第221話 『現実/EBO』
めちゃくちゃ遅くなってすいません……!
不安定な執筆ペースどうにかしなければ……!
『ここで少ない説明をさらに薄めて長々と話すよりも、まず体験した方が早いでしょう。私から見て正面がコスプレコーナーに、残りの扉がミニゲームコーナーになっていますのでお好きな方をお選びください。中で繋がっていて移動は簡単ですのでそこまで悩む必要もございませんが』
「やはり最初はコスプレコーナーでは?普段はやる機会などないからコスプレには興味があるぞ!」
「ミニゲームするにしてもコスプレしてた方が雰囲気出るしな!ってな訳で俺と明楽はコスプレコーナーに1票……2人だから2票だ!」
エリカの説明を聞いて目を輝かせた2人がコスプレコーナーへ続く扉を指さしやんややんやと騒ぎ立てる。
「元気ねー。でも私もコスプレに興味あるし、より深く体験出来るならコスプレしてみたいかな!」
「まぁコスプレコーナーが先でいいんじゃないか?ARを利用したコスプレってのも興味を引かれるし」
「だね。アカウント連携とも言ってたし、もしかしたら自分の《EBO》での衣装が着れるかも」
そういう訳で、満場一致でコスプレ体験から始める事に決まった。そうエリカに伝えると、彼女はこくりと小さく頷く。
『では、正面の扉からどうぞ。解錠ナンバーは33695269です』
「えっ!?ロックとかあんの!?ってか長っ!」
「えっ、ちょっ、聞き取れなかったぞ!?もう1回頼む!」
『ふふっ、冗談です。普通に開きます。ですが、覚えておいて損はありませんよ。では、私はここで失礼致します。なにかご質問があれば随時お答えしますので遠慮なくお呼びください』
「「ないんかーい!!!」」
若干ズレたセンスの冗談にお手本のようなリアクションを返す瞬と明楽の姿にエリカはくすりと微笑むと、恭しく一礼をしてから空間に解け消える様に去っていった。
「んじゃまぁ、気を取り直していざコスプレコーナーへ!」
「「「「おー!!!」」」」
意気揚々と進む明楽の音頭に合わせて一行はコスプレコーナーへの扉を開けた。
もちろん鍵などはかかっておらず、普通に開いた。
「おぉ!エレベーターホールも凄かったが、ここも凄いな!」
「再現度が高ぁい!実はここは《EBO》の中なのではないか!?」
「2人とも、テンション上がるのは分かるがもう普通に他のお客さんもいるんだから気を付けろよ」
扉を開けた先は、噴水広場を完全再現したエレベーターホールに負けず劣らずの再現度で【トルダン】の町並みが再現されていた。
「へぇ……ARで再現してるんじゃなくて本当に作ってあるんだ」
「すっごい凝ってるわね」
あまりの再現度の高さに気になってARメガネを外して見れば、直前までの視界と何も変わらない情景が目に飛び込んでくる。
プロジェクションマッピングやARの機能に頼らず、【トルダン】の町並みを再現した作りの体験コーナーに、一守と環の2人も感心したようにキョロキョロと周囲を見回している。
雰囲気を壊さない為か、ミニゲームやコスプレなどのコーナーは【トルダン】で見かける民家や商店を再現された各ブースに区切られていた。
それでも、ARメガネを着けていれば、ポップアップが浮かんだり壁を透視出来たりしてこの中はどのブースなのかなどが一目で分かるようになっている。
瞬や明楽などは、むしろメガネをかけて透視すると言う漫画などでよく見るシーンを実際に体験出来る事にテンションを上げていた。
恐らく透視メガネの再現は別に想定していない……と言えないのがこの運営の恐ろしいところである。
なにせ、ポップアップで十分なはずなのにわざわざ『10秒以上見続ければ透視できる』なんて仕掛けをしているくらいだ。むしろ、狙っているのだろう。
「とりあえずここでいいか」
このまま放っておくとずっと透視して遊んでそうな2人の手を引きながら、護が手頃なコスプレブースの扉を開けようとして……
「すまん、開けてもらっていいか?」
「ぷふっ、それじゃ、開けられない、もんね!」
「そんな笑うなよ……」
両手が埋まっていて開けられなかった。
環に代わりに扉を開けてもらい、その中に入る。
部屋の中は外観とは打って変わって妙にのっぺりとしており、一応はしっかりと再現されているものの、部屋の中感を演出する家具や小物なども必要最小限に抑えられており、再現度の高い外に比べてもの寂しい雰囲気があった。
そして、そんな部屋の中央には水色の燐光を放つバスケットボール大の球体が浮かんでいた。
ARメガネを外すと、当然の様にその球体は消え、部屋も黄緑1色の寂しいを通り越して虚無そのものな姿が露見する。一切の装飾がなく、どこまでも凝っている外と比べて全くと言っていいほど力が入っていなかった。
妙に家具や小物などの立体物に現実感が無かったのはARで映し出されただけのホログラムだったからと考えられる。
ここまで再現に凝っておいて急に手抜きをするとは考えにくいので、この単色の部屋はあえてそうしている……と言うか、部屋のどこにいてもグリーンバックになるようにしているのだろう。
事実、ARメガネをかけていれば室内全てが凹凸ひとつ無いグリーンバックになっている事に気付かなかったので、目論見は成功していると言える。
「平凡な室内にある明らかに異質なファンタジー的『NAZONOKYUUTAI』!」
「これはもうあれだな?触れって事なのだな?ならばその誘い、乗ってやろうでは無いか!」
そう言って明楽が球体に駆け寄り、躊躇なく手を突っ込む。
いくらそうと言われなければ分からない程度にはリアルなホログラム映像とはいえ、そこに物質として存在している訳では無いので、当然のように明楽の手は一切の抵抗無く球体を貫いた。
「ふぉぉぉぉぉ!?」
と、同時に、明楽の周辺に無数のウィンドウが出現する。
A4のノートを広げた位のサイズのウィンドウが明楽を取り囲んでいる様子はなかなかに壮観だ。
「ほう!これはコスプレメニューの一覧なのか!実際に着る訳ではなくARで投影してその服を実際に着ているかのように演出する。実際に衣装を使用するコスプレとは違い、複数種のコスプレを手軽に切り替えることが出来る……らいしぞ!」
「へぇ、じゃあ試しになんか着てみたらどうだ?」
「では早速試してみるとするか!」
ウィンドウの中に説明文のようなものがあったのか、ARコスプレの説明を読み上げた明楽は護の言葉に意気揚々と答えると一覧からどの衣装を着るか選び始める。
普段なら1番手を取り合う瞬も『無数のウィンドウに囲まれる』という近未来SFでよく見かけるようなシチュエーションに感動しているのか、大人しく明楽に1番手を譲っていた。
「やはり私と言ったからこれだな!では行くぞ!」
高らかに宣言し、腕を振り上げ勢い良く振り下ろす。その際にウィンドウの一部に叩き付けていたので、アニメなどでよく見るようなエンターキーを勢い良く叩くシーンをイメージしているのだろう。
明楽が(恐らく)決定ボタンを押すと、変化はすぐに現れた。
今までは何の変哲もない制服だった明楽の服装が、一瞬にして《EBO》の魔道士の服に切り替わる。
「おぉ!これは凄いな……!」
「あれは……確か魔道士の初期装備かな?凄いや、本当に着てるみたいだ」
「ARで投影してるとは思えないくらいしっかり着てる感があるわね」
「だな、明楽がちょろちょろ動いてもズレたりブレたりの違和感が無い。これは凄いな」
一瞬で明楽の姿が《EBO》の魔道士の衣装に切り替わり、その再現度の高さに感動を隠せないプレイヤー勢と、それは分からないがARコスプレの技術の高さに驚いている環。
もはや制服の名残など無く、髪と瞳の色から差異が分かるがパッと見はもはや明楽と言うよりもカレットの印象が強く出ている。
特に現実世界での明楽も《EBO》でのカレットも見慣れている護と瞬の2人は、驚きつつも脳が若干混乱しているような不思議な感覚を覚えていた。
「なっ……!?これでは私が見れないではないか!」
そんな4人の姿を見て、コスプレしている張本人である明楽が悲しげな声を上げる。
そう。いくら凄いコスプレだとしても、着ている本人は客観的に見る事が出来ないのだ。
「あー、さすがに見れないって事は無いだろうし、ウィンドウのどこかに鏡とかないのか?」
「むっ?鏡……?鏡鏡……おっ、あったぞ!このアイコンだな!」
そう言って明楽が何枚目かのウィンドウの一部をタップすると、シャラン!と音を立てて大きな姿見が現れる。
「……?これだけか?」
「カレット……じゃない。明楽、後ろ後ろ」
「ぬ?……ふぉぉぉぉぉぉ!カレットだ!カレットがいるぞ!髪と目の色の違和感が凄いぞ!」
「くっそ!楽しそうだな!俺もやりたくなってきた!」
「あっ、ずるい!私もやるやる!」
魔道士の衣装を着ている自分の姿に、新しいおもちゃに喜ぶ子供のような屈託の無い笑みを浮かべてはしゃぐ明楽の姿を見て辛抱たまらなくなったらしい。
瞬と環がきゃいきゃいと中央の球体に手をかざし、ウィンドウに囲まれる。
「楽しんでるみたいだな」
「だね、僕らも行こっか」
そんな3人の様子を微笑ましげに眺めがら、なんだかんだ保護者ポジションに落ち着いていた護と一守の2人も中央の球体に手をかざした。
明楽が腕を振り下ろすシーンは某夏戦争の「よろしくおねがいしまぁぁぁぁぁぁす!!!」をイメージしてもらえれば大体合ってます
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