第226話 『カッコつけたいお兄ちゃん』
遅くなって申し訳ない&繋ぎ回でござるの巻
「むふー」
しっかりと1位の座に自身の名前が刻まれたウィンドウを眺め、カレットはご満悦な様子だ。
そして、つかつかとリクルスの側へ近寄るとポンッと肩に手を置いて、それはそれは立派なドヤ顔で親指で背後のウィンドウを指さす。
「リクルス、私の勝ちだな」
「ぬぎぎ……」
何かを言い返そうにも、事実として1000ポイント近い差をつけられてしまっている。
それについては動かしようもない現実であり、また立場が逆なら……つまりはリクルスがカレットに1000ポイント近い差をつけて大勝したら同じような事をしたであろう事が分かるために、言い返そうにも言い返すことが出来ないのだ。
「ぬぎぎ……はっ!魔法はズルいだろ!俺なんか接近だけなんだぞ!」
「何を言うか、それがプレイスタイルだろう。それに、リクルスは最後の大ボス相手には遊んでいたでは無いか」
「ギクッ、い、いや!でもお前は俺のプレイを見て敵の出現場所とか分かってただろ!後の方が有利だって!」
「いーや、関係ないぞ!先攻だろうがきっと私が勝っていた!」
いや俺が、いいや私がと言い合いを続けるカレットとリクルス。しかし、事実としてカレットが1位の座に就いている以上、不利なのはリクルスの方だ。
とはいえ、リクルスもすごすごと負けを認めるつもりは微塵もない。
なので、保護者を巻き込んだ。
「いいや、絶対に後攻が有利だ!今トーカがやれば絶対にトーカの方が高い点取るはずだ!」
「いーや、そんなことは無い!貴様は当然としてトーカに負けるつもりもないぞ!」
「「こうなったら……!トーカ!やってみてくれ!」」
「いや、お前らの喧嘩に巻き込むなよ……」
2人だけでは水掛け論で一生決着が付かないと察したのか、カレットもリクルスの発言に乗った。
自分から言い出した理論で負けたら言い訳は効かないだろうと思っての事だ。
7000点台という圧倒的なスコアならば、いくらトーカが相手と言えど負ける訳が無いという自信もあったのだろう。
そんな2人に白羽の矢を立てられたトーカはと言うと、どうも乗り気では無さそうだった。
元々バトルシミュレーターに興味はあったが、それでも勝手に2人の勝負に巻き込まれるのはなんだかなぁという少し天邪鬼な部分が顔を出したのだ。
「えー、いいじゃん。護くんのプレイも見てみたーい!」
「いや……面白いもんじゃないと思うぞ?カレットみたいにド派手な魔法を使う訳でもリクルスみたいに激しく動ける訳でも無いし……」
「「「ダウト!」」」
護の謙遜に既プレイ勢から一斉にダウトが入った。
3人が3人、謙遜するトーカを見て「何言ってんだお前」みたいな顔をしている事に、環は「やっぱり凄いんじゃない!」と見せてコールを激しくする。
そんな事をすれば、ヒャッハー2人も乗ってくるに決まっている。
すぐに見せてコールの三重奏に取り囲まれ、もはや護の逃げ場は失われてしまった。
「まぁまぁ」
「一守……!」
と、護を囲んで見せてコールを繰り出している3人組に一守が声をかける。護は救世主を見つけたような顔でバッと声がした方向に振り返り……
「そんなに囲んでたらフィールドに行けないじゃないか」
「ブルータス、お前もか……!」
盛大に裏切られた。
否、この場でプレイを期待されている相手が『トーカ』である以上、最初から一守は……リトゥーシュは味方ではなかったのだ。
「はは、僕も『トーカ』のプレイをまた見て見たかったからね」
「くっ……味方はいないのか……!」
「もー、護くんったらどうしてそんなに渋るのよ。いいじゃない見せてくれたって」
「いや、なんかさ、勝手にアイツらの勝負に巻き込まれるのはちょっとなぁって……」
「あー、なるほろね。その気持ち分からなくはないわ」
ジトッとした目を向ける護と、わかるわーと腕を組んで頷く。
一方、そんな目を向けられた2人はと言うと、分かりやすく落ち込んでいた。
「「しょぼんぬ……」」
見せてコールをしている内に、普通に『トーカ』の現実での戦闘も見てみたくなっていた様だ。
「ったく、しょうがないな。どっち道俺もやりたかったし、やってやるよ」
そんななんとも言えない哀愁漂う雰囲気に毒気を抜かれた護は、仕方ないなとばかりにポリポリと頭を掻きながらフィールド向かって行く。
「「トーカ……!」」
「はいはい。そんな期待すんなよ?現実での俺は『トーカ』程身体能力は高くないんだから」
嬉しそうにしている2人の方を振り返ること無く、護は……否、トーカは、手をヒラヒラと振ってフィールドの前までやって来た。
そんなトーカに近付く人影がひとつ。
沈黙的賛成派として事の成り行きを見守っていた一守だ。
「護、いや、トーカ。せっかくだから……コレ、使ってくれよ」
「これは……」
そう言って一守がトーカに手渡したのは、《EBO》における『トーカ』の相棒である『白銀ノ戦棍』のストラップだ。
妹にお土産にと強請られ、友人のグッズを買うという気まずさを乗り越えて手に入れたソレを、一守は是非にとトーカに渡してきたのだ。
「いいのか……?これ、妹さんのお土産だろ?」
「はは、そりゃまぁお土産なのに、僕も含めて誰かが使った、なんてバレたらめちゃくちゃ怒るだろうね。でも……『トーカ』である君だけは例外だよ。サイン入りグッズと同じで、トーカ本人が使ったなんて言ったら、むしろ箔が付く」
そんなことを言いながら、一守はトーカにストラップを握らせると、その代わり……とポケットからスマートフォンを取り出す。
「『トーカ』の勇姿を撮影させて欲しいなって。ほら、なんだかんだ僕はお兄ちゃんだからさ、妹には良い顔したいんだ。頼まれてたストラップだけじゃなくて本人映像も、なんて最高のサプライズじゃない?」
「はは、妹のため……か。そう言われちゃ幼馴染の兄貴分やってる身としては手は抜けないな」
「「???」」
そう言って、トーカは幼馴染2人に優しい眼差しを向ける。
急に優しい視線を向けられた2人は、話の流れが分からないためキョトンとしていた。
「分かったよ。ありがたく借りる。その上で……全力でやってやるよ。手は抜かない。希望通り、『トーカ』を見せてやる」
「それでこそ『トーカ』だ。……なんて、言えるほど付き合いは長くないけどね」
「そりゃそうだ。ま、こうして知り合えたんだ。これから付き合いを長くしてけばいい」
「大会優勝のトッププレイヤー様にそう言って貰えるなんて光栄だね」
「トッププレイヤー様の一角がよく言う」
騒がしい奴らのお目付け役として、今日1日だけでだいぶ仲良くなった2人は、そんな軽口を叩き合いながらそれぞれの場所に移動する。
「じゃ、まぁやれるだけやりますか」
なお、普通のスマートフォンではAR化されていない普通の映像しか取れないので『鷹嶺 護』が虚無と戦っているシュール映像が撮れる模様
テーマパークでアトラクション中の写真が買えるシステムと同じような感じでAR映像が適応されたプレイ映像が買えるので一守くんはそれを買うことになるのでしょう
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