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第215話 『館内ではお静かにしろ』

《EBO》会館に赴いたヒャッハーと愉快な仲間たちを出迎える《EBO》会館の洗礼とは……!?

 

「《EBO》ってあの《EBO》……だよな?まぁそうか、エンラン(ここ)と同じ企業の商品だもんな」

「そうだね。《エンドレス・バトル・オンライン》の展示をしてる施設らしいよ。遠足でエンラン行くって言ったら妹も行きたいって駄々こねて大変だったよ……普段はそんな無茶なわがままは言わない良い子なんだけどなぁ……」

「お!鷹嶺くんと里塔くんも《EBO》知ってるの?まぁ《EBO》は世界初のVRゲームとしてめちゃくちゃ有名だし知っててもおかしくはないわね」

「あー、うん。そうだな?」

「あはは、そうだね?」


 なんというか、環の中でガンガン話が進んでいて知っているどころかやっている……やりこんでいるとは言い難い雰囲気になってしまった。

 ちなみに、護の隣で里塔も同じような顔をしていたが、少し後ろの位置にいたので護が気が付くことは無かった。

 なお、明楽と瞬の2人は既にパンフレットで《EBO》会館までのルートを探していたため全く気付ける訳がなかった。


「ふむ……?今は絶叫エリアにいるから……ここはこう行って……」

「いや、それだとお土産エリアに行っちまうから……」

「ならばここをこうか……?」

「だな。んで、ゆったりエリア突き抜ければ……」

「どうだ?道は見つかったか?」

「おうよ!」「ばっちりだ!」


 3人が話している間にルートを確認した明楽と瞬が自信満々に頷き、楽しげに先導していく。

 いつも子どもの様にはしゃいでいるが、より一層童心に帰って楽しんでいる様だ。

 なんとなく微笑ましくなったのか、残された三人はくすりと笑い合うと意気揚々と先導する二人の後に続いていく。

 そうして遊園地特有の人混みの中をかき分け歩き続けること数分。


「とーちゃく!」

「おぉ!かなり広そうだな!これは楽しそうだ!」

「《EBO》はやった事ないけど興味はあったから見てみたかったのよね〜」

「うーん……本当にあのストラップが欲しいのか……どこで道を間違えたんだ……?」

「会館の中ではあんまり騒ぎ過ぎるなよ。あと一守は大丈夫か?」

「「「はーい!」」」

「あぁ、うん。大丈夫」

「そんじゃ行くか」


 建物の中に入ると、外とはまるで違うまるでファンタジーの世界に入り込んだかのような装飾の施された広いエントランスホールが一行を出迎える。《EBO》を知らない者には非日常感を、そして《EBO》プレイヤーには馴染み深さを感じさせるその装飾は、始まりの町【トルダン】を意識したものだろう。

 そして、館内には《EBO》プレイヤーにとっては聞き馴染みのあり、何よりこの始まりの町【トルダン】を意識した装飾にこそふさわしい【トルダン】の町のBGMが流れていた。


「おぉ……なんなのだこの圧倒的“帰ってきた”感は!」

「ちょくちょく聞くけどやっぱいいなぁこれ!ワクワクがあふれてくる!」

「嬉しいのは分かったから声のボリューム下げろって。他のお客さんから見られてるぞ」


 馴染み深い、しかし現実世界では聞くのは初めてなBGMにヒャッハー達は早速感傷的な気持ちになっていた。【トルダン】で聞くならなんてことない日常の音楽でも、現実世界で聞くならたちまち気分はファンタジーだ。


 カノンの道具屋に顔を出したり、路地裏にリベンジしては敗北を重ねたりなど、なんだかんだ頻繁に【トルダン】に赴いているヒャッハー達ではあるが、こういうのは理屈ではないのだろう。


 確かに、《EBO》で初めて聞くことになるこのBGMは現実から《EBO》の世界を覗き込める《EBO》会館の入り口で流れるのにぴったりだろう。


「やっぱりいいねこのBGMは。ワクワクしてくるよ」

「あれ、一守も知ってるのか?」

「あはは、実は僕《EBO》プレイヤーだったり」

「!そうなのか。実はお「「なんでぇぇぇぇぇ!?」」館内ではお静かにしろって言ったろバカども……!」


 一守のカミングアウトに、珍しくテンションが上がった護が自分もプレイヤーなんだと伝えようとした瞬間、瞬と明楽(バカども)の大声が館内に響き渡った。

 全力で他のお客さんの迷惑である。

 流石に見過ごせないと護が雷を落とそうと振り向くと、そこに瞬と明楽(バカども)の姿はなく、「あーらら」とでも言いたげな顔をした環がお土産コーナーの一角を指差していた。


「脇目も振らずにお土産コーナーに一直線だったわ。最初にお土産コーナー見るタイプなのね」

「すまん。見ててくれて助かった!とりあえずあの瞬と明楽(バカども)とっちめて来る」

「鷹嶺くんも大変だねぇ」

「あ、うん(さっき何か言いかけてたような……?)」


 環からの情報提供を受けて護がお土産コーナーに向かうと、ストラップ売り場で驚愕の表情で固まっている瞬と明楽の姿がすぐに見つかった。


「お前らなぁ……こんな場所で大声出すんじゃ」

「おぉ!トーカか!これを見てくれ!」

「俺にはもう何が何だか……」


 護の注意をぶった切って、明らかに混乱した様子の明楽が場の雰囲気で混同したのか《EBO》での名前で呼びながら手に持ったストラップを押し付けてくる。

 その横では、混乱が極まって脳がフリーズしているらしい瞬が呆然としている。


「明楽、呼び方。で、このストラップがどうし……んんん!?」


 明楽から受け取ったストラップを改めてしっかり確認し、辛うじて大声こそ上げなかったものの護の顔にも混乱と驚愕の表情が張り付く。


 護の手のひらに乗っているストラップは、ミニチュアサイズではあるものの、緋色を基調に翡翠色をあしらい所々に小粒のルビーとエメラルドを散らした、見覚えのありすぎるデザイン杖だった。


「……………………」


 そのストラップを見て硬直した護は、ギギギギ……と擬音が聞こえてきそうな程の硬い動きで視線を横の棚に逸らす。


 そうすれば目に飛び込んでくる、『うっすら紅みを帯びた白銀色の棍棒』や『極限まで装飾を削った無骨ながら機能美の光る暗色の篭手』、『弓と呼ぶには異形だがどう呼ぶかと聞かれたら弓と呼ぶしかない弓』や『攻めよりも守りを意識していると分かる洗練されたデザインの長槍』、そして極めつけには『ゴツゴツした見るからに硬く重そうな大型のゴーレム』……のストラップが、無数に並べられていた。


 どれもこれも見覚えしかない……と誤魔化す事すら出来ないほどに、ヒャッハー達には馴染み深い造形をしていた。


「なんっ!……じゃこりゃ……!?」


 さすがに堪えきれなかったのか、護ですら大きな声を上げかけてしまう。ゲーム内で自分が使っている装備が何故か現実世界でストラップとして売り出されていれば仕方の無い反応と言えるだろう。

 しかもひとつ680円。そこそこいいお値段である。


「いや、本当になんでだ……?」


 混乱した頭でストラップの棚を見直せば、棚の上部にPOPがかけられているのが目に入った。

 曰く『《EBO》の装備が現実でもキミの手に!《EBO》オフィシャルストラップ武器編第2弾!ゲーム内イベント優勝チームが使用していた装備をストラップ化!』らしい。


「あ、そういえば副賞でそんなのがあった気が……」


 そのPOPを読んでようやく思い出したのは、ヒャッハー達が優勝したPvPイベントの優勝チームに与えられる副賞。『チームメンバーのメイン武器をストラップ化する』という物だ。


 すっかり忘れていたが、そういえば大会が終わって少しした後に運営から『社内トラブルによって副賞の発送が遅れています。申し訳ございません(要約)』といった内容のメッセージが届いていたような気がする。


 その後の舞桜の《EBO》参戦や【島】の探索ですっかり忘れていた。


「そういやメイが大会直後に忙しそうにしてたけどストラップ化のためのデザインの打ち合わせとかだったのか……?」


 ヒャッハー達の装備はリベットの槍を除いて全てメイのオリジナルであるため、そう言った話は全てメイに行ったのだろう。


 忘れていただけとはいえ、完璧な不意打ちを食らった気分になった護達であった。

ちなみに、里塔くん《EBO》の姿は登場済みだったりします

一応、ヒントという名の答えはガッツリ出ているので推理して見てくださいね!


【重要な補足】

ゲーム内の創作物における著作権がどうなるのかという問題については知識不足で正確な判定が分からないので、この作品世界の中ではこれで大丈夫という認識でお願いします


感想&アイディアをいただけると作者は泣いて喜びます


あとアレですね、面白いなーと思ったら下の方にある『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にして頂けるとさらに狂喜乱舞します

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― 新着の感想 ―
[一言] >どこで道を間違えたんだ……? つ 113話 第1回のイベント結果で道を外れた模様
[一言] 「異端」(里塔妹)と「王道」(里塔)か・・・ 頼まれたものってトーカのストラップだなw
[良い点] 面白い [一言] 王道の子か。
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