スーパープレイを見た後でグダグダを演じてしまった事に落ち込んでいたものの、そも直前のスーパープレイが凄すぎたからしょうがない!と自分を納得させたのだろう。
「「がるるるるる……!!」」
一方、環を慰めるのに失敗するどころかほっぽり出して手四つでがっちりと組み合ってアホな睨み合いをしている瞬と明楽の2人。
このふたりがアホな喧嘩をしているのはいつもの事なので、護は他の客に迷惑をかけない限り放置のスタンスを取っている。
「いーや、私の方が強い!」
「俺の方が強いね!」
「なにぉぅ!?」
「やろうってんのか!?」
いつの間にか、2人のじゃれあいはどちらの方が強いのかの言い争いにシフトしていた。魔法メインと接近戦メインで戦法が全然違うため、一概には言えないだろ……と思った護だが、面倒臭いので2人の好きにやらせておく事にした。
午前中から遠足でハイテンションな2人の面倒を見ていて疲れていたのか、あるいは非日常感で舞い上がってる判定なのか、普段より対応がおざなりだ。
「見てろよカレット!俺がランキングを塗り替えてやる!」
「ふん!出来るものならやってみるがいいさ!」
言葉だけでは証明出来ないと悟ったのか、リクルスが初見のハンデもあったシミュレーションのリベンジで証明してみせると意気込んでステージに向かって行く。
そして、勝っている者の余裕かそれを堂々とした表情で見送るカレット。
ランキングが塗り替えられたら立場が逆転して同じ光景が繰り返されるのだろう。
散々な結果に終わった環は、本当の意味では全力を出せない状況とはいえトッププレイヤーの本気のプレイを好きなだけ見れるチャンスだと見学エリアで目を爛々と輝かせている。
そんな幼馴染達の姿を見て、護はやれやれと言わんばかりに頭を振ってミニゲームコーナーに背を向ける。
「こうなると満足するまで終わんねぇな……。んじゃ一守、ちょっとコイツら見といてくれ」
「あれ?護は見ていかないの?」
「あぁ、どうせ最終的に競り負けた方が「ここじゃ本当に全力とは言えないからな!本気が出せれば負けん!」とか言って今夜にでも《EBO》の中でやる時に付き合わされるだろうからな。それより、現実じゃリアルに体を動かしてるってのにアイツらは加減を考えないし、先にスポドリとタオルでも買ってくるよ」
「はは……なんか、凄い理解度だね」
「まぁ生まれた時からの付き合いだからな。なんかあったら電話してくれ」
そういうと、意気揚々とシミュレーターを起動するリクルスと勝者の余裕でソレを見守るカレットを微笑ましげに一瞥し、その場を後にする。
残された一守は「もしやかなり大変なポジションを押し付けられたのでは……?」とキャイキャイはしゃぐ2人を見て今更ながらに戦慄した。もう遅い。
◇◇◇◇◇
「ふぅ……さすがにリアルであんだけ動くと疲れるな」
がこんっと音を響かせて落下してきたスポーツドリンクを取り出し口から回収し、もう一本分の小銭を追加で投入しながら護が独り言ちる。
既にARメガネは外していて、今はコスプレのトーカではなくただの高校生である護の姿で一息ついている。つい先程までコスプレではあるが『トーカ』として動いていたため、現実世界の自分として一息つきたくなったのだ。
アバターを動かす《EBO》の中でならともかく、ステータス補正のない現実世界でバリバリの戦闘行動をすればそれなりの疲労に襲われるのは当然のことだろう。
多少引いたとはいえ未だに汗ばむ額を拭い、自動販売機のボタンを押し込む。そうすれば、またしてもがこんっと音を響かせて取り出し口にスポーツドリンクが落下してくる。
律儀に1本1本回収しながら、どうせ後先考えずにシミュレーターを回しまくる幼馴染2人のためにスポーツドリンクを購入し、自分は持参した水筒のお茶で喉を潤す。
2人にも持たせた水筒は、午前中には既に荷物と成り果てた。奴らはペース配分というものを知らぬ。
「さすがにタオルは持って来て無いからな。お土産コーナーにでも売ってればいいんだが」
一戦しただけでそこそこに汗をかいたのだ、意地になって何回もやり続けるであろう2人のことを考えたら、タオルの入手は必須だろう。
観光地や遊園地特有のロゴ入りの微妙にお高いタオルを買うか……と、気乗りしないながらもお土産コーナーに向かう。
さすがに、汗だくの状態の2人を自然乾燥に任せてこの後のクラスメイト全員が乗車するバスの中に一緒に押し込める訳には行かないだろう。
それはもはや軽いテロだ。
幼馴染2人のためを思って、と言うよりは、幼馴染がクラスメイトに迷惑をかけないように、という方が割合多めな理由から護は少しお高いタオルの購入を決意していた。
代金の一部は2人にも払わせようとも。
視界の端にチラつく見覚えのあるフォルムのストラップを極力無視しながら、タオルが無いか護はお土産コーナーの中を物色して回る。
「んー、どうせなら普段使い出来るやつの方がいいよな。と言っても家の中で使う分なら別に柄とかにはこだわったりはしな……いぃ!?」
その中で、見つけてしまった。
それは、自分達の使う武器を模したストラップが売られている棚の真正面に並んでいた。
端っこの方に《EBO》のロゴが入った無地のタオル……に見せかけて、裏側に見覚えのありまくる装備類を身に付けたエボ君や妖精ちゃん達がプリントされている【カグラ】グッズのひとつとして。
武器があって防具がない訳が無い、とでも言いたげなその商品は、確かに目的の品ではあるもののプリントされている防具を身に付けている張本人としてはどうしても購入に抵抗のある1品だった。
つい先程までARとはいえその衣装を身に付けている上に、ゲームの中で基本的にその装備で活動しているとなれば尚更だ。
「他のタオルは……クソッ、無いのか……!《EBO》会館だからか……?これを買う……いや、アイツらが汗を意識してセーブしてくれたら……ってそんな事する訳ないし……ぐぐぐ……」
「ふんふふんふふーんげらっぱゅッ!?」
「うおぁッ!?」
気恥しさからタオルを手に取ったまま深い深い葛藤を繰り広げている護。
その後ろから、再現しろと言われたら出来ないようなめちゃくちゃな発音で不意打ちの驚き声が上がった。
そして、自分のグッズを買うかという護的に究極の葛藤を強いられていた所に不意打ちの大声が上がり、つい護も驚きの声を上げてしまう。
「あっ、すいません!」
その護の驚き声の原因が自身にあると気付いた背後の人物は、慌てた様子で振り返り、頭を下げる。
少し勝ち気そうな、でもどこか愛嬌のある、そんな声でハキハキと謝っているのは、歳の頃はそこまで変わらなさそうな少女だった。
「あぁ、いや、気にしなくていいよ。こっちも驚かせちゃってごめんな?」
学校の制服と思しき衣服を身にまとっているが、そのデザインは護と同じ学校のものでは無い。
より正確に言えば、園内で散見した他校の制服に身を包んだその少女は最敬礼を通り越して腰をぴっちり90度は曲げる綺麗なお辞儀をしていて顔は見えない。
だが、見知らぬ学校の制服を来ている時点で知り合いでない事は確かだ。
だと言うのに、不思議と護はその声に聞き覚えがあった。
間違いなく初めて聞く、だが聞き覚えのある声。
そんなデジャブのような不思議な既視感に、脳の奥が痒くなるようななんとも言い難い感覚に襲われる。
その理由に思い当たるより早く、お辞儀をしていた少女が顔を上げる。
「いえいえ……?突然、大声出しちゃった私が、悪いですか……ら……」
にへら、と笑いながら、どうやら少女の方も護の似たような違和感を感じている様子で、それでも言葉続けようとする少女の勢いが顔を上げた瞬間にしりすぼみに掠れていく。
疑問と混乱に彩られた少女の顔を見て、護の……トーカの中で既視感の正体が、まるで霧が晴れる様に鮮明になって行く。
どうやら、向こうも護の顔を……恐らく目の前の少女が浮かべているのと同じも表情を浮かべている護の顔を見て、思い当たる事があったようだ。
「リー、シャ……?」
「お兄、さん……?」
付き合いの長い初対面の2人は、同時にそう呟いた。
護は初対面の知り合いと出会った!
このシーンは元から想定にあった珍しいシーン(構想時はこの遊園地自体《EBO》とは全く関係ない普通の遊園地だったからウォータースプラッシュ系のアトラクションで後先考えずに全身びしょ濡れにした幼馴染ーズの着替えを買いに来たお土産屋で会う流れだった。《EBO》会館が生えてそのイベントを挟んだらこんな事になった)
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