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第218話 『だって……なぁ?この運営だぜ?』

遅くなって申し訳ないです

 

「うーん。安っぽいお味のポップコーンがこれまた良いわぁ……何か見ながらポリポリ食べるのにピッタリね……あんなに安いとつい買いすぎそうになるわ」


 環の《EBO》参戦宣言から少しして、諸々の衝撃から回復してとりあえず落ち着いてきた一行はフードコートを後にして《EBO》会館を巡っていた。


 環はどうやら観戦セットがいたくお気に召したらしい。今も「帰りにまた3セットくらい買って帰ろうかしら……」と小声で呟いている程度にはハマっている。


 もし《EBO》を始めて【ララララ】にたどり着いたら闘技場に住み着きかねないレベルだ。


「展示コーナーも凄かったね。大兎とか大亀とかロックゴーレムとかの等身大フィギュアが本当に《EBO》の中から出てきたのかってくらい細部まで作り込まれてたよ」

「あぁ!リアル過ぎて拳がうずく……!」

「私の本能が【白龍砲】をぶっぱなせと叫んでいる……!」

「はいはい。殺るなら後でな。それにしても、フィギュア本体だけじゃなくて周辺もボスエリアを見事に再現してあって凄かったな」

「確かにアレは凄かったわね。迫力満点だったわ。みんなってゲームん中であんなのと戦ってるの?凄いね〜」


 圧倒的再現度のフィギュアに興奮気味のプレイヤー勢の雰囲気に、本物を知らずともそのクオリティの高さを感じ取った環が感心したように呟く。


 動かないと分かっているフィギュアでもかなりの迫力があったのに、それがさらに動いて襲ってくるなんて、更にはそれと戦うなんて彼女にはまるで想像がつかない未知の世界だった。


「あはは。ロックゴーレムはフィールドボスだからね。ドロップアイテムはかなり美味しいんだけど、倒すのは結構骨が折れるし、報酬に見合うくらいなかなかの強敵だよ」

「ロッ君はちょうどいい稼ぎ場だな!簡単に狩れる上にフィールドボスだからリポップまで時間が無いのが特に良い!連続で挑めるぞ!ただ最近は柔らかくて物足りねぇな……」

「核心石やら宝石やらの素材集めるついでにレベル上げも出来るからな。かなり美味しい狩場だ。1人で簡単に回れるのも良い。下手したら核心石ごと消し飛ぶから力加減が重要だが」

「後は新技の的としてもちょうどいいな!私としてはもう少し耐久力が欲しい所なのだがな……」

「「「「え?」」」」

「なんか、里塔くんと3人で意見が180度違う気がするんだけど……?」


 ヒャッハー達は鉱山兼経験値タンク兼サンドバッグとしか見ていないロッ君ことロックゴーレムだが、それでも一応フィールドボスである。

 もはや当初のように絶望的な強敵という訳では無いが、それでも普通は雑魚扱い出来るような相手でもない。


 はずなのだが、やはりヒャッハーはヒャッハーであった。


 最初のフィールドボスとは言え、一撃(ワンパン)どころか物足りない、もっと耐久力を上げて欲しいとまで言うのはヒャッハーを含めたごく一部の最強クラスのプレイヤーだけだろう。


 ちなみに、一守ことリトゥーシュの所属する(彼がリーダーなので表現としては率いるの方が正しいが)パーティである『異端と王道』も、強敵とは言いつつ比較的容易に周回と呼べるペースで狩り続ける事が出来るかなりの猛者なのだ。

 ワンパン周回しているヒャッハー達がおかしいだけであって。


 もっとも、『異端と王道』には一撃必殺周回(ワンパンマラソン)を平然と行えるトーカと同じ道に進んでいるルーティがいるので、彼らの中でも近い内に似たような評価に落ち着くだろうが。

 

「ま、まぁ相性とかもあるし?俺と同じような方向性ならそのうちルーティも同じような事出来るようになるって」

「ロックゴーレム相手にそこまで言えるようになるのは遠そうだなぁ……。咲月(さつき)、お前の憧れの人はかなり遠いところにいるぞ……」


 トーカに憧れその背中を追っている妹の目指す場所の遠さを目の当たりにした一守が、遠い目で呟く。


 兄として妹が目標に向かってひたむきに努力している姿は応援したくなるが、内容が内容だけに手放しで歓迎はしにくい。別に否定したり矯正するつもりはないが、それはそれとして……。なんでこんな事になったのか……と言う、諦観の混じった困惑がありありと感じ取れてしまう辺りに、兄としての複雑な心の内が現れていた。


「なんか大変そうね……?」


 護が《EBO》でかなりヒャッハーしている事や、一守の妹がそんな(トーカ)に憧れて真似している事を知らない環は、よく分からないながらも何かしらを感じとったようだ。


「あー、まぁな。紫葉も《EBO》に来れば分かるよ」

「ふーん。あ、そうだ。環でいいわ。なんか里塔くんと鷹嶺くんがいつの間にか下の名前で呼びあってて仲良くなってるな〜と思いつつ疎外感が……」

「あ……うん。なんかすまんな?環。俺も護でいいから」

「ごめんごめん。ちょっと環置いて盛り上がりすぎちゃったよね。僕も一守でいいよ」


 ハイテンション3人組のお守りポジションとして午前中いっぱい駆けずり回り友情を育んでいた護と一守の呼称の変化に青春を感じ、さらに《EBO》プレイヤーとしての盛り上がりに置いていかれた疎外感を感じていた環は少し寂しくなってしまったらしい。


 寂しげな表情でぽりぽりと安っぽいポッコーンを齧る寂寥感漂う姿はあまりにもいたたまれなかった。


「次は体験コーナー行ってみようぜ!《EBO》の世界観を体験出来るらしいぜ!」

「ふん!再現か……《EBO》の民である私を満足させられるか確かめてやろうではないか!」


 空気を読んだのか読んでいないのか、少しじめっとした雰囲気を吹き飛ばしたのは、館内図を眺めていた瞬と明楽だ。体験コーナーとギャラリーコーナーで迷っていた2人だが、次なる目的地が決まったらしい。


「へぇ〜世界観を体験かぁ。楽しそうね」

「フードコートや展示だけでもかなりの再現度だったから期待値は高いね」

「体験って銘打つくらいだからな、楽しみだ」


 既プレイ勢である護達はその再現度に期待し、未プレイな環は《EBO》の世界を体験できるという文言に心を踊らせながら、案内図に従って館内を進んでいく。


「む、扉で区切られているぞ!これは期待出来そうだ……!」

「へぇ、すごいね……ってあれ?もしかしてここ……エレベーターホールになってるのか」


 体験コーナーはこちらから、と書かれた扉を開けると、そこはさらにいくつもの扉が並ぶ小さな部屋だった。

 いくつかある扉の横にな小さなボタンが付いており、一守が気付いたようにエレベーターホールになっているらしい。


 どうやら、体験コーナーは別階にあるようだ。


「このエレベーターを使って行くのか!」

「体験コーナーが別階にあるのか、だいぶ力が入ってるな」

「はぇー今更だけど、すっごいお金かかってるねぇ。やっぱ《EBO》への力の入れようすっごいわこのグループ」


 実際、《EBO》会館は値段まで完璧に再現したフードコートやプレイヤー武器のストラップ、超リアルな実物大フィギュアなど、利益度外視で全力投球しているとしか思えない。


 これは一般人の知る由もない裏事情だが、《EBO》は世界初のVRMMOゲームとして様々な期待を寄せられると共に、VRMMOという未知のジャンルに挑む人柱にされている面がある。


 未だに《EBO》以外の有力なVRMMOゲームが存在しない理由の一端には、そういった実験結果待ち的な側面があるからなのだ。


 VRMMOというジャンルの危険性を探る実験の面を持ち、万が一の場合には批判を一身に浴びる危険性が常に付きまとう《EBO》は、その代わりに未知に潜む莫大な利益を半ば独占的に回収できる。


 そして、現に《EBO》は大成功と言っても過言では無い利益を上げているのだ。それこそ、運営母体である企業が利益度外視のアミューズメント施設を建ててでもアピールする価値があると判断するくらいには。


 なお、そんなことに関係なく普通にこういった施設を建てかねない企業である事は《EBO》のネタに走ることも多い自由度の高さから見ても明らかである点はこの場合は無視することとする。


 そんな裏事情など一般客である彼らは知る由もないが。


ハイリスクハイリターンなジャンル開拓である事は間違いないが、そんなの関係無しにネタに走る運営である事も間違いない

だってよぉ……ヒャッハーの源であるスキルや称号をネタとはいいえ考案実装する奴らだぜ……?


感想&アイディアをいただけると作者は泣いて喜びます


あとアレですね、面白いなーと思ったら下の方にある『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にして頂けるとさらに狂喜乱舞します

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― 新着の感想 ―
[一言] なるほど、だからあんなにガバ運営なんだ あんなにメイの事心配してたのも分かるな この感じだとバイタルとかそういうの無しでやってそうだから心臓に疾患抱えてる人大丈夫なのかな?
[一言] 利益より、休暇と足りない労力が欲しい運営
[一言] 力一杯ネタに走るあの企業だからね、仕方ないね┐(´д`)┌ こっそり裏を覗くと阿鼻叫喚のあのオフィスがあr…
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